マイクロソフトはE3に先立ち6月10日(現地時間)にプレスカンファレンスを行い、新型ゲーム機「Xbox ONE」の本体価格を発表。あわせて Xbox ONEの新作タイトルラインアップを発表しました。既報の通り、Xbox ONEは本年11月に米国で499ドル、欧州で499ユーロ、英国で429ポンドで発売されます。国内での発売と価格は未定です。
■ Xbox ONEの発売時期と価格が明らかに! 鍵を握るのは本体同梱のあの機能!?
カンファレンス終了後にセブンイレブンで昼食のピザを買っていたら、店内にいた30歳前後の警官二人組が話しかけてきました。首から提げていたストラップのロゴが目にとまったのでしょう。「Xbox ONE、11月発売、499ドル」と答えると、「Ouch!(痛っ)」と一言。Xbox 360がアメリカで市民権を得ていることと、普通の人にとって499ドルは安くないことを、改めて感じさせる一幕でした。
実際、最も重要だった情報は発売日と価格だったはずです。しかし、プレスカンファレンスの構成はたくみでした。『Halo Xbox One』のトレイラーが発表され、会場の興奮がさめやらぬ中で、価格を口頭でのみ発表。会場が「あれっ?」と思うまもなく、トリを務めるアクションシューター『タイタンフォール』が公開され、会場は再び興奮のるつぼに。価格のイメージは人々の脳裏から消え去ったかのようでした。非常に周到に準備された内容だったと思われます。
しかし、このマイクロソフトの作戦は、約8時間後に開催されたSCEのプレスカンファレンスで覆されてしまいました。SCEはPS4で「中古販売を認める」「オンラインに常時接続しなくても遊べる」などと、参加者の心理的障礙をぐっと下げると共に、バンジー制作の新作SFシューター『デスティニー』の7人同時デモプレイを披露。会場を十分に温めた上で、Xbox ONEより100ドル安い本体価格を発表したのです。それもスライド付きで。
一般的に考えて399ドルは「そこまで安い」という感じではありませんが、参加者の多くはXbox ONEと比べて割安感を抱いたでしょう。PS4の本体価格は当初から決定されていたのか。またマイクロソフトとSCEのプレスカンファレンスの8時間のうち、どのような議論があったのか。現時点では不明ですが、SCEの作戦勝ちでしょうか。
Xbox ONEとPS4の価格差で、鍵を握る要素がキネクト2です。Xbox ONEではキネクト2が同梱されますが、PS4ではカメラセンサーのPlayStation Cameraは別売り。そのぶんだけXbox ONEの原価が上がっているとみるのが自然でしょう。今後マイクロソフトはキネクト2の扱いに苦慮する可能性も否定できません。キネクト2が別売りの廉価版なども選択肢として考えられるでしょう。
なお、キネクト2が標準搭載か否かは、対応ゲームを作りたい開発者にとって決定的な意味を持ちます。カジュアルユーザーへの訴求を考えれば、ぜひともキネクト2は標準搭載したいところでしょう。しかし、発売日にXbox ONEに飛びつくのはゲームが好きなハードコアユーザーです。かといってキネクト2の本体装着率100%が崩れれば、今後の対応ゲーム展開にも大きな障害となります。
筆者の勝手な考えでは、キネクト2はぜひ今後も本体同梱にしてほしいところ。キネクト2はWii UのWii U Game Padなどと同じく、Xbox ONE最大の差別化要因だからです。さらにWindows 8やSurface、Windows Phoneなど、最近いまいちパッとしない(ように感じる)マイクロソフト陣営で、数少ない場外ホームラン級の製品でもあります。
一方で本体が一円でも安くなる方が良いのも事実。この矛盾を解消するには、キネクト2だからプレーできる画期的なゲームがどれだけ発売されるかにかかっています。もっとも会場では、ボイスコマンドなど活用事例が限定的で、それほどプッシュされていなかった点が残念でした(現在、鋭意開発中なのでしょう。来年に期待です)。こんなふうにマイクロソフトとSCEのプレスカンファレンスが共に終了した結果、思いがけずキネクト2の存在感が気になってしまいました。
■ 次世代ゲームのキーワードが散りばめられた専用タイトル群
というわけで、思いがけず枕が長くなりましたが、会場で発表されたXbox ONEの初期タイトル群をあらためて整理してみると、いくつかのキーワードや、マイクロソフトが本カンファレンスにかけた思いがが浮かび上がってきます。
・METAL GEAR SOLID V PHANTOM PAIN(KONAMI)
・Ryse Son of Rome(マイクロソフト)
・Killer Instinct(マイクロソフト)
・Sunset Overdrive(マイクロソフト)
・Forza Motorsport 5(マイクロソフト)
・Minecraft Xbox ONE Edition
・Quantum Break(マイクロソフト)
・D4(マイクロソフト)
・Project Spark(マイクロソフト)
・Crimson Dragon(マイクロソフト)
・Dead Rising 3(カプコン)
・The Witcher 3 Wild Hunt(CD Projekt RED)
・Battlefield 4(エレクトロニック・アーツ)
・Below(マイクロソフト)
・Halo Xbox ONE(マイクロソフト)
・Titanfall(Respawn Entertainment)
・Ryse Son of Rome(マイクロソフト)
・Killer Instinct(マイクロソフト)
・Sunset Overdrive(マイクロソフト)
