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今、e-Sportsは富山がアツいーキーマンとなる堺谷陽平氏とCygames森慶太氏に聞く、地域振興としてのe-Sportsとは

富山県eスポーツ協会が主催するゲーム対戦会イベント「ToyamaGamersDay」はいかにして成功を収めたのか。そしてe-Sportsは地域振興の一助たりうるのか? 富山県eスポーツ協会の会長・堺谷陽平氏と、Cygamesの森慶太氏に話をうかがいました。

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今、e-Sportsは富山がアツいーキーマンとなる堺谷陽平氏とCygames森慶太氏に聞く、地域振興としてのe-Sportsとは
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富山県eスポーツ協会が主催するゲーム対戦会イベント「ToyamaGamersDay(以下「TGD」)」をご存じでしょうか。2016年12月に産声を上げたその大会は開催されるごとにコミュニティを広げていき、今では富山テレビ放送株式会社や株式会社北日本新聞社ら、メディアも巻き込んだ一大イベントとなっています。

同イベントでは第1回目の開催時から本格スマホカードバトル『Shadowverse(以下『シャドウバース』)』を競技タイトルとして採用し続けており、2018年9月9日に開催された「TGD18Summer」ではその『シャドウバース』が協賛として名を連ね、大会のサポートを行うに至りました。

そんな「TGD」はいかにして始まり、そして成功を収めたのか。そしてe-Sportsは地域振興の一助たりうるのか? 仕掛け人である富山県eスポーツ協会の会長・堺谷陽平氏(@yoheisakaidani)と、Cygamesで『シャドウバース』のプロダクトマネージャーを務める森慶太氏(@KeitaSMori)に話をうかがいました。

【聞き手:山﨑浩司】
【文・校正:蚩尤】

――森氏からは、堺谷氏が「TGD」を始めるまでの経緯がドラマチックだとうかがっています。まずはその経緯からお聞かせいただけますか。

堺谷僕は3~4年前までは東京にいました。そこから地元の富山に戻ってNPO団体の活動を引き継いだボランティア団体に所属し、竹林の伐採をして森を守っていました。週5回くらいのペースで。

――森を守るという言葉を生で初めて聞きました。よいことではありますが、およそゲームと関係なさそうなことに従事されておられたのですね。それも週5とは……。

堺谷まぁ、一応食べていくことはできていましたので……(笑)。それで来る日も来る日も黙々と竹を伐採していたら、そこに所属している、定年で仕事をリタイアされた方たちから心配されるようになりまして。あるとき「何か好きなことはないのか」と聞かれたのでゲームが好きですと答えたら、その方は僕が今経営しているゲーム好きのためのスペース「JOYN」が入っているビルのオーナーさんだったんです。「だったらテナントが空いているから、ここを使って何かやってみなよ」と。

富山県eスポーツ協会の会長・堺谷陽平氏

――その「JOYN」が2016年の12月11日に開催された初の「TGD」で『シャドウバース』の大会を主催し、以来ずっと名を連ねる常連タイトルとなっていますね。

堺谷僕自身がTCGプレイヤーの1人だったこともありますが、スマートフォンのゲームなら参加者のみなさんにスマホを持ってきてもらえればいいので、運営費が安く済むというのも理由の一つです。

私が堺谷さんと出会ったきっかけも「TGD」でした。『シャドウバース』のオフラインイベントでは東名阪のような都市圏では手ごたえを感じていましたが、それ以外の地域はどうかというと、手ごたえがある地域とない地域が混在していました。そんな中、富山ですごく盛り上がっていることが分かって、催事としての「TGD」および店舗としてのJOYNに興味を持ちました。私は弊社に所属する前からTCG業界におり、アナログTCGの頃から数えると業界歴はもう20年超ありますので、熱意のある方がすばらしいコミュニティを築いているな、いうことはすぐ分かりました。

また、熱意があってもコミュニティの支持が得られるとはかぎらないことも経験から知っていたので、きっと主催の方は1人のゲーマーとしての目線を持ちつつ、コミュニティをビルドアップされているのだろうとも想像していました。そうして興味を持ってこちらからお声がけさせていただいたらビックリですよ! 主催の堺谷さんがあのPUSHMAN選手だったんですから!(笑)
(編注:堺谷氏はPUSHMANの名で過去さまざまな大会に出場しており、e-Sports日本選手権2011の『Call of Duty:Black Ops』部門3位、『Hearthstone』の2017年アジア太平洋冬季プレイオフ出場、『シャドウバース』ESチャンピオンシップSummer北信越エリア優勝など、輝かしい戦績を持っています)

