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ゲームデザイン研究YouTuberが作ったパズルACT『マインド オーバー マグネット』インタビュー。開発と動画投稿を両立しながら見えたもの

ゲームデザイン解説動画の投稿とゲーム開発を両立する有識者から、作ったゲームとこれからのゲームの話を聞いてみた

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Pikiiは2025年12月18日に2Dパズルアクションゲーム『マインド オーバー マグネット』日本語版を日本地域向けに発売予定です。

『マインド オーバー マグネット』は磁力をテーマにしたパズルアクションで、謎解きとひらめきを重視したレベルデザインを平均2時間で密度高く楽しめます。

また、本作の開発元であるGame Maker’s Toolkitは登録者170万人を超えるゲームデザイン解説YouTubeチャンネル(同リンク)として有名であり、GMTKならではの設計思想と哲学が垣間見えるレベルデザイン、および本人によるオーディオコメンタリーがゲームクリア後に解放されるのも特徴的です。

本記事では、本作の開発者兼Game Maker's Toolkitの運営者であるMark Brown氏へのメールインタビューをお届けします。

ゲームについて

――『マインド オーバー マグネット』の家庭用ゲーム機版の日本地域向けリリースおめでとうございます。国内パブリッシングをPikiiと組んだ理由を教えていただけますでしょうか。

Mark Brown氏(以下、Mark): ありがとう!まずボクは、家庭用ゲーム機版についてブラジルのパブリッシャーであるAlchemy Gamesと協力していて、彼らが日本版のためにPikiiと組んでくれました。多くの才能ある人たちが協力して、ゲームをさまざまなプラットフォームや言語に広げてくれたことに、とても感謝しています。

――リリース版ではレベル(ステージ)の数が60以上収録されていますが、このレベルの数はどのように決まったのでしょうか?ご自身のドキュメンタリーでは1か月でレベルを30個つくるチャレンジをされていましたね。

Mark: 開発の途中でレベル数は何度も変わりました。最初から「いくつ作る」と決めていたわけではなく、とにかく作れるだけ作ろうとしていました。ただ、どこかのタイミングで「ここで止めて、ステージをブラッシュアップしてゲームを出そう」と決断しないと、永遠に完成しないと思ったんです!

開発中に自分へチャレンジを課すことはとても役立ちました。短期間で集中して作る動機づけにもなりました。

――今回のインタビューにあたってふたたび本作を通しでプレイしたのですが、攻略を重ねるうえで生じるプレイヤーの行動パターン、思い込みを崩さないとクリアできないレベルに改めて感銘を受けました。ネタバレにならない程度に、お気に入りのギミックやパズルがあれば教えてください。

Mark: ありがとう。ボクは各パズルがユニーク(唯一無二の意味合い)であり、ゲーム内のどのアクションも興味深い解決が紐づくよう意識して作りました。

ネタバレにならない範囲で言うと……「普段なら絶対にやらない『失敗』が、実は解法になっているパズル」 が、ボクのお気に入りです!

――プレイヤーの平均クリア時間が2時間だったのは、想定通りでしたか?

Mark: はい、最初から短いゲームにするつもりでした。個人開発者として初めて「きちんとしたゲーム」を作るなら、このくらいの規模が適切だと思ったからです。また、同じパズルを繰り返したり、何も起こらない部屋を歩くだけの区間など、無駄な水増しはしたくありませんでした。

――『マインド オーバー マグネット』はゲーム本編の言語依存度が低いものの、Valveの開発者コメンタリーを意識された、クリア後の解説パート(リリース当初は英語のみ)の翻訳を待ち望んでいました。こちら解説パートの翻訳、および解説パートそのもので気を付けられた点はありますか?

