イマジニアは、トイボックスが開発する釣りアクションRPG『ぼくと釣り日記』をニンテンドースイッチ2 / ニンテンドースイッチ向けに2026年10月8日に発売します。
本作は『牧場物語』の生みの親として知られる和田康宏氏と、氏が率いるトイボックスが開発を担当。魚影に頼らず、魚の生息域を予測して仕掛けを投げるという、実際の釣り人が味わう戦略と興奮を再現した作品です。和のテイストで描かれた川や湖を舞台に、100種類以上の魚との真剣勝負が楽しめます。

そこで今回Game*Sparkでは、和田康宏氏へお話を訊きました。
和田康宏氏と加藤克明氏

和田氏はトイボックスの代表取締役社長。1996年の初代『牧場物語』からシリーズを育て上げ、戦いのない生活系ゲームのジャンルを切り開いたクリエイターとして知られています。
そして、今回インタビュアーを務めるのは、「バカタール加藤」として知られる加藤克明氏。「週刊ファミ通」編集長などを歴任し、現在はアニメディアの編集長を務めています。両者はバンド仲間として長年交流を続けており、今回の対談は新型コロナウイルスの影響で中断する前以来、実に5、6年ぶりの再会となりました。
久しぶりの再会
加藤:トイボックスさんも15周年ですよね。最近はどんな感じだったんですか?
和田:ここ数年でいうと、金沢の方はアークシステムワークスさんと『ワールドエンドシンドローム』を作って、その後にイマジニアさんと『ミステリーの歩き方』シリーズをやってます。私はといえば『Birthdays』のあと任天堂さんの『DCスーパーヒーローガールズ』を作ったり、スパイク・チュンソフトさんの『なつもん! 20世紀の夏休み』では開発プロデュースを、その後はタカラトミーさんの『人生ゲーム』を数年にわたって作っていました。
加藤:人生ゲーム、そんなにかかってたんですね。
和田:そうなんですよ。今までの人生ゲームとは違うものを作りたかったので、結構苦労しました。準備の期間や発売後のDLCなどもあったので、だいぶ長くやっていました。

企画誕生のきっかけ
加藤:そこから『ぼくと釣り日記』の話が来たんですか?
和田:イマジニアさんが「ゲームらしいゲーム」をしばらく作ってなかったんですよ。『フィットボクシング』とかはうまくいってたんですけど、新規のチャレンジをしたいと。その中で、釣りゲームが家庭用から消えてることに目を付けたんです。
加藤:確かに釣りゲームないですよね。
和田:今の釣りって、ほとんどが何かのミニゲームか、スマホのカジュアルなやつでしょ。昔は『スーパーブラックバス』とか『ぬし釣り』とかあったんだけど、今はない。それはニーズがないからなのか、作るところがないからなのか。イマジニアさんは「ちゃんとした釣りゲームを作ればニーズがあるんじゃないか」と考えたみたいで。

加藤:目の付け所が面白いですよね。
和田:最初は世界中のリアルな釣具を使った、『グランツーリスモ』的な釣りゲームも考えたんですけど、時間もお金もかかりすぎる。それだとイマジニアさんが考える「新たなチャレンジで市場を広げたい」という方針にも合わない。じゃあ、狭くする代わりにできる限り深くして、世界観やキャラクターで打ち出そうと。そういう作り方なら、僕のテイストも活かせるんじゃないかなと。
加藤:企画の原形ができるまで、意外と早かったんですか?
和田:話が僕の耳に入ってから、じゃあこういう形でやらせてください、というまでは半年ぐらいでしたね。

「釣りの面白さ」を追求する
加藤:作業的に、どこから詰めていく感じだったんですか?
和田:まずは釣りの面白さって何だろう、というところを一番最初に突き詰めました。イマジニアさんの中にも、僕より全然釣りに詳しい釣りマスターみたいな人がいらっしゃって。そこで出た結論は、釣りの面白さの半分以上は「準備」や「考えること」だということです。
加藤:仮説を検証するための釣りみたいな。
和田:そう。どこで釣ろうか、何を釣りたいか、道具をどう揃えるか。実際に釣りに行って1匹も釣れなくても、それでも面白いじゃないですか。今のミニゲーム的な釣りは、釣る瞬間だけを切り取ってゲームっぽく見せてるだけ。じゃあそれと違う釣りゲームを作ろうと。
加藤:魚影はどうしたんですか?他の記事で「魚影がない」と聞いて、心配してたんですよ。
和田:魚影は見えたり見えなかったりです。実は最初、一通り狙ったようにできたところで遊んでみたら、ちょっとつまんなくて。手応えがない、うまくいったのかいかなかったのかが伝わらない。そこから釣りの部分だけで半年ぐらい、作っては直し、作っては直しを繰り返しました。
加藤:肝ですもんね。

和田:お話やキャラクター、世界観はなくても成立するんですよ。でも肝心の釣りが面白くないと、ゲームとしてはもうダメになる。そういう考え方だったので。
加藤:システムが固まったら、もういける感じですか?
和田:いや、釣り場とかキャラクターとかお話も全部進んだけど、そこは去年の暮れあたりまでやってました。ようやく自分たちの中で「これは面白くなったな」というところにいって、イマジニアさんにやってもらったら、わかりやすくしたつもりがわからない、釣れやすくしたつもりが釣れない。そこでまた1、2か月調整して。外部モニターにも見てもらって、最後は春ぐらいにようやく納得いくところまでいきました。
加藤:最後まで調整してたってことですね。
和田:一番大事なところですから。