・Forza Motorsport 5(マイクロソフト)
・Minecraft Xbox ONE Edition
・Quantum Break(マイクロソフト)
・D4(マイクロソフト)
・Project Spark(マイクロソフト)
・Crimson Dragon(マイクロソフト)
・Dead Rising 3(カプコン)
・The Witcher 3 Wild Hunt(CD Projekt RED)
・Battlefield 4(エレクトロニック・アーツ)
・Below(マイクロソフト)
・Halo Xbox ONE(マイクロソフト)
・Titanfall(Respawn Entertainment)
はじめに、カンファレンスの大半がXbox ONEのタイトル紹介に終始したこと。昨年度は大きく「新作ソフトの紹介」「Xboxスマートグラスなど新しいリビングエンタテインメント環境の提案」「ナイキと提携した個人向けフィットネスアプリ」という3点が紹介されましたが、今年は新型ゲーム機の立ち上げに伴い、ゲームの紹介に注力。しかも1stパーティや2ndパーティの独占タイトルが中心となっていました。
サードーパーティの多くはしばらく、Xbox 360、PS3、次世代機のマルチプラットフォーム戦略が主流となります。またマイクロソフトはXbox ONEにXbox 360との後方互換性がないことを明言しています。まずハードコアゲーマーにXbox 360からの買い換えを促したい同社にとって、最大のポイントはXbox ONEでしかプレーできない独占タイトルをいかに増やすか。そのためには順当な戦略でしょう。
特に本年5月に開催されたXbox ONEのお披露目イベントでは、テレビや映画などゲーム以外のエンタテインメントの要素に注力されたため、「Xbox ONEはゲーム機を超越した汎用セットトップボックスだ」というイメージを与えかねませんでした(もちろん、そうした要素もあると思いますが)。しかし、そうした懸念点を払拭させる、非常に力強いラインアップでした。中でもトリをつとめた『タイタンフォール』は、巨大ロボットも登場する新作SFシューターとして、大きな注目を集めそうです。
またタイトルの傾向的には「オープンワールド」「大量の敵キャラクター」「キャラクターAI」「クラウド」「スマートグラス対応ー」といったキーワードが連想されます。
冒頭で紹介された『METAL GEAR SOLID V PHANTOM PAIN』では、シリーズ初のオープンワールドへと進化。ローマ帝国をモチーフとしたアクションゲーム『Ryse Son of Rome』や、サプライズで登場した『Dead Rising 3』も、オープンワールドと大量の敵キャラクターという方向性を明確に打ち出していました。
『Forza Motorsport 5』ではクラウドサーバにプレイヤーのドライビングのくせが記録され、自動的にレースが継続されるという要素を紹介。キャラクターAIとクラウドサーバの活用事例となっていました。次世代機の膨大なメモリと高速の処理性能を示すのに、これらはわかりやすいアプローチです。『Ryse Son of Rome』『Dead Rising 3』などのスマートグラス対応も、遊びの幅を広げそうです。アメリカで有名な配信サイトTwitchとの連携も、ソーシャルネットワークとの連動で欠かせないポイントでしょう。
このほかAAAタイトルだけでなく、インディゲームにも焦点が当てられました。史上最も成功したインディゲームといえる『マインクラフト』もXbox One Eitionが登場。同じく見下ろし型アクションの『below』も作家性を醸し出す幻想的な雰囲気がインディらしさを打ち出していました。AAAタイトルとカジュアルタイトルに業界が二極化している中、インディゲームに対する施策はプラットフォーム浮沈の鍵をも握りそうです。
また地味なポイントながら、戦車ゲーム『World of Tanks』のXbox 360版が、Xbox Liveで今夏配信が決定した点にも注目したいところです。ゴールドメンバー向けで基本無料で配信されます。本作はロシアのディベロッパーが開発した、PCゲームとして高い人気を誇るカジュアルゲーム。Xbox Liveでは「落としきり」モデルが中心で、F2Pゲームは数が少ないのですが、Xbox 360からXbox ONEへの移行に伴い、今後はタイトル拡充が期待できるかもしれません。
このほかサプライズとなった『キラーインスティンクト』では会場が大いに沸き、誰もが「その発想はなかった!」といった感じ。これまで格闘ゲームは日本の数少ないお家芸でしたが、2011年発売の『Mortal Kombat 9』といい、本作といい、海外ディベロッパーでも腰の入ったタイトルが作れるようになってきました。今後、海外の人気キャラクターの格闘ゲームを海外市場向けに海外のディベロッパーが作る・・・といった流れが出てくると(海外ゲーマー的には)おもしろいでしょう。マイクロソフトゲームスタジオによるマスターチーフが登場する格闘ゲームなども視野に入ってくるわけですから。
このようにカンファレンスの内容は非常に強力でしたが、ポイントはマイクロソフトの思惑通り、Xbox 360からXbox ONEへの移行が進むかどうか。最大の敵は世の中の「Xbox 360で十分」という風潮ですが、そのためにはXbox 360との下位互換がなく、ライバル機のPS3より100ドル高いというハンデを、いかに跳ね返すかが課題となります。そのために隠れた鍵となりそうなのがキネクト2。発売日までの両者の駆け引きに注目しましょう。