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中華ゲーム見聞録:横スクロール型ホラーADV『彼岸画廊』中国のブラック企業で働く社畜を悪夢から救え

「中華ゲーム見聞録」第47回目は、ブラック企業で働く社畜の主人公を操作して謎を解いていく横スクロールの2Dホラーアドベンチャーゲーム『彼岸画廊(Nether Gallery)』をお届けします。

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中華ゲーム見聞録」第47回目は、ブラック企業で働く社畜の主人公を操作して謎を解いていく横スクロールの2Dホラーアドベンチャーゲーム『彼岸画廊(Nether Gallery)』をお届けします。

本作は紅手工作室(HongShou Studio)によって4月26日にSteamで配信されました。横スクロールの2Dホラーゲームと言えば、台湾インディーデベロッパーのヒット作品『返校』が有名かと思います(新作の『還願』は残念なことになってしまいましたが)。『返校』は台湾の歴史や風俗を取り入れた作品になっていましたが、本作は中国の現代社会のリアルを取り入れたことで好評を博しています。

中国では「996」が社会問題になっており、本作でもテーマの1つになっています。これは朝9時から夜9時まで週6日働くことを意味し、中国の多くのIT企業がこの労働時間で勤務させられているという現状があります。大手IT企業「アリババグループ」の会長である馬雲(ジャック・マー)が今年の4月に「996で働けるのは幸せなことだ」「アリババに入るなら12時間労働の準備をしろ。そうでなければ何をするためにアリババに入ったんだ?」などの発言をし、炎上したことで慌てて撤回したという事件もありました。

経営者の目的は「会社を大きくすること」なので実際に996以上働いている人は多く(中国の経営者は本当によく働く人が多いです)、馬雲がそう言いたくなる気持ちも分からないでもないのですが、労働者の目的は「賃金」なので賃金以上の労働を求めるのはどうかという気もします(「だったら賃金上げろ」という話にしかなりませんし。「夢」や「やりがい」で賃金を据え置きにするテクニック?も無くはないですが)。ただ中国は日本と違ってまだまだ労働者の立場が弱く、日本の比ではないレベルのブラック企業が普通に存在していたりします。


本作の主人公ですが、いわゆるブラック企業で働いている社畜です(ちなみに「社畜」という言葉は日本から輸入されたもので、近年中国でも使われるようになってきました)。毎日悪夢に悩まされており、しかもうつ病で薬を飲まなければならないといった状況。何だか重そうな話ですが、さっそくプレイしていきましょう。

悪夢の始まり



オープニングムービーが流れた後、夜の公園のようなところからゲームがスタートします。白い袖なしシャツを着ているのが主人公の呉白。先ほどからひどい頭痛があるようです。操作ですが、移動先をクリックすることで歩くことができます。とりあえず画面右へ向かっていきましょう。


少し進むと「?」マークの付いた鳥の巣を見つけました。クリックして調べることができるという意味ですね。鳥の巣の中には羽根がありますが、高くて手が届きません。必要アイテムのようですが、後回しにしましょう。


さらに進むと、木の中に巨大な目が。羽根を要求しているようです。先ほどの羽根のことのようですね。今は取ることができないので、ここもいったん保留します。


ベンチのそばで杖を入手。これで鳥の巣をひっかければ羽根が取れそうですね。さっそく先ほどの場所に戻りましょう。


画面右下のカバンをクリックしてアイテム欄を開き、杖を鳥の巣の位置にドラッグします。これで羽根を手に入れることができました。先ほどの木の目のところへ持っていくと、木の目はさらに別のアイテムを要求(取り方は省略します)。そのアイテムを持っていくと、「縄」をもらえます。


画面左下のスマホアイコンが振動しました。クリックしてみると、メッセージが届いています。「世界はもう限界だ。逃げろ」とのことが書かれていますね。「逃げろ」ということは……。


画面右側から化け物が襲ってきました。横スクロール型2Dホラーゲーム恒例の追いかけっこです。追いつかれないよう、すぐに左側へダッシュ。化け物の足が結構速い。逃げ切れるか……。


