中華ゲーム見聞録:過去の声を頼りに犯人を捜す新感覚推理ゲーム 『Unheard』ー開発者インタビューも | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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中華ゲーム見聞録:過去の声を頼りに犯人を捜す新感覚推理ゲーム 『Unheard』ー開発者インタビューも

「中華ゲーム見聞録」第38回目は、過去の事件現場に残された声を頼りに犯人を推理する新感覚アドベンチャーゲーム『Unheard(疑案追声)』をお届けします。記事の最後には開発者インタビューもあります。

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中華ゲーム見聞録」第38回目は、過去の事件現場に残された声を頼りに犯人を推理する新感覚アドベンチャーゲーム『Unheard(疑案追声)』をお届けします。

本作はNEXT Studiosが開発し、同社とbilibiliによって3月29日に配信されました。bilibiliは中国版ニコニコ動画とも言える「ビリビリ動画」で、Steamでの初パブリッシュとなるクトゥルフ風ミステリーアドベンチャーゲーム『寄居隅怪奇事件簿』を「中華ゲーム見聞録」第12回目で取り上げました。本作はbilibiliのSteam配信3作目となりますが、『寄居隅怪奇事件簿』の時と同様、ストアページを見る限りでは結構マニアックな感じの作品です。

NEXT Studiosはテンセント傘下のデベロッパーで、これまでは春秋戦国時代を舞台にしたアクションゲーム『Bladed Fury』や、モノクロゴシック調パズルADV『Iris.Fall』を取り上げています。テンセントのバックアップと独自の社内ゲーム評価方法もあり(上述の『Bladed Fury』記事を参照)、ヒット作を配信してきています。また面白いゲームであればジャンルを問わずに開発する体制になっているので、毎回趣旨の違ったゲームが誕生するのも特徴です。今回は開発者にコメントをいただけましたので、記事の最後でインタビューもお届けします

『Unheard(疑案追声)』のトレイラー

本作の内容ですが、「犯行現場に残った音や声を聴いて犯人を捜す」という独特なシステムの推理ADVです。プレイヤーは犯行が行われた当時の声や音を聞く能力があり、それを手掛かりにして容疑者を絞り、事件を推理していきます。声だけですので、誰が話しているか、どのような状況なのかも想像力を働かせて推理しなければなりません。さっそくプレイしていきましょう。

過去の声を聞くことのできる探偵


オープニング~過去の現場へ


ゲームを始めると、謎の女性が登場します。あなたは探偵としてここに呼ばれ、特別なテストを受けなければならないようです。女性は言います、「心配しないで。テストは簡単だから。ただ何枚かの絵を見るだけ。そこで何が聴こえたかを教えて」と。

ここでイヤフォンかスピーカーを付けた方がいいとの指示が出ます。と言うのも、本作の現場検証では一切字幕がなく、声を頼りに推理します。誰が何をしゃべったのか、話しているのは誰なのか、そして最後に事件の犯人は誰なのか、といったことを当てなくてはなりません。


女性の手元のタブレットをクリックするよう言われたのでその通りにすると、どこかの建物のマップが表示されました。ここがゲームの舞台となる場所のようです。なんだかこういうのを見ると推理ボードゲームの古典的名作『Cluedo』を思い出します(ちなみにSteamでデジタル版が配信されています)。


タブレット上のマップが拡大され、プレイスタート。マップでは過去に起こったことが再現されますが、人の姿を見ることはできず、人のいた位置にマーカー(破線の円)が表示されます。プレイヤーはこのマップ内を自由に動き回り、人々の声を聴くことができます。


画面左下の再生ボタンを押すと、現場にいる人たちが動き出します(姿は見えません)。話をしている人は、マーカーのまわりに音量メーターが表示されます。プレイヤーが聴くことができるのはそばにいる人たちの会話のみで、部屋の外の声は聴こえません。聴きたい場合は移動する必要があります。

