世の中にはさまざまな「エンタメ暴力」を描いたゲームがあります。
銃を乱射してゾンビの群れをハチの巣にするエンタメ暴力、巨大な剣と魔法でモンスターを叩き伏せるエンタメ暴力、あるいはPvPで見知らぬプレイヤーをボコボコにするエンタメ暴力。人類の三大欲求のすぐ隣に位置する、ゲームと非常に相性の良いエンタメだと思っています。
そして、2026年9月15日にソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売されるPlayStation 5用ソフト『Marvel’s Wolverine』もまた、極上のエンタメ暴力を提供してくれます。

その実態は、「世界最高硬度の爪を両手から生やした小柄で毛むくじゃらなおっさんが、敵の懐に飛び込んで文字通りミンチにするけれど、自分も容赦なくミンチにされまくる」という、極めて純度の高い泥臭いバイオレンスです。
今回、発売に先駆けてSIEより製品版コードをご提供いただき、PS5 Proで一足先に遊ばせていただく機会を得ました。日本版でのプレイとなりますが音声は日本語と英語切り替え可能、そしてCERO Zを冠するに相応しい欠損や血飛沫などの殺傷表現が一切の躊躇なくてんこ盛りになっています。

最近は『The Blood of Dawnwalker』の出血表現規制などで「日本版は表現規制でマイルドになっちゃうんじゃ……」と胃を痛めていた紳士淑女の皆さん、どうぞ安心してください。バチボコに手足が千切れます。グレネードで爆散もします。
血生臭いのが苦手な方向けには表示オフのオプションもしっかり用意されているので、そちらの方も安心してください(オフにしてこのゲームを遊ぶ人がどれくらいいるのかは謎ですが……)。
開発は天下のインソムニアック・ゲームズ(Insomniac Games)。『Marvel's Spider-Man』でニューヨークを華麗に飛び回り、世界中のゲーマーを笑顔にした名門スタジオです。
「あのインソムニアックが作るんだから、きっと今回もスタイリッシュで爽快なヒーローアクションなんだろうな~」などと呑気な顔でコントローラーを握ったら、開始数分で爪で中指を立てる主人公、敵の腕や足を豪快に千切る主人公、立ち込める血煙で視界を真っ赤に染める主人公、そして開始早々ボコボコにされて膝をつく主人公という地獄絵図を前にして、思わずゲラゲラ笑ってしまいました。
作風の振れ幅が違いすぎます。親愛なる隣人は一体どこへ行ってしまったのでしょうか。画面の中に立っていたのは、ただの凶暴な野獣でした。
最高か。
X-MEN? 知りませんね。ヴィランだらけの職場に乗せられる不穏すぎるオープニング
まず度肝を抜かれたのが、その潔いほど割り切った世界観とストーリーです。
「ウルヴァリン」と聞けば、多くの人はプロフェッサーXが率いるヒーローチーム「X-MEN」の一員としての彼を思い浮かべるはずです。サイクロップスとジーンを巡ってギスギスしたり、学園で若いミュータントの面倒を見たりする、あの頼れる兄貴分ですね。ですが、本作のユニバースにはX-MENが一切登場しません。 それなのに『Marvel's Spider-Man』とは地続きというゲーム独自の世界観になっています。
物語は、かつて記憶を失い野生化して完全に理性を失っていたローガン(ウルヴァリン)が、ナサニエル・エセックス(ミスター・シニスター)に見出され、ミュータントが暮らせる世界を作るという高い理想とは裏腹に、現実は汚れ仕事ばかりの部隊「チームX」に所属していた暗黒時代にスポットを当てています。
チームXに心底うんざりして離脱してから3年後、囚われの身となったエセックスを救出へ向かうヘリの機内からゲームは幕を開けます。この時、一緒にいる救出部隊の現役チームXメンバーがすごいことになっています。
ヘリを操縦しているのは、姿を自在に変える青い肌の暗殺者ミスティーク。 そして隣で物騒なオーラを放っているのは、長年の宿敵である巨漢セイバートゥース。
元 同 僚 が 全 員 ヴ ィ ラ ン 。
職場環境が最悪すぎる。
「死にたくなければ突っ込め」という狂気のバトル設計
本作は、『Marvel's Spider-Man』のような広大なオープンワールドを自由に飛び回るゲームではありません。一本道のステージを敵を蹴散らしながら進んでいく、いわゆるストーリー主導でリニア型のアクションアドベンチャーです。
基本操作自体は、弱攻撃、強攻撃、パリィ、回避、そして各種スキル技と、現代のアクションゲームとしては非常にシンプルで触りやすい作りになっています。野生の勘で敵の攻撃タイミングを察知し、爪で攻撃を弾く手触りはDualSenseの振動と組み合わさって抜群に気持ちいいです。

