中華ゲーム見聞録:時間を操るパズルADV『Clocker』亡き父に捧げるため開発した、父と子の絆の物語ー開発者インタビューも | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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中華ゲーム見聞録:時間を操るパズルADV『Clocker』亡き父に捧げるため開発した、父と子の絆の物語ー開発者インタビューも

「中華ゲーム見聞録」第31回目は、人びとの時間を個別に操り、謎を解いていくパズルアドベンチャーゲーム『Clocker(鋳時匠)』をご紹介します。記事の最後では開発者インタビューもお届け。

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中華ゲーム見聞録:時間を操るパズルADV『Clocker』亡き父に捧げるため開発した、父と子の絆の物語ー開発者インタビューも
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「中華ゲーム見聞録」第31回目は、人びとの時間を個別に操り、謎を解いていくパズルアドベンチャーゲーム『Clocker(鋳時匠)』をお届けします。

本作はWild Kid Gamesが開発し、2月15日にindienovaによってSteamで配信されました。Wild Kid Gamesは中国の桂林市を拠点としたインディーデベロッパーで、メンバーは4人と猫が1匹です。中国のクラウドファンディングサイト「摩点」にも登録し、目標金額の2万元を超える3万4千元(約57万円)の開発資金調達に成功。これにより日本語を含めた多国語サポートも可能になりました。

本作を開発した動機は、自分たちの父親に捧げるためだとか(開発メンバー4人のうち3人は父親を亡くしているとのこと)。父と子の絆というのは本作の重要なテーマにもなっています。今回は開発者の張クン氏(クンは「君」に王へん)にコメントをいただけましたので、記事の最後でインタビューもお届けします。


本作はNPCの時間の流れをコントロールし、様々な結果を引き起こすことによって謎を解いていくパズルゲームです。主人公は父とその娘の2人。それぞれの特徴を生かして困難を乗り越えなければなりません。さっそくプレイしていきましょう。

あまり上手くいっていない親子関係


オープニング

本作は日本語字幕入りです。ゲームをスタートさせると、主人公であるジョンが登場します。職業は時計修理屋とのこと。暗闇の中を進んでいくと、娘のアリスに出くわしました。アリスは泣いているようです。「絶対にアリスに辛い思いはさせない」と娘の頭を撫でて約束するジョン。やがてアリスは消えてしまいました。


娘のために仕事をするジョン。しかし生活は苦しく、あまりよろしくない人たちから金を借りてしまっているようです。どうにもならず、家族の写真の入ったペンダントまで売らなければならなくなりました。


アリスはペンダントを売ったことを知って怒りましたが、「子どもは関わるな。大人には大人の考えがあるんだ」と叱りつけます。アリスはどこかへ去ってしまいました。母親が出てこないところを見ると、一緒に暮らしていないのか、もしくは亡くなってしまったのかもしれません。アリスにとっては大切なペンダントだったのでしょう。

目を覚ました父~謎の来客

やがてジョンは目を覚まします。どうやら夢だったようです。階段から下りてきたアリスは「おはよう」を言おうとしましたが、すぐに怒った様子で家へ出ていってしまいました。それと入れ違いに現れた謎の老人が、ジョンに時計を差し出します。修理の依頼でしょうか。顔を上げると、老人はどこかへ姿を消してしまいました。


見たことのないタイプの時計です。ここで時計を分解するミニゲームが始まります。ドライバーやピンセット、ルーペを使い、ネジや部品を取り外して分解していきましょう。筆者はこういう分解ゲームが好きで、もうちょっと長く遊んでいたいと思いました。

分解した結果、中の歯車が壊れていることがわかりました。工房にはない種類の歯車のため、オーダーメイドしなければなりません。これ以上の修理は無理なので、いったん席を外して家の外に出ます。

人びとの止まった時間を個別に動かせ!


時間が止まった世界

外にはアリスがいました。ジョンが売ってしまったペンダントを、自分で稼いで買い戻したいと言い出します(「ネックレス」と翻訳されていますが、ペンダントが正しいかと)。走り出したアリスを、ジョンが追いかけます。その時、吊り下げられていたピアノがアリスの頭上に落ちてきました。


ジョンはアリスを突き飛ばします。ピアノが自分の頭上に落ちてくる時、ポケットに入れておいた先ほどの時計が地面に落ちて壊れ、途端に周囲の時間が止まりました。本作の特徴となるシステムですが、ジョンはそれぞれのNPCの時間を個別に動かすことができます。


ここではアリスの時間を動かし、地面に転んだ状態で止めることができます。全体の時間ではなく、それぞれの時間を動かすことができるというのは面白いですね。ただ時間自体は止まっていますので、アリスに対して話しかけたりはできません。


ちなみに背景ですが、平面で描かれたものではなく、演劇の大道具のような無数の板を組み合わせた作りになっています(画像は本作の開発画面)。これによって背景の立体感を際立たせています。

