日本のアイドル文化は昭和から根強く続く一つの歴史でもあります。明菜に聖子、ひろみに五郎と、今では声優やジュニアアイドルとそれは男女関係なく脈絡と続く一つのレガシー。そんな日本のAKB48などの近現代アイドル文化に触れた一人のロシア人青年が2018年に「Kickstarter」で投資を募ったのが『Idol manager』と言う作品でした。
主人公(プレーヤー)は弱小アイドルグループのマネージャーとしてグループの運営やアイドルの育成、音楽CDの制作と販売を行って経営を行うのを興業を主軸にし、日本一のグループに押し上げるのが目標のゲームです。
ですが、本作品はそんな芸能界の実際あるかどうか不明な暗部もテーマに内包しており、グループ内の派閥であったり、いじめなど過去にあまり例を見ない部分にも触れられているのが印象的な作品となっています。今回は事前発売前のメディア用キーを頂いたため、急ぎプレイレポをお届け致します。
テナント料より安いアイドルの給料
本作品にはストーリーモードとフリープレイという二種類のモードが存在します。フリープレイモードでは手持ちのスタート資金を元にグループを育てていく自由に遊べるモードになっていますが、ストーリーモードでは出資者である不二本とプレイヤー、ライバルプロデューサーとのトップアイドルグループへの道のりを追うゲームチュートリアルも兼ねたモードになっています。
物語は、激戦区のコンビニの雇われ店長であったプレイヤーが唐突に不二本氏より招かれ、小さなアイドルグループの経営を任されるところからはじまります。ありえないことに、氏の持つビルの一階を無償で貸与される上、経営もプレイヤーのセンスにほぼ任せるというトンデモな条件も込です。
とはいえ、ストーリーもフリープレイもやるべき内容にはそこまで変わりはありません。アイドルを雇い、事務所を運営するためのスタッフを雇い、必要な施設をビルに建築し。世にグループを売り出していくだけです。本プレイレポはフリープレイモードを軸に紹介致します。
施設や人員を増やせばそれに伴い人件費も必要になり、優秀なスタッフは能力に応じて給料も加速度的に増えていきます。それに加え最初に貸与されたフロア以外に施設を建造すればテナント料も発生し、更に週毎に必要な出費も増えていきます。それだけなら本作品は単純な経営シミュレーションであったでしょう。
本作品の闇ともいえる真に削れるコスト・・・それはアイドルの給料です。
アイドルは加入時から週5,000円の給料から始まり、設定で固定にしておくと可変せずそのまま雇用できます。入ったばかりだとグループに参加した高揚感で満足度も高いですが、かなりの稼ぎを上げているアイドルですら安いギャランティで使い倒せば不満も出てきます。ですが事務所にとってはそれがコスト削減というわけです。(編注:調べた限りでは、現実でも地下アイドルの中には本当にこのクラスの給料で働いていることを明らかにしている人もいるようで……)
本作品の経営部分はかなりシビアです。適当にアイドルを雇って売るだけでは早々利益が上がらず、運営は常にパトロンである不二本氏か銀行に金を借り続けることで経営を成り立たせていきます。不二本氏は即金で融資してくれますが、次回以降の貸し出しの前に必ず課題が与えられます。特定のジャンルの番組やCDの発売だったりと毎回変わります。課題が達成できなければ融資が受けられないため課題も非常に重要なポイントです。銀行であれば不二本氏よりも大きな金額を融資してくれますが、即金でなく借りるのに数週間の日数を消費し、その間に破産する危険性も秘めています。
そこでアイドルを酷使して稼ぐ方法として楽曲の販売やライブ・自社番組・テレビ・雑誌などのお仕事になってきます。しかし楽曲は短いスパンで発表すれば売り上げが下がり、テレビなどのお仕事ではスキャンダル次第では違約金を払わなければならないリスクをはらみ続けます。
そのためにもアイドルの身辺も把握する必要があれば、プロデューサーの圧力で無理やり彼氏と別れさせることも可能です。バレたりスキャンダルの元になることはランダムで発生するため予測はできません。仕事を抱えていればその分大きなリスクも抱えることになります。イベントも対応次第では賠償責任なしで逃れられることもありますが、大抵はネガティブな反応が多く、焦点となったアイドルにも大きなダメージが入る場合も・・・
