気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Applesinmypants氏開発、PC/Mac向けに6月30日にリリースされたSF解読アドベンチャー『The Message from Deep Space』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、異星人からのメッセージを翻訳し解読していく謎解きアドベンチャー。1973年、地球に電波を発する隕石が飛来したことをきっかけに、プレイヤーは「翻訳者」として電波に秘められたメッセージを解読していきます。正しい応答をすることでストーリーが進行していくシステムのほか、異星の文明や、現実世界の数学や科学の問題などについても、NPCの科学者からサポートやヒントを受け取ることが可能。記事執筆時点では日本語未対応です。
『The Message from Deep Space』は、1,200円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
CadenCadenです。Applesinmypantsという名で知られており、知能の高い宇宙生命体からのメッセージを、数学と科学を駆使して解読するゲーム『The Message from Deep Space』を開発しました。
一番好きなゲームは『Geometry Dash』です。子どもの頃、ゲーム内のステージエディタを使って、ユニークな演出やド派手なビジュアルにこだわったマップ作りに没頭していました。その経験を通じて、クリエイティビティやデジタルアート全般について本当に多くのことを学びましたし、他の人たちと協力して作業することを覚えました。
もちろん、他にも強い影響を受けたゲームはいくつもあります。『Call of Duty: Black Ops II』のゾンビモードは、私がゲームデザイナーを目指すきっかけとなった最大のインスピレーションのひとつですし、『マリオパーティ4』も特別な存在です。兄弟と一緒に遊んだ素晴らしい思い出がありますし、この作品のミニゲームやアートディレクションは20年経った今でも色あせていないと思っています。そして『リーグ・オブ・レジェンド』は、罪の意識に悩ませられながらもついつい遊び続けてしまい、今でも友人たちと一緒にプレイしています。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Caden『The Message from Deep Space』は、流星から発せられた一連の電波信号を通じて、異星人のメッセージを解読していくゲームです。本作は完全にリアルというわけではありませんが、星間通信の苦労や成功の喜びを真摯に描いており、極めて緻密なディテールで表現されています。
水素原子に関連する宇宙共通の定数周波数である「水素線」を起点に、流星からの送信データは進数体系、離散数学、幾何学、そしてより高度な抽象化へと段階を踏み、科学的概念や従来のコミュニケーションとの架け橋を築いていきます。第一原理から体系を構築していくプロセスは奥深い達成感をもたらし、これらの送信データが実在する数学や科学に基づいているという事実が、プレイヤーの好奇心を刺激する没入感を生み出します。
ゲームが先に進み、厳密な数学の世界を通り抜けた先で、送信データの意味はプレイヤー(解読者)の解釈に委ねられます。こここそが、プレイヤーが送られてきたメッセージと特別な絆を結ぶ箇所なのです。自らの言葉と自らの理解によって、それはプレイヤー自身だけのものとなるのです。ゲーム内に登場する他の4人の科学者たちの助けを借りることはできますが、解読を推し進める主導権は100%プレイヤーにあります。そしてその意味が何であるかは、すべてあなた次第なのです。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Caden本作は、1977年に宇宙探査機ボイジャー1号に搭載されて打ち上げられた「ゴールデンレコード」からインスピレーションを得ています。ボイジャー1号は現在、地球から1光日以上離れた場所にあり、人類が作った物体としては最も遠い地点に到達しています。
このゴールデンレコードは、他の知的生命体が理解できることを願い、数学や科学の普遍的な定数を基盤にメッセージを構築しています。宇宙探査や異星人との接触に夢をはせる人々や研究者にとって、これはひとつの文化的なシンボルとなりました。しかしそれと同時に、その構造には実に巧妙な問題解決の手法が詰め込まれています。そこで私は、「このようなメッセージを自分の手で解読できたら絶対に楽しいはずだ」と思ったのです。私と同じようなオタクたちなら絶対に共感してくれるはずだと思い、このゲームを作ったのです!
