気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Digital Sky開発、PC向けに8月12日に早期アクセスが開始された戦時都市国家建設シミュレーション『マンデート オーダー』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、春秋戦国時代を舞台にした戦時都市国家建設シミュレーション。プレイヤーは辺境の拠点からスタートし、生産、民生、統治、戦争が複雑に絡み合う戦時都市国家を築き上げていきます。東洋の古代都市国家の運営と戦争を同一のシステムとして統合しており、生産、民生、統治、戦争の間で絶えず取捨選択を迫られるのが特徴。日本語にも対応済みです。
『マンデート オーダー』は、2,250円で早期アクセス配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Nikoこんにちは、『マンデート オーダー』のプロデューサーを担当しており、本作の開発やデザインに直接携わっているNikoです。私は子どもの頃から日本のゲームをたくさんプレイしてきました。一番最初にハマった作品は、ファミコンの『三国志II 覇王の大陸』です。日本のゲームは私の初期のゲームの思い出において非常に重要な位置を占めているため、自分が開発に関わった作品を日本のプレイヤーの皆さんにご紹介できることは、私にとって非常に大きな意味を持っています。
これまで遊んできたゲームの中から、お気に入りを1つだけ選ぶのはとても難しいですね。『デビルメイクライ』のようなアクションゲームも好きですし、Paradox Interactiveが手掛ける歴史シミュレーションゲームも好んでプレイします。アクションゲームが持つ操作感や戦闘のテンポも魅力的ですし、シミュレーションゲームが持つ長期的な戦略構想や意思決定の奥深さも同じぐらい魅力的です。様々なジャンルをプレイすることは、私にとって、ゲームと言うものが提供してくれる多彩な面白さを発見し続けるための大切なプロセスとなっているのです。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Niko私にとって『マンデート オーダー』の最も面白いと思う要素の一つは、「都市開発」「人々の日常生活」、そして「戦争への準備」が非常に密接に結びついている点です。農地や工房、倉庫、道路をどのように配置するかによって、生産や輸送だけでなく、その都市国家が戦乱に耐えうるかどうかも変わってきます。徴兵の際には、労働者が兵士となることで都市機能が継続できるかどうかも考慮しなければなりません。そう言う意味では、最初の畑を耕し、最初の城壁を築いた瞬間から、すでに戦いの決断は始まっているのです。
このアイデアは、古代中国の都市国家に対する私たちの興味から生まれました。「争乱の時代において、都市はいかに人々を養い、自らを守り抜いたのか?」と言う問いが背景にあります。また、春秋戦国時代の「諸子百家」の思想は、本作に登場する食客(訳注:中国の戦国時代に広まった風習で、君主が才能のある人物を客としてもてなし養う代わりに、主人を助けるというもの)や政策、多様な統治スタイルと言ったシステムに影響を与えています。私たちはこうした歴史的・文化的な要素を実際のゲーム内での決断に反映させ、各プレイヤーの都市国家が独自の個性を持って発展していくようにしたいと考えました。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Nikoあります。私たちは歴史シミュレーションの名作や古代の合戦を描いた戦略ゲームから影響を受けているほか、『マナー・ロード』の初期の建設要素からも非常に大きなインスピレーションを得ました。何もなかった土地が、人々が暮らし、働き、行き交う集落へと徐々に姿を変えていく様子を見るのは、それ自体が非常に魅力的で心を惹きつけられます。そして、プレイヤーがその集落に愛着を持ったからこそ生まれる「防衛と戦争に伴う決断やプレッシャー」を本作では掘り下げたいと考えました。
また、古代中国の歴史、城郭建築、農耕生活、そして「諸子百家」の思想も『マンデート オーダー』における重要なインスピレーションの源です。例えば、様々な学派が掲げた統治や発展に関する理念は、作中の食客や政策システムの構築に役立てられています。開発の全行程を通して、私たちはこれらの要素をプレイヤーが直感的に理解し、実際に活用し、多様な試行錯誤を楽しめるようなゲームシステムへと昇華させる方法を模索し続けてきました。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Niko開発の中で特に強く印象に残っている出来事の一つに、マップ上の資源配置の最適化作業があります。『マンデート オーダー』の4km×4kmのマップには100以上の資源ノードが存在し、それぞれに4~5種類の生成パターンが用意されています。これらを地形に合わせて正しく配置し、近すぎず遠すぎず適切な間隔に調整しなければなりません。以前はデザイナーがゲームエンジン内で手作業で調整を行っていましたが、処理の重さやモデルの不具合も重なり、作業は困難を極めました。マップ全体の配置バランスが想定通りかを客観的に確認するのも難しい状態だったのです。
そこで、デザイナーの一人がAIを活用してWebインターフェース上で動作するシミュレーションツールを構築しました。このツールは1回の実行で10,000回もの資源配置を試行できます。デザイナーはWeb上で結果を検証・パラメータ調整を行い、満足のいく配置パターンが得られた段階でデータをゲームエンジンにインポートできるようになりました。これにより、膨大な時間と労力を要していた確認作業が大幅に効率化され、より多くの配置パターンを試す余裕が生まれたのです。