スキャンダルはポイントとしても常に可視化され、スキャンダルポイントがあるとファンの獲得や売り上げにペナルティがつく場合もあります。一方、ポイントを使うことでグループの方向性の強引な変更やスタッフに責任を押しつけてクビにするなども可能で、場合によっては有効活用できることもありますが、基本的にはトラブルは起こさないことが一番です。スキャンダルを重ねすぎた場合もゲームオーバーとなるため、ある程度は防衛しましょう。
アイドルの人生を輝かせるのがプレーヤーの一番の仕事
アイドルをボロぞうきんの様に扱えば彼女たちはいつかケガで長期離脱したりとロクなことはありません。ですが、彼女たちを光り輝かせるのがプレイヤーの一番の仕事であり、ファンを増やして経営も盤石にしなければならないのです。
例えばライブで最高の結果を提供するのも一つですが、時には彼女たちのお願いを聞くのもグループの為には必要になってきます。彼女たちの希望は必ずしも全員が同じではありません。センターを目指す子もいれば、シングルに加わりたいというささやかな程度の願いを持つ子もいます。
アイドルの希望を叶えることで一時的にメンタルが強化される他、アイドルの持つ影響力も増加します。時には叶えづらい希望もありますが、センターとして使いたい優秀な子や影響力が必要な場合はできる限り叶えて上げると良いでしょう。
年の終わり際には毎回アワードという形で表彰が行われ、受賞した結果に応じてブーストが行われます。画像では最優秀プロダクションという賞でオーディションにプラスの結果をもたらします。受賞すると強力ですが、ノミネートされるだけでもブーストが行われるので狙えそうな賞は積極的に狙っていきましょう。
経営部分のタイトロープなバランスとジレンマ
本作品はビジネスラインを作ればある程度放置でいいというバランスではない難しさも魅力です。常にアイドルのため、ファンを増やすための行動や、事務所の資金繰りに追われ続けます。融資なしで黒字を上げられるといいのですが、中々そうはいきません。アイドルの人数が増えれば体調の管理などにも追われるようになり、とにかく編み目を縫うようにアイドルを管理していかなければなりません。
つい優秀な子はひいきしたり、プッシュし続けてしまうなどプロデュース業は波瀾万丈な世界です。とはいえ給料をほとんど上げずに使い倒すという矛盾に苛まれたり、実際の製品版ではアイドルと付き合うことで発生する危うげなルートの存在も示唆されています。
しかしながら裏の部分は裏の部分、表では彼女たちはアイドルとして夢を与え続ける存在です。合間に見せる仕事のイベントなどで彼女たちへの愛着なども増えていくでしょう。本作品はそんなアイドルという仕事の魅力の再認識もさせてくれます。
本作品はまだ成長する
本作品はSteamワークショップに対応していることでMODも簡単に導入できるようになっています。自分だけのアイドルを追加する他、イベントを増やしたりと作成自体も公式にツールやチュートリアルが用意されているため簡単に作ることが可能です。既にデモの段階でもK-POPに対象を絞った大型MODのリリースが予告されているほか、アイドルの魅力を掘り下げるイベントの追加MODなども既にリリースされています。本作品はMODがなくともタイトなバランスや、アイドルの泥臭い裏の部分など既に魅力がたっぷりですが、MODで更にその世界観も広げられるため自分の考える最高のアイドルマネージャーという世界に更に浸ってみるのも良いのではないでしょうか?
筆者は既にバッカー向けの事前デモ版も含め100時間以上プレイしている本作品ですが、プレイするたびに要素の追加や新しい魅力が増えていくため、これからプレイする正式版が今から非常に楽しみです。
芸能界という荒波に乗り自分のアイドルグループを世界まで広める、そんな一大事業にあなたも挑戦してみてはいかがでしょうか?
対応機種:PC(Steam)/Mac/Linux/ニンテンドースイッチ
記事におけるプレイ機種:PC(Steam)
発売日:2021年7月27日(Steam版)
記事執筆時の著者プレイ時間:121時間
価格:1,980円