一人ひとりの時間を動かして謎を解け



止まった時間を動かす方法を探すため、街の探索を開始するジョン。街にはNPCが大勢いますが、それぞれの時間を個別に動かすことが可能です。この組み合わせによって様々な結果が引き起こされます。


上のほうに歯車のパーツがあるのでこれを取りに行きたいのですが、ジョンのジャンプ力では向こう側にたどり着けません。何か踏み台が必要です。そう言えば下に車がありましたね。


車の時間だけを動かして前進させ、ちょうどよいところで止めます。こうすることで車を踏み台にして向こうへ行くことができるようになりました。


次に待ち受けるのは煙。時間が止まっているため、煙が障害物になってしまって先へ進めません。煙を消す必要があります。となれば、煙の発生源はこの下の……。


下に戻って見てみると、フライパンに火が点いていました。店員が水の入ったタライを抱え、慌てて消そうとしています。時間が止まっているので、この店員の時間だけ進めて火を消してもらいましょう。


煙が止まったので、奥へ進んで歯車の欠片をゲット。この調子で残りの欠片も集めていきましょう。ここはまだ簡単ですが、時間を進める組み合わせによって、本来起こるべき結果と違う結果を引き起こすことが必要になってきます。ジョンはこの止まった時間を戻すことができるのか。そしてアリスの運命は……。続きはあなた自身の目で確かめてみてください。

開発者へのインタビュー


家の住人と泥棒。彼らを出会わせないことによって、プレイヤーの望む結果を導き出すことができます

時間を操作するギミックは『Braid』『ライフ イズ ストレンジ』などでも見られますが、本作ではNPC一人ひとりの時間を操り、その組み合わせで起こる結果を使って謎を解いていきます。例えばAとBの2人がいます。時間を進めると彼らは出会ってしまいますが、その過程を個別にコントロールすることによって(Aの人物の時間は進めず、Bの人物の時間だけ進める……など)、出会うことなく別の結果を引き起こさせるといったことが可能です。どんな結果になれば目的が達成されるのか、それを想像しながらゲームを進めるのがいいでしょう。以下は本作の開発者へのインタビューです。



会社の鼓舞係。きめ細かな肉質と柔らかな毛並みを持つ

――まずは自己紹介をお願いします。

張クン氏:張クンと申します。ネットでは「Klame」と呼ばれています。以前2KでiOS版『Tales from the Borderlands』やAndroid版『XCOM: Enemy Unknown』の開発に参加していました。私たちの会社「Wild Kid Games」はメンバー4人で、私がプログラムを担当し、もう1人が企画、他の2人が美術を担当しています。あと猫が1匹います。現在は中国の南部にある桂林市というところに拠点を構えています。


開発中に何度も変更された父と娘のデザイン(右に行くほど新しいデザイン)

――本作の開発はいつどのようにして始まったのでしょう?

張クン氏:この作品を開発したきっかけは、父を記念するためでした。というのも、私たちメンバー4人のうち3人はすでに父を亡くしているのです。この作品の開発には、4年の歳月を費やしました。

ゲーム開発の様子

――本作の特徴を教えてください。

張クン氏:プレイヤーは父親を通して異なるNPCの時間の流れをコントロールすることができます。それから娘を通して止まった時間を戻すことが可能です。これによってNPCに何が起こるか、その結果を見ることができます。

私たちは多くの時間をかけ、異なるNPCの異なるタイムラインや、それによって引き起こされる様々な結果を作り上げました。そのためプレイヤーは、NPCにいろいろな影響をあたえてみて、どんな結果が起こるのかを観察して楽しむことができます。

開発ノート。太陽と月の軌道についてでしょうか。よくわかりません

――本作が影響を受けた作品はありますか?

張クン氏:この作品を開発するにあたって、私たちは様々なゲームを参考にしました。例えば『Braid』『Limbo』『ライフ イズ ストレンジ』などです。それと『ゴーストトリック』(カプコンから発売されたニンテンドーDS用ゲーム)に似ているとの意見も頂いております。この作品は参考にはしていませんが、そのような意見を頂けることを嬉しく思います。

開発室の様子。美術担当によって美化されているとのこと

――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。

張クン氏:日本の読者の皆様、初めまして!私たちのゲーム『Clocker(鋳時匠)』が、日本の皆様に楽しい時間を提供できることを心より望んでおります。

――ありがとうございました。


アップデートも頻繁に行われ、日本語もサポートされている本作。また無料のデモ版もSteamのストアページにあるので、ぜひとも一度プレイしてみてください。デベロッパーの今後のさらなる活躍に期待しています。

製品情報


    『Clocker(鋳時匠)』


    開発・販売:Wild Kid Games、indienova
    対象OS:Windows、MacOS
    通常価格:1,220円
    サポート言語:日本語、中国語(簡体字、繁体字)、英語など7カ国語
    Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/916050/Clocker/

※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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