128人対戦は本当に必要か?『バトルフィールド 2042』の「All-out Warfare」は多くの欠点を抱えている―議論の嚆矢となることを祈って【コラム】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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128人対戦は本当に必要か?『バトルフィールド 2042』の「All-out Warfare」は多くの欠点を抱えている―議論の嚆矢となることを祈って【コラム】

「多数の選択肢がプレイヤーに与える功罪両面」と「蘇生の困難化」「兵科システムの事実上の廃止による弊害」「マップの広さと変化の乏しさ」「強すぎるビークルとフル分隊(パーティー分隊)に寄った調整」について論じていきます。

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128人対戦は本当に必要か?『バトルフィールド 2042』の「All-out Warfare」は多くの欠点を抱えている―議論の嚆矢となることを祈って【コラム】
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メディア向けのレビューイベントと先行プレイを合わせて、既に20時間ほど、30レベルまでプレイしました。そこから見えてきたのは、深刻なゲームシステムの欠点です。

注意点として前書きさせていただきますと、かなり批判的な評価になります。まだゴールドおよびアルティメットエディション購入者のみの先行プレイという段階の作品に対するこうした評価には反発を感じる方も多いと思いますが、これは『サイバーパンク2077』でメディアが期待を無批判に煽り続けた反省からです。だからどうか、「期待しているゲームを批判するあのメディアは敵だ!」というような見方をせず、ファンコミュニティの仲間としてゲームをより良くするにはどうすればいいか議論させてください

何しろ本作は長期間アップデートしていくライブ型ゲーム。問題があれば解決されるはずです。もちろん、書き手としては最新作への期待感に乗じて煽る方が楽なのですが、これはBFシリーズの大ファンである筆者なりの誠意です。長くなりますが、(7000文字程度)一緒に考えていきましょう。なお、本記事ではプレイレポというより、分析に近い記事となっています。マップの印象やベータテストとの違いに関してはこちらを、ハザードゾーンに関してはこちらをご覧ください。

本記事では基本的に『バトルフィールド 2042(Battlefield 2042)』の「All-out Warfare」の問題点を分析しているのですが、世に出ているゲームの中でここまで万人受けする、完成度の高い大規模戦闘FPSは本作だけで、その点においては唯一無二の存在である、という点についてはご留意ください。(問題は多いものの)間違いなく『バトルフィールド 2042』は素晴らしいゲームです。

以下からはグラフィック、音声、ゲームシステムの3つの視点から『バトルフィールド2042』を論じていきます。ただし、プレイ出来たのは20時間超のみと膨大になりがちな『BF』シリーズのプレイ時間としては僅かなものです。そのため、建物の構造や武器バランスといった慣れや調査が必要な点には触れられていません。今回は、もっと根本的な「システム」そのものを論じていきたいと思います。

また、発売後、数百時間のゲームプレイで筆者の意見が変化する可能性も十分考えられます。総合したレビューは100時間程度プレイしてから行う予定です。

その前に……グラフィック&オーディオについて

本格的なシステムの議論に入る前に、グラフィックとオーディオのインプレッションをお伝えしましょう。

グラフィックは順当に進化したと言って良いでしょう。グラフィックはPCでは「高」設定でプレイしていたのですが、テクスチャは高精細ですし、草や木といった自然環境は『BF1』や『BFV』に引き続き素晴らしいものとなっています。PS5でも十二分に綺麗です。

地面にタイヤ痕が残るのも良いですね。

光が当たっている場合は全体的に美しいのですが、橋の下といった影になる場面ではのっぺりとしています。とはいえ、グラフィックは現時点のゲームの中で最高峰に近いものと言えるでしょう。

オーディオ(音響効果)に関しては、女性キャラクターの声が「だみ声」のようになるという不具合が見られましたが、それ以外に特段の不具合は感じませんでした。

私は耳に全く自信がないので、音響効果に関して語れることはないですが、なんとなく銃声に迫力が無いように感じました。私は『BF1』の破裂音が鋭く割れ、直後に低音が鳴り響く銃声や爆発音が好みなのですが、『BF2042』では「割れ感」が少なく、少し残念でした。

