本記事には『Marvel’s Avengers』のネタバレが含まれます。
クリア後の閲覧を推奨します。
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大人気アメコミシリーズのゲーム化作品である『Marvel’s Avengers(アベンジャーズ)』。延期されたという経緯もあって首を長くして待っていたプレイヤーの方も多いでしょう。筆者も記事作成のためPS4/PCのβテストに参加し、本作の発売には個人的にはかなり期待をしていました。マーベル・シネマティック・ユニバースの成功もあって、アメリカのみならず日本国内でも人気の高いマーベル社のアメコミの中でも「アベンジャーズ」は(ヒーロー大集合という)特別な意味合いのあるタイトルですから、直球に『Marvel’s Avengers』と題された本作には並々ならぬ力が入っていると推測されたからです。
まず最初に結論の一部を述べてしまいますが、本作には期待通り楽しめた部分と、そうではなかった部分がありました。楽しめた部分と楽しめなかった部分の乖離が激しいため総合して評価するのが難しい、とも感じています。筆者は「MCUは見ているが」程度でそこまで深いアメコミファンではないので、取りこぼしているネタがあるなど100%楽しめてはないかもしれないという点も加味して、ここから先のレビューを読んでくださると幸いです(ほとんどのプレイヤーがそうだとは思うのですが)。
またクリア後レビューですのでキャンペーンモードのネタバレを多く含んでいますが、「意外な展開」というものがあまりないストーリーラインですので未プレイで読んでしまっても(筆者の主観的には)大丈夫だと思います。が、気にする方はお気をつけ下さい!なお、今回のレビューにはPS4版を使用しています。
ド派手な演出で楽しいキャンペーン、魅力的なキャラクター
まず良い点から紹介していこうと思います。本作の白眉はなんといってもオリジナルの「アベンジャーズ」ストーリーが語られるキャンペーンモードでしょう。後の「ミズ・マーベル」である子供時代のカマラ・カーンで楽しみながら進んでいく「アベンジャーズ・デイ」からなし崩し的に戦闘になだれ込んでいく導入パートは非常に楽しいですし、演出もド派手でまるで映画を見ているかのようなライド感があります。
物語はその後五年後にジャンプし、解散に追い込まれたアベンジャーズ(おなじみの展開ですね)を再結集させ、美辞麗句で世界を実質的に支配しながら、インヒューマンを使った非人道的な実験を行うアドバンス・アイディア・メカニクス社、通称「AIM」との対決に向かっていきます。カマラ・カーンはオープニング後も本キャンペーンモードの「主人公」的な役割を一手に引き受けていますが、ヒーローオタクの少女がヒーローとは何かを学びヒーローらしく育っていくという成長譚は、スタンダードにアガる部分もあり素直に面白かったです。
アベンジャーズが一人ずつ集まっていく展開は王道で、最終的に全員仲間になることはわかりきっているわけですが、それでも新たに仲間になった各ヒーローを初めて操作する(冒頭ミッションでチュートリアル的に全ヒーローを少しずつ操作するパートがあるので“初めて”ではないですが便宜的に)際には「イヨッ!待ってました!」的にかなりテンションが上がりました。
個人的にはスーツをちょっとずつ装着していくアイアンマンや、ソーの再登場シーンが印象に残っています。ヒーローそれぞれの性格の違いやキャラクターの説明も的確で、本作が初見のプレイヤーにも分かりやすく、かつ説明的になりすぎない良いバランスで描かれていると思います。ヒーロー同士のセリフの掛け合いも楽しいです。
再集結したアベンジャーズはAIMを率いるジョージ・タールトン、後の「M.O.D.O.K.」との対決に向かっていきます。発売前、本作のヴィランがM.O.D.O.K.だと聞いた時(コミカルにも見えるデザインであることを知っていたため)「人物の造形がリアル寄りの本作においては浮いてしまうのではないか?」と不安を覚えたりもしましたが、人間時代のタールトンからの変化を徐々に見せることで説得力が増し、非常にいいバランスのデザインに仕上がっていました。M.O.D.O.K.や一部巨大ボスなどとの戦闘はかなりの大迫力で、プレイしていて最も楽しいパートでした。迫力あるヴィラン戦や魅力あるキャラクターなど、メインストーリー部は短いながらも満足度はかなり高かったです。
キャラクターの話が出たので、ちらっとカスタマイズ要素についても触れておこうと思います。残念ながら本作は装備アイテムで見た目が変化しません。が、その代わりに「コスチューム」というキャラスキンが用意されています。その他にもエモートやネームプレート、テイクダウンという要素を購入したり、ゲーム内でアンロックできます。読者の皆様と同じく筆者もあまりマイクロトランザクションというものは好きではありませんが、本作の場合は見た目にまつわるものしかないので、どうしても欲しいスキンがあるという場合以外は、あまり問題にならないでしょう。
ハイスピードで手応え感があるが問題もあるアクション
ゲームとしての本作の根幹をなすアクションパートも、目新しさは無いですが概ね楽しい仕上がりになっていると思います。攻撃などにはしっかりとした重みと手応え感があり、空中コンボなどが決まったときには爽快感があります。また、ある程度の広さのあるマップを探索して寄り道し、アイテムを探すなどのゲームプレイもなかなか良かったです。
現時点では6人いるプレイアブルキャラクターごとの差別化もなかなかよくできていたと思います。筆者のお気に入りはキャプテン・アメリカで、育てていくといろんな攻撃をパリィできるようになり、快適にゲームを進められました。スキルの演出もド派手で最初のうちは文句なしに面白かったです。
