ゼニマックスのクリエイティブ・ディレクター、リッチ・ランバート氏インタビュー。『エルダー・スクロールズ・オンライン』コンソール版や今年発売された新規IPについて話を聞いた | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ゼニマックスのクリエイティブ・ディレクター、リッチ・ランバート氏インタビュー。『エルダー・スクロールズ・オンライン』コンソール版や今年発売された新規IPについて話を聞いた

サービス開始からいよいよ10年目となる『エルダー・スクロールズ・オンライン』が、なんとコンソール版のリリースを決定。これを機に、ゼニマックスの今年の展開についてお話を伺いました。

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ゼニマックスのクリエイティブ・ディレクター、リッチ・ランバート氏インタビュー。『エルダー・スクロールズ・オンライン』コンソール版や今年発売された新規IPについて話を聞いた
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オープンワールドRPG『The Elder Scrolls』シリーズや『Fallout』シリーズのほか、FPSのクラシックである『DOOM』シリーズ、そして『ウルフェンシュタイン』シリーズといった強力なIPと開発スタジオを保有する大企業、ゼニマックス・アジア。今年2023年はリズムアクション『Hi-Fi RUSH』、そしていま話題の宇宙オープンワールドRPG『Starfield』など、完全新規IPをリリースしていることでも話題になりました。

そんな同社が運営しているオンラインゲーム『エルダー・スクロールズ・オンライン』(以下、ESO)もまた、代表的なタイトルのひとつでしょう。本作は2014年のサービス開始以来、人気を博し続けてきました。来年にはいよいよサービス10周年を迎えようという今年11月15日、『ESO』のコンソール版のリリースを発表しています

このようにゼニマックス・アジアによる鮮烈なタイトルのリリースが続く2023年。同社の精力的な展開に関して、『ESO』のクリエイティブ・ディレクターであるリッチ・ランバート氏からお話を伺いました。

コンソールに進出する『ESO』

ーーあらためまして、『ESO』のコンソール版リリースはどのような理由で決まりましたか。

リッチ氏:ひとつ大きな理由は “『ESO』を成長させ続けること”です。ここまでにスペイン、中国、そして日本で何年も拡張を続けてきました。その成長のため今回、Xbox Series X|SとXbox One、それからPS5とPS4のコンソール版『ESO』をリリースします。楽しんでいただけたらと思います。

ーー『ESO』のコンソール版ならではの特徴はありますか。

リッチ氏:基本的にはPC版と同じゲームになっております。各コンソール用のコントローラーが使えることや、コンソール用のUIを備えています。

ーー『ESO』は長く遊んでいるプレイヤーも多いです。コンソール版でもPCでプレイしてきたキャラクターを引き継ぐことはできますか。

リッチ氏:いいえ。一からスタートしていただくことになります。サーバーに関しましては、北米かヨーロッパのものを選んでいただくことができます。

ーーその解答を伺うと、PC版とコンソール版のクロスプレイも難しいのでしょうか。

リッチ氏:そうですね。クロスプレイはないです。

ーーコンソール版『ESO』のレイテンシーについてはいかがでしょうか。

リッチ氏:レイテンシーはもちろんオンラインゲームなので存在します。日本から北米やヨーロッパのサーバーでプレイした場合pingは250msほどですが、戦闘が問題なくできるなど十分に遊べる内容になっております。

ーー『ESO』は来年で10年を迎えます。長い運営のなかで印象深い出来事について教えてください。

リッチ氏:ゲーム開発でさまざまな課題がありました。サービスをはじめた時、コミュニティが望んだようなゲームにはなっていなかったので、こちらとしてはコミュニティの話をよく聞いて、いろんな変化をゲームに入れて、今の形になりました。

ひとつ大きかったのが2016年の「ワン・タムリエル」です。これによってレベルゲートを取り払い、より友達と遊びやすくなりました。

ーーコンソール版のリリースに合わせ、PCの『ESO』も新たなアップデートを行う予定はありますか。

リッチ氏:コンソール版のリリースは40回目のアップデートと同時です。コンソール版にはこれまでに出してきたエディションが入っておりますし、プレイヤーのQOLの改善やアーカイブなどもすべて入っております。