また、『BF4』と比べると明らかに機関部の金属が擦れるチャカチャカという音が小さくなっていました。ボルトアクションの擦れる音やボルトリリースレバーを押すとボルトが前進する音が好きだっただけにこちらも残念です。

最も気になったのは、足音が強調され過ぎている点です。同じ階層の足音であればまだ良いのですが、上下で大きく離れている場所でもかなり大きな足音がしており、違和感を感じます。おそらく、「ハザードゾーン」での32人というプレイヤー数に合わせて調整したのでしょう。また、PS5では音が小さすぎる(純正のpulse 3D ワイヤレスヘッドセットを使用)ように感じました。

とはいえ、音に関しては個々人や年齢で感じ方が大きく異なりますし、慣れもあります。ヘッドホンによってはイコライザーもありますので、好みに調整すればいいと思います。

世界観は素晴らしく、モデリングやビジュアルのディティールも完璧です。『BFV』では評価が分かれた女性兵士(WW2ではソビエトなど一部の国を除いて戦闘部隊に女性を配置しなかった)の存在も、現代~近未来戦ということで全く違和感がなくなりました。

マルチプレイに注力し、世界観を語る要素がプレイヤーカードとしてあるのも素晴らしい工夫です。

本題、「システム」を論ずる

プレイして問題だと感じたのは主に4つ。「多数の選択肢がプレイヤーに与える功罪両面」と「蘇生の困難化」「兵科システムの事実上の廃止による弊害」「広すぎるマップと変化の乏しさ」「強すぎるビークルとフル分隊(パーティー分隊)に寄った調整」です。

なお、本稿では、『BF2042』と同じ現代~近未来戦を題材とした『BF4』を主に比べつつ、その後のシリーズとも比較して論じていきます。

「多数の選択肢がプレイヤーに与える功罪両面」について

『バトルフィールド』シリーズは『BFH』を除いて、ここ8年で『BF4』『BF1』『BFV』そして本作『BF2042』と4作品を送り出していますが、最近になるにつれ選択肢が多様化しており、例として『BFV』から取り入れられたシステムの1つ「徒歩移動」の多様化が挙げられます。『BFV』以前は「匍匐・しゃがみ・歩き・ダッシュ」の4要素のみだった徒歩移動ですが、『BFV』では従来の「匍匐・しゃがみ・歩き・ダッシュ」に「しゃがみダッシュ」が加わりました。

本作から導入されたタクティカルダッシュ

『BF2042』では、「匍匐・しゃがみ・歩き・ダッシュ・タクティカルダッシュ」となり、『BF4』に比べると移動の選択肢が多くなっています。ここではダッシュのみを例示しましたが、壁の乗り越えなど、『BF4』に比べて多くの選択肢がプレイヤーに与えられるようになりました。

『BFV』でそうだったように、これには好意的な意見が、特にFPSに慣れている方に多いと思います。筆者も違和感なく快適にプレイできました。しかし、選択肢の多さは、初心者にとって思わぬハードルとなってしまいます。タクティカルダッシュすべきなのか、ただ走るべきなのか。また、壁を乗り越えられるということは当然、警戒すべき場所が多くなります。一見、諸手を挙げて歓迎すべき自由度が、各人の実力差を広げてしまっているのです。

今作では「All-out Warfare」にサーバーブラウズ機能が無く、どのような仕組みでマッチングしているのか不明ですが、過去作通りであれば、様々な実力のプレイヤーが1つの戦場で戦うことになります。その際、ゲームの側が実力差を増幅させるようなシステム設計をするのは、いかがなものでしょうか。

