『スカル アンド ボーンズ』混沌の荒波に乗ってのし上がれ!大航海時代から近代に潮目が変わる17世紀末【ゲームで世界を観る#70】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『スカル アンド ボーンズ』混沌の荒波に乗ってのし上がれ!大航海時代から近代に潮目が変わる17世紀末【ゲームで世界を観る#70】

武力に支配される世界で自由を勝ち取るためには、武力で戦うより他にない。

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  • 『スカル アンド ボーンズ』混沌の荒波に乗ってのし上がれ!大航海時代から近代に潮目が変わる17世紀末【ゲームで世界を観る#70】
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『スカル アンド ボーンズ』の舞台である17世紀終盤(ゲーム中のドキュメントでは1695年)は、欧州が大航海時代から近代へと移りゆく狭間にありました。列強国が領土争奪へと動き出し、海賊の黄金期であったこの時期は、まさに文字通り武力がものをいう世紀末の混沌にありました。

大航海時代に先んじて航路を開拓したスペイン・ポルトガルは16世紀末には勢いを失い、1588年のアルマダの海戦で勝利したイングランドとオランダ、勢力を伸ばしたフランスが世界進出のリードをとりました。それぞれがアフリカから東アジアにかけての貿易を取り仕切る「東インド会社」を設立し、ボンベイ(現ムンバイ)やカルカッタ(コルカタ)などの主要な港湾都市を確保。私掠船、武装商船を使って制海力を強めます。

イギリス人を拷問するオランダ人

インド会社同士でも戦いが起きていて、他国を排除するためなら手段を選びませんでした。1623年のアンボイナ事件ではオランダがイギリス商館を襲撃、20人が殺害されます。そのうち半数の10人は傭兵で雇われていた日本人で、襲撃側も日本人傭兵を使っています。関ヶ原後の徳川体制確立から1633年の鎖国令まで、戦う場を無くした武士が海外に出向いて雇われるケースは珍しくありませんでした。

1648年にウェストファリア条約(ヴェストファーレン条約)によって神聖ローマ帝国が解体され、極地を除いて未知の陸地も海路も見いだせなくなると、イングランドの英蘭戦争やアイルランド入植、フランスのオランダへ侵攻など、欧州の大国は新天地開拓から侵略による支配権の奪い合いへとシフトしていきます。

1688年のファルツ戦争(アウクスブルク同盟戦争)では対仏同盟国のスペイン、オランダ、イングランド、スウェーデンなどと対立。ここから本格的に英仏の対立が始まり、北アメリカの入植地でウィリアム王戦争に発展しました。1693年にはポンディシェリをフランスからオランダが奪っており、『スカル アンド ボーンズ』の物語は世界中を巻き込んだ英仏植民地戦争の渦中にあるのです。

海に沈んだポートロイヤル跡地

カリブ海方面では、1692年の時点でポートロイヤルは地震と津波で壊滅しており、英仏関係の悪化やスペインの国力低下で私掠制度の重要度が下がっていて、正規海軍による取り締まりが進んでいました。海賊活動の中心地はカリブからインド洋へと移っていきます。この頃を海賊周航(Pirate Round)の時代と呼び、海賊たちは海軍が近づかないマダガスカルに拠点を構えました。

1695年頃のインド洋で出会う可能性がある伝説的な海賊は、スコットランド出身の「キャプテン」ウィリアム・キッドでしょう。当時は英米間の対立でそれぞれが私掠船を使っていて、アメリカ側はインド洋行きの海賊に免許を発行していました。キッドはイングランド側として、それらの海賊と敵対するフランス船の排除を請け負います。しかし芳しい成果が上がらず船員からの不満がたまると、免状の範囲を超えて見境のない略奪行為に手を出します。が、やってはみたものの戦いの実力は伴わず、成功したのは小さな商船程度でした。

追い込まれたキッドは偽旗作戦でケダー・マーチャント号を捉え、香辛料、絹などの莫大な戦利品を手にしました。ところが失った信用が祟ったのか直後から船員たちの裏切りが相次ぎ、金品をばらまきながら逃げ延びたアメリカで投獄されます。免状を得てから逮捕されるまでわずか4年、海賊としてそれほど暴れ回った方ではありません。しかし彼が処刑の際に残した隠し財宝の話が広まり、大航海時代の終焉で失われた探検ロマンを再び蘇らせました。

なお、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」の時代、有名な海賊「黒髭」エドワード・ティーチ、「黒男爵」バーソロミュー・ロバーツが活躍するのはもう少し先の1700年代前半です。

奴隷を取引するオランダ東インド会社

アジア側の王朝は、インドではタージマハルを建てたムガル帝国が最大版図を獲得し、海賊の新たなターゲットとして略奪を受けていました。タイのアユタヤ王朝ではフランス排斥のシャム革命が起きて間もない頃。東南アジアではイスラム教を採用した小国群が、オランダ東インド会社(VOC)に占領されていく途上にありました。強引に進出する欧州国に対抗する力を確保できるかが、その後の明暗を分けることになります。国を滅ぼされた人々が生き延びるために海賊へ加わることも多かったでしょう。

海賊黄金時代は裏を返せば、戦争や身分差、侵略が罷り通る理不尽な時代です。アフリカからの奴隷取引も盛んになっていて、人種が混ざり合う「楽園」は、そこから人々が逃れようとした足掻きによって形作られていたのです。無法者たちはやがて「国家」の鎮圧によって姿を消します。その後、いわゆる「グローバルサウス」におけるヨーロッパの植民地支配は一層加速し、21世紀の現在まで続く根深い禍根を残すことになるのです。


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