河南省大飢饉を描く過酷なローグライク『A story of 1942:The Henan Famine』【中華ゲーム見聞録】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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河南省大飢饉を描く過酷なローグライク『A story of 1942:The Henan Famine』【中華ゲーム見聞録】

「中華ゲーム見聞録」第59回目はローグライクゲーム『A story of 1942:The Henan Famine』のプレイレポートをお届け。舞台は第2次世界大戦時の1942年、河南省で実際に起きた大飢饉がテーマです。

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河南省大飢饉を描く過酷なローグライク『A story of 1942:The Henan Famine』【中華ゲーム見聞録】
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中華ゲーム見聞録」第59回目は、第2次世界大戦時の1942年を舞台に、河南省で実際に起きた大飢饉がテーマのローグライクゲーム『A story of 1942:The Henan Famine』をお届けします。

本作はNewbie Studioによって、10月8日にSteamで配信されました。河南省の大飢饉をテーマにした作品と言えば、中国の近代小説「温故一九四二」が挙げられます。映画化もされた作品で、日本でも翻訳出版されました。作者の劉震雲は河南省出身の飢餓難民の子孫で、ノンフィクションのルポルタージュ的手法で描かれています。

1937年の盧溝橋事件以降、日本と中国は全面戦争へと突入していきました。実は両国とも宣戦布告なしに戦争していた状態だったのですが、1941年の日米開戦を契機に蒋介石が日本に宣戦布告、枢軸対連合の第2次世界大戦が本格化していきます。

河南省は中国の中心にあり、現在でも農業の盛んな地域なのですが、1942年に旱魃とイナゴの害で大飢饉が発生します。日本との戦争で軍糧が必要だった国民党政府は、この状況下でも農民から重税を搾り取りました。被災民3000万人、餓死者300万人というこの大飢饉を救ったのは、皮肉なことに日本軍だったといいます。


河南省への侵攻を始めた日本軍は、軍糧を農民に分け与えました。もちろん人道的支援というわけではなく、河南省を支配下に置くのが目的です。一方、農民たちも農民たちで、自分たちを苦しめた為政者への復讐の機会を得たことにより、各村で反乱を起こしました。日本軍が河南省へ侵攻したときの兵力は約6万でしたが、このことによって河南省にいた30万の中国兵に勝利します。

中国において当時の日本軍は「絶対悪」なのですが、「温故一九四二」ではこの中国近代史のタブーとも言われる河南省大飢饉の顛末を描いています。「国のために餓死するか、亡国の徒となっても生き延びるか」という選択において、農民たちは後者を選びました。ひとりの人間にとっては、生き抜くことこそが国や政治よりも重要なのでしょう。このあたりは大躍進や文革期を扱った余華の小説で映画にもなった「活着」(邦題「活きる」)にも通じるものがあり、中国近代小説のテーマの一つとも言えます。

日本軍の関与については諸説あって小説の内容をそのまま鵜呑みにはできませんが、大飢饉が発生して多くの人たちが亡くなったことは紛れもない事実です。本作においては戦乱渦巻く1942年の河南省を舞台に、主人公たちは荒廃した村からの脱出、そして生き抜くための旅に出ます。重々しいテーマですが、いったいどんな作品に仕上がっているのか、さっそくプレイしていきましょう。

生き延びる道を求めて



ゲーム開始時には2000の資金が与えられ、これでキャラやアイテムを購入します。本作では4人までのパーティを組めますが1人につき700のお金がかかるので、開始資金では最大2人までのパーティしか作れません。仲間は旅の途中で加わることがあります。

登場人物にはそれぞれ「品性」と「特性」があります。「品性」はその人物の性格や信念、「特性」はスキルのようなものです。善良なキャラや自己中心的なキャラなど、キャラごとに違いがあります。画像の少女は善良な品性で、食事時の飢餓回復効果が高い「節食」の特性を持っています。