ですが、このゲームの真骨頂はそこではありません。 画面左上にある「レイジゲージ」。ウルヴァリンを操作していると脳髄に直接叩き込んでくれる本作の目玉がこれなんです。
敵を攻撃することで溜まっていくこのゲージ。なんと2本ストックした状態であれば、HPが0になって死亡しても、ウルヴァリンの超回復能力(ヒーリングファクター)が発動してその場で即座に蘇生します。
「えっ、じゃあゾンビみたいに無限に復活できてヌルゲーじゃないですか」
そう思いましたよね? 筆者も最初は完全にそう思っていました。 ですが、現実はそう甘くありませんでした。
まず、敵がやたらと好戦的で攻撃がめちゃくちゃ痛い。ガードも固く、集団で容赦なく囲んでタコ殴りにしてくるため、難易度ノーマル(5段階中の3)ですらちょっと判断を誤ると一瞬で体力を削り切られてレイジゲージを溜める前に床を舐める羽目になります。ゲームクリアまでに恐ろしい回数ダウンしました。 敵の強さはある程度個別調整もききます。

敵のやる気がおかしいです。そもそも、全身の骨格が最強の金属+いくら傷つけても超回復してくるおっさんが、変なコスチュームを着て雄叫びを上げながら突っ込んでくるんですよ? なんで立ち向かってこれるんですか? 勇気がありすぎます。
どちらが正義か分からなくなりそうですが、ウルヴァリンの暴力性が霞むほど敵はちゃんとカスばかりなので安心してください(というかウルヴァリンは根がめちゃくちゃイイやつです)。
話をレイジゲージに戻しますが、ウルヴァリンらしさを最大限に発揮している一番の理由が、「レイジゲージは何もしないと時間経過でどんどん減っていく」という仕様です。
つまり、どういうことでしょうか。
「体力がヤバいから、一旦物陰に隠れて様子を見よう……」などとチキンな逃げ腰の立ち回りをしていると、命綱であるレイジゲージがみるみる減っていき、超回復すらできなくなって普通に死にます。
生き残りたければどうするか? 目の前の敵に雄叫びを上げて突っ込み、爪を突き刺して血飛沫を上げながら切り刻み続けるしかないのです。
さらにゲージが3段階まで溜まると今度は「鬼強モード」へと移行します。このモード中は非常に強くワンパンで敵を倒せるフィニッシャーも発動できるのですが、常時ゲージがものすごい勢いで減っていくうえに、鬼強モードが勝手に自動発動するというありがた迷惑仕様!
強くなれるんだから強敵やピンチのために温存したいけどブチギレてるんだからそりゃ無理ですよね! なお、フィニッシャーを発動することでゲージは増えていくので、もっともっと敵を勢いよくブッ倒そうという制作陣からの意図がうまくデザインされています。
このイカれたシステムのおかげで、プレイヤーは必然的に「自分から危険地帯へ突撃していくヤベー奴=ウルヴァリン」にならざるを得ません。
敵の攻撃をパリィで弾き、壁際へ蹴り飛ばし、アダマンチウムの爪を頭上から突き立てて絶命させる。血煙が舞い散り、四肢が吹き飛ぶバイオレンスな光景の中で、生存本能と破壊衝動が完全にリンクして「あ、いま俺、完全にウルヴァリンになってる……」という瞬間が訪れます。ゲームデザインとキャラクター性が一致したバトル体験です。
ストーリーがいいぞ
さきほどチームXがヴィランばかりの職場と書きましたが、実はウルヴァリン本人もこれでゴリゴリにメンタルをやられています。

戦闘スタイルこそ血生臭いウルヴァリンですが、実際の彼は他人を思いやり、子どもを慈しみ、孤高の獣でありながら善き人としての善性も持ち合わせている男です。そりゃそんな真っ当な心を持った人間にとって、汚れ仕事ばかりの職場なんて無理に決まっています。精神が持ちません。
そんなウルヴァリンが運命の女性、ジーン・グレイと出会うことで物語は一気に加速。誘拐された元同僚を追いかけてネオン瞬く東京に向かい、失われた過去とリンクしていく様子が描かれていきます。
詳細は省きますが、ウルヴァリンとジーンのやり取りを丁寧に描写することで、ウルヴァリンの人間性がじわじわと浮き彫りになっていくのが素晴らしいです。ウルヴァリンを務めたリアム・マッキンタイア(Liam McIntyre)氏の細かい顔の演技と柔らかい表情が、獣としてのウルヴァリンとの強烈なギャップを際立たせていました。
オシャレなウルヴァリンは爪にも気を使う
育成要素も用意されています。
敵をめった刺しにしたときに体力が回復するスキルや、レイジゲージの上昇率アップ、パリィの入力時間延長、必殺の回転斬りの回転数増加など、自分好みのバーサーカーを作り上げるスキルツリーが存在します。

