プロポーズを断られた失意の青年、スコット。彼はカノジョに渡すはずだった指輪を取り落とし、マンハッタンに根を張る巨大で不思議な地下空間に迷い込んでしまうのでした。
アメリカの歴史やサブカルチャーをざっくりと遡るADV『UNDERGROUNDED』の始まりです。

映画、音楽、ファッション、デパート! アメリカの過去に迷い込んだスコットのちっぽけな冒険譚
主人公はマンハッタンに住むスコットという青年。弱気な男ですが、同僚たちに背中を押されて恋人であるオリヴィアにプロポーズしました。しかし、あえなく失敗。その拍子に指輪を落としてしまいます。
指輪は地下鉄の構内を転がり、さらにその下に巡る巨大な空間へと吸い込まれていきました。スコットはなんとか指輪だけでも取り戻そうと、地下へと足を運びます。その先に、アメリカの歴史が地層のように積み重なっているとも知らずに……。

本作はアメリカの歴史やサブカルチャーをざっくりと学ぶことができるアドベンチャーゲーム。ざっくりというのは、本当に文字通りで、映画や音楽といった大きなトピックを洗い、駆け足で振り返っていきます。
実在の人物や事象に似せたものはたくさん出てきますが、それ自体が出てくることはありません。
似たようなコンセプトのインディーゲームだと『Kentucky Route Zero』がありますが、0号線に迷い込んだ男を中心に、彼らが知らず知らずのうちに抱えねばならなかった負債や、相互扶助的なコミュニティの存在意義などを婉曲的に語っていくゲームだったあの作品に比べると『UNDERGROUNDED』はかなりベタなエンタメであり、文芸としての美しさを求めている人はやや肩透かしを食らうかもしれません。

その分、本作は非常にカジュアルで、アメリカあるあるを詰め込んだわかりやすいストーリーテリングで魅せていきます。
また、スコットはレトロゲームマニアであり、レトロゲームをプレイすることで状況を打破する不思議な力を持っています。筆者は『香山哲のファウスト』に登場する「懐力(ノスタルヂカラ)」を思い出しました。
『スペースインベーダー』や『ドルアーガの塔』を思わせるレトロゲームをクリアして、先へ先へと進んでいきます。

現実世界の地下を抜け、まずは1980年代のアメリカに到着。入口はデパートエリアになっており、ハンバーガーショップやブティック、おもちゃ売場などがつながっています。
ここでスコットは陽気なカナリアと遭遇しました。彼とともに、同じく迷い込んできた一般人や、かつてのアメリカで暮らしていた記憶の残滓と出会い、彼らの願いを叶えてあげます。
ゲーム自体はいわゆるわらしべ長者的な作りで、どこかで手に入れたアイテムを人に渡し、そこでさらにアイテムを貰い、また別の何かに使用するといったことの繰り返しです。2Dマップを利用したオーソドックスなADV体験でした。

登場するファクターはアメリカのカルチャー/サブカルチャーを意識したものばかりで、音楽、映画、ファッションなど、薄く広く紹介されます。
映画「インディー・ジョーンズ」風のムチを持って剣山をジャンプしたり、マイケル・ジャクソンの「スリラー」のレコードを入れ替えたりと、80sカルチャーにまつわる謎解きが至るところに仕掛けられていました。
SONYのWALKMANらしき音楽プレーヤーは「HORSEMAN」という名前になっていたりと、小ネタも面白いものが多く、思わずにやりとしてしまいます。

階層の途中では、スコットとオリヴィアの馴れ初めが少しずつ流れ、彼らに感情移入できる作りなのが嬉しいです。
ちなみに、筆者が一番好きだったネタは、1960年代のステージにあった「※お酒は1969年以来置いていません」というテキスト。こちらはEaglesの名曲「ホテル・カリフォルニア」の一節でしょう。

レトロゲームの再現度も高く、ADVに効果的に差し込まれているおかげで、飽きることなく楽しむことができました。
カナリアが謎解きのヒントを全部言ってくれるおかげで、ゲームプレイが楽ちんすぎるきらいはありますが、アメリカンカルチャーに多少なりとも興味のある人ならプレイしてみることをオススメします!
『UNDERGROUNDED』はPC(Steam)にて配信中です。










