Bohemia Interactiveより2019年7月26日に配信開始となった、ミリタリーサンドボックス『Arma 3』の拡張パック「Contact」。硬派なミリタリー物というイメージが強い同作において“宇宙人の飛来”をテーマとした異色の拡張パックです。本記事ではそんな同作の内容をお届けします。
『Arma』とは?
いきなり拡張パックの内容に入る前に、まずは簡潔にゲームとしての『Arma』のおさらいを。Bohemia Interactiveが開発する『Arma』シリーズは、一般的なリアル系シュータータイトルに見えるものの、実際には「ミリタリーサンドボックス」とも呼ばれる独特のゲーム性を持っています。具体的には、読み込んだ「ミッション」にすべてが左右される形になっているというものです。
公式のミッションは基本的にはミリタリーもの(『Arma 3』では近未来が舞台)が主ですが、その中にもオープンワールド風のものがあったり、カットシーンを主体として構成されているものがあったりと、多種多様です。ミッションエディターも組み込まれているため、ユーザーは単純な軍事衝突ミッションなら簡単に編集可能。スクリプトを駆使すれば、非常に多岐に及ぶ内容が楽しめます。
ちなみに、同作から派生した『DayZ』や『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』も(グラフィック面の不足などに目を瞑れば)基本的なゲーム内容を『Arma 3』本体のみで再現可能だったりもします。
“ファーストコンタクト”を描く拡張パック「Contact」
そんな『Arma 3』に今回登場した拡張パック「Contact」。『Arma 3』の番外編となる本作では、本編と異なるSFとして、突如地球に現れた宇宙人とのファーストコンタクトを主題にしたキャンペーン“第一次遭遇”が収録されています。
また、同作の舞台となる新たなマップや、各陣営の森林迷彩などの追加装備類が実装されます。更に“第一次遭遇”キャンペーンでの利用を前提とした特別な装備類(他キャンペーンで利用しても基本的には外見のみの効果になる)も多数追加。
なお、キャンペーン“第一次遭遇”は前述した装備や、宇宙人関連要素を始め、多くの特別なスクリプト依存の要素が導入されている他、通常のリアル系の内容との区別を図るため、専用のトータルコンバージョンMod上でのみ起動する仕様となっています。このModはシングルプレイでの利用が前提になっていることにも要注意です。
“第一次遭遇”序盤を紹介
“第一次遭遇”キャンペーンが始まると、早速戦場の景色が目の前に広がります。プレイヤーである技術兵“エイデン・ラッドウェル”は上官の指示に従いながら作戦を進行していきますが、なにやら違和感が。
進んでいくと、ある兵舎の中のコンピューターのハッキングを要求されるのですが、そこで背後に敵兵が侵入、応戦するまもなく銃口が火を放ち……というところで真実が判明。冒頭からの行軍はすべてリヴォニア国防軍と米軍との共同演習の一幕でした。惜しくも目的を達成できなかったものの、次の訓練へと移ることに。
プレイヤーがキャンペーン中常にお世話になる“電磁スペクトル装置”を受け取ると、今度はその実演に移ります。この装置は音声信号の解析の他、ドローンの機能の一時停止なども可能なスグレモノ。ここである程度操作に慣れておくと良いでしょう。
“電磁スペクトル装置”の基礎教習が終わった後は、故障したレーザー指示器を修理し、無人機による爆撃訓練の見学……となるところでしたが、異変が発生。異常な動作を示した無人機は、あろうことか訓練地帯へと誤爆。プレイヤーが急いで現場へ向かうと現場の一角が崩れており、そこには謎の植物状の物体が……。ここで、本作のプロローグは終了。2週間後へと移行します。
2週間後、事故現場はリヴォニア国防軍に「危険である」と閉鎖され、米軍も早期の撤退を促されることに。プレイヤーは誤爆目撃時共に居た知人の“ジャック”とともに廃棄物の投棄へ向かいますが、途中でジャックからの突然の停車指示。ジャックの指示に従い車を降り、軍の無線をキャッチすると、そこには検問より先では「射殺も辞さない」と不穏な気配が……。
とにかく焼却所へと到達すると、ジャックからとんでもない提案が。なんと、この先にある誤爆地点を確認しようというもの……。結局はジャックに乗せられる形で指定のポイントへと向かうことになったプレイヤー。ここからリヴォニア国防軍は、こちらを視認次第容赦なしに発砲してきます。敵は決して現地ゲリラではなく、れっきとした正規軍。見つからないことを優先しつつも、なるべく迅速に行動しましょう。
