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【今から遊ぶ不朽のRPG】第5回 『ミスティックアーク』(1995)

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大作タイトルの陰に埋もれてしまった隠れた良質RPGを毎回紹介していく「今から遊ぶ不朽のRPG」。過去4回で取り上げてきたタイトルは全てノンリニアな作品でしたが、今回はJRPGの王道スタイルを則った、エニックス/プロデュースの『ミスティックアーク』をご紹介します。

* * * * *


今手に入れるなら

本作の登場は今から約18年前の1995年7月にまで遡ります。その頃、世間では当時の次世代機への移行が進んでおり、『ミスティックアーク』は所謂ハード末期のタイトルとしてスーパーファミコン向けにリリースを迎えました。

本作の発売と同日にセガサターンでは『バーチャファイターリミックス』、プレイステーションでは『実況パワフルプロ野球95 開幕版』、その数週間後には飯野賢治氏の『Dの食卓』が登場するなど、目まぐるしくリリースされる大作の陰にひっそりと追いやられてしまったのがこの『ミスティックアーク』です。

本連載では、ダウンロード販売に対応しているタイトルを取り上げて来ましたが、残念ながら現状では本作の再販は一切行われていません。

幸いな事に本作は、今でもインターネットや小売店でも見かける機会が多く、箱・取説がきっちりと付属した綺麗な状態でも比較的手に入れやすいタイトル。参考までに、レトロゲームを取り扱うショップでは大体、数百円〜高くても千円前後で販売されているようなので、本体一式と同時に購入しても5千円以内に収まるかと思います。

孤独感と不条理を合わせ持った独特の世界観

“フィギュア”にされ、孤島の神殿へと連れされてしまった主人公。
神殿から繋がるそれぞれの“世界”に趣き、自分が存在していた世界に戻る事がゲームの目的。

様々な人種が住む異なる世界で、人体がフィギュア(人形)にされ、異世界へ連れさられるという怪現象が勃発。プレイヤーは、フィギュアから人間の姿に戻る事が出来た唯一の生還者となり、様々な世界に赴きながら、自分が元いた世界へ帰還する事が目的となります。

ゲーム全体はRPGというよりもアドベンチャーゲームに近いものがあり、特に各世界へのターミナルとなる孤島の神殿は、PCアドベンチャーの金字塔『MYST』を彷彿とさせ、ゲーム全体に漂う孤独感や独特の雰囲気は国内RPGの中でも唯一無二の存在感を放っています。

RPGパートに加えて、パズルにも力が入れられており
それらのギミックもまた独特の存在感を醸し出しています。

プレイヤーの拠点となる神殿には、別の世界の入口となる様々なオブジェクトが存在し、それぞれ用意された簡単なパズルを解くことによって別の世界へアクセスする事が出来ます。オブジェクトは、船の模型や古時計、大きなかぼちゃであったりと様々。

オーソドックスなRPGをベースにしながらも、パズルを全面的に押し出した作風は、後にプレイステーションで発売された『ミスティックアーク まぼろし劇場』の方向性を決定付ける要素にもなっています。

全体的なゲームの流れとしては、前述した『MYST』や旧スクウェアソフトの『魔階塔士SaGa』をイメージすれば分かりやすいかもしれません。

『SaGa』では、巨大な塔のフロアそれぞれに異なる世界が存在し、1つのエリアをクリアする毎に新たな世界観が広がっていくという設定。『MYST』では接続書に干渉する事で異なる時代や世界へ移動するという世界観が取られていましたが、『ミスティックアーク』も同様の手法で、“ネコの海賊団が海のない砂漠で対立している世界”、“巨大な野菜の中で人々が生活する世界”、“子供だけが暮らす大きな家の世界”といった不可思議なテーマを持った舞台に赴き事件を解決していきます。

物語中盤に訪れる“音と色が失われた世界”。
本作における演出効果の工夫を一番体感出来る世界の1つです。

一つ一つの世界は短く、世界観もそれぞれ全く異なる為、一般的なRPGにおける壮大な冒険をしているという感じは殆ど無く、おとぎ話や絵本の中に次々と迷い込んでいくような感覚を持ったゲーム。様々な世界を冒険する過程で仲間と出会う事はあっても、主人公を含めパーティ内での会話も殆ど無く、一貫して孤独感や雰囲気を強調するゲーム全体の空気作りに徹している印象です。