Mark: 日本語への翻訳は Pikiiが担当してくれました。ボクがコメンタリーを作る際に意識したのは、あなたが言及してくれたValveのデベロッパーコメンタリーの「あの雰囲気」を再現することです!『Portal』や『Half-Life』のコメンタリーはボクに大きな影響を与えていて、あれを聴いていなければGMTKも始めていなかったかもしれません。なので、自分のゲームにも同じような仕組みを入れるのが「自然」に思えました。

――本作の開発中にプラットフォーマー(ジャンプアクション)の手触りを誰でも調整できる『Platformer Toolkit』をリリースされていましたが、同ツールの開発は『マインド オーバー マグネット』にどのような影響を与えられましたか?操作性もよかったと感じています。

Mark: 実はその逆なんです! ボクは『マインド オーバー マグネット』のキャラクター操作を作るのに非常に長い時間をかけました。走る速度やジャンプの高さなど、細かく調整できるようにたくさんの「つまみ」や「レバー」を用意する必要がありました。

その経験がきっかけで、視聴者向けにプラットフォームのキャラクター制作の感覚を伝えるツールを作ろうと思いました。『Platformer Toolkit』は『マインド オーバー マグネット』のコードをベースにしていて、キャラクターの操作感に関わるほぼすべてをいじれるようになっています。

――Markさんが本作の開発ドキュメンタリー「ゲームを完成させようと思うきっかけになった3つのこと (Developing 8)」で仮想的なライバルとして『ElecHead』(※)を挙げていましたが、同開発者による新作パズルアクション『Öoo』が2025年にリリースされました。こちらはプレイされましたでしょうか?

Mark: まだ遊んでいません!でも、とても良い作品だと聞いています。

※『ElecHead』…日本のインディー開発者・生高橋氏が2021年にリリースしたパズルアクションゲーム。プレイヤーが電気を帯びているという性質を利用したパズルアクションが楽しめる。

――Markさんが「What's the Point of Prototyping?」の回で「『Word Play』(※)が『マインド オーバー マグネット』の2倍以上売れている」と公開されていましたが、この結果をうけて今後の開発するゲームや活動方針などに影響は与えられましたか?

※『Word Play』…2025年7月にGame Maker's ToolkitがSteam向けにリリースした英単語ローグライクパズルゲーム。

Mark: いい質問ですね。正直、「(影響を与えたかどうかは)わからない」という感じです!というのは、幸いなことに、ボクは収入の大半をゲームではなくYouTubeで得ているので、売れるかどうかでゲームのアイデアを選ぶ必要がないんです。むしろ、自分が作りたいタイプのゲームを作れるんです。

ただ、『Word Play』がボクにとって大きく影響したのは、制作がとても楽だったこと。『マインド オーバー マグネット』は全てのパズルを手作業で作る必要があり、ゲームの長さはボクがどれだけ作れるかに依存していました。一方で、『Word Play』は少数のシステムをランダムに組みわせる仕組みなので、わずかな作業量から何百時間ものプレイ時間を生み出せるのです!

――マーケティングについて質問です。ここ数年のSteamはSteam Nextフェスでの体験版のリリースが効果的な手段の一つとされ、Markさんご自身も『マインド オーバー マグネット』と『Word Play』をそれぞれデモをリリースされていました。両者のデモの反響にそれぞれ特徴などありましたか?

Mark: 全体的に、『Word Play』の方が注目され、盛り上がっていたと思う。けど、両方のデモのリリースはSteamのウィッシュリスト獲得を増やす効果があり、それはとても重要なことでした。そして、それ以上に価値があったのは、デモを通じて多くのフィードバックや提案をもらえたこと。両作品とも、プレイヤーの反応を見て改善することができました。

――動画制作とゲーム開発の両立は多忙を極めると思いますが、リリースされたゲームのアップデートやコンテンツ追加などはどこまで対応されるといった方針は決められているのでしょうか?