本作に関して、何か特定の作品(ゲームや本、映画など)から直接インスピレーションを受けたかというと、難しいですね。ただ、開発中にはハードSFジャンルをもう少し深く掘り下げてみようと思い、アンディ・ウィアーの「プロジェクト・ヘイル・メアリー」や、ゴールデンレコードのデザインを主導したカール・セーガンの「コンタクト」を読みました。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Caden本作の開発も終盤に差し掛かっていた頃、私の親友のひとりが開発中のバージョンを自身のTwitch配信でプレイしてくれていました。彼のプレイを観るのは楽しく、本当にたくさんのフィードバックを得ることができたのです。彼がプレイする様子を観ながらチャット欄でやり取りをしつつ、私は送信データをデザインし直したり、会話テキストを書き直したり、ゲーム内のヒント機能をより使いやすく改良したりしていました。
彼は楽しんでくれてはいましたが、私の中には「面白くてプレイしている」というよりは「友達として私を応援するためにプレイしてくれているんじゃないか」という思いがどこかにありました。彼は「パズルを解くのが楽しい」と言ってくれましたが、私はどうしても不満点や改善すべき点ばかりに目がいってしまっていたのです。
当時、本作をプレイしてくれていたのは、自身がゲーマーではないものの応援とテストプレイを兼ねて遊んでくれていた私の父以外、誰もいませんでした。そのため、このゲームが本当に面白いのかどうか自信が持てずにいたのです。「コンセプトは面白いし、ちゃんと出来ている部分もあるはずだ」と意地にはなっていましたが、開発を始めて9ヶ月が経っても、本作が面白いという確信はほぼ皆無だったのです。
そんなある日、その友人が本作の配信をしていて、第二章の終盤に到達しました。本作をプレイした方ならなぜこの瞬間が重要なのかはお分かりいただけるでしょう。ネタバレなしで説明するなら、メッセージ全体の中で最も重要な「2つの言葉」の意味が明かされる場面です。
私は配信画面越しに、彼が文字通り「空いた口が塞がらない」瞬間を目撃しました。本当に衝撃を受けていたのです。彼は自分が何を解読したのかを理解し、その興奮が体の中から溢れ出してくるのが見て取れました。彼は突然「このゲーム、めちゃくちゃスゴいぞ」と大絶賛してくれて、その言葉が聞けたのは最高の気分でしたね。
しかし、もっとすごいのはその翌日のことでした。私たちがDiscordで一緒にいた時、彼が本作を起動したのです。配信しているわけでもなく、誰かに見せているわけでもありませんでした。彼はただ、自分がプレイしたいからプレイし始めたのです。その時ようやく、何かを成し遂げたのだと実感することができました。彼のような友人がいてくれたことに、心から感謝しています。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Cadenリリース後の反応は、信じられないほど素晴らしいものでした。予想を遥かに上回る本数が売れ、Steamでのレビューも「圧倒的に好評」を獲得することができたのです。これを書いている時点で、本作のコミュニティのDiscordサーバーには2,000人以上のメンバーが参加してくれており、本当に最高のグループになっています。多種多様なバックグラウンドを持つ「オタクたち(愛を込めてそう呼んでいます)」がたくさん集まってくれました。言語学が好きな人、物理学が好きな人、数学が好きな人、そしてただパズルを解くのが大好きな人もです!皆さん本作について素晴らしい感想を寄せてくれますし、彼らの議論を眺めるのが大好きです!
プレイヤーの中には、作中に出てくる異星人の母星に関するデータを使い、実在する系外惑星データベースの中から「本当に見つけた」と説得力のある議論を展開する人たちまで現れました。彼らが異星人の生態や哲学について語り合う様子は、本当に興味深いです。さらに、有志が集まって「Deep Space Relay Communication」という公開チャットルームを作り、そこではプレイヤーたちが今も流星の信号(愛称:meteor-ese=流星語)を使って会話を続けています。予想すらしていなかったのですが、本作に登場するサポート科学者たちのファンアートまで届きました!
いくつかの重要な送信データの場面で、メッセージに触れて涙を流したと教えてくれたプレイヤーもいます。このゲームがこれほど多くの人々の心に響いたことを知ることができ、私にとってはこれ以上ない喜びです。私は「この種族の異星人なら、何を伝えたいと思うだろうか?」という視点で送信データをデザインし、それを論理的に表現するためのプロセスを組み立てていきました。その過程で、新しい可能性や表現の選択肢が次々と開かれていったのです。一部の場面に他よりも強い意味を込めていたことは自分でもわかっていましたが、誰かを泣かせようと意図して作った場面はひとつもありません。
プレイヤーの皆さんがこのゲームの中にそこまでの深みを見出してくれたこと、そしてコミュニケーションの本質や宇宙における生命のあり方について自分なりの答えを感じ取ってくれたこと…それはゲーム開発者として本当に特別なことであり、胸が熱くなる思いです。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Cadenリリース後もいくつかのアップデートを実施し、主に送信データの微調整、ユーザー設定の拡張、そして快適性向上のための機能追加を行ってきました。直近の計画としては、対応言語の拡大を進めています。
コンテンツのアップデートに関して言えば、送信データをところどころもう少し明確にしたり、「アイデア」の対話テキストを補強したり、ゲーム内リファレンスのページを追加したりしようと思っています。また、ゲーム内サウンドトラックの拡張も検討しているところです。
――本作の日本語対応について教えてください。有志翻訳は可能ですか?
Caden多くのプレイヤーから「自分の言語への翻訳を手伝いたい」という声をいただいています。もし日本語翻訳を手伝っていただける方がいらっしゃいましたら、私までメールでご連絡いただくか、コミュニティDiscordに参加して直接声をかけてください!
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Cadenファンの方々による本作の動画やコンテンツ制作は大歓迎です!
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Caden私はアメリカ人ですが、大学で日本語を少し勉強していました。最終学年の時には、『Pingu Jisho』というシンプルな研究ゲームまで開発しました。ペンギンが小学校で習う漢字を覚え、魔法でパズルを解いていくというゲームです!
『The Message from Deep Space』では、私の日本語の知識が送信データの中にも溶け込んでおり、英語やコンピュータサイエンスと組み合わさることで異星人の言語を作り上げています。多くのプレイヤーから「一部の単語が日本語の助詞のようだ」というコメントが寄せられました。流星からの送信データのひとつには、日本語の丁寧語である「~ます」が翻訳として定着したほどです!
そのため、送信データが文章を構成する段階に入る頃には、もしかすると日本人プレイヤーにとってこのゲームの文法は理解しやすいものになっているかもしれません!もしそうでなかったとしても、ゲーム内に登場する言語学者Carrie Collins博士が、日本語への情熱や昔親しくなった日本の友人との思い出を振り返る姿を楽しんでいただければ幸いです。
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に1,000を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。