弊社には、地方を盛り上げるためのロールモデルがまだ十分ではないという思いがあり、その成功事例をうかがえればと教えを乞いました。そして感銘を受けました。損得抜きにまずはやってみようという情熱、勉強になると思ったら海外への視察もためらわない行動力、そして現地のゲーマーたちと信頼関係を築き上げる人柄……それらすべてを兼ね備えておられたものですから。

Cygamesの『シャドウバ-ス』プロダクトマネージャー・森慶太氏

――「TGD」の躍進には、堺谷さんのゲーマーとしての一面も欠かせないもののようですね。ゲーマーとしてのバックボーンもおうかがいできますか。

堺谷中学3年生のころにPCでゲームを遊ぶようになり、高校進学後からFPSにハマり始めました。具体的には『Call of Duty』シリーズや『WarRock』です。『WarRock』では、今はゲームキャスターとしてご活躍されている岸大河さんがすでに強豪プレイヤーとして名を馳せているころでした。

でも、当時はオンラインの大会ですら大変少ない時代でもあって。そんな中、僕は親からもらった昼食代を節約してコツコツ貯めてはWebマネーに替え、数カ月に一回くらいのペースでオンライン大会を主催していました。5人くらいのチームが20チーム程度参加してくれるくらいの規模ですね。『Call of Duty』では「CoD Japan Community」を立ち上げて、スポンサーを募って「CJC」というオンライン大会のシリーズを開催したりもしていました。

学生時代からそんな大規模な活動をされていたのですか!

――その実行力に脱帽です。どのような思いで始め、そして続けてこられたのでしょうか。

堺谷当時の僕はe-Sportsという意識は持っていませんでしたが、海外では日本よりもFPSがずっと盛り上がっているということと、プロゲーマーの存在は知っていました。単に、うらやましかったんですよ。僕もプロになりたかった。でも、自分の実力では環境があったとしてもプロになるのは難しいだろうという冷静な目を持つ自分もいて。そうしたさまざまな思いから、若い子たちが後悔しない環境を作りたいと思ったんです。そして、僕を含めた上の世代の人も楽しめる場にできたらいいなと。

そうだったんですね。とはいえ、どれだけ真摯な思いがあっても大会を運営し続けるには思いや情熱だけでは足りなくて、普通の方にとっては大変な苦労にあたることをそう感じずに続けられるくらいでなければならないと感じています。今はスポンサーもついていらっしゃるとのことですが、そこに至るまでの――事業でいうなら投資にあたる――フェーズは、きっと持ち出しでやっておられましたよね。

堺谷たしかに、ずっと持ち出しでしたね。ただ、運営を手伝ってくださる方々にもボランティアというかたちでずっと助けていただきました。

いま「TGD」ではカードバトルの『シャドウバース』だけでなく格闘ゲームの『BLAZBLUE』やサッカーの『ウイニングイレブン』などの大会も行っておられますが、堺谷さんはそれらのジャンルにも触られていたのですか?

堺谷今では遊びますが、当時はまったくやっていなかったですね。だから始めのころはコミュニティのみなさんにお叱りをいただくこともありました。富山は『鉄拳』シリーズの大規模な5on5大会「MASTERCUP」発祥の地でもあります。当時はゲームセンターに500人からの人が集まっていたと聞きますし、コミュニティは今もしっかりしている。だから扱うジャンルを増やすなら格闘ゲームがよいだろうということになり、対戦会を開催している方たちに「いっしょに手伝ってもらえませんか」と声をかけたのが始まりでした。今もまだまだ分からないことも多く、コミュニティに助けられながらやっています。

堺谷氏が運営する「JOYN」。イベントスペースを兼ねたバーとなっています

我々企業がイベントを開催するときは、まずイベントを仕切れるイベントディレクターを集めて、その下についていただく人を募ってノウハウをレクチャーし、大会スタッフになってもらうような形式での仕事の発注がほとんどです。あれだけのコミュニティ、ネットワークをご自身の力で築き上げ、それを維持・拡大し続けておられるのですから脱帽です。

堺谷富山には格闘ゲームコミュニティのほかに、アナログTCGのショップも充実していますが、すべての熱意あるプレイヤーがコミュニティにうまく接続できているかというと、断片的になってしまっている部分もあって。イメージとしては、それをうまくつなぎ合わせることができたという感じです。

――先ほど森氏からは「苦労を苦とも思わない人だけが大会の開催・運営を続けられる」という発言がありましたが、やはりご苦労も多かったのではないでしょうか?

集客、お金、人間関係……などなど、大会をうまくまわせている方は、みなさんこの辺りで何らかのチャレンジを克服されてきていると思います。

堺谷やっぱり、最初は人を集めるのが大変でしたね。「JOYN」は『シャドウバース』サービス開始の少し前にオープンしたばかりなので、大会をやるよと言ってもコミュニティどころか固定客すらいない。最初は参加者が5人、6人というのもザラでした。でも、そんな中に地元でTCG大会を運営していた経験のある方などもおられて、どうやったら参加者が増えるかと相談させてもらったりもしました。

――どのような意見が挙がりましたか?

