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稲船氏「インディーゲームは不可能を可能にする」―UF2015基調講演レポ

神奈川県の横浜で開催されたエピック・ゲームズジャパン主催の開発者向けイベント「UNREAL FEST 2015 YOKOHAMA」。本イベントでcomcept代表の稲船敬二氏が熱く語った基調講演のレポ―トをお伝えします。

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■ 不可能を可能にするインディー

同氏はインディーでの開発が、楽なことが多くなく厳しく苦しいと語りました。しかし、どちらかといえば30年前のカプコン時代のほうが開発の苦しさは上のようです。その理由に何らかの“壁”が存在することで、例としてあと2ヶ月でゲーム発売なのに半分しか出来ていないことを挙げました。この状況なら無理や不可能という結論を出すほうが簡単ですが、そうはいかなかったのが同氏の若い頃の時代で、それが当たり前と思ってやっていたとのこと。そのため「不可能をどうやったら可能にできるのか」ということを常に考えてきたようです。

現行機と比較すると、ファミコンのスペックは相当低いもので、不可能なことが多いもの。ファミコンの『ロックマン』でキャラクターデザインの開発に入った同氏は、3色から2色しか使えない制限のなかで使い回しという要素でそれを回避しました。パーツ全てをバラバラにして、足先のパーツを頭の先に使ったり、色を重ねて他の色に見せたり、といった試行錯誤を重ねたとのこと。


ロックマンが青色なのは、マリオに対抗したものではなく青色が一番多くのグラデーションを作れたことに起因します。『ロックマン』は不可能と思えた時代に「可能と思って」開発に挑んだのがそれに当たるため、シリーズが長く続いたタイトルであると思っているようです。「不可能を可能にする」気持ちはインディーでの開発も同様で、開発者が持たなければならない姿勢と現在失われている感情ではないかと述べました。

最近インディーでゲーム開発している人々が多くなってきたことに対し、同氏は今でこそ「頑張れよ!」と本気で言えるようになったが、一昔前なら建前で「頑張れ」と言葉を掛けながらも、実際には「無理だろうな…」といった気持ちがあったことを話しました。しかしながら、「無理だろう」の言葉が不可能と言う人々に固定観念を作り出し、出来るものしかやらなくなるという状況に陥ってしまうことを解説。不可能と言われることにチャレンジすることがインディーで、同氏がずっと挑戦し続けていた30年でもあると語りました。


ある時、企画の内容がほぼ使えなくなったことから、ゲームの完成度が半分でしかないことに加えて、精査されていない企画書が存在するのみという状況を経験したことを明かしました。この状況を打開するため同氏は、自ら企画マンとしてマップを描き敵を配置、巻き込める人を多く巻き込んで、2ヶ月間家に帰らず開発して発売に漕ぎ着けたようです。その経験があったからこそ次へ進めたこともあります。

業界の通例として、プロデューサーになるにはプランナーからか、プログラマーからの2種類があります。不可能と言われてたプロデューサーや部長などの地位に付くことが出来ることを証明し、能力があればキャラクターデザイナーやサウンドデザイナーなどでも引っ張ってこれることを表したのです。不可能と言われた時にどう考えるかということが大切で、可能だと思い続けることも同氏のゲーム作りで、魂であると述べました。苦しい道と楽な道で、楽な方を進み続けると後にひどい目に会うということと、如何に修行を続けることが大切であるかを強調しました。加えて、同氏はお金を求め楽な道に進みたい人物はゲーム業界以外の道を目指せと語りました。

30年前にゲーム業界へ入ってきた同氏は、今と全く違い世の中の人達から馬鹿にされることがあったようです。当時から家に帰れない、眠れない、残業が多い、そして潰れてしまうという「不可能であること」を多く言われたようですが結局は存続しているため、それらのプレッシャーを跳ね返す力を持ち続ける気力が大切とのことです。


