『アーマード・コア6』次世代AIの発展にも!謎の物質コーラルのキーワード「群知能」【ゲームで世界を観る#56】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

『アーマード・コア6』次世代AIの発展にも!謎の物質コーラルのキーワード「群知能」【ゲームで世界を観る#56】

ルビコンで採掘される謎の物質「コーラル」。井戸から湧く、巨大なエネルギー爆発を起こす、放射線のように浴びる、など不思議な性質がいくつもありますが、そのひとつに互いに引き寄せ合うように集まるというものがあり、まるで「群知能」のようであると説明されました。

連載・特集 特集
『アーマード・コア6』次世代AIの発展にも!謎の物質コーラルのキーワード「群知能」【ゲームで世界を観る#56】
  • 『アーマード・コア6』次世代AIの発展にも!謎の物質コーラルのキーワード「群知能」【ゲームで世界を観る#56】
  • 『アーマード・コア6』次世代AIの発展にも!謎の物質コーラルのキーワード「群知能」【ゲームで世界を観る#56】
  • 『アーマード・コア6』次世代AIの発展にも!謎の物質コーラルのキーワード「群知能」【ゲームで世界を観る#56】
  • 『アーマード・コア6』次世代AIの発展にも!謎の物質コーラルのキーワード「群知能」【ゲームで世界を観る#56】
  • 『アーマード・コア6』次世代AIの発展にも!謎の物質コーラルのキーワード「群知能」【ゲームで世界を観る#56】
  • 『アーマード・コア6』次世代AIの発展にも!謎の物質コーラルのキーワード「群知能」【ゲームで世界を観る#56】

本記事では蟻と鳥の群れを紹介しています。苦手な方は閲覧をお控えください。

『アーマード・コア6』の舞台・ルビコンで採掘される謎の物質「コーラル」。井戸から湧く、巨大なエネルギー爆発を起こす、放射線のように浴びる、など不思議な性質がいくつもありますが、そのひとつに互いに引き寄せ合うように集まるというものがあり、まるで「群知能」のようであると説明されました。

群知能(Swarm Intelligence)とは、個体それぞれの判断で動きながら、実質的に統率者が不在であるにもかかわらず、群れ全体に知能を持つかのような規則性を持つ自然界の振る舞い、およびそれを基にした人工知能モデルです。例えば魚の群れは何か命令を受けているわけでもないのに、大きな群れを作って一斉に同じ方向へ泳ぎます。何故ばらばらに散らばらずにまとまっていられるのか、その習性を解明して人工知能の開発に応用しようという研究が行われています。

群れは多数の個体が集まって構成されている以上、意思判断は全個体が独立して行っています。単純に判断を共通化すればいいというわけではなく、群れにとって最適なポジションに着いて行動し、全体の利になる役割分担を自発的に判断する必要があります。有名なのが「働き蟻の法則」で、働き蟻の中では必ず2割ほどが積極的に働かない「サボり」のグループを作ることが知られています。

サボりのグループを取り除いても、また別の働いていた蟻がサボりグループを作り、サボりグループだけを集めた場合でも、8割の蟻が自発的に働き出します。働いている方が疲れて休んだときには、サボりグループから適度な数が補充されます。

蟻の中にもちゃんと個体差はあり、グループ分けとは別に積極的に働く個体、サボりがちな個体がいます。それでも働く必要が出れば働くし、手が余っていれば休みます。さらに、働く「8」の中にもフルパワーで働くが疲れやすい「2」と、ほどほどに長く働く「6」がいて、この割合も一定しています。つまり、個別の蟻が全体の様子を見て、どのように働くかをを判断するのですが、「2:6:2」の割合を誰に指示されるでもなく共有しているというのがポイントです。

また、蟻が食べ物を見つけたときには最短ルートが自動的に決定されるという習性があります。蟻は食べ物を探すときに、規定のルートを延長する組と新しいルートを検索する組に分かれ、同じポイントに複数から辿り着くことがあります。蟻は歩きながらフェロモンを残すので短時間で巣まで往復できるルートにはより多くのフェロモンが記録されます。このフェロモンが働き蟻に共有される「情報」であり、遠回りの道は廃れて消失していくのです。『DEATH STRANDING』の足跡システムがこれと同じですね。

個々にそれぞれ得意不得意、やる気の有無があるにしても、「作業設計図」「組織図」を共有していれば、タスクの残量を個々が判断し、適切なポジショニングと過不足ない作業をこなすことができる。これが群知性が上手く働く鍵になります。

逆にそうでない場合、指示者がいてそれに従うトップダウン式の組織を考えると、完全な「作業設計図」は大抵指示者だけが持っていて、働き手は配布される一部分だけを参照して実行します。進捗状況は上に挙げられていきますが、現場の全員が把握しているわけではありません。指示者と働き手の持っている情報に差異があるため、現場の人間がよかれと思ってやったことが全体の目的に沿わない「勝手な行動」になってしまいがちなのです。

もう一つの別の例は、鳥や魚の群れで起こる集団行動です。ルールは極めて単純、なるべく集まってついて行く、風や水の流れが弱まる位置に付く、これだけです。先頭になる個体は誰でもよく、一番体力を使うポジションなので、ずっと同じではなく適宜交代します。マラソンや自転車レースでグループがよくできますが、あれも風よけのために集まっており、これも「群れ」の行動原理と同じです。単純なルールで大きな群れを形作り、乱れずに一体的な行動を取る。これも先の「設計図」とは違うタイプの群知能です。

生物が持っているこれらの群知能は、AIの指令系統の構築に応用できると考えられています。現在は中央集約した情報を「頭脳」に当たるコンピューターが処理し、末端の機械に指令を出すトップダウン型がほとんどで、群知能を活かす場として期待されているのが、月や火星など宇宙における工事です。現在想定されているのは作業ロボットを先行して送り出し、地球でモニタリングを行いつつ指令を出す計画です。しかし、一度故障が発生すると修理もできませんし、指令系統で起きた場合は作業工程全体がストップしてしまうリスクがあります。

そこで、働き手の機械が自律して適切な配置換えを行えるようにすれば、万一地球との通信障害が発生しても工事を継続できます。ドローンのような汎用性の高いものであれば、同じ機械を大量に送り込んでもいいので、管理コストを大幅に下げることができます。

群知能をSF用語で表すならば、「攻殻機動隊」の“Stand Alone Complex”が近いでしょうか。高度な情報共有、作中で言う「並列化」によって、個としては独立した判断を持ちながらも、同一の目的達成のために連携しているかのような振る舞いをする集団が発生する現象を指します。

現在のところは映像作品の群衆シミュレーションや、ドローンショーで群知能をの制御を観ることができます。今の技術では個体の情報収集と自律判断を十分にするには難しく、完全に群れだけで作業を行わせるのは当分先になるものの、実証実験段階までは進んでいるので、それほど遠くない時期に私たちの身近にもやってくるのは間違いありません。ディープラーニングと同様に、AIの新しい可能性を拓く研究として要注目です。


【PS5】ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON
¥7,108
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
【PS4】ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON
¥7,109
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《Skollfang》

好奇心と探究心 Skollfang

ゲームの世界をもっと好きになる「おいしい一粒」をお届けします。

+ 続きを読む
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top