アイテム購入にもお金が必要なので、最初はアイテムを装備した1キャラでプレイすることにしました。少女は李放氷(名前は毎回ランダムで変化)と言い、学生です。家に戻ったときには戦乱で家族がいなくなっていました。家族を探すため、村を離れて旅に出ます。


ゲームシステムですが、キャラは自動的に右へと歩いていき、人や物と遭遇したときに止まってプレイヤーの指示を待ちます。システム自体は難民ローグライクゲーム『Home Behind』と似ていますね。左上のステータスですが、現在「軽傷」「飢え」になっています。食べ物をどこかで手に入れないといけません。


赤十字の職員らしき女性がいました。ここでキャラが動きを止め、その品性に合った行動を提示してきます。ここでは物乞いをするアイコンが出てきました。


アイコンをクリックして実行し、「食べ物」「薬品」「材料」「その他」の4種類からもらうものを選択。今はお腹がすいているので、食べ物を選びます。しかし「私も探しているわ」と断られました。


またしばらく右へ歩いていくと、次に現れたのはカメラをぶら下げた眼鏡の男。新聞記者でしょうか。「温故一九四二」では大飢饉時に蒋介石が緘口令を敷いたとの話がありましたが、実際のところ当時の中国内メディアでは普通に報道されていたようです。


眼鏡の男は物々交換を提示してきました。レンガ1と引き換えに、貨幣1を渡すとのこと。説明文には「毎日価値が落ちる法定貨幣」と書かれています。こんな状況でお金を渡されても使い道がなさそうですし、そもそもレンガを持っていません。ここは断りましょう。ちなみにスタート時のキャラ購入で余ったお金は、100につき貨幣1に変換されます。

厳しい生存競争



さらに進んでいくと、野犬と出くわしました。犬も飢えているので人を食おうとしています。少女はどこからか小刀を取り出し(アイテム欄には無い)、勝手に野犬との戦闘を始めました。


少女と野犬の、文字通り食うか食われるかの戦いを制したのは少女。野犬を解体し、「干し肉」を手に入れます。まさに弱肉強食の世界です。しかし野犬もただでは死ななかったようで、少女に出血のバッドステータスを負わせました。包帯がないので回復できません。

本作のパラメータですが、「飢餓」だけでなく「心情」もあります。精神状態の良さ、いわゆる「SAN値」ですね。これらの具体的な数字は出てきませんが、危険な状況になったときに左上にアイコンが表示されます。食事をすることによって回復しますので、干し肉を食べておきましょう。


「白面土」と言うアイテムもいつの間にかゲットしていました。これは「観音土」とも言われ、中国の飢饉を象徴する食べ物です。茶碗などを作るための白い粘土で、そもそも食べ物ではありません。

普通の土に比べて食べやすいことと(「土を食う」という時点でおかしいのですが)、人体に吸収されないことから、胃の中に入れば消化されずに空腹感を満たせる「食料」として使われていました。ちなみに排出もしにくいので、これが原因で死んだ人もいます。本作では「食べ物」として扱われており、食べると満腹度が4上がる代わりに、疾病が3上がります。


地面にアイテムが落ちていることも。マウスカーソルを合わせてクリックすれば取ることができます。道の脇の木の皮が剥けていますが、飢饉のときは木の皮を食べることも普通に行われていました。


次に人と出会ったとき、施しのコマンドが出てきました。少女の「品性」により、自分より困っている人がいると見捨てられないようです。先ほどの白面土を要求してきましたので、それを与えましょう。するとお返しとしてレンガ1・ボロ切れ1・貨幣1をもらえました。施しが一番利益があるような……。


アイテムもだんだんと豊富になってきましたが、重量オーバーで少女の歩く速度が落ちてしまっています。干し肉を食べて軽くしておきましょう。


箱を発見。開けると体力(画面左上)を消耗します。体力が0になればゲームオーバー。まだ37あるので、せっかくですし開けましょう。ちなみに中にあったのは白面土でした。これでしばらく飢えを凌げる……?