堺谷シャドウバース』は今でこそBO3(Best of 3の略。2つのデッキを用いて3試合2本先取で勝敗を決する方式)が主流として浸透していますが、当時は配信開始からまだ間もないので「2デッキは参加のハードルが高い、1デッキにしてみては」、「トーナメントは1回負けたらそこで終わりなので、すべての参加者が一定数の試合を行えるスイスドロー方式にしたらどうだろう」などというご意見をいただきました。そうした声を取り入れていくうち、少しつ人が集まってくれるようになって。

――そして第2回目となる2017年4月の「TGD17Spring」は若鶴酒造の大正蔵で開催され、地酒を堪能しながらオールナイトで楽しめたとうかがっています。富山ならではの催しと思いますが、こうしたアイディアはどのように生まれてきたのでしょうか。

堺谷2016年12月の第1回目は100人くらいの方に参加していただけたのですが、その半数近くが県外からの方だったんです。中には「今日はこのまま一泊して、明日は富山の寒ブリを食べてから帰ります」という方もいて。それなら「TGD」を通して富山らしさもいっしょに味わってもらえたらもっとよいのではないかと。そうした経緯や思いをご理解いただけて、若鶴酒造さんの清酒蔵「大正蔵」を会場としてご提供いただくことができました。

富山らしさをより味わっていただければと、クラウドファンティングで費用を募って400年の歴史を誇る「高岡銅器」の伝統的な職人さんに特製の銅メダルも作っていただき、優勝者への副賞として用意しました。ちなみに優勝賞品としては、若鶴酒造さんのお酒を一升瓶で用意しました。もし未成年の子が優勝したら、お父さんにでも渡してもらえればその子も大手を振って大会に行きやすくなるかなと……(笑)。

若鶴酒造の大正蔵で開催された「TGD17Spring」

元は小学校だった小矢部市教育センターで開催された「TGD17Fall」

――親御さんを味方につけられたら強いですよね。その後の「TGD17Fall」も、小矢部市教育センター(旧岩尾滝小学校)というユニークな会場で開催されました。

堺谷小矢部市の商店街によるNPO団体さんと共催して、元・小学校の体育館でのオールナイトイベントとなりました。学校で一晩中ゲームを遊べるとか、ゲーム好きの方なら誰もが一度は思い描いた夢なのではないでしょうか。そして、来たる2018年12月15日に開催される「TGD18Winter」では、魚津市さんにご協力いただいて同市の新川文化ホールで開催されます。魚津市さんは今ゲーム産業に強い興味を持っておられて、ゲームクリエイターを目指す人に向けた「つくるUOZUプロジェクト」として、講師を招いてのハッカソンやサミットを頻繁に開催されています。そこでチームや個人がそれぞれゲームを作っていますので「TGD18Winter」ではそのタイトルを使った大会も行う予定です。

それは「つくるUOZUプロジェクト」のゲームを競技タイトルにするということですか?

堺谷そうです。僕らもまだどんなゲームが出てくるか分からないので、近いうちに進捗を確認して大会に使うタイトルを決めようかなと。「TGD18Winter」当日は、午前中に練習台を並べ、午後に大会を開こうかと考えています。

なるほど。作るゲームのジャンルくらいは指定しているんですか?

堺谷いえ、それも特には……(笑)。ただ、以前確認したときはシューティングゲームやパズルゲームが制作されているとのことでしたので、競えるタイトルはあると思います。

――まさしく、先ほど森氏がおっしゃった「損得抜きにまずはやってみよう」という精神ですね。まだどんなゲームが出てくるかわからないというのもすごく面白いです。『シャドウバース』は「Shadowverse World Grand Prix」という形で世界大会を開催しておられますし、堺谷氏も『Hearthstone』2017年アジア太平洋冬季プレイオフ出場など、海外での実績もお持ちです。お二方とも世界を知り、日本のローカル事情にも精通しておられるわけですが、両者を比べてどのような違いを感じられますか?