字幕も出てきませんし、プレイ中はじっと耳をすませて集中しなければなりません。何だか潜水艦のソナー手になったような気分です。音声メインのゲームと言えば、緊急通報を受けるオペレータをシミュレートした『911 Operator』がありますが、それにちょっとプレイ感覚が似ている気もします。ちなみに本作は英語サポートもあり、その場合音声はすべて英語になります。結構予算が掛かっていますね。聞き取りやすい英語なので、ヒアリングの練習にもいいかもしれません。

情報には嘘がある


音声による現場検証


ゲーム開始地点の部屋では、2人の人物が話をしています。一人は声の質から女性、もう一人は男性です。女性が名前を聞くと、男性は「さっきも言っただろ、私は李仲文だ!」と答えました。名前がわかったので、男性の声を発しているマーカーをクリックしてから「李仲文」を選択。これでマーカーに名前を付けることができました。

名前があれば、この人物が動き回ってもどこにいるかが把握できます。まずやらなければならないのは、誰がしゃべっているかの解明です。推理小説と同じように、登場人物が分からなければ推理のしようもありません。


女性と李仲文との会話では、「李仲文には李伯文という兄がいること」「2人は双子でとてもよく似ている」ということがわかります。ちなみにこのゲームで行われている会話は嘘も混じっていますので、注意が必要です。推理小説を読むように、一語一語気を付けなければなりません。


女性は、李仲文の麻薬所持を疑っているようです。ここは警察署かどこかで、李仲文は尋問されているのかもしれません。会話内容から状況を推理していくのがこのゲームの楽しさですね。女性が部屋から出ていきましたので、後を追いかけます。


女性の入った部屋には2人の人物がいました。声の質から、一人は年配の男性、もう一人は中年の男性でしょうか。男性の一人が「どうだった?」と聞くと、女性は「彼は自分が李仲文だと言い張っています」と答えました。となると、先ほど「李仲文」と名乗ったのは嘘なのでは……。


女性は、会話していた年配の男性とともに部屋を出て、一番最初の部屋に戻りました。部屋に誰だか分からない男性がもう一人残っています。本作はリアルタイムで状況が進行していくため、プレイヤーは部屋に残るか、それとも女性の後を追いかけるかを決めなければなりません。今は女性の後を追いかけましょう。


一番最初の部屋では、「李仲文」改め「李伯文」に対する尋問が行われていました。年配の男性が「お前は誰だ?」と聞くと、李伯文は「李仲文だ」と答えます。年配の男性は笑い、「だったら隣の部屋にいる李仲文は誰なんだ?」と言いました。先ほど部屋にいたもう一人こそが李仲文だったようです。「李仲文」の名前を「李伯文」に修正しましょう。

李伯文は、自分が嘘をついていたことを認めました。ただ、麻薬所持はしていないと言います。しかし証拠となる麻薬1キログラムは、すでに警察が発見したとのこと。それでも李伯文は「知らない。弁護士を呼んでくれ」と言い張ります。ここでストーリーは終了。このステージは、「麻薬所持者は誰か?」を当てなければなりません。

現場の声を聴いて真相に迫れ!



本作は好きな時間から再開することができますし、時間を止めたり戻したりすることもできます。今回はストーリーが始まる前に下の部屋にプレイヤーキャラを移動させ、そこで何が起こっているかを聴いてみましょう。


下の部屋では警察である年配の男性と、本物の李仲文が話をしています。李伯文が捕まったのは、どうやら李仲文が通報したからのようです。年配の男性は「一つだけ分からないことがある。なぜ実の兄を通報したんだ?」と聞くと、李仲文は「あいつはいつも問題ばかり起こして、俺に責任を押し付ける。今回もきっと俺の名前を使うはずだ。いつもは我慢していたが、さすがに麻薬所持の罪は被れない」とのこと。


先ほどと同じように女性が部屋に入ってきた後、年配の男とともに李伯文の取り調べに向かいました。これまでの会話から、女性は「小許」、年配の男性は「老范」だということがわかりました。これですべての登場人物に名前を付けられます。

