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2月27日、筆者はXにてこんなポストを見かけました。

エッ!?!?!?『狂った果実』が復刻!?!?!?しかもWindows版!?!?!?
はあ……ふう……すみません、取り乱しました。
『狂った果実』というのは、エフアンドシーの美少女ゲームブランド、フェアリーテールより1992年に発売された伝説的美少女アドベンチャー。ヤンデレや鬱ゲーのパイオニアと言っていいサスペンスADVです。
もう1作の『メタルオレンジEX』は、美少女ゲームブランド「カスタム」のデビュー作であるブロック崩し『メタルオレンジ』の進化版となります。全員可愛い……。
世代ではない筆者がなぜ興奮していたのかというと、実は筆者は、その……ヤンデレが好き……でしてね、えへへへ…………お噂はかねがね聞いており、絵が大好きなこともあって「いつか『狂った果実』をプレイしてみたいなあ」とは憧れを募らせていたものの、何せプレイ環境のハードルが高い!!諦めていたところに今回のポストを見て、もうそれは横転したというものです。なんとありがたいことか……!
そんな中、編集部から「『美少女ゲーム復刻プロジェクト』のインタビューをしませんか?」というお話をいただきました。
やる~~~~!!!!
※インタビューは真面目に行っています※
――まずは自己紹介とお好きな美少女ゲームをお聞かせください。
丸山: 美少女ゲーム復刻プロジェクトのプロデューサーをやっている丸山と申します。
好きな美少女ゲームは明確なものがあって、ポニーテールソフトさんの『ポッキー』ですね。それがないと、僕は多分ここにいないと思います。好きなゲームであり、影響を受けたゲームですね。
井上: 同じくディレクターの井上です。好きなゲームはKeyさんの『Kanon』、それからアリスソフトさんの『ランス』シリーズですね。ランスだと『Rance X -決戦-』が1番好きです。良かった……。

――なぜ今美少女ゲームを復刻しようと思ったのか、このプロジェクト発足までの経緯など、お聞かせいただけますか?
丸山: 井上が入社する前からですが、うちはパソコンゲームの復刻をしているんです。その中でずっと「影響を受けたゲームを世に出せないのかな」「ダメだろうな」みたいな、諦めた思いがありました。そしたら、権利者の人が「もしかしたら出せるかもね」みたいな状態になってきて、そこで技術面をカバーできる井上が入社してきてくれた。ピースがそろった、って言うのかな。
その先が成功するかどうかはわかんないですけど、ただ「できそうだな」みたいなところまで来たんですよ。
もう1回プレイしたいゲームがある、でもできない。当時のパソコンがないから物理的にできない、っていうわだかまりがありました。
このゲームたちをもう一度世に復活させたい、というところが最初の理由です。僕が下準備をして井上がそれを現実のものにする、そういう座組ですね。
――「現実のものにする」……というのは、井上さんが権利関係の許諾獲得なんかもされているんですか?
井上: 話を持っていくのは丸山ですね。僕は「どういう風にすれば作れるのか」という部分です、元々ゲームを作ってて、アダルトゲームも制作経験があります。
なので、ある程度わかるから「ここをこうすれば良いんじゃないの」という、制作進行的な部分だったり、テクニカルな部分での意見などを担当しています。
――そんな中で今回、『メタルオレンジEX』と『狂った果実』を選んだ理由はなんでしょう?
丸山: これはもうね、「打率を考えたらこれだよね」ですね。