ーー『ESO』はどのように新しいコンテンツを作っていますか。

リッチ氏:『ESO』ではプロセスがあって、ゲームのいろんなアイディアのピッチをして決めて行ってるのですが……。なかなかゲームを作るのは難しいんですよね。紙の上では「いいな」と思っていても、ゲームに実装していくとなかなか「どうなのかな?」となるので、やっぱりゲーム作りをするのは科学と違って非常に難しい側面があります。

ーーこれから『ESO』を始めるとしたら、どういう楽しみ方ができるでしょうか。

リッチ氏:『ESO』に置きましては、個々人がそれぞれの旅路を辿っていくことができます。そういった形で探索をしていただいて、選んだキャラクターでどんどん実験していくことができるわけなんです。後でキャラクターを簡単に変更することもできるので、後でいろんなことを試していただける。そういった遊び方ができます。

ーーリッチさんが『ESO』で特に気に入っている点を教えてください。

リッチ氏:『ESO』で私が本当に好きなのは、非常にチャレンジングであるストーリーとアリーナです。それから、エンドレスアーカイブなども。どんどん変わっていっているわけですね。そこがストーリーとして非常におもしろいものだと思います。

今年のゼニマックス・アジアの試みについて

ーーゼニマックス様は今年はTango Gameworksの『Hi-Fi RUSH』やベセスダ・ソフトワークスの『Starfield』など新規IPをリリースしていますよね。こうした新規IPの制作ってどのように決まっていくものですか。

リッチ氏:『Hi-Fi RUSH』のディレクターであるジョン・ジョハナスさんもそうですが、やはり各チームで新しいゲームをピッチするときは、各スタジオがゼニマックス本社に案を出して、そこからOKを出すかどうかを決めていきます。『ESO』もそういう流れもありましたし、『Starfield』も同じく、まずはプレゼンしてからが始まりです。そのときに方針によって、GOサインが出るかどうかもありますし、何回もピッチしなきゃいけないケースもあったりします。

ーーリッチさんは「頑張ってピッチしたのに、ダメだった!」という経験はございますか。

リッチ氏:もちろん。ゲーム作りで一番大変なのはアイディアをどんどん出し続けていくことで、そしてそのアイディアを買ってもらうことなんですね。そこでアイディアを受け入れてもらうのが一番難しいところです。

ーーかなり苦労して会社からGOサインをもらい、開発したタイトルのユーザーの反応についてどう感じていますか。

リッチ氏:さまざまな人々のフィードバックをいただき、「プレイヤーを悩ませているのかな?」とこちらのほうで深堀りをしていくわけで、ユーザーの不満があればその問題を解決して改善します。

そういったフィードバックには攻撃するような感じのものもあり、なかなか読むのは辛いんですけど、やはりそれもユーザーが気持ちを持って書いているので、なんとか改善するように考えております。

ーー新規IPを作るより、『DOOM』や『ウルフェンシュタイン』シリーズなど人気シリーズの新作を作るほうがビジネスとして手堅いんじゃないか、と思うこともあるんですが、それでも新規IPを作ろうとする苦労について教えてください。

リッチ氏:ゲーム作りそのものが難しいんですけど、やはり新しいIPを作るということは、新たなストーリーを作るということでもあるんですね。

つまり作りたいもののアイディアを出していく難しさというのは、みんなに興味をもたせ、投資したくなるようにさせながら、そのゲームが上手くいくという道を探さなくてはいけないことです。上手くいかない時もあるわけなんです。

ーー傍目には『Starfield』はベセスダ・ソフトワークスのトッド・ハワード氏の実績からスムーズに企画が通ったのかな、という風に見てしまうところもあるのですが、あの作品もプレゼンの苦労があったのでしょうか。

リッチ氏:私は『Starfield』の担当ではないのでわからないですが、ひとつ言えることはトッドさんの思い入れがたっぷりだったと思います。彼のこれまでの実績も大きかったでしょうね。

ーー『ESO』に関わっているリッチさんから見て、『Starfield』の魅力的な点はいかがでしょうか。

リッチ氏:ひとつ大きいのは、非常にかっこいいかたちでストーリーを語っていて、そしてユーザーの自己表現が自由にできるというところだと思うんです。ただ、あちらは舞台が宇宙空間ですけども。