Mighty No.9』の話題に戻ると、2013年当時における日本のKickstarterの認知度は低く、キックスタートするまでの資金が必要で、さらにお金を集めるクラウドファンディングに成功しなければ資金提供を受けれませんでした。それよりかは着実に下請けを取っていったほうが確実な利益を得られるかもしれません。しかし、疑心暗鬼となった社員を説得して理解を勝ち取り、このプロジェクトがスタートしたことを語りました。

この7万人のバッカーを集めたKickstarterにおいて、それらのバッカーが応援団としていてくれることが大切で、彼らの応援があれば大企業のタイトルに対抗出来る様に頑張れるものであると説明。Unreal Engine 3を採用した『Mighty No.9』において、ノウハウを作り上げてきた人物も仲間に引き入れることが出来ると語りました。インディーでゲームを開発するということは「不可能を可能にする」ということなので苦しく辛いこと、その時に掛けて欲しい言葉は「頑張れ!」や「応援しているよ!」であり、たまの叱咤もありますが新たなビルドを公開したときの反応で大いに励まさせることもあります。開発のバックを支えるユーザーの存在が、本作を成功に導く鍵になるかもしれないと述べました。


まだ発売していないので完全な成功とはいえませんが、多く売れて沢山のユーザーにプレイしてもらい、続編を作る計画が生まれることで初めて成功と言えるとのこと。その成功を導くためのユーザーとのコミュニケーションが作っている楽しさを生み出し、久々に「作ってて楽しい」という感情が生まれ満足しながらやっていると語りました。

また不可能なことに挑戦する人に対し「うまく行かない」という言葉を掛ける人が、不可能を可能にした際に、賞賛の言葉を贈ることはほぼなかったとのこと。反面、不可能を可能にした際、周囲に「上手くいくと確信していた」と言う人が何割か出てきて驚いたとも述べていました。


有力クリエイターを集めて開発しても成功する可能性は低く、そこに技術以外の何かがあることは確かで、ヒットを出すことはそれ以外で勝負を掛けることにあるからです。同氏も第一線級で固めたチームよりかは、一癖二癖あるチームで挑んだタイトルのほうが成功を収めたと語りました。

講演終盤に稲船氏は、やったことがないことにチャレンジする例として壇上に上がるスピーチに挑戦し続けることにより、段々とできるようになると挙げました。それは、良いか悪いかではなくチャレンジし続けるという行動であり、頼まれたことにはあまり断らないようにすることで出来るようになっていくからです。それらの挑戦が、間接的にゲーム作りに関わることに繋がっていくと述べました。最後に、不可能を可能にするように頑張って欲しいことと、エンジンを作れないチームに向けてUnreal Engine 4とエピックが支援することで開発が可能になること、そして今後もUEと上手くコミュニケーションをとって頑張って欲しいと語り、大きな拍手と共にこのセッションは終了しました。


comceptの稲船氏が長時間熱く語ったUNREAL FEST 2015での基調講演。不可能を可能にするためには勇気をもって困難にチャレンジすることが必要と述べました。この話はゲーム開発者だけでなく、日頃から自分の困難を克服するために頑張っているユーザーやクリエイターにも心に響くようなものではないでしょうか。なお、公演中に語った横スクロールアクション『Mighty No.9』は、国内でPC/PS4/PS3/PS Vita/Xbox One/Xbox 360/Wii U/3DS向けに発売。PS Vita/3DS版は未定ですが、その他のプラットフォームでは2016年2月12日に発売が予定されています。
《G.Suzuki》

ミリタリーゲームファンです G.Suzuki

ミリタリー系ゲームが好きなフリーランスのライター。『エースコンバット』を中心にFPS/シムなどミリタリーを主軸に据えた作品が好みだが、『R-TYPE』シリーズや『トリガーハート エグゼリカ』などのSTGも好き。近年ではこれまで遊べてなかった話題作(クラシックタイトルを含む)に取り組んでいる。ゲーム以外では模型作り(ガンプラやスケモ等を問わない)を趣味の一つとしている。

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