『Marvel's Spider-Man』同様にファンサービスとして各種コスチュームも充実しており、原作コミックやアニメ、映画のコスチュームだけでなく、今年8月にリリースされたばかりの『MARVEL Tōkon: Fighting Souls』のコスなど色々なバリエーションが完備されています。
筆者は映画『デッドプール&ウルヴァリン』での黄色いコスチュームがお気に入りで、映画でも流れたLike A PrayerをBGMにしてなりきりプレイを楽しめました。 映画と同様に手足がスパスパ切り飛ばせるんですのが原作IP物のいいところですね。

そして個人的にツボだったのが、スーツだけでなく「爪の形状」までカスタマイズできる点です。
爪の見た目を変えるって何ですか??? アダマンチウムの爪を裏で職人がせっせとヤスリがけして形を整えてるんですか?
ぶっちゃけ特徴が細かすぎて、動かしている最中は違いがよく分かりません。フォトモードは充実しているのでそちらとの相性はよさそうです。
日本ステージの作り込みは好印象
本作はメインストーリーのステージの一つに日本があります。それもサクッと遊んで終わるようなおまけではなく、日本パートがかなりの長時間ウェイトを占めています。
日本各地を回るわけではなく新宿・歌舞伎町をメインに話が進むのですが、SIE Japanが全面協力したロケテストを行っただけあり、街の雰囲気は抜群です。
(※ロケテストの詳細は公式ブログに載っているのですが、各所を撮影したデータが5.6TB、背面が粉々に割れたスマートフォンの努力が反映されています。ぜひ一度読んでみてください)

スタッフの尽力により『Marvel's Wolverine』には猥雑な歌舞伎町らしさが詰め込まれています。海外ゲームにありがちな変なフォントの謎日本語表示もありませんでした。 歌舞伎町が舞台となると、どうしても日本が誇る『龍が如く』シリーズが描く神室町と比較してしまいますが、こちらはこちらで「海外視点+日本へのリスペクト」が感じられる描写でして、日本の空気感がしっかり再現されています。
でも、せっかく海外スタジオが日本を描いているんだから、日本のスタジオでは絶対に出せないような“トンデモジャパン”もちょっとは見たいんだよねぇ……
と思っていたら出てきました!

忍の里! まさにニンジャ!
くあ~!これだよこれ!
優等生でフォトリアルな日本を見せて安心させてくれた後に、急にハリウッドらしいコテコテなニンジャを出してくる。最高に良い味変でした。
ちなみにこのニンジャたちは「ザ・ハンド」という集団ですが、7月に公開された「スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ」でも出てくるのでタイミング良すぎです。
後半にいくほど見えてくる欠点
ここまでは良い点を挙げてきましたが、ゲームが後半に進むほど熱がスーッと冷めていってしまった欠点についても、率直に挙げておかなければなりません。
まず、オープンワールドとPS5の爆速ローディングとウェブスイングを融合させて度肝を抜いた『Marvel’s Spider-Man』シリーズに比べると、本作ならではの新しい体験といった「革新性」は極めて薄いです。
構造としては手堅く作られた「リニアなストーリー主導型アクションアドベンチャー」であり、悪く言ってしまうと非常に小さくまとまっている作品です。ニューヨークの街を自由気ままにスイングして回るような圧倒的な自由度に比肩するものを期待して買うと、行動範囲の狭さに窮屈さを覚えてしまうかもしれません。
戦闘面でも、敵のメンツがほぼ変わらず、大型の敵に対してウルヴァリンが繰り出す攻撃モーションも殆ど一緒なのがあいまって、新しい敵なのに既視感のある動きしかできないというマンネリに直面します。
なにより納得がいかなかったのが、ウルヴァリンの最大の特徴であるはずのアダマンチウムの爪が本作では全くといっていいほど説得力を持っていないことです。
雑魚敵相手ですら、何度も何度も切り刻んでようやく倒せる威力。「アダマンチウムじゃなくてアルミニウムの爪なんじゃないですか?」と思うくらいです。
せめてストーリー中にウルヴァリンの基礎攻撃力が上がるパークがあれば良かったのですが、追加されるのはよりにもよってクリア後の「2周目」という歯痒すぎる仕様。1周目で強くしてくれよ! 爪のスキンを集めたら攻撃力を上げてもよかったのではと思います。
世界最高硬度の爪を持つ男なのに、工事現場のショボいフェンスや木のドアなど切り裂けないオブジェが多いことにも、ゲーム上の制約という嫌な現実が見えてしまい、「システムにより牙を抜かれて弱体化されてしまった哀しき獣」という烙印を押さざるを得ません。ストーリー面での人間性はよく描かれていただけに、ウルヴァリンの特徴が情けない形になってしまっているのは残念です。
また、リニア進行に絞った代償として、サイドコンテンツもあまり用意されていません。 フィールドに点在する「悪夢の試練」ではタイムアタックや、ローグライト風にパークを選択していくウェーブ形式の戦闘ができますが、他にはスキン解禁用の素材箱探し、ウルヴァリンの大好物である各地の「ウィスキー」を拾い集める収集要素があるくらいです。
ストーリー重視のリニア形式とはいえ探索要素が薄く、『Marvel's Spider-Man』からあからさまにパワーダウンしてしまっています。
さらに、「悪夢の試練」も無理やり取って付けた感が否めません。 クリアすることでウルヴァリンの失われた過去の断片――1800年代~1900年代にウルヴァリンが日本や世界を旅していたという設定が垣間見える点は、メインストーリーを補強する意味でも非常に良いです。