ただし、爽快に暴れまわれる時間はそう長くはないです。というのも、本作の難易度は高めだからです。特に大きな食らい判定のある遠距離攻撃などは対処が難しく、一回のミスでごっそり体力が持っていかれがちです。筆者の場合は、結果的に逃げたり避けたりを繰り返して遠距離攻撃をする消極的なスタイルに落ち着き、アベンジャーズらしからぬ地味な戦闘を強いられる区間もありました。「難しいアクションが好き」という場合でなければ、素直にイージーモードでプレイすることを強くオススメします。
マルチプレイによって難易度は若干緩和されます。特にA地点、B地点、C地点を守り抜くようなミッションは、味方がCPUだとフラストレーションが溜まりますから、マルチプレイに適していると言えるでしょう。筆者環境の問題なのかはわかりませんがほとんど野良ではマッチしなかったので(今まで1~2回した程度ですが)、マルチプレイで遊びたい場合は友人を誘って遊ぶのが無難です。
もちろんソロでもやってやれないことはないです。できれば通話しながらなどワチャワチャ遊んで(後述しますが)本作の作業感を緩和できれば、それが一番良いのではないかな、と思います。
育成要素は事前に予想していたより深みがあり、選択式のスキルがあるなどプレイスタイルによってさまざまなビルドを試せます。敵や宝箱からはランダムに装備アイテムがドロップされるので(やや定義が難しい言葉ですが)いわゆる「ハック&スラッシュ&ルート」的なゲームとしても遊ぶことができ、やり込めばやり込むだけ好きなヒーローを強化していけます。
装備の総合的な性能は「ギアパワー」という形で数値化され、レベルと並んでヒーローの育成度の目安になっています。ギアの強さにはさまざまなパラメーターが存在するので、おそらく装備品によるキャラクターの個性付けも行えるのですが、少々説明不足な感があり、システムの把握は難しいです。
問題点
本作の最大の問題点は、エンドコンテンツである「ウォーゾーン」でしょう。ときに理不尽気味に感じられるほど難易度が高い瞬間があり、ストーリー性が薄く、そしてなによりバリエーションが圧倒的に不足しています。出てくる敵の種類も少なければロケーションの種類も少なく、コピペのような目標を組み合わせたミッションを何度も何度も繰り返し遊ぶことになるので、だんだんうんざりしてきます。もちろん「ハック&スラッシュ&ルート」的なゲームに周回はつきものですが、本作では周回して装備を強めていくことに楽しさのようなものが感じられないのです。
周回が楽しくない理由の一つが、ヒーローのギアパワーが上がると連動してミッションのレベルも上がる仕様でしょう。そのせいで地道にレベリングしてできる限り楽な状態で高難度ミッションに臨むというような自由度はなく、常に一定の難易度の中で遊ぶことになるので、強化したヒーローの強さを非常に実感しづらい状態になっています。
先程言及したような難易度の高さもクリア後のウォーゾーンでは激化していますから、結果的にゲーム後半部は敵が固く、回避が困難な遠距離攻撃の威力は上昇し、必死にキャラクターを強化したところでミッションもその分難しくなる、というまるで賽の河原のような徒労感があるプレイフィールになっています。
もちろん、この仕様自体には良い側面もあり、常に一定の歯ごたえを感じていたいハードコアなプレイヤーにとっては嬉しいものだろう思います。しかし本作が「アベンジャーズ」を題材としたお祭りヒーローものだと考えると、「ハチャメチャにスーパーパワーを使って活躍する」というような爽快感は削がれていると言えるでしょう。難易度選択以上の何らかの選択肢があっても良かったのかな、とは思います。
また、マップにハマって動けなくなる、ゲームの進行が完全にフリーズして再起動を余儀なくされる、キャプテン・アメリカの顔面が崩れ眼球が飛び出る、など数多くのバグにも遭遇しました。延期の理由の一つがバグフィックスだったはずなので、元々はどれほどバグが多かったのだろうと逆に興味が湧いてくるぐらいです。
また、ミッションの説明文にもなぜか日本語に訳してないものが紛れ込んでいたりと、現状は雑な作りがどうしても目立っています。やり込めばやり込むほど良くない印象になりがちな作品なので、やり込み的なゲームプレイにあまり興味の無い方は、メインストーリーが終わったらすぐにやめてしまったほうが現状良いようにさえ思えます。
総評
『Marvel’s Avengers』はなかなか楽しいゲームです。優れたグラフィックと重めで手応え感のあるアクションがあり、メインストーリーは原作ファンのみならずとも楽しめるオーソドックスなもの。ボス戦も凝っていて面白く、「アベンジャーズ」という題材に興味があり、アクションゲームが苦手でないならばある程度は楽しめる作品です。
しかし、エンドコンテンツ部であるウォーゾーンにはかなり問題が多く、「アベンジャーズ」に興味がないアクションゲームファンに手放しで薦められる作品かというと、それはちょっと難しいかなとも感じます。バリエーションが少なく、繰り返し/引き伸ばし気味のミッションの連続に耐えられるプレイヤーはかなり限られるでしょう。現状では本作をプレイしていて「文句なく楽しい」と感じられる時間が、あまりに少なすぎるとも思っています。
無論これからのアップデート次第では変わってくる部分でもあるでしょうし、常に友人と遊べば繰り返しの辛さも緩和されるでしょう。なにせ(ハード限定のものもありますが)これからヒーローが追加されていくというのはかなり大きい変化なので、筆者としても楽しみにしています。
総合評価:★★
良い点
・演出がすばらしいメインストーリー
・キャラの掛け合いなどが楽しい
・重みと手応え感のあるアクション
悪い点
・理不尽気味に感じられる遠距離攻撃
・バリエーション不足のミッション
・ウォーゾーン
《文章書く彦》
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