
今から6年前の2019年11月、レトロなビジュアルのゲームを制作するイベントHaunted PS1 Jamの中でフリーゲームとして『No Players Online』 (現在itch.ioでは『No Players Online Classic』と表記)がリリースされました。
プレイヤーが誰一人としていない静かなマルチプレイヤーマップを探索する、というシンプルかつ不気味な15分程度の作品で、後述する隠し要素もあいまってカルト的な人気を得ました。
そんな『No Players Online』が6年の時を経て完全版(あるいは商業版)として生まれ変わり、2025年11月6日にリリースされました。
今作は既に高い評価を受けており、Steamでは「非常に好評」のステータスを獲得しています。
本記事では、カルト的人気を誇ったオリジナル版から再構築された『No Players Online』のレビューをお届けします。記事の制作にあたっては、パブリッシャーよりSteamキーの提供を受けています。
デスクトップとインターネットを駆使した情報収集
プレイヤーは4:3の縦横比が懐かしいレトロなモニターを前に、何とも懐かしい雰囲気を醸し出すログイン画面を見つめています。ジョンとサラという二人のアカウントにログインするにはパスワードが必要なため、しょうがなくゲストとしてのログインを続行します。

ログインを完了すると一見レトロなように見えて、アイコンが現代的でオシャレなデスクトップが表示されます。「ファイルエクスプローラー」に「インターネットブラウザ」「チャット」など様々なアプリが用意されたこの画面が、今作の舞台の一つです。
このPCの持ち主は誰なのか、このPCで何をしていたのか。そんな素朴な疑問に突き動かされるように、プレイヤーは伝統的なRPGの勇者よろしく、他人のPCの探索を始めます。

「ファイルエクスプローラー」を使ってPC内のデータを探ったり、「ブラウザ」を使用してインターネット上に残された情報を集めたり……。

これらの情報収集パートは、実は「クラシック版」において、いわゆるARG(代替現実ゲーム)として用意されていたコンテンツに近い役割を担っています。
ARGとはAlternate Reality Gameの略称で、ビデオゲームに実装された例で言えば『Inscryption』が記憶に新しいでしょう。ゲーム内のデータを解析した結果出力された文字列が実在するURLや電話番号、メールアドレスといったものを示し、ゲームの世界と現実の世界が繋がる。そんなオリジナル版の要素が、今作にはゲーム内に用意され、物語を進める流れに組み込まれています。
例えば「ブラウザ」で閲覧できる更新が止まったゲーム開発者向けフォーラムには、かつてアップロードされたゲームのダウンロードリンクが残されています。

このリンクを踏むとゲーム内PCにデータがダウンロードされ、「zipファイルの解凍」「exeファイルの実行」という現実と同じ手順で、かつてアップロードされたゲームを実際に遊ぶことができます。

今作の主題ともいえる、誰もいないマルチプレイヤーゲームである『Catch the Flag』の開発者のブログも残されており、隠された情報を集めていくゲームプレイは実際のARGの体験に触れているかのような感覚をもたらしてくれます。

以上のように、デスクトップを操作して情報を集めるのが探索パートであるとするならば、本作にはもう一つの全く異なるパートが用意されています。
それは「誰もいないオンラインゲーム」である『Catch the Flag』を実際にプレイするウォーキングシムパートです。時が止まったはずのオンラインゲームは収集した情報と”ある手続き”を経ることによって、不気味に、そして有機的に変化していきます。
プレイの感覚が全く異なった二つのパートを行き来する今作のゲームプレイはユニークで、特にビデオゲームにおけるARGという本来選ばれた一握りの人間にしかプレイを楽しめない体験をゲーム内に落とし込み、身近なものとして提供した点が評価できます。

また便宜上、探索とウォークシムという二つのパートを区別して紹介しましたが、両者の境界は物語を進めるごとに融解していき、現実とゲームという二項対立をゲーム内で破綻させていく様は痛快でさえありました。
血と汗と情念のこもったビジュアル

今作のオリジナル版が話題となったきっかけである、このレトロなビジュアルにも要注目です。
『Catch the Flag』はその名の通り、本来は敵陣地内にある旗を自陣に持ち帰るシンプルなFPSです。武器はリボルバーのみで、あまり捻りのないマップが一つだけ用意されたベータ版もいいところの未完成品です。
しかし、一見空っぽの『Catch the Flag』は物語を進めるごとに不気味に、そして有機的に変化を遂げていきます。
例えばあるシーンでは赤と青の二色を基調とし、テキストボックスに会話が表示されるADVのようになったり…

あるいは誰かの思い出を追体験するようなウォーキングシミュレータへと変わることもあります。最初はランダムに思えるこれらの変化はストーリーを進めるにつれ、意味を、そして意志を帯び、まるでゲームそのものが語りかけてくるようなストーリーテリングを実現しています。

オリジナル版から遂に明かされるストーリー

持ち主不明のデスクトップから情報を集める、というオリジナル版のストーリーは今作にもそのまま受け継がれています。ただし、オリジナル版においてはARGを通しても周辺情報しか見つからなかったのに対して、完全版である今作にはストーリーの肉付けがしっかりとされています。
様々な人物が主人公であるプレイヤーを認識し、語りかけ、選択を促します。謎のベールに包まれていた『No Players Online』のストーリーは明かされ、オリジナル版のファンだけでなく今作から触れたプレイヤーにとっても驚きと、興味深さをもって受け入れられる内容となっています。

バグとエンディングに関する不満点

一方で不満点が無いわけではありません。まず2025年11月7日時点で、日本語でプレイすると進行不能になるバグが生じていました。このバグは複数の言語で生じていることもあって、開発側はバグを認識し修正中とのことです。
また、ゲームのエンディングがあまりにも何も語っていない点は気になりました。ゲーム内にアンロックされていない情報が多数残されていることから、「さらなる続き」が用意されていることは間違いありませんが、その続きを見るために必要となるのがARGです。
実際にSteamのフォーラムなどでは活発に議論が交わされており、日々進展があるようです。しかし、筆者個人としてはARG要素をゲーム内に実装して、誰もが謎を解く過程を楽しめるようにした点が今作の評価点だっただけに、結局ARGに回帰し、エンディングの続きをそこに委ねてしまう今作の姿勢はマイナスに映りました。
ARGは確かにリアル脱出ゲームのような楽しい試みではありますが、ことビデオゲームにおいては、プレイヤーとゲームの間で完結していた世界が、決して整合性を持たない現実世界と触れ、リアリティが崩れてしまう諸刃の剣でもあります。この点は残念でした。
総評:高いクオリティで仕上がった不気味なインディホラー作品

以上『No Players Online』のレビューをお届けしました。オリジナル版から6年の時を経ることで肉付けされた今作は、ゲームプレイ、ビジュアル、ストーリー全てのクオリティが高く仕上がっていました。
特に変化を続ける『Catch the Flag』のビジュアルはすさまじく、オリジナル版にあった「この作品は本当にマズい作品ではないか」という雰囲気を再び感じさせるものでした。

筆者個人としてはエンディングに関する不満はありましたが、総評としては大手を振ってお勧めできる2025年を代表するインディーゲームでした。人間の血と情念が滲むようなゲームの世界へと飛び込みましょう。
Game*Spark レビュー『No Players Online』 Steam 発売日:2025年11月6日
血と情念が滲むような不気味なホラー
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GOOD
- 興味深いストーリー
- 探索とウォーキングシミュの絡み合うゲームプレイ
- 執念すら感じるビジュアル
BAD
- ARGにゆだねられるエンディング
- 進行不能バグ