この出来事は、「テクノロジーがゲーム開発に何をもたらすべきか」と言う私の思いを象徴しています。それは、「繰り返しの作業を減らし、クリエイターがアイデア出しや試行錯誤に充てる時間を増やすこと」です。これまで10日かかっていた作業が3日で終わるようになるなら、浮いた時間はより良いゲームを作るための検証や新しい表現の探求に投資したいと考えています。
今年に入ってからのAIの進化スピードには目を見張るものがあり、ゲーム開発にも多大な恩恵をもたらしています。AIの最大価値は、退屈で手間のかかる単純作業を引き受け、開発者がより深く考えたりアイデアの検証をしたりする時間を使えるようにしてくれる点にあると実感しています。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Niko早期アクセスを開始して以来、古代中国の世界観や都市建設と戦争の組み合わせに対してポジティブな意見をいただく一方で、操作性、物流システム、パフォーマンス、そしてコンテンツ量に関する厳しいご意見もいただいています。プレイヤーの皆さんは開発の進展を見守ってくださりつつも、どこをどう改善すべきかを非常に明確に指摘してくださいます。
特に私の印象に残っている日本語のレビューが1つあります。そのプレイヤーは本作のポテンシャルを感じてくださりつつも、「サプライチェーンがわかりにくく、各建物の機能や操作方法が不明瞭である」と指摘されていました。このフィードバックは、「奥深いシステムであっても、それがプレイヤーにとって理解しやすいとは限らない」と言う大切な事実を再認識させてくれました。なぜ物資が届かないのか、なぜ建物が稼働を停止してしまったのかが理解できなければ、プレイヤーが適切な状況判断や調整を行うことは困難です。直面している問題をプレイヤー自身が見て理解し、その解決策を見つけられるようサポートすることこそが、今後の重要な開発課題であると考えています。
その一方で、全体として多くのプレイヤーの皆さんにポジティブに受け止めていただけていることを大変嬉しく思っております。このインタビューの回答時点で、Steamでのユーザー評価は81%の高評価を維持しており、これは私たち開発チームにとってとても大きな励みとなっています。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Niko私たちは、パフォーマンス、安定性、ユニットの経路、インターフェースおよびシステムメッセージのわかりやすさなど、基本的なプレイ体験に関わる問題の改善に引き続き取り組んでまいります。
9月24日のアップデートにて、建物のアップグレード機能の第1弾を実装しました。まずは12種類の建物が対象となり、プレイヤーに都市国家の新たな発展手段を提供します。また、街並みを自分好みにカスタマイズしたい方や、集落を間近で観察してスクリーンショットを撮影したい方に向け、建物の装飾アイテムや「撮影モード」の追加も行いました。
さらに、このアップデートの大きな目玉として「戦利品システム」の導入があります。プレイヤーは戦場で物資を回収して自陣へ持ち帰ることが可能になり、戦闘の成果を都市の経済発展へと直接還元できるようになったのです。
長期的には、新マップの追加、生産および発展の選択肢の拡充、そしてゲーム中盤から終盤にかけてのより手応えのある目標の設定を計画しています。プレイヤーの皆さんからのフィードバックに応じて優先順位を柔軟に調整し、最終的なコンテンツ内容や実装時期につきましては公式アナウンスを通じて順次お知らせいたします。アップデートごとに目に見える進化をお届けすると同時に、現在取り組んでいる課題についても透明性をもって明確にお伝えしていくつもりです。

――本作の日本語対応状況について教えてください。実装の内容や大変だった点、日本からの反応はどうでしたか?
Niko『マンデート オーダー』は日本語のインターフェースおよび字幕に対応していますが、現時点では日本語音声には未対応です。もちろん、インディーチームである私たちは、ローカライズにおける自分たちの限界を十分に自覚しています。初期の多言語化プロセスでは翻訳ツールを多用したため、表現の不自然さや文脈の誤り、用語の不統一などが残ってしまっていることを認識しております。そのため、本作を深く理解されているプレイヤーの皆さんにご協力いただくべく、日本語を含む有志のローカライズ校正者を公募することにしました。
ローカライズにおける最大の課題は、歴史的な概念と実際のゲームルールの双方をわかりやすくすることです。中国語と日本語で同じ漢字が使われていたとしても、意味合いや自然なニュアンスまで同じとは限りません。食客、諸子百家、爵位、そして物流と言った要素について、その背景となる歴史的文脈とゲーム内で果たす役割の両方を正しく理解していただけるようにしたいと考えています。公開されている日本語のレビューでは、本作のポテンシャルを評価してくださる声の一方で、UIや操作性、安定性の向上を求める声もいただいています。
私たちは、日本のプレイヤーの皆さんからより具体的なご意見を伺いたいと切に願っています。そしてローカライズの校正、用語の改善、より自然でわかりやすい説明へのブラッシュアップにご協力いただけるコミュニティメンバー(日本語スキルのある方)を大歓迎いたします。ご興味のある方は、ぜひメールでご連絡いただくか、公式Discordでお知らせください。日本の皆さんが『マンデート オーダー』をよりストレスなく、快適に楽しめる作品へと進化させるため、皆さんと力を合わせて取り組んでいければ幸いです。
――本作では、なぜ、そして具体的にどのように生成AIの生成物を使用しましたか?また、生成AIについてはどのような感情を抱いていますか?