Mark: 本当にその通りで大変です!『マインド オーバー マグネット』ではローカライズとコンソール移植をAlchemy とPikiiに任せ、ボクは動画制作に集中することを選びました。そんな訳で、追加コンテンツなどの予定は現在のところありません。

Game Maker’s Toolkitについて

――11年近くゲームデザイン解説の動画を投稿され、累計220本以上もの動画を投稿されていますね。月並みな質問かもしれませんが、ネタは尽きないのでしょうか。

Mark: ありがたいことに、まだ尽きていません!何しろ、ゲーム業界は常に変化しているから。

ゲームの歴史の中で、『パックマン』から『スーパーマリオ64』、そして『フォートナイト』まで……どれほど進化してきたことか!デザインの流行やジャンル、プレイスタイルも常に変化しているので、話題も自然と生まれ続けるんです。

――10年以上も投稿されたことで、過去の動画がそれぞれ時代の雰囲気を残すアーカイブになっていると思います。かつてはご自身の過去の見解(『Marvel’s Spider-Man』批評※)について訂正された部分がありましたが、この件以外にも見解が変わったことはありましたか?

※Mark氏は2018年の動画『スイング移動で「スパイダーマンになった気分」になる?』で『Marvel's Spider-Man (2018)』を「スイングアクションが簡単すぎて底が浅く、なりきりゲームとして期待外れ」と評していたが、2024年の動画「10年間で学んだゲームデザインについての10個の教訓」では「自分はゲームのターゲット層ではなく、カジュアルなゲーマーに適切な難易度のスイングアクションだった」として自身の評価が誤っていたと述べている。

Mark: あの『Marvel's Spider-Man』の件が、おそらく最も顕著な変化だったと思います。今ならゲーム開発者としての経験を積んだことで、別の選択をするかもしれないけど。ただ幸いなことに、ゲーム業界の人が「目を丸くするようなとんでもないこと」は言ってこなかったと思っています。

動画の台本を書くときは、ゲーム業界の知人に予め内容を確認してもらい、ありえないことや、馬鹿げたことを言わないよう気をつけていました。

――『マインド オーバー マグネット』の開発ドキュメンタリーは2021年から2024年にかけて17本も投稿されました。このドキュメンタリーについて、具体的にどういった反響がありましたか?たとえばゲーム開発者からの共感とか、ゲーム開発志望者からの驚きとか。

Mark: 本当に様々な反応がありました!「ゲームの作り方」を語ってきたボク自身が、実際の開発で苦労している姿に驚いた人も多かったと思います。しかし、他の開発者たちも、そうした間違いやつまずきに共感していることが分かりました。つまり、この開発ドキュメンタリーが失敗や挫折を含め、ゲーム制作の「ありのまま」を見せるものになったと思います。

――かつてオランダの工科大学でゲームデザインについて講義されていましたね。日本では、かつてビデオゲームと学問がほとんど関係ありませんでしたが、ここ数年はアカデミックな場でビデオゲームを取り扱う機会が生じつつあります。ビデオゲームとアカデミックの関係について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

Mark: 興味深いのは、多くの開発者がゲーム制作において「学問が必須ではない」ことを示している点です。学校や先生なしでも、YouTubeでゲームデザインや開発を学んでゲームを作れるのです!しかし、学術的な環境でゲームを学ぶ本当の利点は、他の開発者たちがいる環境に身を置けるということです。つまり、プレイテスターやチームメンバーにアクセスでき、ゲームアイデアについて話し合える人たちがいるということ。それが、学校でゲーム開発を学ぶ最大の強みだとボクは思います。

――『星のカービィ』や『スマブラ』のディレクターでおなじみの桜井政博氏が自身が運営していた「桜井政博のゲーム作るには」について、同じくゲームデザイン系動画投稿者の観点から桜井氏の動画についてなにかコメントはありますか?

