
2025年5月27日、デル・テクノロジーズ株式会社がインテル® CPU搭載新製品発表会を開催しました。本記事では、発表された内容のレポートをお届けします。
新ブランディング戦略:4つのブランドに統合
発表会冒頭、デル・テクノロジーズ ジャパンコンシューマー&リテールアソートメントプランナー兼コンサルタントの松原大氏が登壇し、2025年1月から段階的に進めている新ブランディング戦略について説明しました。月1回のペースで開催してきた製品発表会も今回で折り返し地点を迎えており、ようやく全体像が見えてきた形です。
従来の複雑な製品ラインアップを整理し、4つの明確なブランドに統合したことで、ユーザーにとってより分かりやすい選択肢を提供することが狙いです。
ブランド | 対象製品 | 特徴 |
Dell | 旧Inspiron 3xxx/5xxx系列 | コスパ重視のスタンダードシリーズ |
Dell Plus | 旧Inspiron 7xxx/XPSデスクトップ系列 | ミドルレンジ |
Dell Premium | 旧XPSノートブック系列 | ハイエンド(2025年第2四半期発表予定) |
Alienware | ハイエンドをArea-51、ミドルとDell GをAuroraに統合 | ゲーミング特化 |
特に大きな変更点は、7-8年にわたって展開してきたDell Gシリーズの完全廃止です。Dell Gブランドで培ってきたゲーミングノウハウは、すべてAlienwareブランドに統合され、新たにAuroraシリーズとして生まれ変わることになりました。
新Dell 16シリーズ:コスパを重視した16インチスタンダード

新ブランディングにおけるDellシリーズ第1弾として、Dell 16の2モデルが既に5月19日から発売開始されています。従来のInspiron 3000番台と5000番台の要素を組み合わせた製品群で、ユーザーの予算に応じて選択できる構成となっています。

両モデルとも16インチのFHD+(1920×1200)300nit非光沢パネルを搭載し、アスペクト比16:10による広い作業領域を提供します。16インチという大画面でありながら、テンキーも標準搭載している点が特徴的です。
Dell 16 製品仕様比較
項目 | DC16250(プラスチック) | DC16251(アルミニウム) |
CPU | Intel Core 5 120U/Core 7 150U | Intel Core 7 150U |
ボディ素材 | プラスチック | アルミニウム(トップ・ボトムカバーのみ) |
メモリ構成 | 8GB/16GB DDR5-5200 | 16GB/32GB DDR5-5600 |
ストレージ | 512GB/1TB SSD | 1TB SSD |
バッテリー | 41Whr(最大9時間駆動) | 54Whr(最大12時間駆動) |
特殊機能 | Copilotキー、テンキー | バックライトキーボード、指紋認証 |
Wi-Fi | Wi-Fi 6 | Wi-Fi 6E |
カラー | カーボンブラック、プラチナシルバー | ミッドナイトブルー、プラチナシルバー |
参考価格 | 114,000円~134,000円 | 139,000円~159,000円 |
プラスチックボディのDC16250は価格を抑えつつも必要十分な機能を備え、アルミニウムボディのDC16251は堅牢性と高級感を追求したモデルとなっています。発表会では展示機がテスト用の特別なアイスブルーカラーで展示されていましたが、実際の販売モデルとは異なる色のため、撮影時の注意が促されていました。
Dell Gの後継として新登場!Alienware Aurora
今回の発表の目玉のひとつが、5月28日発売となったDell Gシリーズの後継機・Alienware Auroraシリーズです。従来のDell Gシリーズで培ってきたゲーミングノウハウを活かしつつ、Alienwareブランドとしての高い品質とサポートを提供する戦略的な製品群として位置づけられています。
Alienware 16X Aurora:Area-51の廉価版として登場

上位モデルの16X Auroraは、既存のArea-51と同じIntel Core Ultra 200HX CPUを採用しながら、価格を抑えるために機能を厳選した「Area-51の廉価版」として開発されました。CPUは同等でありながら、冷却システムやグラフィックス性能を調整することで、より多くのユーザーがアクセス可能な価格帯を実現しています。
スペック項目 | 詳細 |
CPU | Intel Core Ultra 7 255HX / Ultra 9 275HX |
GPU | GeForce RTX 5060 / RTX 5070 |
TDP+TGP | 最大155W(Area-51は240W) |
メモリ | ベース16GB DDR5-5600(最大64GB) |
ストレージ | 1TB Gen4 SSD、2×PCIe 4 M.2 NVMeスロット |
ディスプレイ | 16.0" QHD+ 240Hz 500nits 3ms、100% DCI-P3、NVIDIA G-SYNC |
キーボード | AlienFX対応1zone日本語キーボード(テンキー付き) |
カメラ | FHD IR(Windows Hello対応) |
インターフェース | Thunderbolt 4×1、HDMI2.1 |
本体素材 | アルマイト処理アルミニウム(トップ・ボトム) |
サイズ/重量 | 幅356.98mm×奥行265.43mm×高さ19.2~23.4mm、最小重量2.66kg |
価格 | 279,000円~389,000円 |
技術的なポイントとして、RTX 5070とRTX 5080の間には大きな性能の壁があり、特にTGP(グラフィックスボードに必要な電力)の差が顕著になることが説明されました。RTX 5080を搭載するとシステム全体の消費電力が大幅に増加するため、RTX 5070を155Wの最大ワット数で効率よく動作させる設計を採用しています。
液晶パネルは既存のArea-51 16インチモデルと同じ高品質なものを採用しており、240Hzの高リフレッシュレート、500nitの高輝度、3msの低遅延を実現しています。一方、キーボードについては個別キーごとのカラーリング設定ではなく、1ゾーンタイプのライティングシステムを採用することでコストを抑制しています。
Alienware 16 Aurora:エントリーゲーミングの新基準