私個人が感じる範囲においてお答えすると、やはり海外では競技的なゲームをe-Sportsという文脈で捉えることがすっかり浸透していますね。そして、ジャンルとしても、メディアとしても魅力的なものとして注目されています。とくに、若い層にリーチしたいプロダクトを展開している企業がスポンサーについたり、若者を集めたいイベンターが催事に活用したりしているのが当たり前で、その規模が日本と比べてとても大きいですね。いわゆるメジャースポーツの仲間入りを果たしている印象です。

「若者を集客しやすい催事」という意味で注目を集めているのは、日本のローカルシーンでも同じかもしれません。日本ではゲームそのものが海外の先進国ほどに市民権を得られていないと思いますが、若者を集める魅力を持ったイベントであるゆえに「地方創生の一環」というような文脈で報道いただけているのではないかなと。最近では2018年の流行語大賞の候補にノミネートされたりなどe-Sportsという言葉が取り上げられる機会は増えたので、日本各地のシーンもこれからどんどん盛り上がっていくと思います。堺谷さんはどうですか、世界を見てきて。

堺谷やっぱり海外は華やかですよね。「TGD」ももっと華やかにしていきたいです。とはいえ、だからといってみんなの意見を無視するわけではありません。「TGD」は僕がやりたいことをする場ではありますが、僕だけのものではありませんから。そういう意味では、今後どう華やかになっていくかは僕自身にも読めてないところはあります。今でこそ魚津市さんや地元メディアのみなさんにご協力いただけていますが、それも最初から目指していたわけではありませんし。


――富山の地元メディアは地域創生の一環として捉えているとのお話ですが、e-Sportsは地域活性化の一助たりえると思われますか?

堺谷僕はそうできると思っています。少子高齢化が止められない以上、各地方の自治体が使えるお金はどうしてもシニア層に向けたものになり、若者にフォーカスしたコンテンツはどんどんなくなっていきます。そんな中でe-Sportsは若者が楽しめるコンテンツとしていいと思いますし、そもそもゲームは年齢関係なく、世代を超えて交流することすらできますから

――Cygamesとしては、今後富山以外の地域をサポートすることも考えておられますか?

もちろんです。ただ、私たちは盛り上げるお手伝いはできますが、やっぱり地域で行われるイベントや大会の主体は、堺谷さんのようなイベンターのみなさんやその地域の自治体、後援企業、そして地元ゲーマーのみなさんなんです。そんなみなさんが楽しめる場が育まれる環境作りをお手伝いしていければと思います。

堺谷最近は教育機関とも話をする機会が増えてきて、富山大学ではe-Sportsのサークルを作りたがっている子たちがいるとか、県内で大学対抗戦やりたいなどという話も聞いています。でも、僕が大学のコミュニティに入っていってイベントを主催しても、たぶん意味がないんです。だからこう言わせてください。意欲がある方がいるなら、僕らはいつでも協力しますと。

――それでは最後に、e-Sports分野における『シャドウバース』のCygamesとしての目標と、TGDを続けていくうえでの目標をそれぞれお聞かせください。

まずは世界大会、プロリーグ、「RAGE」を代表するトップシーンをあこがれの舞台としてしっかりブランディングしていくことと。それと同時に、裾野となる地方振興や学生年代への支援を地道に行っていくこと。このふたつをしっかり取り組んでいきたいと思います。

私個人のミッションとしては、各地のコミュニティのみなさんのお力を借り、裾野の開拓をどんどん進めていきたいと思っています。堺谷さんとの間に築けたようなパートナーシップを、各地のイベンターのみなさん関係者のみなさんと作っていきたいですね。ご連絡お待ちしております!

堺谷ゆくゆくは「TGD」を日本全国から、それだけではなく海外からも参加者が来てくれるようなイベントにしたいです。そのためには競技シーンも整えていき、参加してくれるプレイヤーのみなさんの夢や目標となるものが必要になると考えています。その可能性のひとつとなりうるのが、富山発のeスポーツチーム「TSURUGI」かなと。まだ発足したばかりではありますが、シーンで活躍できるチームにしたいし、「TGD」などのイベントに参加して結果を出すことでチーム加入への道筋が立てられるようにすれば、目標のひとつにもなるかなと考えています。


e-Sportsは地域活性化の一助たりえるか? という質問に迷いなく「そうできる」と答えた堺谷氏。「自身が楽しいし、若者の未来のために」活動して、その結果が地域の活性化に繋がる。もちろん様々な苦労を乗り越えてこられて今があるわけですが、ゲームやe-Sportsを通じて誰もが笑顔になる「娯楽の先の地方創生」があるのだとインタビューを通じて知ることができました。今後、様々な地域で本格的にe-Sports関連の動きが増えていく中で、キーとなる人物はきっと、堺谷氏のような「ゲームを愛し、コミュニティを見据えた人」でしょう。そして、地方でのe-Sports発展にはそういった人物を支える森氏のようなサポーターが必要なのではないでしょうか。インサイドでは、今後も地方のゲーム、e-Sports事情の取材に注力していきます。

(C) 2017 - 2018 ToyamaGamersDay 公式ウェブサイト
http://tgd.jespa-toyama.org/
《蚩尤》
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