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『Arma Reforger』先行プレイレポ―『Arma 4』の「たたき台」はその役目を完遂出来るのか

『Arma 4』へと続く橋頭堡となるか、あるいは『Argo 2.0』となるか。

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『Arma Reforger』先行プレイレポ―『Arma 4』の「たたき台」はその役目を完遂出来るのか
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Bohemia Interactive(以下BI)社がPC(Steam)/Xbox Series X|Sにて早期アクセス配信を開始した軍事サンドボックス『Arma』シリーズ最新作『Arma Reforger』。今回Game*Sparkは本作のメディア用プレビューキーによる先行プレイの機会を頂きました。本稿では『Arma Reforger』プレビュー版のプレイを通じてのインプレッションをお届けします。本稿執筆にあたり使用したバージョンは「プレビュービルド0.9.5.41(Steam)」となります。

また本作はプレビュービルドの時点から日本語対応がされており、まれに怪しい単語や文章が見受けられるものの、ほぼ問題ない品質の翻訳が提供されています。

そもそも『Arma』シリーズとは?

BIが2001年に発売した冷戦期を舞台とする『Arma: Cold War Assault』(発売当時のタイトルは『Operation Flashpoint: Cold War Crisis』)から始まる軍事サンドボックスシミュレーション。『ArmA: Armed Assault』『ARMA 2』を経て、現行バージョンである2013年配信開始の『ARMA 3』は、大きな公式展開こそ終了した今も、半公式Modとしての位置づけを持つ「クリエイターDLC」の発売やサポートが継続されている現在進行系の作品です。

シリーズが持つ軍事サンドボックスとしての高い自由度と拡張性は多種多様なModを産み、そこから新たな作品として独り立ちするものも現れました。『Arma 2』をオープンワールドゾンビサバイバル化する『DayZ』Modは一大サバイバルゲームムーブメントを起こし、後にスタンドアローンタイトルとして発売されるに至りました。そして『ARMA 2: DayZ Battle Royale Mod』から始まったバトロワModは最終的に『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)』という説明不要のビッグタイトルにまで成長し、その後の『フォートナイト』『Apex Legends』につながる「バトロワ」ジャンルを築くなど、『Arma』シリーズは現代のゲーマーにとって、直接知ることはなくても大きな影響を与えてきました。

また『Arma 3』ゲーム内で撮影された映像が実際の紛争地域の映像として扱われる、フェイクニュース騒ぎが一度ならず度々話題となったこともあり、ゲームに興味のない方ですら何度か名前を聞いたことがあるかも知れません。

「Enfusionエンジン」のテストベッド、『Arma Reforger』

そんなシリーズの、久しぶりのマルチプラットフォーム作品となる本作は、シリーズの原点に立ち返って冷戦期に時代を設定。過去作の舞台の一つであるエヴェロン島を舞台とした拠点制圧型、最大32人参加のマルチ対戦ルールである「コンフリクト」をメインコンテンツに据えています。

とはいえ、本作は『Arma 4』で採用する「Enfusionエンジン」のテストベッドとしての位置づけが強いよう。プレイヤーからのフィードバック収集を目的としたショーケース作品の側面が大きいのか、現時点で公式実装されている内容は、早期アクセスであることを踏まえても、アセットも含め小規模だと言えます。

BohemiaによるEnfusionエンジン公式紹介動画。

Enfusionエンジンを採用した本作ですが、紹介でまず真っ先にパフォーマンスの向上をうたっているだけあって『Arma 3』と比較するとかなり軽快に動いてくれました。「重くなってるのにGPU使用率低いままじゃん!」という今までのような挙動は感じられず、GeForceパフォーマンスモニターを見ながら比較してみても、常にしっかりとCPU・GPUを使用してくれており、新エンジンによる最適化の恩恵を非常に強く感じます。マップが違うといった要素はありますが、それでも例えば「最高画質設定・表示距離2500m・街近くの森の中を走り回る」という計測を試したところ、『3』のGPU使用率はFPSによらず常に40%台でしたが、『Reforger』では70~80%のGPU使用率となりました。

またEnfusionエンジンの売りの一つとして公式が挙げているように、ゲーム内の独自ワークショップで直接modの管理を行うことが可能となっています。マルチプラットフォームでありつつ、拡張性に富んだサンドボックスとしての機能を両立する為には欠かせない重要な機能と言えるでしょう。