より多くのユーザーにAlienwareブランドを体験してもらうために開発されたのが、エントリーモデルの16 Auroraです。上位モデルからさらに機能を絞り込むことで、14万円台からという価格を実現しています。
スペック項目 | 詳細 |
CPU | Intel Core 5 210H / Core 7 240H |
GPU | RTX 3050 / RTX 4060 / RTX 5060 |
TDP+TGP | 最大115W |
メモリ | ベース16GB DDR5-5600(Core 5は5200MT/s、最大32GB) |
ストレージ | 512GB~1TB Gen4 SSD |
ディスプレイ | 16.0" QHD+ 120Hz 300nits、100% sRGB、NVIDIA G-SYNC |
キーボード | バックライトキーボード(テンキー付き) |
カメラ | FHD Webカメラ |
インターフェース | USB3.2 Type-C×2、HDMI2.1 |
本体素材 | アルミニウム(トップカバーのみ) |
サイズ/重量 | 幅356.98mm×奥行265.43mm×高さ18.6~22.7mm、最小重量2.49kg |
価格 | 149,000円~239,000円 |
CPUには新しいIntel Core 200Hシリーズを採用しており、これは従来のRaptor Lake Hをベースとしながらクロック数を向上させた新世代プロセッサーです。ディスプレイは16X Auroraの240Hzから120Hzにスペックダウンしていますが、ゲーミング用途としては十分な性能を維持しています。
キーボードについては通常のバックライト機能のみとなり、AlienFXライティングシステムには対応していません。ただし、Alienware Command Centerソフトウェアを使用すれば、周辺機器での設定は可能です。
Alienware Auroraシリーズ共通の特徴
両モデルともにAlienwareブランドの大きな特徴である充実したサポートを標準で提供します。1年間のAlienware Careサービスと1年間のアクシデンタルダメージ保証が標準付帯しており、従来のDell Gシリーズでは有償オプションだったサービスが無料で利用できます。
冷却システムについては、新しいAW30デザインコンセプトを採用しました。これはAlienware 30周年を記念したデザイン言語で、オーロラにインスパイアされた神秘的で幻想的な外観を特徴としています。本体カラーも「インターステラー インディゴ」と名付けられ、宇宙的なコンセプトを表現しています。
冷却性能については、静音性の高い超薄型ブレードファンを2つ搭載し、キーボード上部とCryo-Chamberから戦略的にエアインテークを行い、側面4箇所の排気口から熱を排出する設計です。3本の銅製ヒートパイプがCPUとGPUから効率的に熱を放散し、シームレスなゲームプレイを実現します。Area-51が4つのファンを搭載するのに対し、Auroraシリーズでは2つのファンで十分な冷却性能を確保しています。
Intel Core Ultra 200HXシリーズ:新世代ゲーミングCPUの実力
発表会では、インテル株式会社営業本部部長の佐藤義和氏から、Alienware 16X Auroraに搭載される最新CPU「Intel Core Ultra 200HXシリーズ」の詳細が紹介されました。
このCPUシリーズは、ハイパフォーマンスなゲーミングPC向けに開発されたプロセッサーで、圧倒的なパワーを備えながら優れた電力効率を実現しています。最大の特徴は、従来のハイパースレッディング技術を廃止し、電力効率の向上に注力したアーキテクチャーにあります。
Core Ultra 200HXシリーズ仕様表
CPU | コア数 | スレッド数 | GPU | NPU TOPS | 最大周波数 |
Ultra 9 285HX | 24(8P+16E) | 24 | 4 | 13 | 5.5GHz |
Ultra 9 275HX | 24(8P+16E) | 24 | 4 | 13 | 5.4GHz |
Ultra 7 265HX | 20(8P+12E) | 20 | 4 | 13 | 5.3GHz |
Ultra 7 255HX | 20(8P+12E) | 20 | 4 | 13 | 5.2GHz |
Ultra 5 245HX | 14(6P+8E) | 14 | 3 | 13 | 5.1GHz |
Ultra 5 235HX | 14(6P+8E) | 14 | 3 | 13 | 5.1GHz |
新アーキテクチャーの詳細として、E-coreには「Skymont」、P-coreには「Lion Cove」という新しいコアデザインが採用されています。特にE-coreは前世代比で32%のIPC(Instructions Per Clock)向上を実現しており、従来のP-coreに匹敵する性能を発揮します。P-coreについても9%のパフォーマンス向上を達成し、キャッシュメモリも24MBから36MBに増強されています。
電力効率の面では、他社CPU比で最大50%優れた電力あたりのパフォーマンスを実現。55W設定での比較では、前世代の第14世代インテルCoreプロセッサーに対して約30%のパフォーマンス向上を示しています。接続性の面でも大幅な強化が図られており、最大48本のPCIeレーンを搭載することで、高速なストレージやグラフィックスカードとの接続に対応しました。
また、全モデルに13TOPS性能のNPU(Neural Processing Unit)を搭載しており、AI PC対応アプリケーションでの高速処理が可能です。内蔵GPUについても、新世代アーキテクチャーによって前世代UHDグラフィックスから大幅に性能が向上し、AV1コーデックのハードウェアエンコード/デコードに対応しています。
従来CPUとの比較
発表会では、Dell 16 Auroraに搭載されるCore 200Hシリーズとの比較も示されました。Core 200Hシリーズは従来のRaptor Lake Hアーキテクチャーをベースとしながら、クロック周波数の向上を図った製品です。
CPU型番 | 総コア数 | P-Core | E-Core | P-Max周波数 | E-Max周波数 | NPU |
Core i5-13420H | 8 | 4 | 4 | 4.6GHz | 3.4GHz | No |
Core i7-13620H | 10 | 6 | 4 | 4.9GHz | 3.6GHz | No |
Core 5 210H | 8 | 4 | 4 | 4.8GHz | 3.6GHz | No |
Core 7 240H | 10 | 6 | 4 | 5.2GHz | 4.0GHz | No |
Core Ultra 7-255HX | 20 | 8 | 12 | 5.2GHz | 4.5GHz | 13TOPS |
この比較からも分かるように、Core Ultra 200HXシリーズは従来のHシリーズCPUに対して、コア数、クロック周波数、そしてNPU搭載において大幅な優位性を持っています。
CyberLinkのいNPU対応アプリケーション
発表会では、サイバーリンク株式会社マーケティングディレクターの今澤博之氏から、Intel NPUに最適化されたアプリケーションの実演が行われました。サイバーリンクは台湾に本社を置く老舗マルチメディアソフトウェア企業で、これまでに全世界で4億本以上の出荷実績を持ちます。
日本市場においては特に強いポジションを築いており、BCN AWARDのビデオ関連ソフト部門で10年連続No.1を獲得。2024年のデータでは60.1%という圧倒的なシェアを持っています。写真編集分野でも、Adobe社が強いマーケットながら第2位の地位を確立しており、年々シェアを拡大しています。
PowerDirector 2025 Ultra:NPUを活用した動画編集
動画編集ソフト「PowerDirector 2025 Ultra」では、Intel NPUを活用した複数のAI機能が実装されています。

