
いまの世の中、大量の物流を担う主役の1つとして大型トラックは欠かせない存在と言えます。そんなトラックを主人公にした作品が、SCS Softwareのトラックシミュレーター2作――『Euro Truck Simulator 2』(以下、ETS2)と『American Truck Simulator』(以下、ATS)です。筆者は本シリーズは今まで遊んでこなかったのですが、この「TGS2026」の会場で体験する機会を頂きましたのでレポートをお送りします。
今回触れたのは、ETS2のPS5版、ETS2の旅客輸送モジュール「Coaches」、そしてATSに追加される乗用車DLCという3本立て。あわせて開発者へのインタビューの機会もいただけたので、そちらもお届けします。
始める前まではトラックシミュレーターというジャンルに対して「荷物を積んで目的地まで走るだけでしょう?」くらいの認識しか筆者にはありませんでした。その認識が、運転し始めて10分で改まることに。
「走るだけ」が、こんなに神経を使うとは

まず遊んだのが『ETS2』のPS5版です。
このゲームやることのメインは実にシンプルです。大型トラックに荷物を載せて、目的地まで走って運送する、それだけです。競争するライバル車も、1秒でも速く走る必要性もありません。
ところが、実際に走らせてみるとこれが結構な神経を使うのです。
まず制限速度。大型トラックですから、当然そう簡単には止まれません。かといって遅すぎても仕事になりません。さらに周囲の車への気配りも欠かせない。車体が長いぶん、車線変更ひとつ取っても後続車との距離感が普通の運転ゲームとまるで違います。ミラーを見て、速度計を見て、前を見て——気づけば全身に力が入っていました。
そして最も混乱したのが、国を跨ぐと交通ルールが変わるという点。ヨーロッパを舞台にした本作では、走る国によって左車線なのか右車線なのかが変わります。頭では分かっているのに、国境を越えた瞬間に「あれ、今どっちだ?」と一瞬固まる。あの焦りは、なかなか他の車を扱うゲームでは味わえないものでした。
なおPS5版ではDualSenseの振動とトリガーエフェクトへの対応が予告されており、路面や車両の挙動が手元に返ってくる感触も含めて、コントローラーで遊ぶ層に向けた入口がしっかり用意されている印象です。
乗せているのは荷物ではなく、人

続いて体験したのが、『ETS2』の新モジュール「Coaches」です。
こちらはトラックではなくバス。つまり、後ろに載っているのは荷物ではなく乗客です。この一点が、運転をまるごと別物にしてしまいました。
本作では乗客の不満が溜まらないように走る必要があります。逆に言えば、丁寧に運転すれば評価が上がる。そして当然ながら旅客輸送ですから、タイムスケジュールも存在します。
この二つが同時に効いてくるのが厄介で、かつ面白い。遅れないように急ぎたい、でも荒い運転はできない。急ブレーキや急ハンドルを切れば、評価は当然のようにガタ落ちします。
トラックであれば、多少乱暴に扱っても荷物さえ無事なら何とかなる場面はあります。しかしバスは違う。乗せているのは物ではなく人だからです。この当たり前の事実が、ゲームシステムとして真正面から突きつけられるのです。
トラックで培った「効率よく速く運ぶ」という発想が、バスでは通用しない。同じマップ、同じ道路なのに、ハンドルの切り方からアクセルワークまで変わってしまう。この転換は想像以上に鮮烈でした。
ついに公式で乗用車に乗れる


そして最後が『ATS』。ついに公式で乗用車のDLCが追加されるというトピックです。今回体験できたのは「Ford」のパック。フォードの車に乗って、アメリカの道を走ることができます。
……で、乗ってみて最初に思ったのは「速い」でした。
基本的にやること自体は変わりません。目的地に荷物を運ぶ、それだけのこと。しかし乗っているのは普通の乗用車。一瞬で速度は出るし、トラックと同じ感覚でハンドルを切ると一瞬でスピンします。大型車の重さを前提に染みついた操作が、そのまま裏目に出るわけです。
それに、車種が大きく変わったからといって普通の道を走ることには変わりありません。速度制限はきっちり守らなければならないし、周囲の車への配慮も必要。車が軽くなったからといって、運転が雑になっていいわけではない。
トラック、バス、乗用車。車両は違っても、根っこにある「道路を走る」という体験は一貫している。3本続けて遊んだからこそ、そのことがはっきり分かりました。
ゲーム業界で誰もこれをやっていなかった