今回は小許についていかず、部屋に残って李仲文を見張ります。李仲文は小許たちが去った後、どこかへ電話を掛けました。どうやら仲間に隠蔽工作の指示を出しているようです。状況からして麻薬のことでしょう。

事件の解決~新たな現場


麻薬の持ち主が李仲文と分かったので、真犯人として推理を提出します。ステージクリアの条件は、登場人物全員の名前を当てることと、犯人を当てることです。正解したようで、ムービーが流れてステージクリアとなりました。


そしてオープニングに出た女性がまた登場。先ほどのは簡単だったので、次は少し複雑なケースになるとのこと。美術館で絵が盗まれたので、その犯人を捜し出してほしいという依頼です。


今回の登場人物は先ほどの2倍近い人数。しかも部屋も倍以上あります。いろいろなストーリーが各部屋で展開され、それらを頼りに推理を完成させなければなりません。さらに今回は問題が「誰が最初に本物の絵を盗んだのか」「最後に本物の絵を手に入れたのは誰か」の2つです。「本物」と書いてあるので、偽物の絵もあるということでしょう。果たして事件の真相にたどり着けるのか。この続きはあなた自身の目(耳)で確かめてみてください。

開発者インタビュー


声を頼りに、実際に自分で推理しなければならないというスタイルのゲームで、なかなか斬新で楽しいゲーム体験でした。本作で特に優れていると思った点は、すべての情報がオープンにされているということです。後出しで「実はこうだった」というのはなく、プレイヤーは現場検証ですべての情報(声)にアクセスすることができます。「インタラクティブな推理小説」という感じですね。このジャンル、ゲームに留まらず、オーディオブックの新たなスタイルとして可能性を感じます。以下は本作の開発者へのインタビューです。



――まずは自己紹介をお願いします。

『Unheard』制作団隊:チーム全体での回答ということで、「『Unheard』制作団隊」とします。私たちは上海のチームで(NEXT Studiosは上海と深センに拠点があります)、5人で開発しています。2人が企画担当、2人がプログラミング担当、1人が美術担当です。

――本作の開発はいつどのようにして始まったのでしょう?

『Unheard』制作団隊:実を言えば、私たちは当初、謎解きのミステリーゲームを開発する予定はなかったのです。ただ、誰も体験したことのないゲームを開発することだけを考えていました。開発チームは全員映画が大好きで、本作の創作に当たっては紆余曲折がありましたが、自分たちの好きな映画を振り返ってみることで意見を集約させました。ガイ・リッチー、クリストファー・ノーラン、寧浩、三谷幸喜などの映画監督の代表作品における砕片化、多角性、タイムラインの分断などは、私たちが最も好きな手法です。私たちはこれらをゲームで再現できないかを考えました。

しかし開発当初は美術担当が足りず、実写によるインタラクティブムービーは予算がかかるので現実的ではありません。ならばスマートフォンで音声を録音して疑似的なドラマを作るのはどうかと思ったのが、本作開発のきっかけです。私たちは没入型シアターがとても好きなので、オープンスペースでループする物語の中を探索できないか試していました。最後には、プレイヤーが探索中に何らかのフィードバックが得られ、またプレイヤーに何かしらの明確な目標を与えられないかということで、推理もののような謎解きを設定しました。これらが集約され、現在のシステムになったのです。

――本作の特徴を教えてください。

『Unheard』制作団隊:本作はただストーリーを追うだけでなく、またただ謎解きをするだけでもなく、これらの結合点を探し出そうとしました。最初の内は紆余曲折があり、多くのデザインミスを繰り返しました。ただこれらの失敗の蓄積は無駄にはならず、最後に音声によるストーリーを試してみたところ、やっと好評を得ることができました。ある方は「このようなタイプのゲームは遊んだことがない」と言いました。私たちはこれをゲームの核心として発展させたことで、現在の形が出来上がったのです。