AI背景除去機能では、AIが自動的に背景を認識・除去します。NPUが人物の形状をリアルタイムでトラッキングし、その処理をCPUやGPUと並行して実行することで、効率的な処理を実現していることが示されました。

AIボディエフェクト機能も同様にNPUを活用しており、動画内の人物を自動検出して52種類の躍動感あふれるエフェクトを適用できます。人物の動きに合わせてエフェクトがリアルタイムで追従する様子が実演され、NPUの処理能力の高さが印象的でした。
現地では実演も行われ、グリーンバックなどのクロマキーを使わずとも、自然に人物を切り取ってくれる様子がお披露目されました。ボディエフェクトでは、まるでアニメのようなクールなエフェクトがスムーズに適用できており、非常に驚きました。
PhotoDirector 2025 Ultra:NPU活用の写真編集
写真編集ソフト「PhotoDirector 2025 Ultra」では、特に画像拡大とノイズ除去機能でNPUの威力が発揮されます。

AI画像拡大機能の実演では、5000×3234ピクセルの元画像を4倍の20000×12936ピクセルまで拡大する処理が披露されました。通常の拡大処理では画質が劣化してしまいますが、AIによる補間処理により、細部のディテールを保ったまま高品質な拡大が可能です。この処理において、どの部分を補間してどのように画像を生成するかの解析処理にNPUが使用されており、処理中はNPU使用率が85%程度まで上昇していました。