少なくとも筆者は、増加した選択肢を高評価とするのは慎重な立場です

選択肢に関して、もう一例挙げましょう。蘇生距離の表示と蘇生時間のスキップ機能です。この機能は『BF1』から導入されており、『BF2042』からというわけではありません。ただ、『BF4』ではダウン時間が一定であり、蘇生キットを持った味方が表示されることもありませんでした。

BF4の画面。死ぬと待機時間となるが、その間はマップを見れ、次の行動をたてられた。

『BF1』からは蘇生待ちをスキップする機能と蘇生キットを持った味方が表示される機能が加わりました。これにより起きたのが、「期待を裏切られる」という現象です。当たり前ですが、蘇生キット持ちが近づいてくれば、蘇生してもらえることを期待します。そうした期待が外れたとき、感情はマイナスとなります。『BF4』では期待させる情報が表示されなかったため、マイナスの感情を抱くことも無かったのです。しかも『BF1』からは、死んだプレイヤーはスキップという選択肢が与えられることで蘇生を待つかどうかの判断までしなければなりません

今作では蘇生待ちスキップがさらに早くなり、さらに前作までは表示された蘇生キット持ちの距離も表示されないため、蘇生する人も、される人も少なくなってしまいました。蘇生というシリーズの根幹が機能不全に陥っているのです。

この蘇生システムに関しては『BF1』以降、導入され続けており、否定的な筆者が少数派なのでしょう。ただ、今回、意見を表明する機会を頂いたので、付記しました。皆さんはいかがお考えでしょうか?

本作では他にも、戦場の只中でサイトや弾倉の種類を多様に選択できたり、兵科に制限されることなく銃器やガジェットを使えたり、そもそも兵科(キャラクター)が10種に増えたりといった、従来作から比べれば遥かに膨大な選択肢が用意されています。(これらについては後述します)

私が主張したいのは、選択肢の増加は必ずしも高評価に結びつく要素では無い。という点です。一見すると歓迎すべき「自由」は負担にもなり得るし、プレイヤー間の実力差を広げてしまう要因にもなり得るのです。

「蘇生の困難化」

蘇生は、今作で一段と難しくなりました。難しくなった要因の一つは、『BF1』までのようなガジェットを味方に押し付ける方式ではなく、味方の死体に表示されるボタンを選択して蘇生する形式になったからです。『BF1』以前は自由に動きながら、ガジェットを押しつける形式で蘇生していたのですが、『バトルフィールド 2042』の形式では無防備になる時間が多く、状況判断が大切になっています。

BF4での蘇生風景、ガジェットをあらかじめチャージし、押しつけるだけ。少ない体力での復活となるが、チャージしなくても良い。

実はこうした蘇生の仕様は『BFV』からなのですが、蘇生のハードルが大きく上がっただけでなく、蘇生すべきかどうかの状況判断がより大切になったことで初心者と上級者の差を広げてしまいました。さらに、今作は蘇生スキップが非常に速く、蘇生を待ってくれない味方も多かったです。(自分も頻繁にスキップしてしまいました。)この事はボイスチャットでの連携(蘇生を待って、と伝えるなど)の重要性を上げています。

蘇生システムは『BF4』や『BF1』に比べてシビアになったわけですが、この点は状況判断などの戦略性が向上したと評価もできます。ただ、『BF4』や『BF1』の蘇生のハードルの低さはある程度まとまって動くことが利点となり、自然に細かな戦線が形成され、その戦線を主軸として激しい戦闘が展開されるという、カオスな戦場での一種の秩序を生む利点がありました。

2042では味方に近づいてからチャージする。その間は自由に移動できない。また、自分を含めて蘇生を待ってくれる人も少ない

また、蘇生の手軽さは、平均的なキルデス比を上昇させたことに疑う余地はありません。やはり敵をたくさん倒せた方が楽しいですし、たくさん蘇生された方が楽しいでしょう。皆さんは違うのでしょうか?もっとストイックにeスポーツ!という感じが好まれるのでしょうか?(不安)ただ、一体どれだけのプレイヤーが常にボイスチャットを使ってプレイしているのでしょう。上級者や常にフレンドとプレイしているような少数だが声の大きいコア層にシステムを合わせるのは、(特に大規模チームプレイゲームである本作においては)速やかに止めるべきです。将来のファンである初心者や最も多い気軽にプレイする層が脱落すれば、衰退していきます。

