
日本の自動車文化は、国際的に見れば極めて異質かもしれません。日本の車道は道幅が狭い上、傾斜や急カーブが多く、それ故に海外の人々たちは「日本人は毎日サーキットを走行している!」と解釈するようなことも。もちろん、日本製の車はそんな道路情報に合わせた設計です。
たとえば、広大な荒れ野を突き抜けるかのように整備されたアメリカのルート66を走る車は、ラグジュアリーな内装と快適な住空間すら実現できる巨大サイズ、そして大排気量が求められました。日本車はそれとは真逆、小さくても高回転を発揮できる車です。
そして、日本車といえばドリフトというイメージがある方も多いのではないでしょうか。もちろん、公道でのドリフトは道交法違反です。最近では、自動車運転処罰法における危険運転に、ドリフト走行を追加しようという動きもあります。
そんな危険なドリフトですが、ゲームの中では思う存分行えます。本稿では日本のストリートレーシング文化とドリフトをテーマにしたオープンワールドドライビングゲーム『JDM: Japanese Drift Master』をプレイして、改めてドリフトの“危険さ”と“文化”を学んでいきましょう。
主人公はポーランドの青年「トウマ」

『JDM』の舞台は日本ですが、主人公は「トマシュ・スタノフスキ」通称「トウマ」というポーランド人の青年です。トウマは母国でドリフトレーサーとして活動していたものの、父親の死を引きずった状態でレースに出場したため、深刻なクラッシュを起こしてしまいます。
幸い怪我人は出なかったものの、トウマはペナルティを食らい、向こう1年間ヨーロッパでのレースに出場できなくなりました。そこで来日し、寿司屋で働きながらドリフトレーサーとしての腕を磨くことにした……というのがストーリーの流れです。

そんなトウマが走るコースは、日本特有の幅の狭い車道が細かく描写され、それは日本人の目から見ても「ここ、まさに日本じゃん!」と思わせるほど。日本を舞台にした海外製ゲームでよくある「ヘンな日本」ではなく、地名は架空ながらもかなりレベルの高い日本の造形になっています! なかでも寿司屋の名前は「ターボツナハウス」って、すごいセンス……。
操作面は、クラッチとH型シフトレバーを使った本格的な入力で遊ぶことも可能です。ここはコントローラーのLスティックの操作だけで、ステアリングとブレーキを同時に利かせる簡単設定にしてみましょう。
筆者はMT解除の普通車免許を所持していますが、MT車でドリフトなんて人生で一度もしたことがありません。それをやる度胸も環境もまったくないので、クラッチを踏みながらブレーキかけてステアリングをグルグル回す自信なんて、当然ありません。
しかし、一番簡単な設定にしても、結構苦戦してしまうのが本作におけるドリフト操作。ヘアピンカーブを横滑りして突破するなんて、ある程度練習しなきゃできません!
最初のうちは、カーブの外側に大きくはみ出してしまいます。どこでブレーキを利かせ始めたらいいのか、ステアリングの微調整はどのようにすればいいのか。そうしたことを把握するためには、それなりに練習を積む必要があります。

寿司屋で働く主人公
主人公・トウマは、上述したように寿司屋で働いています。そのため、彼は時として店の車で寿司の出前に出かけなければなりません。どこかで聞いたことのある設定なので、『JDM』を既に知っている方は、元ネタにもピンときていることでしょう!
そのような内容のミッションも実装されており、なかには「いかに寿司を綺麗なコンディションに保ったまま目的地まで行くか」を求められる仕事も用意されています。縁石やガードレール、障害物に接触すると寿司が崩れてしまうので、いかにぶつからないようにするか……というミッションです。

もっとも、このあたりの描写も結構芸が細かく、ターボツナハウスの車はなんと緑ナンバー。出前に使うための業務用車両だから、緑ナンバーでなければいけない……と開発者が判断したのでしょうか。
厳密にはそんなことはないのですが、ともかくこうした「日本のことに詳しくなければできない描写」が随所に盛り込まれている点も『JDM』の醍醐味と言えます。

現実世界ではドリフト走行が「危険運転」にする審議が
繰り返しになりますが、もちろん現実の公道でドリフトなどやるわけにはいきません。
冒頭でも述べたように、最近は法務省に設立されている法制審議会刑事法(危険運転による死傷事犯関係)部会にて、「危険運転の対象にドリフト走行を追加する」ということが審議されています。危険運転致死傷罪の改正の可能性は高いと見られ、部会は既に試案を資料にまとめています。
そんななかで、なんと部会の有識者が「ドリフトを体験してみよう」と、11月に福島県二本松市のエビスサーキットを訪れているのです。
株式会社エビスサーキットの代表取締役社長熊久保信重氏からドリフトに関する説明を受け、質疑応答を行うとともに、熊久保氏が運転する車両に参加委員等が乗車し、ドリフトを行う車両への乗車体験を実施した。
法務省の公式サイト内で公開されているこの報告資料ですが、面白いことに「違法行為であるはずのドリフト走行が競技化していった流れ」について、エビスサーキットの代表取締役社長・熊久保氏による説明という形で解説されています。
○ドリフトは、約40~50年前、当時の車両やタイヤの性能の下で、レースやラリーでカーブを速く曲がるためのテクニックの一つとして誕生した。現在販売されている車両やタイヤは性能が良いので、ドリフトしない方がカーブを圧倒的に速く曲がることができるが、当時の車両やタイヤの性能だと、ドリフトする方が速く曲がることができたことによって、格好良さにもつながってしまい、峠や埠頭でドリフトするのが流行ってしまった。
(中略)
○ドリフトが社会問題化していた約25~30年前、ドリフトを受け入れているサーキットは日本に存在しなかったが、私(筆者注・熊久保信重氏)は、サーキットでドリフトをすることができれば峠道等でのドリフトを減らすことができるなどと考え、エビスサーキットでドリフトをすることができるようにした上で、いろは坂等のドリフトが行われている全国のスポットを2~3年かけて巡り、チラシを配って、一般道でドリフトをしている者をサーキットに呼び込むための活動を行った。その活動の甲斐あって、徐々にサーキットに人を呼び込むことに成功し 現在は 全国のサーキットにおいて一つのモータースポーツとしてドリフトができるようになった。
○以上が、ドリフトが誕生してからスポーツに変わるまでの流れである。

著名なレーシングドライバーでもある熊久保氏による、「いろは坂等のドリフトが行われている全国のスポットでチラシ配りをした」といった行動を挟んだ上での「公道レーサーをサーキットへ来てもらうようにする」取り組みは、地道で大変な労力を費やしたはずです。
熊久保氏の行いもあって、現代ではサーキットに行けば安全な環境でドリフト走行できるようになりました。もしも本稿を読んで、あるいは『JDM』をプレイして「俺も実際の車でドリフトやってみたい!」と思い立ったとしたら、まずはドリフトに対応するサーキットがどこにあるのか調べることがオススメします。
当たり前ですが、まかり間違っても、公道でドリフトはしないように! ゲーム内で操作するのすら、結構難しいことですから!
ともあれ、『JDM』の世界ではコースからはみ出そうと、対向車線の一般車に激突しようと、警察に捕まることはないし怪我人が出ることもありません。車道だけでなく、駐車場でドリフトの腕前を競う場面も登場します。
そんな架空の日本が舞台の『JDM: Japanese Drift Master』は、PC(Steam/GOG.com/Epic Gamesストア)向けに配信中。Steamではウィンターセール期間に合わせ、2026年1月6日まで40%オフの2,340円で販売中です。













