ゲーム開発におけるステージのデザインプロセスは困難な作業です。ビジュアルをどのような技術やプロセスを用いて制作するかだけでなく、それをいかにゲームデザインと融合させていくか2軸の視点が求められます。キーワードはここでも「イテレーション」、試行錯誤をいかに迅速に行うかが鍵となります。McEntee氏は『レイマン レジェンド』のデザインは失敗の連続だったと言います。「どんなアイデアも神聖ではありません。とにかく繰り返し良いものになるまでチャレンジすることが重要なんです」
ポイントとなるのはステージ設計をゲームデザイン面から考えるレベルデザイナーと、ビジュアル面から考えるビジュアルデザイナーの作業を分離することです。もちろん協業が必要です。しかし、片方の作業が片方のボトルネックにならないように出来ればアイドル時間が大幅に減り、その分、イテレーションを繰り返すことができます。そのために作られたのが「UBI Art Framework」です。
「UBI Art Framework」は名称から想像できるように、デザイナーのためのゲームエンジンです。2Dに特化し、デザイナーが、まるでIllustratorやPhotoshopを使ってペイントをするかのようにレベルデザインを行うことができます。その操作はドラッグ&ドロップが中心で、配置されている各種オブジェクトを移動、拡大、縮小、増減することによってステージを作り上げていきます。リアルタイムエディッティングにも対応し、ゲームを動作させながらオブジェクトの操作ができます。遊びながら配置を調整するといったことですね。
2Dに特化をしていますが、もちろん60fps、フルHDのゲームを作る事ができます。現在のところ「UBI Art Framework」は『レイマン レジェンド』のほか、同じモンテペリエのチームが手掛ける『Valiant Hearts: The Great War』や、カナダのモントリオールスタジオが開発する『Child of Light』で採用されています。
「UBI Art Framework」ではLuaスクリプトに対応し、デザイナーであっても平易な言語でスクリプトを書けるようになっています。また、シーケンスエディターを用いることで、特定の箇所での挙動を記述したり、カットシーン制作を簡素化することができます。キャラクターの描画では、GenAnimと呼ばれる手描きのキーフレームアニメーションとボーンアニメーションの融合のような動作が実現されているとのこと。
『レイマン レジェンド』の開発においては、「UBI Art Framework」を活用し、とにかく挑戦と失敗を数多く繰り返すという手法が取られました。その結果はゲームの完成度の高さに現れていると言えるでしょう。見栄えが非常に美麗でかつゲームとしても楽しめるデザインが実現したのはこのエンジンがあったからこそです。
一方でMcEntee氏は反省点として「チームメンバーが簡単に設計を変更できてしまうので、デザインドキュメントのような考え方が成立しない」と話しました。動かしてみて適切なデザインに落とし込んでいくという手法で、資料的に残せるものが無いそうです。また、個人の作業として仕事が成立してしまうため、情報共有にも難があったと振り返りました。
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