井上: そうですね。まあまず第一に「お話がうまく進んだところ」というのはあります。
ただ、希望していた上でちょっとやれなかったタイトルとかももちろんあって、「許可が出た中で選ぶのならこの辺だよね」という感じでした。他にもやりたい作品はたくさんあります!
丸山: 僕と井上は10歳以上離れているので、世代が違いすぎるんですよね。僕はどストレート世代で、今回のラインナップだと「もう美少女ゲームは卒業かな」くらいの年頃でした。同じフェアリーテールさんだと『リップスティックアドベンチャー』とか『ドラゴンシティX指定』とか……『同級生』が出る前後くらいが世代でしたね。
井上: 僕はもう、Windowsの人間なので。
丸山: で、更に縛りがあって、これは井上にはちょっと迷惑かけたなと思っているんですが……X68000縛りがありました。
井上: プロジェクトより前にBEEPがデータを解析して復刻する事業をずっとやっていたので、要するに「何とか作れそうな、ある程度座組が固まっている」のがX68000だったんです。だけれど、実はX68000のゲームって少ないんですよね……。
丸山: 日本に1000人もいないであろうX68000ユーザーに向けた、すっごくニッチな商品だけを僕はずっとやっていたんです。でもそれを引き継いで事業として考えると……やっていけないよね。というか残せない、利益にならないよね、という話になりました。
井上: そのX68000ユーザーさんがずっと減らなければいいんですけどね、そうはいかない。
しかも、最近全体的に――美少女ゲームもコンシューマーゲームもということですが――復刻が流行っているじゃないですか。そうすると、やっぱりお客さん的にも「もう流石にこれ以上ハードは買わなくていいんじゃないかな」となるわけですよ。ユーザーが減ることはあっても増えることはない。
丸山: スタートからして茨の道でしたね。
井上: 縛りが多い……この時代のゲーム、まず作れないんですよね。データを解析して、そのデータ使ってゲームを作る、っていう状況まで持っていける人間っていうのがもうほとんどいないです。
もちろん、めちゃくちゃ探して高単価でやればいけるかもしれませんが、そんなことやってたらね、会社が潰れちゃう。現実味が薄いですよね。
丸山: 一応、井上が入る前は、僕とか代表とかが「子供の時に体験したものを世に出したい」というのが第一でしたから、僕が他の事業も担当している片手間でできた。
でも井上が入って、本腰を入れてちゃんとした予算を立てて回収して……続けていかなくちゃ、となりました。
井上: 現実としてね。例えば、少しなら赤字になってしまっても大丈夫ですが、クリティカルなラインに入っちゃうと、それはもうゲームを作るどころではなくなっちゃうのかな、というのがありますよね。
僕、入って最初に予算編成を見て驚いたんですが、思っていた以上に金がかかりすぎているんですよ。「これはもう、新作作った方が良くないか」みたいな。商売でやろうとすると絶対にそっちの方が良いんですが、うちはやっぱ会社が特殊なので。本業にも結び付いているし。
「それだったらやって良いんじゃない?」のラインを見極めるのが結構厳しいですね。そもそもの話として「お客さんに喜ばれるゲーム」というのが少ない。もちろんどんなゲームにもたいてい喜んでくれるお客さんはいるし、特にこの世代のゲームとなるとノスタルジックに熱量を持たれている方もいらっしゃいます。ただ、その人数があまりにも少ないとちょっと厳しいな、という。
丸山: 僕は、今回の『メタルオレンジEX』と『狂った果実』が世に出せる、となった時もやっぱり採算はあまり考えていなかった。それに対して「そこまで甘くない」というブレーキをかけたり、諸々の調整をしてくれたりするのが井上でした。うまくバランスが取れて、これから世に出すことができます。2作ともジャンルの元祖と言われている作品で、今でも通じる魅力があると思っているのでうれしいですね。

井上: 実は入社する前は『メタルオレンジEX』についてはあまり詳しくなくて、復刻の話が出てから調べました。で、「全然これだったらいけるな」って思ったんですよ。特に絵は、1番この時代の良いところが出ていますよね。柳ひろひこ先生の、ザ・この年代!って感じの綺麗なピクセル。これは世に出した方が良いと感じました。

フェアリーテールさんは、言ってしまえばタイトルがたくさんある。その中で、出すんだったら面白いやつじゃないと!となりまして。「『狂った果実』ならインパクトがあるだろう」という判断になりました。こいつら(『メタルオレンジEX』と『狂った果実』のこと)、当時のソフトめちゃくちゃ高いんですよ!