体験後、マーケティング責任者のBartosz Moskala氏と、Console版開発責任者/プロデューサーのJakub Mrazのお二方にお話を伺うことができました。以下、その内容をお届けします。
――こういったタイトルを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
SCS Software:一番大きなきっかけは、私たちが『Euro Truck Simulator』『American Truck Simulator』で市場に参入した当時、ゲーム業界で誰もこれをやっていなかったということです。そこに可能性を見出しました。
このジャンルには、大きく分けて2種類のプレイヤーがいると考えています。ひとつは、トラックやリグといった大きな乗り物そのものが好きな人。もうひとつは、トラックにそこまで思い入れはないけれど、カジュアルに運転する“禅”のような体験が好きな人です。
1時間でも2時間でも、頭のスイッチを切って、どこか別の場所にいるような気分になれる。私たちのゲームはそういう時間を提供できます。ストレスを発散して、気持ちのいいドライブを楽しんでもらう。それがひとつの魅力だと考えていました。
――今回、トラックに加えてバスと乗用車が追加されました。この2つを用意した理由をお聞かせください。
SCS Software:まず大事な点として、私たちはトラックから離れるわけではありません。トラックは常に私たちのコアなオーディエンスです。
そのうえで、着想はプレイヤーの皆さんから得ています。『Euro Truck Simulator』『American Truck Simulator』のコミュニティはMODが非常に盛んなことで知られていますが、その中でも特に人気の高いMODが、乗用車とバスだったのです。「トラックではなく乗用車に乗りたい」「バスに乗りたい」という声は、何年も前から見えていました。
私たちは時間をかけましたが、10年以上かけて作り上げてきたヨーロッパとアメリカのオープンワールドが今あります。ならばその経験と、このマップを活かして、皆さんが望む体験を提供しよう——そう考えたのが、バスと乗用車を追加した理由です。
――乗用車が登場したことで、「あの車も追加してほしい」という要望はさらに増えると思います。今後の車種追加の予定はありますか。
SCS Software:もちろんあります。今回体験して頂いたDLCパックはフォードの車で構成されていますが、次のパック用にDodgeの車は既に準備できています。その後も他のメーカーが続く予定です。
このパックはあくまで始まりに過ぎません。おそらく今後何年もかけて、次から次へと車を追加していくことになるでしょう。何しろ車というのは本当に数が多いですから。当然、皆さんにはそれぞれお気に入りのブランドやモデルがあるはずです。全員を満足させることはできませんが、少しずつ対応を広げていきます。
――最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
SCS Software:ぜひ遊んでみてください、というのはもちろんですが——まだ私たちのゲームに触れたことがない方は、Steamで無料のデモ版を入手できます。まずはそれを試してみて、自分に合うかどうかを確かめてみてください。
皆さんを私たちの世界へ歓迎します。
シリーズ初体験でそれぞれ3本立てで体験し痛感したのは、この2作が10年以上かけて積み上げてきたのは「道路そのもの」なのだということでした。その上をトラックが走るか、バスが走るか、乗用車が走るか。それだけで、こんなにも感じ方が変わる。その驚きは実際にプレイしないとわからないものだと断言できます。
なのでまだプレイしていない人は開発者の言葉どおり、まずはデモ版から遊んでみてはいかがでしょうか。あの妙に神経を使う、それでいて不思議と落ち着く時間は唯一無二の体験を得られることでしょう。
『Euro Truck Simulator 2』および『American Truck Simulator』はSteamにて配信中。PS5/XBOX Series X|S向けにも配信予定です。