『ぬし釣り』のDNAと世界観
加藤:この世界観、最初に家が出てきたとき「『ぬし釣り』じゃん」って思いましたよ。昔話風の和の家で、いきなりじいさんが出てきて。
和田:意識してそこはやってないんですけどね。初めて言われたかも。
加藤:本当ですか?
和田:『ぬし釣り』はもちろんリスペクトしてるし、DNAは刻まれてるけど、『ぬし釣り』を作ってもしょうがないから、自分なりのものを作ろうとしたんです。ただ「ぬしを釣って次に進む」という小ぬしの流れは意識してますね。オマージュは入ってます。
加藤:タイトルに『ぬし釣り』って入ってないのに、入ってる気がしちゃう感じでした。

和田:世界観は「漫画日本昔話」を意識しました。あと「プリンプリン物語」ですね。あれってNHKでやってるとは思えないぐらいふざけてるじゃないですか。人形劇というのをいいことに、ふざけ倒してる。バカバカしいんだけど愉快だし、ニヤニヤできるし、なんかホッともする。そういうテイストを色濃く意識して描いてます。
加藤:不真面目さがコンテンツからどんどん排除されてるじゃないですか。いい意味の適当さというか。
和田:そうそうそう。今の世の中にない、ちょっとふざけた不真面目な、適当な、でもちょっと面白いみたいな。思いを込めすぎると鬱陶しいじゃないですか。説教臭くなるのは嫌だったんです。

108種の魚、まつやまいぐさ氏のアート
加藤:変な魚がいっぱいいるらしいじゃないですか。
和田:今回、範囲を淡水に絞ったんですよ。でも日本の淡水魚って種類が少なくて、亜種ばかりだと見た目の変化が少ない。108種作るって決まってたんですけど、同じような亜種で108になったらとても面白くないなと。
加藤:「また同じのか」みたいな感じですよね。
和田:そう。5、60種までいって、同じような魚が増えてきたなってなった時に、外来種とか外国の魚を入れたり、日本には絶対住んでないようなものも入れたりして。それでも70、80ぐらいだったから、「じゃあふざけよう」と。
加藤:あの阪神タイガースみたいな魚もいるじゃないですか。
和田:半身トラ魚ですね。僕とまつやまさんの間では阪神タイガース。半身が虎なんで。モチーフは人魚なんですけど、普通は綺麗な女性じゃないですか。それが虎みたいな。
加藤:もっとひどいのが出てくるってことですか?
和田:ひどいのが出てきます。

加藤:クリエイターとして、ここが売り、というのは?
和田:キャラですね。まつやまいぐささんって牧場からずっと一緒にやってる人なんですけど、普通のキャラクターデザインの作業って設定画を描いてもらって、それをゲームのグラフィックデザイナーが素材として作っていくじゃないですか。でも本作は、3Dモデル以外は全て本人が描いた絵をそのまま表示してるんですよ。
加藤:え、マジですか?
和田:本当です。ポーズも何十種類も描いて、表情もレイヤーを全て描いてもらってます。
加藤:釣りゲームとしての立ち位置はどう感じてますか?
和田:すごい違うと思います。ちょっと偉そうに言うならば、今までこんな釣りゲームなかったよねっていう釣りゲームにはなってると思いますけどね。

今後の展望
加藤:和田さん、ゲームを作り続けるんですか?
和田:あんまり考えてないですね。「作らない?」って言われたら「作れるとしたらこんなんですけど」と見せて、じゃあやってと言われたら喜んでやる。そういうスタンスです。
加藤:『Birthdays』はライフワークですもんね。
和田:あれは自分の中では、思ってることの30%ぐらいしかできてないんですよ。百を作りたい。あれを作れたら、もう作らないと思います多分。
加藤:「のび太の地球実験」みたいなね。
和田:そう。飯田(和敏)さんへのオマージュで、上げ下げの仕組みはあれをリスペクトしてるんです。もっと本当は面白くできるはずで、各生物が各生物なりのAIを持って、それが行動した時に起きるドラマみたいなのを追求したい。オスとメスがくっついたり、猿がコミュニケーションを取り始めたり、人間が火を欲しいと話しかけてきたり。『2001年宇宙の旅』のモノリスみたいな役割をプレイヤーができると面白いなと思ってるんです。

加藤:次は何かあるんですか?
和田:次はちょっと自分らしくないことを。まだ成立してないんで進むかどうかはわからないですけど。それこそこのゲームのデバッグに入ってから2、3か月ぐらいで企画を作って構想を作って。それも「作ってみない?」から始まってるんですけどね。
加藤:ジャンルは?
和田:それは言えないです。バレちゃうから。

『ぼくと釣り日記』は、ニンテンドースイッチ2 / ニンテンドースイッチ向けに2026年10月8日発売予定。価格は6,578円(税込)です。