「兵科システムの事実上の廃止による弊害」

本作では約20年前のシリーズ最古作『BF1942』から連綿と受け継がれてきた兵科システムが事実上廃止され、『オーバーウォッチ』や『Apex Legends』といったヒーローシューターの要素が導入されています。

従来は4種の兵科で役割分担をしつつゲームを進行していったのですが、これが10種となっています。確かに面白い要素ではあるのですが、コンクエストやブレイクスルーにおいてはいくつかの重大な弊害をもたらしています。

最も大きな弊害が、兵科による脅威の区別と優先排除が不可能になっている点です。

例えば、『BF4』においては、工兵以外は対戦車ランチャーを持てないから、戦車を守りたい場合は工兵を優先的に倒す。といった素朴で単純な戦略が「敵を倒す」というスコア以上の奥深さを実現していました。同じ1キルでも兵科を意識した1キルかそうでないかは意外に重要だったはずです。

本作ではこうした戦略性が無くなっています。どのキャラクターでも対戦車ランチャーを持てるので、誰が工兵の役割を担っているのか分かりません。兵科ごとの外見がなくなれば、外部から見分ける手段が無くなるのです。

今作のスコア画面。これについても色々言いたいことはあるが、今回は割愛。

同じことは銃にも言えます。従来作までは兵科により使える武器が決まっていたため、兵科ごとに大まかな交戦距離や役割が設定されていました。『BF1』や『BFV』ではチーム全体の兵科を確認できたため、自分が選ぶ兵科の参考にもなったのですが、今作では兵科に拘束されず全ての武器が使えるので、味方がどのように戦うかの傾向が読みにくくなっています。

また、兵科の細分化はBFシリーズの根幹だった協力の要素も阻害しています。自己完結する能力のキャラクターが殆どで、役割分担というより、個々人が勝手に戦っているという印象が強いのです。

この印象はガジェットが事実上1つしか持てなくなった変更でさらに強化されました。従来では、メイン武器とサブ武器に加え。例えば、医療バッグ(ガジェット1)蘇生器具(ガジェット2)を持っていたのですが、今作ではキャラクターごとの特殊なガジェットで1が既に埋まっているため、ガジェットを1つしか持てなくなっています。

BF4の画面。医療バッグと弾薬箱が大量に設置されるというお馴染みの風景は『BF2042』では見られない。

このため、弾薬パックや医療バッグをガジェットに振り分けているプレイヤーは極端に少なく、事実上機能していませんでした。確かに、対戦車ランチャーではなく弾薬パックを持ってくるプレイヤーは皆無でしょう。

比較的プレイヤーが集中している拠点でも医療バッグが数個置いてあればいい方。

弾薬の補充や回復といった、見知らぬプレイヤー同士を協力させ、チームに一体感を与える要素が全く機能していないのです。また、弾薬箱が機能していないにも関わらず、対戦車ランチャーや対空ランチャーの弾薬数が3発(過去最低数)というのはあまりにも少なすぎで、兵器が強すぎる一因となっているように感じます。(車両に当ててもダメージが表示されないのもなんとかしてほしい……)

「広すぎるマップと変化の乏しさ」

『BF2042』は史上最大のマップと最大の人数が売りですが、それらがゲームの面白さに繋がっているかは疑問が残ります。

非常に遠いが……
結局ジップラインで移動する。ジップライン中は撃たれ放題。移動が面倒なので多くのプレイヤーは離れた拠点に行きたがらない。

はじめに、マップに関してですが、不必要な移動距離が多く感じました。

もう使われてる……の図。こうなると広大なマップを歩くしかなくなる。

これを解決するために車両を呼び出す機能がありますが、クールダウンや上限があり、思うようには使えません。そもそも、拠点間を常に車でショートカットするならば、その拠点間の距離は短くて良いのではないでしょうか。