化け物に追いつかれる前に画面左端に到着。暗転した後に、たどり着いたのはどこかのトイレ。洗面台に血が貯まっていますね。ドアが閉まっているので、脱出する方法を考えなければなりません。いわゆる「脱出ゲーム」的なものです(謎解きについては伏せておきますが、それほど難しくはありません)。トイレを抜けた後には反射神経を試される場面もあります。

変わり映えのない朝



トイレのある建物を抜けると、どこかの街角に出ました。黒猫がいるのでついていきます。すると黒猫はドアの前で止まり、呉白に向かって鳴きはじめました。「中に入れ」ということでしょうか。


建物の中には女性がいました。「彼岸画廊にお帰りなさい」と言っています。ゲームタイトルがここで出てきましたね。しかし呉白はここへ来たことがないので、「お帰りなさい」と言われた意味が分かりません。


「ご自由に絵をご覧ください」と言われて壁の絵を見に行くと、辺りが光に包まれました。そして目覚まし時計の鳴る自分の部屋のベッドで目を覚まします。どうやらすべてが夢だったようです。


起きて目覚まし時計を止め、出社の準備をします。何をするかはスマホのメモアプリに記載されています。まずは歯を磨いて顔を洗うため、洗面所へ向かいましょう。それと壁には呉白の母親の写真が飾ってあります。亡くなってしまったのでしょうか。


家の洗面所は、先ほどの悪夢の中で出てきたのと一緒ですね。何か関係があるのかもしれません。とりあえず歯磨きと洗顔を済ませてしまいましょう。会社に遅刻するとまずいですからね。


この家ではウサギをペットにしていました。朝の日課であるエサやりをこなします。それから服を着替え、薬を飲んで会社に向かいましょう。薬はおそらくうつ病用のものかと。


アパートの外に出ると、スマホにメッセージが3件届いていました。そのうち2件は借金の催促です。経済的にも苦しい様子ですね。残りの1件は「2016年4月12日にカタリナ彗星が地球に接近し、肉眼で見ることができる」とのニュースです。ゲームの舞台は2016年のようですね。そして今日は4月11日。彗星の接近は明日です。


呉白の住むアパートの近くにはスーパーと、公園へつながる道があります。公園の方は害虫駆除をしているので入ることができません。スーパーに入ってみると、店員のお兄さんがスマホで音楽を聴きながら接客していました。明日接近する彗星に興味があるようで、「彗星が接近すると地球の磁場に影響を与え、多くの不思議な現象が起こるみたいだ」との話をしてくれました。

ちなみに中国では、レジの店員がスマホで動画を観たりゲームをしたりというのは、「客への対応はちゃんとやっているので、それ以外の時間はどうしようが自由」という合理的理由から、案外普通に行われています。食事も普通にレジで仕事しながら食べてますし、客としてもその方が気楽な気がします。ただ沿岸部の都市ではサービス競争が激しくなってきたので、日本並みの接客をする店も多くなってきました。

ブラック企業に出社



会社に到着。受付のお姉さんはスマホを見るのに夢中ですね。先ほども述べたように必要な仕事さえしていればいいので、気にすることはありません。タイムカードを通してから職場へ向かいましょう。ちなみに2回遅刻するとクビになるそうです。


プログラマーの仕事にはノルマがあるため、先ほどの店員や受付のように「スマホで動画を観ながら」というわけにはいきません。職場では社畜……ではなくて同僚たちが必死でキーボードを叩いています。

同僚たちも彗星に興味があるようで、「地球に落ちてきたらどうしよう」「世界が滅びるかもしれないね」「それはいい。休みが取れるじゃないか」などのブラック企業ジョークを飛ばし合っていました。


自分の席に着いて仕事を始めます。パソコンを起動させると、論理回路を組み立てるミニゲームが始まります。チュートリアル的なものなので難しくはありません。すぐ解けると思います。


仕事を終えて、休憩のためにトイレへ行きました。しかし紙がなくて入ることができません。紙を探しに行かなければならないのですが、ちょっとわかりにくい場所にあります。ヒントは会社の入り口。


トイレを終えて席に戻ると、社長から呼び出しが。すぐに社長の元へと向かいます。先ほどの仕事にダメ出しをされ、「やり直せ。終わるまで家に帰るな」と言われました。


終わったときには辺りは暗くなっていて、同僚は全員家に帰っていました。しかも会社の入り口のドアがロックされてしまっていて、外に出ることができません(ひどい)。壁にあるボタンに番号を入力すればロック解除できるようですが、肝心の番号もわかりません。会社内を調べて番号を探しましょう。