丸山: 僕としても「高いのはやだな、でも今の人にも遊んで貰いたいな」って気持ちがありました。しかも、当時のソフトで遊ぶには実機も必要だし。それはちょっと諦めちゃいますよね、「なんか違う方法でなんとかならないのかな」って思っちゃう。
――実際、私もその理由で諦めていた口でした。
丸山: ですよね。ちょっと、現実的ではない。
井上: 実は、F&Cさんもこの辺のタイトルを復刻して自社で出そうと少し動かれていたっぽいんですよ。でもやっぱり、技術とか考えたらちょっと無理だって話になっちゃったらしいです。
そんな中で、うちがちょうど話持っていって今回に繋がった、ていう流れがあったんです。なので、そういう意味でも、BEEPが美少女ゲームを出す、というのは割と意義があることなのかなって思いました。
――苦労されたことをお聞きしたいのですが、やはり権利獲得なのでは?と正直思うのですが、そのあたりはどうなのでしょう?
丸山: そうですね。5年以上前から、毎月関係者と飲んで紹介してもらって、その繰り返しです。JASTさんの『天使たちの午後』という名作の権利者を探す、というところから始まりました。
井上: 『天使たちの午後』は、もう「出せる!」ってなったら100%出しますね。やりたがっている人が本当に多いんです。そんなに良い作品なら、そりゃやった方が良い。
丸山: 現存しているメーカーさんももちろんいらっしゃるんですが、アダルトゲームはどうしても潰れているメーカーさんが多いですよね。なので権利者探しの旅は今も続いてます。
後はね、ソフ倫(※「コンピュータソフトウェア倫理機構」のこと)がない時代の作品が多いので、メーカーと「どうしようか?」って話を井上にしてもらいました。
井上: なんかうちって、結構見切り発車みたいで……全然ソフ倫のことを知らなかったんです。「大丈夫か?」って正直思いました(笑)。
丸山: ソフ倫知らない世代だから……言い訳ですけれど(笑)。
――ぜひ見つかってほしいです……!
丸山: アダルトゲームはどうしても、売れる売れない以前の、遊べなくなっているっていう現状になってしまっているんですよね~……。
井上: アダルトゲーム以外はメーカーさん自身がやりたがっていたりとか、そもそも有名なレトロゲームが多くて外国人がやりたがっていたりとかで今も市場があるのですが、アダルトゲームはどうしても世界で売るのを考えても市場が狭くなりますね……。
丸山: そう、そこですよね。これが例えばWindowsのゲームだったらどうにかしてプレイできるから。
「遊べる」ということに強烈にこだわりました。なので順番としては、フロッピーが出て、専用マシン用(X68000Z)が出て、それでやっと本命のWindows用が出る。やっと着地できます。
井上: 結局ほとんどの人はWindows出さないとやれませんからね。
丸山: やっと……やっと目標達成ですね。

丸山: あとは多くの人に手に取ってもらうためにローカライズしました。
井上: 日英中の3言語を入れて、海外のプラットフォームとも話を進めています。今って、ノベルゲームは中国がかなり熱いんですよね。日本人よりやっているんじゃないかな。
――今の中国って、作る方も読むほうも、アダルトもそうじゃないのも、ノベルゲームが強いですよね。
井上: 強いですよね、あと韓国も。少し前の、Windows 98やXPあたりの日本の空気感が、今の中国からは漂ってきます。
日本はアダルトゲーム市場が一度衰退したことでお客さんがだいぶ離れてしまって。あとちょっとゲーム性があるものの方が、アダルトゲームも今は強いですね。
――では、今後の展開も考えて、Windows版やらローカライズやらを今回やったって感じでしょうか?
井上: 大きくできることも視野に入れて、って感じですかね。観測してみないと何ともわからない。本当に、全く読めないんですよ。
『メタルオレンジEX』はぶっちゃけ文字量が全然ないので翻訳も楽なんですが、『狂った果実』みたいなノベルゲームになるとなかなか大変で……今のゲームと比べると少ないんですけれどね。

丸山: 昔のゲームだからこそなんですが、情報が少ないってのもありますね。これはもう恥ずかしい話なんですが、最後の最後まで登場人物の名前を間違っていたりとかしました……。
井上: 実はPVでも間違えています。ゲームではちゃんと直しているので大丈夫です!
PV出る前にわかっていたんですけれど時間がなくて、もうしょうがないからこのままいってしまえ!ってなりました(笑)。
丸山: テキスト全体で見ても名前が1か所しか出ないとかあってね、そういうところの情報が少なすぎるけれど、全体を把握できている人もいないから突っ込める人もいなくて。
井上: F&Cさんもわかっていない、という。でもF&Cさんさんにも昔のゲーム好きな方がいて、ありがたいことにその方が頑張って盛り上げてくれています。
後は今後の開発のやり方をちょっと変えようかって話になっています。
今レトロゲームの復刻をしているところはたいていどこもエミュレーターを使用しているんですが、これをうちもやろうとすると修正をどうしようかという問題が発生するので、今から考えています。
特にテキスト。良くない表現、時代的に今は許されない表現っていうのがいっぱいあるので。正直絵に関しては、解像度が違いすぎてね。「これ、もうモザイクかかっていますよ!」で押し切れる気もしています(笑)。