チュートリアル段階から感じられる変化は数多く

そして同作をプレイした既存シリーズユーザーの多くが、チュートリアル開始直後からいきなり驚くだろうことは、ジャンプやよじ登り動作がデフォルトで実装されていることでしょう。『3』まではそれら動作の追加Modが定番となっていたことを考えれば信じられない進歩と言えます。

またTask Force Radio Modのような、周波数帯を実際に選択して通信を行う無線機のシステムが標準で搭載されていることにも驚かされました。

ゲーム内ボイスチャットは実際に近くの敵にも聞こえてしまう。ピン立て代わりに使うのは、実際の指差し合図。

乗り越えや無線機システムといったModによって実装されていた内容との遭遇には驚きますが、かと言って「これまでModを使わないと出来なかった痒い所すべてに手が届くようになっている」といった事は無く、またBIがEnfusionエンジンを通して目指す「整理」「合理化」の過程で、少なくとも簡略化されてしまった要素も現状では多々見受けられます。

そして本作は、マルチ対戦ゲームとしての設計思想故か、ベースエンジンのリアルさを追求した故かはわかりませんが、MAP上に現在位置は表示されず、UI上でも目標の位置が指し示されません。そのため、自分の位置を知るのはコンパスと地図と周囲の地形だけが頼り。目的の座標に辿り着くためのシビアなナビゲーションのチュートリアルを体験しただけでも、初めてでは覚えのない地形なのもあって結構苦戦することになります。とは言っても、いくらかの慈悲として、地図上では「プレイヤーは南エヴェロンにいます。(村の名前)の北」といった大雑把な現在位置の情報は常に教えてもらえるので、目標の近くの山林で派手に迷子になる事はあっても「気がついたら島の反対側に居た」というレベルの遭難は起こらないので安心です。

初めてソ連のコンパスを構えると慣れぬ方位の文字にギョッとしてしまいますが、冷静に方位角の数字を読みましょう。

マルチプレイを構成する三本柱のゲームモード

本作デフォルトのマルチプレイモード「コンフリクト」は、シリーズにおいて「CTI(Capture The Islands)」と呼ばれるジャンルのもの。過去のシリーズでは「Warfare」「Warlord」などの名前で実装されています。

島の両端に配された本拠地からスタートした両チームは、各地のAI勢力の拠点を制圧した後にリソースを搬入して設備を建設し、前線基地としての能力を高めながら支配地域を増やすサイクルを繰り返し、最終的に敵の本拠地を制圧したチームが勝利を掴みます。

いきなり奥地の拠点を獲得することや極端な裏取りのようなことは出来ず、無線電波の範囲内の拠点を制圧し通信ハブを増やしながら、支配域を徐々に広げる事になります。

防衛設備の建設によって装備や車両の補給機能を拡充するのはもちろん、土嚢バンカーや検問所などの設備を設置して定期補充されるAI兵士の防衛能力を高め、補給線の安全を確保し裏取りの防止をすることも作戦上で非常に重要な要素となります。

建設物が青くハイライトされた地点にある土嚢が乗った木箱をインタラクトして建設を行います。

またインゲームのワークショップ機能の紹介も兼ねて公式ゲームモードMod「Caputre&Hold: Morton」が配布されています。

こちらは島全体を使うコンフリクトと異なり、一つの街の中だけという狭い範囲で一つのコントロールポイントを巡る近距離戦となっており、短い移動・交戦距離の中で比較的早いペースで遊ぶことが可能です。

「ゲームマスター」は『Arma 3』のゼウスに非常に近いものですが、エディターと遜色ない機能を使う事も出来たゼウスと違い、ゲームマスター側の操作・設定項目は制限も多く、マルチプラットフォーム作品としての操作の合理化・簡略化が大きく関係しているように思えます。

筆者がjoinした無人の鯖に残されていた、直前まで遊んでいた方が作成したのであろう救出作戦ミッション。

敵兵の巡回ルートなどを簡単に設定出来ればよかったのですが、現状でそれをするには敵グループそれぞれに移動ウェイポイントを大量に設定して移動させ続ける力技が必要となります。加えて「移動」「占拠」「防衛」の三種以外のオブジェクティブは達成のトリガーが設定不可能となっており、ゲームマスターが手動で達成扱いにさせる作業が求められます。

不満はありますが、「あくまでもマルチプレイをしながら現在進行系で弄るものであって、エディターそのものでは無い」という事を考慮にすればこのくらいの規模に纏まるべくして纏まったとも言えますし、ゲームをプレイしながらマスターが適宜アドリブ的に追加や削除を行うものとしては十分でしょう。