家にたどり着くと、ペットのウサギがお出迎え。やはりペットが家にいると和みますね。呉白は寝る前に、壁に貼られた母の写真の前で本を朗読するのを日課にしています(理由はゲームクリアまで遊べばわかります)。小さな蟻の物語で、「広い世界に興味があるのに、怖くて隊列から離れることができない」といった内容です。

悪夢再び



また夢の世界に入ってしまったようです。自宅のあるアパート4階の様子がおかしいことに気付いた呉白は、ペットのウサギが心配なので急いで階段を駆け上ります。


自宅の前で待ち構えていたのは、巨大なナメクジの化け物。ゲームスタート後の公園で襲ってきたやつですね。よく見るとワイシャツに赤いネクタイをしており、呉白の会社の社長に似ているような……。自宅に戻るには、撃退する方法を考えなければなりません。壁に「Solt」と書かれているので、塩を探せばよさそうです。ナメクジには塩ですね。


アパートのそばのスーパーに入って塩を探しますが、どうやら売り切れてしまったようです。最後の一袋はスーパーの店員が自分で買って、持って帰ったとのメモがありました。壁に店員たちのシフトと電話番号が書いてあるので、スマホを使って電話を掛けてみましょう。


電話を掛けても相手は出ませんでしたが、代わりにスマホにメッセージが届きました。「アパートの部屋の前まで来れば塩を渡す」とのことです。行ってみると箱が置いてあります。ダイヤル式のロックがあるので、謎解きをして開けましょう。


塩を持って巨大ナメクジに突っ込んだら画面が暗転。アパートの前に戻されてしまいました。どうやら食われてしまったようですね。塩だけでは倒せないようです。「ナメクジを退治するには塩水」という情報があったので、水を探して塩水を作りましょう。


塩水を作製して、なんとか巨大ナメクジを撃破。ここの謎解きはちょっとわかりづらかったです。撃退後、「記憶のカケラ」を手に入れました。


巨大ナメクジの守っていたドアの先には、彼岸画廊がありました。先ほどの「記憶のカケラ」を壁の額にセットするようです。ちなみにこのカケラの数でエンディングが変化します。


額に現れたのは、呉白の初仕事のときの絵です。「2015年3月24日」とあるので、昨年のことですね。「人生で初めての仕事。とても良いわけでもなく、とても悪いわけでもなく」とのメッセージを送っています。母親に送ったものでしょうか。


そして目が覚めると、自分の部屋に。またいつもの一日が始まります。歯を磨いて顔を洗って、ペットに餌をやって、着替えをして会社へ行く。毎晩の悪夢から逃れられる日は来るのでしょうか。この先は自身の目で確かめてみてください。

現代中国の労働問題と親子の絆の物語


本作はホラーゲームですが、基本的にはパズルゲームや推理ゲームのような謎解きが中心になっています。アイテムを探し出せばどうにかなるというものではなく、頭を使って考えなければ解けないものが多々あります。ただすごく難しいというわけでもなく、絶妙なバランスの難度かと思います。またストーリーについてですが、現実世界でもうつな展開になっていきます。あまりにもあまりな社畜の現実に、現実と夢、どちらが本当の悪夢かといった感じでした。


それと現代中国における労働環境の風刺以外にも、親子の絆がテーマになっていました。レビューで「泣いた」のようなコメントがいくつもあったので筆者も最後までクリアしましたが、確かに泣けました(ちなみにエンディングは2種類あります)。ハッピーエンドとまではいきませんが、救いがあったのがせめての救いとも言いましょうか。全体的には悲しい物語です。

本作は中国語以外に英語がサポートされています。ゲーム中のテキストはそれほど多くなく、演出で見せるタイプのゲームなので言語の壁はそれほど高くないかと思います。「幸せとは何か」「人生とは何か」ということについて考えさせられる作品でした。

製品情報



※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。

■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国の歴史ものを書いている作家。母は台湾人。人生の大半を中国と台湾で過ごす。中国の国立大学で9年間講師を勤め、現在台湾在住。シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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