ネットゲームに依存していく若者たちの決断とは?「NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム」【コントローラーを置く時間】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ネットゲームに依存していく若者たちの決断とは?「NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム」【コントローラーを置く時間】

GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。今回は「NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム」です。

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(c) 2016 LIONSGATE ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
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ハードコアゲーマーのためのゲームメディアGame*Sparkでは、日々、様々なゲーム情報をご紹介しています。しかし、少し目線をずらしてみると、世の中にはゲーム以外にもご紹介したい作品が多数存在します。そこで本連載では、GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。

今回ご紹介するのは、ヘンリー・ジュースト、アリエル・シュルマン監督による2016年(国内では2017年)の映画「NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム」(Nerve)です。

“現実”と“虚構”の交錯する世界


もしもビデオゲームのような出来事が現実に起きたとしたら。無謀な挑戦を成功させるたびに高額の報酬を得られるとしたら。あなたは挑戦するでしょうか。

ビデオゲームの世界では、実に多彩な目的、目標がプレーヤーに課せられます。ある時には銀行強盗、ある時には人質救出と、内容は多種多様です。クライムアクションの代表格として名高い『Grand Theft Auto』シリーズでは、プレーヤーの資金源は大抵の場合は犯罪行為です。あなたはお金の為に自ずと悪業に手を染めていくのです。

(c) 2016 LIONSGATE ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
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言うまでもなくこうした悪行は、ビデオゲームの中の自由な仮想空間、すなわちヴァーチャルの世界でしか許されないこと。現実の世界では決して許されない行為を寛大にも受け入れてくれる空間こそがビデオゲームなのであって、それこそがビデオゲームの最大の魅力と言えるでしょう。

しかし本作では、ビデオゲームの空間と現実世界とがリンクし、プレーヤーはビデオゲームのような犯罪まがいの指令を現実世界の中で遂行していくのです。ビデオゲームのそれと同じように、課される指令を成功させれば多額の賞金がプレーヤーの元に支払われます。

映画では、ビデオゲームと現実世界の“狭間”を描きつつ、現代のネット社会の暗部を鋭くあぶりだしています。ヴァーチャルとリアルが交錯した時、あなたは何を思うのでしょうか?

闇のゲームに翻弄される若者たちの群像劇


主人公は大学進学を控える冴えない女子高生ヴィーナス(エマ・ロバーツ)。ローマ神話に登場する愛と美の女神――ヴィーナス――から名付けられた彼女は、ある時、友人のすすめでライブ配信型ネットゲーム“NERVE/ナーヴ”の存在を知ることに。

ナーヴでは最初に、“視聴者”か“挑戦者”かのどちらかを選択。挑戦者は、視聴者の出す指令を、現実の世界で遂行しなくてはいけません。その指令とは、“ドッグフードを食べろ”だとか、“見知らぬ男と5秒間キスをしろ”といった単純なものから、“目隠しをしてバイクで時速96キロ”と言う過激なものまで様々。その様子をスマートフォンでライブ配信し、視聴者に見せなくてはなりません。挑戦に無事成功した際には賞金を得られると言うシステムです。

多くの挑戦者たちは多額の報酬と、ゲーム内のランキング上位を目指して無謀で、かつ危険なミッションを次々とこなしていきます。片想いしていた相手にフラれてしまったヴィーナスは、失意の衝動からナーヴを起動。果敢にも“挑戦者”を選択し、数々の指令をこなしていく中で彼女は、謎多き青年イアン(デイヴ・フランコ)に出逢います。徐々に惹かれ合うふたりは、過激さを増す指令を何とか成功させていきます。ナーヴの人気プレーヤーとなったふたりでしたが、イアンの怪しい過去が浮き彫りとなり……。

闇のゲームを軸に、揺れ動く若者たちの姿。それぞれに事情を抱えたナーヴのプレーヤーたちは、ネット社会に生きる現代の若者像を見事に体現しています。無軌道なティーンエイジャーの心理に迫った本作は、意外にも道義的な結末を用意しています。賞金の為だけではない、彼/彼女たちがナーヴをプレイし続ける“本当の理由”とは果たして――。

ビデオゲームから読み解く、ネット社会の裏側とは


私たち現代人にとって無くてはならない存在であるのがインターネット。今では生活の一部として溶け込んでいるネット世界は、使い手の思惑次第で“善”にも“悪”にも転がる存在です。さて、本作の軸であるライブ配信型ネットゲームと言う存在は本当に悪なのでしょうか?邦題にはこうあります、「世界で一番危険なゲーム」と。いや、ビデオゲームに危険性なんてものは本来含まれているはずがないのです。

では、本作の描く危険な一面とは何を意味しているのか。答えは人間の持つ自己顕示欲や衝動性にあるのではないでしょうか。劇中のシーンを例に挙げてみましょう。主人公のヴィーナスがナーヴをプレイする引き金となった部分です。彼女は意中の相手にフラれ、失恋の衝動的反動からナーヴをプレイすることになります。とくに賞金目的といった事でもなければ、ランキング上位を目指したワケでもない。単なる衝動が彼女をナーヴに誘ったのです。

では次に、ヴィーナスの友人シドニー(エミリー・メーデー)の場合はどうでしょう。内気なヴィーナスとは対照的に、派手な遊びを好むシドニーは、誰よりも我の強い性格であることが伺えます。さらに言えば、「他者から認められたい、褒められたい」と願う強い承認欲求こそが、中立性を持つナーヴをより“悪”へと転じさせた遠因であるのではないでしょうか。

(c) 2016 LIONSGATE ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
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現代のネット社会に警鐘を鳴らすと同時に、インターネットを利用する私たちのモラルと自尊心にも問いかけてくる、非常に教訓的な映画と言えるでしょう。このSNS時代に一石投じる佳作スリラーをぜひご覧ください。

映画「NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム」は、Netflix/U-Nextにて視聴可能。ネットを利用する人間たちの危険性を描いた本作は、我々ゲーマーにも深い問いを投げかけています。
《Hayato Otsuki》
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