比較的狭いマニフェストでもこの状態。

あたりまえですが、マップが広くなると拠点間の距離が広がります。戦闘までに走る場面が多くなり、辛いです(今までのBFも「マラソンゲー」なんて言われていましたが、比較にならない程です)。また、多くのマップや拠点は平坦で、人数で平押ししていくしかないため、プレイヤーが魚群のようになり、戦略性無くマップを回遊し続ける状態になる場面も多く見受けられました。

回遊現象は『BF1』以降の作品で時折みられるようになった現象(もちろん、BF4でも「メトロ」などで稀に起こりました。)ですが、これは拠点の多さと拠点間が離れていることが要因と思われます。実際、過去作と比較して極端に広大な今作ではその傾向がより一層強くなっています。チームが勝つためには取り返さなければいけない拠点への移動が煩わしく、結局、私自身も、魚群にいることが多かったように思います。

また、『BF4』では大きくマップが変化するレボリューションの要素が、『BF1』では巨大兵器の登場が中盤~終盤のゲームプレイを盛り上げましたが、今作ではそれにあたる要素がどのマップでも巨大な竜巻となっています。「オービタル」にはロケットが発射されるというギミックがありますが、それもほとんどゲームプレイに影響がなく。今一つ物足りなく感じました。

BF4のレボリューション。一定の条件でビルが倒れ。
マップが大きく変化する。

ビルが崩れ、ドームが崩壊し、時と共に海面が荒立ち軍艦が海岸に座礁する。あるいは、巨大な兵器がチームバランスの均衡も兼ねて登場する。そんな胸躍る体験は過去の物となってしまったようです。今作のマップは、コンクエストに限って言えば広いだけで、その広さも楽しさに繋がっていません。マップに関しては個人的に最も不満が強いのですが、「All-out Warfare」で改善することは難しいと思われ、絶望感を感じます。

今作は128人対戦を売りにしていますが、これは素直に喜べません。128人対戦の必要性はあったのでしょうか?マップをコンパクトにして、同じ体験ができるなら、人数は少ない方が良いはずです。というのも、味方が63人いるはずなのですが、体感は過去作と大して変わらないか、むしろ寂しさを感じるのです(これには前述した連携を阻害するシステムや魚群状態になっていることも大いに影響があるとは思います)。

常に128人満員のサーバーを何年も維持し続けるのは難しいですし(BF1はアジア圏のサーバーが人数不足でプレイできなかった)、少ない人数で最大限楽しめればコンテンツの延命にもつながります。マップがコンパクトにまとまればPS4やハイエンドではないPCでも楽しめます。AIの兵士がいるものの、やはり人間相手とは違います。

少なくとも、現在プレイした限りでは、従来作に比べて128人だからこそ面白い、という評価はできそうにありません。

「強すぎるビークルとフル分隊(パーティー分隊)に寄った調整」

最後の項目です。本作はより一層、車両や航空機といったビークルが強すぎるように感じました。その理由の一つが先述したガジェットを一つしか持てなくなっている点。対戦車戦を担当する兵科は、例えば『BFV』ではガジェット1にパンツァーファウスト、ガジェット2にダイナマイトを装備し、2つのガジェットで対戦車戦闘ができました。『BF1』でも同様です。『BF4』ではさらに、フィールドアップグレードで対兵器ランチャーの弾薬は最大7発携行でき、熟練兵ならば一人で戦車を撃破できました。

