なるべく明るく楽しく暮らしたいものですが、現実はそうも言っていられないことが多々あります。世界情勢などスケールの大きな視点ではもちろんですが、もっとミクロな、個人的な事情にしても、ずーっとうまくはいかないものです。
しかし、人生において、辛くともその中に楽しみや気休めを見つけることこそが、暮らしを楽しむ秘訣である……と、筆者はここ最近思っています。文に起こすと当たり前なのですが、意外と忘れてしまいがちでした。そして、その考えは、『Danchi Days』という新作アドベンチャーゲームのデモ版をプレイしたことで、より強いものになりました。
本記事では、体験版のプレイレポートをお届けします。この作品は一見ほのぼのしたゲームですが、誰かの心を大きく動かすかもしれません。
少子高齢化。おばあちゃんの認知症。昔ながらの団地に迫る「現実」
本作の舞台は、たくさんの人々が住める住宅「トアル団地」です。昭和~平成を思わせる少しレトロな雰囲気があります。健気な主人公のホシノはこの団地が大好きで、強い愛着を抱いています。


体験版は、ホシノの幼少期から始まります。おばあちゃんは元園長先生で、「ワクワク」を見つけてくるのが上手な人で、幼馴染のリオといっしょに仲良く楽しく遊んでいました。微笑ましい……!


操作チュートリアルが終わり、時は7年後へ……。ホシノは成長しても健気で元気な性格は変わりません。しかし一方おばあちゃんは……どこか暗い顔を浮かべ、一言もしゃべらず、調子が悪そうです。いったいどうしたのでしょうか。

幼馴染のリオも現れます。こちらも成長したなぁ、この7年のうちにメガネをかけたんだな……と勝手にしみじみしていたら、衝撃的なことを口に出します。

「ボケちゃった人に何を見せてもムダだろ。」……そう、ホシノのおばあちゃんは認知症を患ってしまったのです。


ホシノは反論しようとしますが、「おばあちゃんが認知症である」という事実は変えられません。



リオに促されパソコンで認知症(アルツハイマー病)のことを調べると、「高齢者の約3人に1人」「現代の医学では完治することができません」といった現実が突きつけられます。7年前のあの仲良しなシーンは短いながらも印象的なシーンでしたから、正直なところかなりショックを受け、胸が締め付けられました。

そして、この団地自体にも現代の日本と同じように、少子高齢化の波が押し寄せています。その例として、ホシノたちが通っていた保育園は閉園し、シニアセンターへと生まれ変わることが決まっています。

挙句の果てには、ネットで散々にけなされて拡散されてしまうという悲しい出来事も……。「姥捨て山」扱いは酷いですよ!!
みんなの健気さに救われる


このように本作はただほのぼのしているだけでなく、「辛い現実」をしっかりと突きつけてきます。しかし、そんな中でも希望になるものがないわけではありません。ホシノは自分にしか見えない古風な喋り方のメロンパン乗せカッパ「モロキュウ」に出会い、おばあちゃんがかつて開いていた団地の夏祭りを復活させるという大きな目標ができあがるのです。


夏祭りには参加者が必要なため、団地に住んでいる人々にチラシを配って参加を促さなければなりません。団地の敷地内を歩き回ったり、団地内のインターネット「ごきんじょねっと」を使って情報収集したりして、大規模な夏祭りの開催を目指します。


住民はそれぞれ何かしらの“こだわり”を持っており、一癖も二癖もある人たちばかり。例えば、井戸端会議が大好きでぺちゃくちゃマシンガントークを繰り広げてくるおばさんや、水飲み場ピカピカに磨くことに命をかけているため、夏祭りには参加できないというお姉さん、竹ぼうきを掃く音に風情を感じているおじいさんやアスファルト舗装が嫌いな自称“水たまりクリエイター”……字面だけでも、なんか変な人がたくさんいるな……というのはわかるとおもいます。
どの住民もちょっとだけ「めんどくさい」部分がありますが、その分つながりの“濃さ”も感じられるような気がして、逆にステキで癒やされます。そんな住民たちとはどのように繋がりをもって、どのように接すれば夏祭りに招待できるのでしょうか……!

『Danchi Days』は、PC/Mac(Steam)向けに2026年発売予定です。デモ版が配信されているため、ぜひこの団地で「ステキ」を感じながら楽しんでみてください。
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