ゲームは終始一本道の古典的なJRPGスタイルで進行していくのですが、とにかく抜群に世界観が素晴らしいので、単調なゲームプレイもアドベンチャーゲーム感覚で飽きずにプレイする事が出来るかと思います。

全ての世界のポータルとなる神殿の孤島。
島が持つ役割や外観は初代『MYST』のミスト島からの影響も感じさせます。


直接的なシリーズではない(海外版では続編扱い)ものの
同社の『エルナード』との共通点が非常に多く戦闘シーンも似通っています。


国内ゲーム史に残る楽曲たち

リリース当初から地味な扱いを受けていた作品ですが、ネットの普及により“隠れた名作タイトル”として再評価する動きが見られ、その中でも森彰彦氏が手がけた数々の楽曲も人気の理由の1つとなっています。

同氏は、悔しくも1998年に病気で亡くなってしまったものの、ゲーム音楽ファンやコンポーザーの間では抜群の知名度を誇り、「ヘイ、たたかってるぜ!」、「休みには、外の光を浴びよう 」など、インパクトのある曲名から“プレイはしていないけど曲は知っている”というユーザーも多いはず。


同氏の作風の特徴でもある、フュージョン風のベースラインを軸に、プログレ、ハードロックなどの要素をキャッチーに織り交ぜた楽曲は、ゲーマーならずとも音楽ファンにも是非聴いてもらいたいもの。詳しくは省略しますが、各チャンネルパートのエフェクト処理や、音創りの工夫などスーパーファミコンタイトルの中でもトップクラスの作品ではないかと思います。

残念ながら、現在サントラは平均2万円前後とかなりのプレミア価格がついてしまっているので、中々入手は難しいところですが、プレイの際には各トラックの音に注目しつつゲームを楽しんでみると良いでしょう

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RPGとしては問題点も……

本作の欠点を挙げるとするならば、雰囲気は抜群の完成度を誇っていますが、メインであるはずのRPG部分が疎かとなっているのは否めません。

特にRPGの肝となる戦闘の単調さは大きなマイナス点。『ドラゴンクエスト』ライクなシンプルなターンベースシステムを採用しているのですが、全体的に敵の能力が高めに設定されているので一回の戦闘が長期戦になりがちで、頻繁に起こる通常戦闘がゲームテンポを落とす一因となっているようにも思えます。

また、強化系の呪文や道具を駆使するという戦略性にも欠けていて、どの局面においてもひたすら攻撃と回復、もし負けたらレベルが足りていないので、雑魚敵を狩ってキャラクターの再強化という流れが非常に多く、単調な作業でストレスを感じやすい部分でもあります。(上手なプレイヤーならそうでは無いのかもしれませんが……。)

その他、メニュー周りが不便(『桃太郎伝説』風の下取りシステムは素晴らしいです)で装備品やアイテムの管理が非常に面倒なのも欠点。数年前の作品であれば特に問題無い部分ではありますが、同年リリースの『ドラクエ6』などと比べてもハード後期の作品としては研磨不足といった印象です。

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内容としては大きく異なるものの、戦闘よりもアドベンチャーを重視したゲーム構成は『Planescape: Torment』などと通ずるものがあるので、海外RPGファンにも是非遊んでみて欲しい作品。

これまではダウンロード販売で手頃に購入できるゲームを中心に紹介してきたので、若干プレイまでの敷居が高いゲームではありますが、スーファミ本体をお持ちの方は勿論、興味を持った方は是非ショップやインターネットショップを探して手にとってみてください。

裸カセットしか持っていないので、今回は実際のプレイ風景。
ちょっと汚いですが、執筆とプレイはこんな感じで行ないました。


※文中、『Dの食卓』に関する情報を誤って記述していた為修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。

【関連記事】【今から遊ぶ不朽のRPG】第4回 『Divine Divinity』(2002)
【今から遊ぶ不朽のRPG】『リンダキューブアゲイン』(1997)
【今から遊ぶ不朽のRPG】『ルナティックドーン 第三の書』(2000年)
【今から遊ぶ不朽のRPG】『Ultima VI』(1990年)
《FURUKAWA》

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