問題は、悪夢の扉のプレイ内容そのものです。 タイムアタックは1分ほどで終わるのですが、ウェーブ形式の戦闘は最高報酬を目指すには早くても14分ほど拘束されます。あからさまに時短になる飛び抜けて強いパークがあるので、それが最初に選べるようにリセマラすることもありました。 それでも代わり映えのしない無味無臭の戦闘を10分以上繰り返し続けさせられるのは苦痛なうえ、よりにもよってストーリーが盛り上がっている佳境で急に悪夢の扉が出てきたりするので、全体のテンポを著しく削いでしまっています。悪夢の試練はプレイ内容として褒められるところがほとんどありません。
そして、サイドコンテンツが薄いのでプレイヤーは必然的にメインストーリーに専念することになるのですが、そのメインストーリー自体が14時間ほどでサクッと終了してしまいます
クリア後に2周目が始まっても、遊べる内容は変わらず、スキルやパークがちょっと増えただけなので、エンディングを迎えた後にはどうしても物足りなさが残ってしまいました。
『Marvel's Spider-Man』ならクリア後もニューヨークを散策したり、サイドミッションをプレイしたりといったクリア後の楽しみも残っていますが本作にはそれがありません。そりゃ普段はDLCで追加する2周目を最初から入れてますよね。
正直なところ、フルプライスのゲームとして見ると「この価格でこのプレイ時間は短すぎるのでは……?」と思わざるを得ませんでした。 ただ、最近は「1本遊ぶのに長時間かかる大作ゲーム」への反動でコンパクトで短いゲームを求めている層も確実に増えています。先日のState of Playではクリアまで3時間程度という宣伝をするゲームもあり、その短さを喜んでいる方々もいて筆者は目からウロコが落ちる思いでした。
総評ーウルヴァリンらしさを突き詰めて成功した部分もあるが厳しい部分もある
総じて本作は、新しいゲームの時代を切り拓くような革命的な大作ではありません。後半のボリューム不足といった粗もはっきりと存在します。
無駄を徹底的に削ぎ落としたステージ構成、細部までこだわり抜かれた歌舞伎町の熱気、そして何より「死にたくなければ突っ込んで敵を解体し続けろ」という狂気のレイジシステムが生み出すバーサーカー体験は、間違いなく本作でしか摂取できないウルヴァリンらしい操作感です。
スタイリッシュでお行儀の良いスーパーヒーローごっこにはもう飽きて、たまには理性をかなぐり捨てて返り血を浴びながら敵の喉元に爪を突き立てる野蛮で最高な休日を過ごしてみたいウルヴァリンファンの方々にはこのサイズ感が好ましいと感じられるのかもしれません。
Game*Spark レビュー 『Marvel's Wolverine』 PlayStation 5 2026年9月15日
攻めないと死ぬ”超回復バーサーカーとシステムの相性がイイ!
-
GOOD
- ウルヴァリンらしい凶暴性とマッチした戦闘システム
- 先が気になるストーリー
- リアム氏の演技による実写版とはまた違ったウルヴァリン=ローガンの表現
- コンスタントに新作を出せるインソムニアックゲームズの開発体制
BAD
- ボリュームが物足りない
- アルミニウムの爪
- 悪夢の試練という水増しコンテンツが文字どおり悪夢の試練
¥12,355
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)