Niko先ほども少しお話ししたように、私たちは早い段階から生成AIを導入してきました。私自身も初期の頃からChatGPTの有料プランを利用しており、現在も使い続けています。開発チーム内においても、AIの活用法を学び、実際の業務へ効果的に取り入れることを推奨してきました。Steamのストアページで開示している通り、『マンデート オーダー』の多言語ローカライズのテキスト、コード、およびアートアセットの一部にはAI生成コンテンツが含まれています。ゲーム内で使用されるコンテンツにとどまらず、AIは日常的な問題解決やチームの連携方法そのものを変えています。
例えば、デザイナーがバグに遭遇した場合、まずはAIに該当のコードを読み込ませて原因の調査を依頼します。設定の問題などデザイナー自身で解決できる内容であればその場で修正を行い、プログラマーの確認が必要な場合でも、AIの分析結果を添えて共有することでスムーズな議論が可能になります。また、プログラマー側もAIを活用して仕様書をチェックし、論理的な欠陥や抜け漏れがないかを確認しています。先ほどご紹介した資源配置ツールも、デザイナーがAIを駆使して自らのワークフローを大幅に改善した一例です。もちろん、AIによる分析はあくまで出発点であり、問題の原因や修正結果は開発現場で入念に検証を行う必要があります。
私の体感では、AIの導入によって『マンデート オーダー』全体の開発効率は少なくとも50%向上しました。ただし、効果は作業内容によって大きく異なります。一部のタスクが数倍の効率化を達成する一方で、10~20%程度の向上にとどまる作業もあり、すべての工程が一律に向上したという意味ではありません。
私にとってAIの最大の価値は、「開発チームが同じ時間内でより多くの試行錯誤を行えること」にあります。10日かかっていた作業が3日に縮小されたからといって、人員を70%削るのではなく、残りの時間を使ってより多くの試作を行い、新たな方向性を模索することを選びます。ゲーム開発の本質は実験にあります。AIによって創出された時間でデザインの意思決定をし、プレイヤー体験をテストし、コンテンツのクオリティを磨き上げていきたいと考えているのです。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Nikoもちろんです。私たちはYouTubeやTwitchなどのプラットフォームにおける『マンデート オーダー』の配信や動画投稿を大歓迎し、心より推奨しています。また、広告収入、メンバーシップ、投げ銭と言ったプラットフォームの機能を通じた収益化も正式に許可しています。実況プレイ、攻略ガイド、レビュー、あるいは独自のプレイスタイルを追求した動画など、クリエイターの皆さんがそれぞれのスタイルで本作の魅力を発信していただけることを楽しみにしています。私たちもできる限りのサポートを提供させていただきますので、コンテンツ制作時に支援が必要な場合は、ぜひメールでご連絡ください。
特に日本のプレイヤーの皆さんからは、「どの部分が楽しかったか」「どのルールが理解しにくかったか」「どのような点を改善すべきか」と言った率直なフィードバックをよりたくさん伺いたいと思っています。また、日本語ローカライズの校正や表現の改善にご協力いただけるコミュニティへの参加も大歓迎です。上記のメールアドレスまで、お気軽にご連絡いただけますと幸いです。
さらに、日頃から本作を楽しみ、支えてくださっているプレイヤーの皆さんへの感謝の気持ちを込め、将来適切なタイミングで『マンデート オーダー』の「無料楽曲パック」を配布することを計画しています。準備が整い次第、詳細を発表させていただきます。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Niko『マンデート オーダー』、そして私たちが題材として選んだ歴史の時代に興味を持ってくださった日本の皆さん、本当にありがとうございます。更地から街を作り上げること、生産や物流が人々の暮らしをどのように支えているかを解き明かすこと、あるいは防衛陣形を整えて軍隊を指揮することがお好きな方なら、きっと本作の中に楽しさを見出していただけるはずです。たとえ「春秋戦国時代」になじみがなくても、一つの田畑、一つの工房、そして大きくなっていく城壁が、この世界へと踏み出すあなたの第一歩となれば幸いです。
自らの手で築いた集落が成長していく様子を見守り、そしてそれを守るために全力を尽くす…そんな体験を、皆さんと共有できることを心から楽しみにしています。『マンデート オーダー』はまだ早期アクセス中であり、コンテンツの拡充、操作性の改善、そしてローカライズの質向上など、まだまだ取り組むべき課題が多く残されています。
楽しかった点やわかりにくかった部分、そしてご自身の都市国家をどのように発展させていきたいかなど、ぜひ皆さんの声をお聞かせください。皆さんがどのような街を作り上げ、どのような選択を重ねていくのか、お目にかかれることを楽しみにしています。
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に1,000を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。