BF4の対戦車戦。誘導対地兵器が7発も持てる。戦車にとって死角の多い場所に単独でいくのは自殺行為だった。

本作ではそもそもガジェットが1つしか持てず、さらに弾数も3発のみなので、あまりにも無力です。また、『BF4』では誘導・無誘導様々な種類があったランチャー類は対空・対地1つずつになっています。(サンダンスのみ誘導する対装甲グレネードを携行している)。

操縦者以外に、ガンナーが最大3人、スポッター1人で運用される。死角が無く強力だ。

さらに、今作では兵器を「チームプレイのプラットフォーム」にすることが意図されており、多数の乗員に様々な武装が与えられています。複数人がそれぞれ車載武器を使用するため死角がなく、非常に強力になってしまっているのです。戦車ならばこの強力さでも納得できるのですが、これはホバークラフトといった移動手段としての兵器でも同様です。ビークルに攻撃してもダメージ量が表示されないのも気になりました。今の環境ならば、ランチャーの弾数をもう4発程度増やすべきだと思います。

強い割に、人数やマップに対して車両が少なすぎるのも気になりました。

次に、全体的にフル分隊(パーティー分隊)に寄った調整がなされている点です。レビューイベントでは4人1組になってボイスチャットを繋ぎプレイしたのですが、『BFV』に引き続き指差しスポットが無いので、ボイスチャットを繋いでいない他の参加者に敵の存在を知らせる手段がありませんでした。

指差しスポットが無いのは前作の『BFV』からですが、なぜ、野良同士が気持ち良く連携できる要素をことごとく潰していくのか、全く理解に苦しみます。

開発陣の話では「赤点を撃つゲームにしたくない」ということですが、指差しスポットは無いものの「スポット」の要素はあり、車両のスポッターや航空機が強力にスポットできます。さらに、サイトを覗き込むと赤いタグが表示されるため、実質的には赤点を撃つゲームになってしまっています。なぜ指差しスポットが無いのか?結局、ボイスチャットを繋いだフル分隊(パーティー分隊)に寄った調整がなされているのでしょう。

このままでは『バトルフィールド』シリーズのコンクエストに未来が無い

少しキャッチーで過激な見出しですが、あくまでも「All-out Warfare」のコンテンツである、コンクエストやブレークスルーに未来が無いのです。実は本作、UIのところどころから大規模戦闘向けに作っていないことがうかがえます。例えば『BF2』から搭載されている意思伝達システム「コモローズ」には、{索敵が必要}{援護しろ}{回収が必要}といったおよそコンクエストに関係の無い、ハザードゾーン向けの選択肢が多くあるのです。

ありがとう以外使ったことのないコモローズ

指差しスポットが無いことも『Apex Legends』のようなバトロワ形式であれば納得できますし、兵器が強いのも同様の理由で納得できます。もちろん、兵科が無くなりヒーローシューターに近くなったのも納得できます。

これらが導く答えは、『バトルフィールド』シリーズはコンクエストを基軸としたゲームシステムを転換したということではないでしょうか。

開発陣は何らかの理由でBFの看板としてのコンクエストを少しずつ取り下げ、様々な道を模索していくのでしょう(理由はマンネリの打破かもしれないし、無名兵士ではマネタイズが限界なのかもしれない)。何しろ、本作には大別しても3つの全く異なるモードが搭載されているのです(現状ハザードゾーンはマッチングしませんが……)。

ただし、コンクエストの大ファンとして、こう締めたいと思います。古人曰く、二兎を追う者は一兎をも得ず、と。

さて。筆者の考えを読んで皆様はどう思われたでしょうか。様々な意見で議論が盛り上がり、ゲームがより良く、楽しくなることを期待したいと思います。


なお、筆者は発売前の各種イベントや『バトルフィールド 2042』の案件に関わっている多くの利益享受者の一人であり、本来であれば絶賛し、期待を煽ることが自身の利益に繋がったことを付け加えておきます。

※UPDATE(2021/11/15 22:17):記事内の誤字を修正しました。コメントでのご指摘ありがとうございます。


《大塩》
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