どうしても気になってしまう細かい所

プレイしていて最も気になったのは、『Arma3』で特徴的な要素かつ、実戦で非常に役立っていた多種多様な体勢変更がオミットされている点です。背筋を少し伸ばして遮蔽物から顔を出したり、伏せ状態で真横にローリングしたり顔を横に傾けて地面ギリギリまで視線を低くしたりすることは不可能となっています。リーン角度の微調整は可能ですが…。最近のFPSのように障害物の近くのADSで自動的に体勢を調整してくれるような素振りも見受けられません。

via GIPHY細か過ぎるように見えてかなり役立つ『3』における姿勢変更システム。

また、あくまで不具合のたぐいですが、キャラクターが時々スタック状態に陥ってしまう事もあり、その際には、かつてのように「とりあえず「またぐ」キーを連打して脱出する」というような対処も不可能でした。

現状におけるC&Hのソ連側に入り口を向ける土嚢バンカーはそのスタック発生ポイントになっています。

ゲームルール的なところで言えば、地形や地図を読んでのシビアなナビゲーション要素を押し出している以上、マップ上にピンを立てられない、それ自体は当然でしょう。そもそもこのナビゲーションのハードコア化の是非はおいておくとして、であればこそ、今まで以上に役立つであろうMAP上への記号や線の書き込み機能をオミットしてしまっているのは不可解です。

AIの挙動については現状では『Arma 3』のバニラ状態からいろいろな意味でこれといった改善は見られません。本作のメインコンテンツが大規模マルチ対戦である「コンフリクト」であるため、そこまで問題になりませんが、『3』でも度々見られたように、AI兵士が農家のフェンスをすり抜けて移動するなどの悪い意味で目につく挙動に何度か遭遇しました。

このように、現状で書き連ねることが出来る不満点は多々あります。しかし先に行われたメディアブリーフィングで「これは新たなスタート」であるとの発言を繰り返し強調したことから伝わるように、これまでの積み重ねを崩しての再創造であれば、その始まりにおいて多くの粗さが見受けられるのは仕方のないことでしょう。

『3』を離れての再創造。その過程において『Reforger』の存在をどう見るべきか?

「Road to Arma 4」

『Reforger』の作りについてですが、再創造の過程における同作の存在価値はコミュニティからの継続的なフィードバックを得て、本命である『Arma 4』を洗練させる為だけにある…と、そう見なすのであれば現時点で見受けられる粗や不満点は全く問題にはならないでしょう。

ですが、筆者としては、だからといって「所詮たたき台に過ぎないのだから本作はこれで良い、粗も不満点も後から何とかするし、ユーザー側が好きに良いコンテンツを作成してくれるのだから台は置いてあれさえすればそれだけで価値がある」などとは絶対に言いたくありません。

かつて『Argo』という『Arma 3』のスピンオフ作品がありました。システムを簡略化して幾らかカジュアル方向に寄せた5対5のマルチプレイシューターとして2017年にリリースした作品でしたが、配信翌年には公式サーバーが停止、さらに次の年にはBohemia Interactiveアカウントのログインサポートを終了、昨年に全サポートを終了して静かに消えてしまった作品です。

在りし日の『Argo』

将来の新作を見据えた『Arma Reforger』と、既存作品のスピンオフである『Argo』とでは事情は全く異なります。しかし、端々に見えるBIが言う所の「合理化」からはどうしても『Argo』に似たチグハグさが奥深くに根を張ってしまっているように感じざるを得ません。そもそも改善には彼ら自身が認識している通り、コミュニティからの継続的なフィードバック、そして協力が必要不可欠なはずです。もちろんそれには、コミュニティが成熟した『Arma 3』から軸足を動かすこと自体はなくとも、「少しでも改善の手助けをしてあげようかな」と、協力をさせるだけのエネルギーも含みます。

新エンジンと共に新たな道を切り開くべく登場した『Arma Reforger』が『Arma 4』の成功を導く橋頭堡を築けるのか、成功を掴み『Argo』のような終わりを迎えずに済むのか。この、公式自身が「たたき台」として認めた鬼子が、少なくともその役を立派に果たし、Bohemia Interactiveと『Arma』コミュニティの歴史にその名を大きく刻むことを祈るばかりです。

『Arma Reforger』は3,700円でSteam、およびXbox Series S|Xにて3,500円で早期アクセス実施中です。


《留原そうん》

ティータイムを堪能する為に生きています 留原そうん

フォーマルなお茶会にあまり良い思い出がない。メタフィクション的テーマのゲームによって定期的に心を砕かれています。

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