本作はサバイバルゲームらしく、アイテムを組み合わせてクラフトしたり料理を作ったりすることができます。ここで白面土をコネて野草を混ぜ合わせた料理(?)を作製。満腹度がなんと10も上がります。疾病も+2と白面土をそのまま食べるよりだいぶマシな一品です。


またもや野犬との戦い。しかし今回はリベンジされて殺されてしまいました。少女は飢饉から逃れることはできず、300万人の被害者のひとりとなったのです。

旅の仲間



次は物乞いの老人でプレイ。少女とは正反対のダークサイダーで、わがままな人物のようです。物乞い時の成功率が高く、また人と出会ったときに「盗みをする」のアイコンが出てきたりします。


物乞いの老人のコメントは「物乞いをしているときに肉をもらったけど食べなかった。あいつの家は5人家族で、4人は飢え死にした。本当に肉があったら、今まで残っているわけがない」。ちょっと考えると怖い内容です。


しばらくプレイしていましたが、少女のときと同じような位置で野犬に殺されてゲームオーバー。一人で野犬に立ち向かうのは難しいようですね。ゲーム開始時の人数を増やした方がよさそうです。


善良な農民の老人を少女と組ませて出発。「料理を作るときに体力が減らない」というスキルの持ち主です(本作の料理はアレなものばかりですが)。老人は家族を飢饉で失っており、生きることへの気力があまりないようです。家族を埋めたときも、「自分も一緒に穴に入って手間を省こう」と考えたとか。


パーティが2人だと、人と出会ったときの選択肢が増えます。少女は「施し」で、老人は「物乞い」。どちらかを選びましょう(性格によってランダムで決まるので、同じアイコンになることもあります)。


宿敵・野犬との戦闘。2対1なので苦戦することなく勝利しました。先ほどまで死因がすべて野犬だったので、ここを突破できれば道は開けたようなものです。ただ2人なので食料も2人分必要なのが難点ですね。ちなみに画面下の赤いバーは進んだ距離です。一番右に到達するとステージクリアになります。


画面右上の円は時間を表しています。夜になると自動的に野営を始めます。ここでは「仲間と話す」「寝る」の行動を取ることができます。話すと心情が、寝ると体力が回復します。また料理やクラフトをすることも可能(材料があれば)。朝になると出発してしまうので、体力回復などをしておきましょう。


ゴールに到達してステージクリア。ここで道の分岐があります。「道路」は道のりが短く、「河岸」は長いようです。また入手しやすいアイテムにも違いがあります。まだまだ旅は始まったばかり。この先の展開は自身の目で確かめてみてください。

今の時代の幸せを痛感するローグライク



本作はシステム的には前述した『Home Behind』と似ていますが、パーティを作れることや、条件を満たすことによってスキルが得られること、実際の歴史的事件を背景にしていることなどがあり、プレイ感覚は違います。特に食べ物については本当に悲惨な状況ですね。木の皮と白面土を組み合わせた料理(?)など、飢饉時に満腹感を得るためだけの食べ物が登場します。


パーティの場合、全滅するまでゲームを続けることができます。仲間が死んだときは、生き残った人たちの性格によって、埋葬したりそのまま放置したりといったアイコンが出てきます。また仲間が死んだことで、生き残った者が悲しんだりもします。

しかし本作をやっていると、今の時代がどれだけ恵まれているかを再確認できます。筆者も数年前に河南省に住んでいたことがありますが、食料がなくて飢え死にすることは滅多にありませんしね。ゲーム自体はカジュアルな作りなので(描かれる内容はカジュアルではありませんが)、近代中国の大飢饉を体験したい方はプレイしてみてもいいのではないかと思います。

製品情報



※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。

■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国の歴史ものを書いている作家。母は台湾人。人生の大半を中国と台湾で過ごす。中国の国立大学で9年間講師を勤め、現在台湾在住。人生の理念は「あまり知られていないけど、知っていると人生が面白くなるもの」を発掘・提供すること。シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。Twitterはこちら
《渡辺仙州》

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