Mark: 本当に素晴らしいシリーズでした!あれほどの専門家が経験や知識を惜しみなく公開してくれるなんて、めったにないことです。そのうえ無料ですよ!桜井さんは、自身が手掛けたゲームや数多くプレイしてきた経験から、明らかに自分のゲームをよく理解している。そのような方から学べることは、本当に光栄なことだと感じました。

――かつて「その年に発売されたゲームのアクセシビリティを振り返る」という企画動画を投稿されていましたが、2021年を区切りとしてシリーズが終了しました。それから4年が経過しましたが、今改めてゲーム業界のアクセシビリティについて意見は何かありますでしょうか?日本のゲーム業界が全体的にアクセシビリティが弱い点も指摘されていたと思います。

Mark: ゲームのアクセシビリティは大きく前進し、今ではほとんどのゲームに多様なプレイヤーのための設定が用意されていることは素晴らしいことだと思います。ここ数年はあまりチェックしていませんが、新作を遊ぶたびにオプションメニューを見るとその内容に感心します。

残念ながら、日本はまだ少し遅れていると感じます。最近も、『マリオカートワールド』が発売数ヶ月後のアップデートでようやく音量調整を追加したと思ったら、音量スライダーではなく「ノーマル」と「大きめ」の2択だけだったのです!

――itch.io(インディゲーム専用プラットフォーム)で開催される世界最大規模のゲームジャム「GMTK Jam」もすでに9年分が開催されています。GMTKのゲームジャム固有の時代背景や傾向の変化などありましたでしょうか?

Mark: 年々、ゲームのクオリティが上がっていることに驚かされます。GMTK Game Jamで始まり、のちに「本物のゲーム」として成長していく作品を見られることは素晴らしいことです。最近『A Little to the Left』をニンテンドースイッチで購入したけど、元々はボクのJam のために作られたゲームで、それを実際に手にすることができるなんて最高です!

(筆者注:GMTK Jamがきっかけで製品化にいたったビデオゲームとしてはローラースケートTPS『ローラードローム』なども有名)

――ゲーム業界におけるショート動画の活用が叫ばれて久しいですが、意識的に活用できている方はなかなか少ないと思います。GMTKのチャンネルは現状ショート動画などはありませんが、何か既存の動画以外のメディアや情報の発信など考えられていることはありますか?

Mark: ボク自身がショート動画、リールやTikTokをあまり好きではないし、実際に使わないタイプのコンテンツを作る気になれないんです。それよりは『Platformer Toolkit』のようなインタラクティブなコンテンツをもっとやっていきたいし、新しく身につけたゲーム開発スキルを活用する方法を見つけていきたいと思います。

――インディーゲームおよびゲーム全般を10年以上分析されたうえで、今後のゲーム業界に対する予想などがあれば教えてください。

Mark: AAAタイトルと呼ばれるゲームが持続不可能であることが明らかになりつつあると思います。開発費は急激に膨れ上がっています。(開発費が数億ドルに達することも……)なのに、ゲームの価格や購入者数はほぼ変わっていません。計算が合わないんです。

一方で、インディー作品はコストを抑えることで成功できます。20~50人くらいの小規模なチームが素晴らしいゲームを作り、さらに経営も順調というケースが増えると思います。少なくとも、ボクはそう願っている。

世界中で多くの人が解雇され、業界が崩壊しつつある現状を見るのは本当に悲しいことです。そういう人たちが一緒になり、大きなパブリッシャーに頼らずにゲームを作れるといいですね。

日本語版『マインド オーバー マグネット』はPS4/PS5/ニンテンドースイッチ向けに発売中。PC(Steam, XboxPC)/Xbox Series X|S/Xbox Oneでも配信しています。


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ライター:渋谷宣亮,編集:みお

ライター/ゲーム業界分析とVRが得意です。 渋谷宣亮

ゲーム開発者兼ゲームライター。VR元年こと2016年にゲームライターをはじめ、それからずっとVRゲームをプレイしつづけている。時折作っている。

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編集/Game*Spark共同編集長 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。人生ベストは『街 ~運命の交差点~』。2025年ベストは『Earthion』。 2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。2026年1月に共同編集長になりました。

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