丸山: そもそも解像度が違いすぎてね。ゲームの内容の問題もあるし、素材の問題もありますね。
井上: ゲームの中に入っている画像自体がめちゃくちゃ小さいんですよ。で、それも全部綺麗に取り出せるかというと、そうでもなくて、取り出せていない画像も実は結構あります。なので「この素材取り出せていないんだけど、代わりにどうしよう?」みたいな話も出てきますね。
丸山: デバッグもね……『メタルオレンジEX』とか、井上おかしくなりそうだったもん。
井上: これ、めちゃくちゃ難しいんですよ。もう、今でいうところの『Jump King』とか『Getting Over It with Bennett Foddy』みたいなものに近いかな。ラストの方とかユーザーを絶対に通さないような、悪意しかない感じのゲーム。

丸山: 当時の人たちはご褒美があるから頑張れました……。
『狂った果実』のデバッグも、こっちはこっちで単調になりがちでだんだん飽きちゃう。
井上: あと、めちゃくちゃ選択肢が多いのに当時のチャートみたいなデータが全く残っていないので、正しいか正しくないかもよくわからないんですよね。
――前後の流れで判断するしかない、みたいな……
井上: ですです。あと『メタルオレンジEX』は、実は当時プログラム作った人を捕まえられて、質問しながら作れました。「この辺の仕様ってどうなっていますか?」みたいな、これがもうめちゃくちゃでかかったですね。相当助けられました。
丸山: 私たちがやっているのは「作り直している」に近いですね。
障害がたくさんあるのは確かなんですが、おまけを入れたりサウンドも何種類も入れたりって、ただなぞるだけの復刻じゃないのはこだわりなのかな。情熱をもって作ったのは確かです。良いものは良いですからね。
――当時プログラム作った人って、今も覚えているものなんですか?
井上: この方は別格かも、今も趣味で当時のゲームの解析とかされているらしいです。ちょっと意味が分からない……(笑)。
丸山: 元々知り合いでしょっちゅう会っていたので、話を聞いたときは驚きました。
井上: X68000Z版を作っている最中に、「私これ作ったんですけど、何かあったら手伝いますよ」って連絡が来ました。すっごく助かって、Windows版の時にかなり質問させてもらいました。
――すごい……ご本人さん登場ですね……!
丸山: もしこの記事を読んで、「俺、あの作品の権利、持ってるよ!」「権利の所在わかるよ!」みたいな人がいたら、ぜひ連絡を……!
この2作にしろ、「私たちが出せなかったら出ていなかったのかな」って思うと、やっぱりちょっと使命感があります。同じアダルトゲームでもセガサターンに移植されたゲームとかは黙っていても出ますが、このあたりは黙っていたら出ない。
井上: もったいないですよね。後の祭りですけど、機材やデータがある程度残っていたような時期になんとか残しておけば……って感じがします。市場的に仕方なかったんだろうけれど。
丸山: 残せているところだとアリスソフトさんとかですが、あそこは特殊だからなあ。貴重なメーカーさんですね。
――「いつか絶対出してやりたい!」みたいなゲームはありますか?
井上: うちは実は「ハード」というブランドの権利を持っていて、そこの『ようこそシネマハウスへ』を復刻する!って言って、言いっぱなしになっているんですよね。
僕も入社してからいろいろ見たんですが、現実的にちょっと難しい。何が難しいってゲームの全貌が全く把握できないんですよ。めちゃくちゃ分岐があるのにそのあたりの資料が残っていなくて作った人間を連れてこないとわからない。多分、作った人間もわかっていないんじゃないかなあ。でも『ようこそシネマハウスへ』は絶対にやりたいですね。
丸山: もう、そこがゴールですよね。でも何をするにせよ、今回の経験は必ず生きてきます。
他のメーカーさんにもアダルトコンテンツを諦めてほしくないな。色々と難しいんでしょうけれどね。
――ありがとうございました!

丸山さんが「やっと出せる」と感慨深そうに言った瞬間が、筆者はとても印象に残っています。2作とも今からとってもとっても楽しみです……!
『メタルオレンジEX』と『狂った果実』のWindows版は共に2026年5月29日発売予定、BEEP公式サイトでは通常版のほか、有償特典付きBEEP限定版も予約販売されています。













