気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、TVTとRatata Arts開発、PC向けに9月19日に早期アクセスが開始されたリズムローグライクアクション『ラタタン』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、リズムに合わせてコマンド入力することで引き連れている部隊に命令を出す、リズムローグライクアクション。100体以上のキャラクターが大乱戦を繰り広げる激しいバトルが展開されます。最大4人の協力マルチプレイに対応しているのも特徴。日本の作品なので、もちろん日本語にも対応済みです。
『ラタタン』は、2,800円で早期アクセス配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
坂尻氏私は坂尻一人と申します。現在はインディーゲーム『ラタタン』のプロデューサーとして、ビジネス面や予算管理、チーム全体の統括を担当しています。ゲーム業界での最初の仕事は『ファイナルファンタジーXI』のゲームマスターで、この作品は仕事としてもプライベートとしても非常に大切なタイトルです。その後、SIE(当時はSCE)でプランナーとして『THE EYE OF JUDGMENT』や『週刊トロ・ステーション』、『フリーダムウォーズ』などに携わり、モバイルゲーム開発を経てインディーの道に進みました。
リズムとアクションを融合させた『パタポン』は、私にとって強い刺激を与えてくれたタイトルのひとつです。当時直接関わっていたわけではありませんが、その独創的な表現に強い影響を受けました。『ラタタン』はそうした体験を土台にしながらも、全く新しいIPとしてゼロから構築しています。好きなゲームを一つ挙げるとすれば、やはり自分の原点である『ファイナルファンタジーXI』です。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
坂尻氏『ラタタン』は、リズムに合わせたコマンド入力で仲間を率いながら戦いや探索を進めていく、独自のシステムを持ったアクションゲームです。リズムと戦略性を組み合わせた従来のスタイルから一歩進め、キャラクターを自ら操作できるアクション性を大きく打ち出している点が特徴です。
開発の起点は「世界中の人に楽しんでもらえるものを作ろう」という思いでした。音楽やオノマトペは言語を越えて伝わると信じ、誰もがワイワイ盛り上がれる作品を目指しました。インディー開発に挑戦するにあたり、表現やゲームデザインの面でも新しいチャレンジをしたいと考えたのです。
制作を担う小谷は『パタポン』に携わった経験を持ちますが、本作はその直接的な続編ではありません。リズムコマンドとアクションを融合させ、プレイヤーがキャラクターを動かす楽しさをどう生み出すかに時間をかけました。その試行錯誤の末にたどり着いたのが、全く新しいIPとしての『ラタタン』です。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
坂尻氏ゲームデザイン面では、ローグライクを取り入れるにあたり『Hades』『Dead Cells』『Risk of Rain』などをプレイしました。そこから遊びのテンポ感やリプレイ性の作り方を学び、自分たちなりの形に落とし込んでいます。
ビジュアル面では、デザインコンセプトを担うNelnalさんの魅力を最大限に活かす方法を模索しました。その過程で『Hollow Knight』を実際に遊び、シルエットや世界観で強い印象を残す表現を参考にしています。
さらに、ちょうど同じ時期にベータテストや早期アクセスを行っていた『Elin』もプレイしました。ユーザーからのフィードバックをどう受け止め、どう改善に活かしていくかという姿勢に強い感銘を受け、私たちがインディーとしてどうコミュニティと向き合うべきかを考える大きなきっかけになりました。
結果として、『ラタタン』はゲームデザイン・ビジュアル・コミュニティマネジメントの三つの面で、多くの先行作品から学びながら形作られたタイトルだと言えます。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
坂尻氏最も印象深かったのは、やはりKickstarterキャンペーンです。開始直後から世界中のプレイヤーから想像以上のご支援をいただき、短期間で目標を大きく上回る結果となりました。「このジャンルを待っている人がこんなにもいるのか」と強く実感し、今も開発を続ける力になっています。
ここまで来られたのは、間違いなくバッカーの皆さまの支援あってこそです。その期待に応えることは常に意識しており、恩に報いることが私たちの大きな目標になっています。
一方で、開発は当初の想定どおりに進むことばかりではありませんでした。早期アクセスでのリリースもやむを得ない判断でしたが、その過程で不安や不満を抱かせてしまったことは真摯に受け止めています。今後の展開を通じて改善し、より良い形で皆さまにお返しできるよう努めていきます。
――早期アクセス開始後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
坂尻氏リリース後には非常に多くのフィードバックをいただきましたが、共通するものも多くありました。たとえばKickstarterの発表ムービーで披露していた「ラタタンの固有技」を実装してほしいという声は特に多く、ユーザーの皆さんが強く期待してくださっていることを実感しました。
また、キャラクター選択時にボイスを聴きたいという要望も数多く寄せられ、こちらはすでにアップデートで対応しています。キャラクターをより身近に感じたいという声が多いことは、開発チームにとっても大きな励みになっています。
こうしたご意見は単なる要望にとどまらず、プレイヤーがどの部分に魅力を感じ、どの要素を大切にしているのかを知る手がかりでもあります。今後の開発方針を考える上で欠かせない指針となっています。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
坂尻氏今後のアップデートは、大枠として既に発表しているロードマップに沿って進めていきます。専用のフィードバックフォームにはすでに5,000件以上の意見が寄せられており、それらを分析し、KPIと照らし合わせながら優先度を決めています。
特に多く寄せられているのは「ローグライト構造」の改善要望です。12月の大型アップデートでは人気の高い「ダークラタタン」に関連するコンテンツを軸に、ローグの構造自体に大きく手を加える予定です。正式リリース(Ver1.0)までにはさらにもう一度大型アップデートを実施し、このロードマップを経て『ラタタン』を完成形へと近づけていきます。
一方で、10月のアップデートは早期アクセス開始から1か月というタイミングのため比較的小規模ですが、ユーザーからの要望が多かった「ラタタン固有技」や「コブンのアクセサリー」などを盛り込みます。また、ランダムマッチの改修準備としてセッションを可視化する仕組みや、ラタカルタのリロールといった改善も進めています。
早期アクセスはスタートラインに過ぎません。これからもユーザーの声を反映し、ロードマップに沿って『ラタタン』を進化させていきます。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
坂尻氏はい、配信や収益化は問題なく行っていただけます。むしろ『ラタタン』を通じてより多くの人に楽しさを広めていただきたいと考えており、配信活動は積極的にサポートしています。公式の配信ガイドラインには注意点だけでなく、サムネイルやロゴなどの配信用素材も用意していますので、安心してご利用いただけます。
また、配信者の方々へのサポートも継続して行っており、今後は配信者と連携した企画やコラボレーションなども展開していきたいと考えています。『ラタタン』はプレイヤーと一緒に育てていくタイトルですので、配信を通じてその輪が広がっていくことをとても楽しみにしています。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
坂尻氏『ラタタン』は「パタポンの続編」ではなく、そこから影響を受けつつもゼロから作り上げた全く新しいIPです。独自のリズムとアクションの体験を、ぜひ実際に手に取って楽しんでいただきたいと思います。
プレイして「面白い!」と感じていただけたら、ぜひレビューや評価を残していただけると大変励みになります。そしてご意見・ご要望は専用のフィードバックフォームからお寄せください。皆さんの声を反映しながら、これからも『ラタタン』を一緒に育てていければ嬉しいです。
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に700を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。