本作を開発するにあたって、多くの困難に出会いました。まずは、やはりストーリーです。本作は伝統的なノベルゲームとは違ったシステムのため、創作方法も新しいものにし、それに合わせてストーリーも未知のものにしようと、私たちは一歩一歩模索していきました。例えば恋愛ものや家庭ものなど、多くのタイプのストーリーをテストしました。美術担当がマップを描き、音声の録音も完了し、さて出来上がったものと言えば、プレイヤーにとっては無味乾燥のものでしかありませんでした。

結論としては、ストーリーが面白そうだからと言って、遊んでみて面白いとは限らないということです。私たちはこれらのストーリーを没にしてやり直しを繰り返しました。没になったストーリーをどれだけ書いたかわかりません。最後に残った、本作に適したストーリーというのは、これらの思考錯誤の末に出てきたものなのです。これが私たちにとって一番大変だったことです。

もう一つの困難は、英語版の開発です。一般的なゲームの英語版は翻訳作業をするだけですが、本作では音声もすべて英語で録り直さなければなりません。さらに面倒なことに、中国語と英語ではストーリー上での会話時間が完全に違うのです(注:本作では会話中に別の場所でもストーリーが進行するため、開発に当たってはタイムラインの管理が重要)。中国語であれば時間が合っているので、会話の後に部屋から出て、誰かに出会うということができます。

しかしそれを英語に翻訳した場合、時間が合わないため、部屋から出たときに誰とも出会わないという事態になります。私たちは「脚本を変更するか、録音を調整するか」をしなければなりませんでした。そのため英語版の開発では、すべてのステージを作り直さなければならないという、莫大な代価を支払うことになりました。しかしこれには良い点があります。中国語版と英語版ではプレイ体験がかなり違い、新しい別のゲームをプレイしていると言ってもいいでしょう。英語のできるプレイヤーはぜひとも英語版もプレイしてください(英語のヒアリングテストにもなります)。

――本作が影響を受けた作品はありますか?

『Unheard』制作団隊:私たちは本作を開発するに当たって、多くの没入型シアターの作品を参考にしました。例えば「スリープ・ノー・モア」などです。また映画では「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」「メメント」「ラヂオの時間」「THE 有頂天ホテル」「クレイジー・ストーン」「恋はデジャ・ブ」、テレビドラマでは「ウエストワールド」などです(その他の作品名も全部書いたらとてもとても長くなります)。

映画や演劇は私たちに群像もの、砕片もの、ループものなどの様々な手法のヒントを与えてくれました。当初開発チームは小規模で、並行して起こる多数のストーリーラインを作るために、複数の人たちが物語を音声で語っていくスタイルのデモを開発しました。出来上がったものの評判が良かったので、以後の開発は音声によって人物を表現し、音を聴いて探索を進めるというスタイルを堅持することにしました。

――本作の日本語対応予定はありますか?

『Unheard』制作団隊:日本でも多くの推理ゲームが受け入れられているので、日本語版の可能性は排除しません。しかし今は時間の問題で、実際に取り掛かれるような段階ではありません。

――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。

『Unheard』制作団隊:できれば日本の読者の皆様に、私たちのゲームのことをもっとよく知ってもらいたいです。日本語版が出る前に、ぜひとも英語版を試してみてください。皆様のご支持とご愛顧に感謝します。

――ありがとうございました。



インタビューでもあったように、別の言語にした場合、中国語とはしゃべる速度や分量が違ってきますので、タイムラインなどすべて作り直しになってしまいます。日本語版は残念ながらまだ予定されていないようですが、英語版があるだけでもすごいことだと思いました。ゲームのスタイルとしてかなりの可能性を感じますので、日本人声優による日本語版が出ることを期待しています。

製品情報



※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字・繁体字を日本の漢字に置き換えています。

■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国ものを書いている作家。母は台湾人。人生の大半を中国と台湾で過ごしています。シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を細々と運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら
《渡辺仙州》

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