目的地に到達すると、先日の誤爆地点に謎のドームが建設されていることが確認できました。ジャックいわく、その奥のヘリポートにも何かがある……ということで、今度はよりによって工場の更に奥まで向かうことに……。基本的に本キャンペーンでもサンドボックスたる『Arma』らしく、目的さえ達成できれば過程は問われません。慎重に迂回するもよし、一気に駆け抜けるもよし、ランボーのごとく振る舞うのもよしです。
次の目的地周辺に到達すると、そこは何らかの調査現場らしきところでした。ここで周辺の兵士を安全に遠ざけるための音声信号発信チュートリアルがあります。本キャンペーンでは、この手段を多用することで大半の戦闘の回避が可能となるので、銃撃戦に自信がないユーザーはぜひとも覚えておきましょう。
ともあれ調査現場に立ち入ったプレイヤー。そこにも何らかの植物らしき物体が……情報を得ようと近くのPCからUSBメモリへとデータのコピーを行っているとヘリが襲来。絶体絶命のピンチですが、ここで再び謎の現象が発生しヘリは墜落。急いでその場から逃げ出すことになります。
合流地点で信号弾を打ち上げた挙げ句、合流予定の小屋を燃やすなど、更なるトラブルメーカーっぷりを発揮するジャック……彼に呆れていると、空に謎の青光が。
見上げるとそこには巨大な宇宙船の姿……。ここで“第一次遭遇”キャンペーンの序盤は終了。記事掲載の映像ではこの後の、同作の転機となる中盤の開始ミッションを紹介しています。
序盤が過ぎると、転機を経て本格的にゲーム性が強くなる“第一次遭遇”キャンペーンですが、全体としては「職業ものシミュレーターゲーム」に近い体感でした。基本的にはスペクトル装置を切り替えながら(“R”キーで大きな周波数帯を切り替えられるのにも要注意です)敵の位置を把握し、通信で遠ざけていくことでほとんどの銃撃戦を回避できます。
その特徴は、本作にて導入された「危険地帯」というギミックにも現れています。設定にもよりますが、通常『Arma 3』では任意の場面でのセーブ及び、移動時間の加速機能などがサポートされています。しかし、“第一次遭遇”キャンペーン中盤以降に登場する「危険地帯」ではこの2つが無効化。緊張感のある状況でのプレイとなります。正しく機器を操作していればほとんどの戦闘を回避できることもあり「全く把握していなかった敵に撃ち殺される」という事態になることは少ないでしょう。
ちなみに、後半にはアクション満載のクライマックスも。銃撃戦が得意な方はお楽しみに。シリーズ初見ユーザーには少々荷が重いところもあるので、心して掛かりましょう。
ストーリーに関して言うと、本作はあくまで“軍事環境下での不意の宇宙人とのファーストコンタクト”というギミックを用いたSFスリラーであるといった印象です。そこで展開される物語は、決してアクション映画のようなものではありません。
しかしながらゲームプレイ自体は地に足の付いたもので(少々ネタバレ気味ですが、物語のかなりの分量において、プレイヤーらの目的は“宇宙人が地球に致命的な影響を及ぼす生態・ウィルスを所有していないか”の検証に充てられている)、その点さえ理解しているのであれば良質な低予算映画を体感した気分になれるでしょう。プレイヤー達はエイリアンに対して慎重極まりない態度で接しますが、その一方で「人命」が軽く見られているところも「低予算映画」と思えば一種の笑いどころかもしれません。
ただし「低予算映画」らしさはプレイ時間・ボリュームにも言えることで、小粒な印象は否めません。途中のオブジェクティブで迷わなければ、5時間程度でエンディングまで到達できるでしょう。人によっては消化不良感もあるかもしれません。
既存ユーザーにとっては、DLC導入環境下かつ専用スクリプトを利用しないと宇宙人関連コンテンツが稼働しないというのも残念な点と言えるでしょう(マルチ向けの「世界侵略: ロサンゼルス決戦」調ミッションなどを作りたかった人もいるかもしれません)。
しかし、『Arma 3』というタイトルの入り口としては、とても魅力的なコンテンツとも言えます。このSFスリラーをきっかけに、「リアル志向」に留まらないサンドボックス軍事ゲームとしての『Arma 3』という作品に興味を持ったのなら、その先には多種多様なミッション&シチュエーションが待ち受けています。
『Arma 3』拡張パック「Contact」は3,200円でSteamにて配信中。本体セットの『Arma 3 Contact Edition』も4,420円で配信中のほか、本体+全DLCの内まだ所有していないものを安価で一括購入できる『Arma 3 Ultimate Edition』も配信中です。