
2025年5月20日から2025年5月23日にかけて、台湾・台北の南港展覧館(TaiNEX)にてコンピュータ・テクノロジー見本市「COMPUTEX 2025」が開催されました。
本記事では、NVIDIAが実施したRTX 50シリーズやAIを使った機能についてのメディア向け説明会が行われたため、そのレポートをお届けします。
音声だけでゲームを最適化!?
生成AIの台頭をはじめとし、現在世界各国でAIによる技術革新が起こっています。それはもちろん、ゲーマーにとっても無関係ではありません。NVIDIAはAI関連企業として業界をリードする企業のひとつであり、ゲーマーにも関係する機能を次々と公開しています。
音声コマンドで複雑な操作を一括実行。G-ASSIST
NVIDIAが開発しているG-Assistという機能は、Alt+GキーのショートカットでローカルAIアシスタントを開き、音声コマンドであらゆる操作を制御できます。プラグインによるDiscord、Spotify、SignalRGB、Google Geminiといったサービスとの連携も可能です。
デモンストレーションでは「『Counter-Strike 2』のゲーム設定を最適化して」という音声コマンドから、ゲーム起動、設定変更、統計オーバーレイ表示まで一連の操作が自動実行される様子が披露されました。他にも、「Discordのチャットに5分後にオンラインになると伝えて」「RGBライティングをゲーム向けに変更して」といった複雑な操作も一声で実行可能であることが示されました。
ChatGPTを活用したプラグイン作成テンプレートの提供も行われており、Python経験のないユーザーでも独自のプラグインを作成し、個人の使用環境に最適化されたAIアシスタントを構築できます。ゲーマーライフの利便性向上に一役買ってくれそうです。
デジタルヒューマンが会話してくれる
NVIDIAのACE(Avatar Cloud Engine)アーキテクチャを活用したデジタルヒューマン「アキ」は、OpenAIのSpeech-to-Speech API連携により、日本語を含む多言語での自然な対話を実現しています。デモでは英語話者の担当者が「日本語で自己紹介して」というようなことを話した後に自然な日本語で話しました。加えて、「G-Assistを使ってキーボードライトを緑に変更して」という複雑な指示を理解し、実際にLogicoolデバイスの設定を変更していました。
LangFlowとの連携により、YouTube検索、Google検索、カスタムデータベース、RAGメモリなどの外部リソースにアクセス可能です。ファイルドラッグ&ドロップによる文書要約機能では、研究論文の内容を即座に理解し、具体的な統計情報を自然な会話形式で提供していました。
RTX Remixでクラシックゲームが見違えるグラフィックに!

『Portal RTX』『Quake II RTX』『Half-Life 2 RTX』などを始め、クラシックなPCゲームをRTXをフル活用した美麗グラフィックで描き直す、RTX Remix化が相次いでいます。
先日リリースされた『Portal RTX』の最新パッチでは、DLSS 4マルチフレーム生成とNeural Radiance Cache(ニューラル輝度キャッシュ)が追加されました。RTX 5060を使用した1080p最高設定でのデモでは、従来の85fpsから150fpsへの大幅な性能向上が確認できました。
Neural Radiance Cacheの導入により、間接照明の精度と応答性が劇的に改善されました。デモでは、ボタンを押した瞬間にライトの色が青から黄色に変化し、その反射光も即座に更新される様子が確認できました。従来は反射の更新に遅延があったため、この改善は没入感の大幅な向上をもたらします。
特に注目すべきは、Transformerベースのレイ再構築による画質改善です。従来のモデルでは失われていたタイルの細かな傷や汚れなどのディテールが、新しいモデルでは鮮明に再現されており、オリジナル版のアーティストが意図した本来の表現が復活しています。
配信者も注目!もはや演出は自動で行える?
当日、会場では配信者向けソフトウェア企業・StreamlabsのCEOもプレゼンを実施しました。Streamlabsが開発中のインテリジェント配信エージェントは、ライブ配信の複雑な作業を大幅に簡素化します。
デモでは、『フォートナイト』のプレイ中に「どこに降下すべき?」という質問に対し、エージェントが戦略的なアドバイスを提供し、さらにチャットの意見を集約して最終的な判断を下す様子が披露されました。
最も印象的だったのは、プロデューサー機能の実演です。プレイヤーがゲームオーバーになった瞬間、以下のような処理を次々と実行しました。ストリーマーはもはや自分で演出をいちいちオン・オフしなくても、AIによって自動化できるのです。
敗北の認識とリプレイ保存
ゲームオーバー映像の表示
効果音の再生
3.5秒待機
映像ソースの非表示
カメラフォーカスシーンへの切り替え
皮肉交じりのコメント
StreamlabsのCEOは、「大手ストリーマーがチームを雇って実現している高品質な演出を、個人配信者でも利用できるようになります」と説明していましたが、確かにその説得力があるデモンストレーションでした。
また、マイクのミュート忘れという配信者あるあるな問題に対しても、エージェントが自動検知し、解除の提案と実行を行います。また、「4K 60fps配信に必要なビットレートは?」といった技術的な質問にも、「35,000~45,000キロビット毎秒を目指してください。アップロード速度がオリンピック級であることを祈ります」といったユーモアを交えた回答で応答していました。
DLSS 4:ゲーミング体験の次なる進化
幅広いゲーマーがきになるのは、やはりRTX 50シリーズのDLSS 4でしょう。DLSS 4はマルチフレーム生成の導入により、DLSS 3を大幅に上回る性能向上に成功。デモではRTX 5060を使用した『明末:ウツロノハネ』のプレイにおいて、DLSS無効時の約100fpsから、DLSS 4有効時には約300fpsという飛躍的なfps向上が確認されました。
このパワーはノートPCでも発揮されます。14インチ小型筐体の「ASUS ROG Gaming A14」での実演では、従来ノートPCでは電力と熱制約により困難とされていたレイトレーシング有効での三桁fps達成を、マルチフレーム生成により実現しています。Remedy Entertainmentの『FBC: Firebreak』では約200fpsを記録し、240Hzディスプレイを十分に活用可能であることが実証されました。
AI技術をふんだんに活用した驚くべきデモンストレーションの数々を通じて、筆者は改めてゲーマーとAIの距離は思っている以上に近いものになってきてると感じました。ゲームプレイ体験において、AIがもたらす技術的革新に今後も期待したいところです。
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