AIノイズ除去機能では、より複雑な処理が実行されます。画像全体に乗っているノイズを除去しつつ、被写体の細部ディテールは保持するという高度な判断処理が必要で、この処理でNPU使用率は95%近くまで達していました。実演では、ノイズが多い画像から効果的にノイズのみを除去し、被写体の質感は維持された状態での処理結果が示されました。
デザインコンセプト:AW30で表現する新しいAlienware
Alienware Auroraシリーズには、Alienware 30周年を記念した新しいデザインコンセプト「AW30」が採用されています。このデザインは3つのキーワードで表現されています。
Mystery(ミステリー)では、ゲーム体験を高める人間工学に基づいたフォルムと、好奇心と発見を刺激する見慣れないデザインを追求。カラーネームも「インターステラー インディゴ」と名付けられ、宇宙的な神秘性を表現しています。
Motion(モーション)のコンセプトでは、デジタル環境に融合した表現の無限可能性を秘めたビジュアルデザインを採用。静的なデザインではなく、動きのあるダイナミックな印象を与える外観としています。
Luminosity(ルミナスティ)では、光と動きがデジタル環境と融合した没入型体験を提供。技術力を際立たせるレイヤーマテリアルと半透明感、照明と組み合わせたインテリジェントな奥行きを演出しています。
これらのコンセプトは、オーロラにインスパイアされた色と動きが表面に反射して、別世界のようなダイナミックな体験を生み出すという全体的なビジョンに基づいています。
Win10からの乗り換えにも!セールが開催
新製品発表と同時に、「半期決算セール」と「EARLY SUMMERセール」の開催が発表されました。Windows 10のサポート終了(2025年10月)を控え、買い替え需要を狙った大規模なセール展開となっています。
主なセール内容
ゲーミングPC分野では、今回発表されたAlienware Area-51シリーズで初のプロモーションを実施。従来はプロモーション対象外だったハイエンドモデルでも、メモリーやSSDのアップセルオプションが特別価格で提供されます。
カテゴリ | 割引率 | 特記事項 |
Alienware Area-51 | 初回プロモーション | アップセルパーツがお買い得 |
旧Alienwareシリーズ | 最大20%OFF | クリアランス(在庫限り) |
Dell Gシリーズ | 最大25%OFF | クリアランス(在庫限り) |
一般ノートPC | 最大24%OFF | |
ビジネスPC | 最大24%OFF | 5月より値下げ中 |
モニター | 最大24%OFF | SE2425HMが24%OFF |
周辺機器 | 最大15%OFF |
キャンペーン施策も充実しており、パソコン購入者向けに複数の抽選キャンペーンを実施します。インテル Core Ultra プロセッサー、Qualcomm Snapdragon プロセッサー、AMD Ryzen搭載デルPCの購入で、抽選で合計2,017名様に5,000円から最大10,000円分のQUOカードPayやPayPayポイントが当たります。
Dell Rewardsポイント2倍キャンペーンでは、14万円以上の購入で通常3%のポイント還元率が6%に倍増。高額なゲーミングPCの場合、相当額のポイントが獲得できるため、モニターなどの周辺機器購入にも活用できます。

新製品記念として、Alienwareバックパック プレゼントキャンペーンも実施。New Alienware 16 AuroraまたはNew Alienware 16X Aurora購入で、抽選で60名様にAlienware専用バックパックが当たります。
今後の展開と市場への影響
今回の発表会では、デル・テクノロジーズの戦略的な方向転換が明確に示されました。特に重要なのは以下の3点です。
ブランド統合による明確化:従来の複雑な製品ラインアップを4つのブランドに整理することで、ユーザーにとって分かりやすい選択肢を提供。特にゲーミング分野でのAlienwareブランド統合は、より幅広い価格帯でのブランド展開を可能にしています。
AI PC対応の加速:Intel Core Ultra 200HXシリーズの採用とNPU対応アプリケーションの充実により、次世代AI PC市場での競争力を確保。特にクリエイター向けの動画・写真編集分野での差別化要素として活用しています。
価格戦略の多様化:従来のハイエンド一辺倒だったAlienwareブランドに、14万円台からアクセス可能なエントリーモデルを追加。これにより、より多くのユーザーがAlienwareブランドを体験できる環境を整備しました。6月中旬にはDell Premiumシリーズの発表も予定されており、新ブランディング戦略の全貌が明らかになる予定です。
ハードコアゲーマーにとっては、Area-51の廉価版として位置づけられるAlienware 16X Auroraが特に注目されます。同等のCPU性能を維持しながら価格を抑えた戦略は、競合他社への対抗策として効果的であり、ゲーミング市場での新たな選択肢として期待されます。
¥8,423
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
※コメントを投稿する際は「利用規約」を必ずご確認ください