ーーここまでのお話を聞いていても、やはりゲーム開発の大変さはうかがえますね。大きなタイトルをひとつ成功させた後などはチームでなにかお祝いみたいなこともしますか。

リッチ氏:ロンチやリリース後にパーティーを開いて、チームをお祝いすることはやりますね。またはチームメンバーに「おめでとう!」とメッセージを送ったり、いろんなやり方があります。

『Starfield』については、私が出したメッセージは「メインストーリー、いま終わったところだぜ! 本当にすばらしかったよ!」というものでした(笑)。

ーー(笑)『Starfield』もリリースされましたし、やっぱり気になるのは『The Elder Scrolls VI』(以下、TES Vl)の進捗がどうなっているかもあります。

リッチ氏:チーム自体はもちろん違うのですが、『TES Vl』のチームとのコミュニケーションは密に取っております。違うチームなんですけど、ピッチのやりとりをしたり、「どんなストーリーにしようか?」とか「こんな世界にするべきだよね」といったやりとりはしているという感じですね。

ーーそのやりとりは、『ESO』の世界と『TES Vl』の世界との整合性を取るためもありますか。

リッチ氏:私たちがやっている『ESO』は1000年前が舞台ですので、やはり同じ世界観を持たないといけないんですね。というわけで、さまざまなストーリーの確認をすることが必要になっていきます。

ーー今後『TES Vl』が発売されたとき、『ESO』と並行してプレイしても楽しめるものにすることは意識して作っていますか。

リッチ氏:私たちは『ESO』に何年も取り組んできましたし、改善やコンテンツの追加、そしてテクノロジーの進歩もありました。というわけで、どんどん長く遊んでいただければと考えております。

ひとりの “ビデオゲームオタク”のプレイヤーとして

リッチさんの足に彫り込まれたタトゥー。なんと自分がこれまで開発してきたタイトルが彫り込まれている。『オブリビオン』からスタートとし、いままで関わったゲームの世界が足に描かれているのだ。今後もきっと増えていくことだろう。

ーーリッチさんのお話を伺うと、『Starfield』をやり込んでいるのがわかります。ちょっと余談ですけど、どういう風なキャラとしてプレイしていましたか?

リッチ氏:いまはいろんな人をぶち殺したり、盗みとかやっています(笑)。一週目をやり通したところですね。ニューゲーム+というのはジョークみたいなものなんですけど、そんな段階ですね。

ーーまた、『ESO』もリッチさんはプレイヤーとして参加されていますか。

リッチ氏:もちろん! けっこう遊んでいます。

ーーおお! リッチさんはその他ゼニマックスの作品をプレイヤーとして楽しんでいそうですね。

リッチ氏:楽しんでます! ビデオゲームオタクなので! すっごいたくさん遊んでいますよ。『Starfield』は本当に素晴らしいですし、『Hi-Fi RUSH』も本当にユニークです。

ーーいいですね(笑)。リッチさんがもし自分が新規IPを作るとしたら、どんなものを作りたいかを教えていただけますか。

リッチ氏:『ESO』に限らずオンラインゲームを作っていきたいと思っています。私は本当にそこへ情熱を感じております。

ーー最後に、『ESO』を今後はどう続けていきたいかも教えてください。

リッチ氏:これまでやってきたことをきちんと振り返って、新しいものを加えて行ったり、選択肢を増やしたりしていくつもりです。ただ敵を殺していくクエストだけじゃなく、プレイヤーのQOLを上げていくこと、それから新しいストーリーを語っていくことを、これからもどんどんやっていきたいですね。


いかがだったでしょうか。『ESO』のコンソールへの新展開と共に、今年のゼニマックスの躍進がどこかで感じられる逸話となったのではないでしょうか。今後の『ESO』や開発している『TES Vl』の進展なども気になるお話も伺うことができたと思います。

また、リッチ氏のゲームファンとしての側面を聞くこともでき、「クリエイターディレクターがしっかり自社のゲームを楽しんでいる」ということはなかなかいいお話ではないかと思います。インタビューを終えてみて、ゼニマックスが今後パブリッシングするタイトルにも期待がかかるものになりました。


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《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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