夢のように曖昧な世界で銃を撃つ。すると、世界が創造されていく……そんな、ほかでは見たことも聞いたこともないユニークな仕組みを持つ『Dreams of Another』は、ディレクターであるBaiyon氏のセンスが炸裂した作品です。
そしてそのユニークさは、ゲームプレイや見た目だけにとどまりません。本記事では、音作りを中心としたBaiyon氏へのインタビューをお届けします。なお、BitSummitで実施した発売前のインタビューも掲載しているので、合わせて読むと同氏の脳内をより詳しく理解することができるはずです。

読み応えのあるユニークなテキストを考えるプロセスは“禅問答”のようだった
――改めて、自己紹介をお願いいたします。
Baiyon:マルチメディアアーティストのBaiyonです。Q-Gamesのクリエイティブ・ディレクターで、『Dreams of Another』ではディレクターに加え、アートディレクションやサウンド、シナリオ、セリフなども担当しています。
――リリースを迎えたあとの心境をお聞かせください。
Baiyon:なんか実感があるようでないような感じなんですけど……。やはり人にやってもらえるのは嬉しいし、面白いですね。僕の中ではまだ整理しきれていない感じはあるんですが、それだけ本気で取り組んだということでしょうね。パーソナルな部分も多い作品なので、これから喪失感に襲われるんですかね。
――開発の忙しさから解放された感じもあまりないですか。
Baiyon:それはありますね!もうとんでもなく大変で、クリエイティブな決断をしなくていい日があるというだけで、解放感がありますよ。
制作中は僕が動いている間も「時間」というものが出血するようにずっと流れ出ている感覚があるんですよ。右手庇ったら左手から出るし……みたいに、どうしようもできない場面というのもあり、必死にやってきました。チームのみんなも同じ思いだったと思います。ゲームづくりって難しいですね。
――ユーザーからの反応に印象的なものはありましたか。
Baiyon:海外のファンも多くて、海外の方から、奥さんと一緒にゲームをプレイして、セリフの内容について話し合い、良い夜を過ごせたという感想をいただいて、めちゃくちゃ嬉しかったですね。ゲームの内容を褒められるのももちろんありがたいですが、それが外側まではみ出てきているのが嬉しい。
「このゲームは体験そのものより、プレイヤーが何を感じて持って帰るかが大事」と説明してくださっている方もいて……本作は普通のゲームとは少し違うので、やはり嬉しいです。

また、『1000xRESIST(サウザンド タイムズ レジスト)』というゲームが好きな人は『Dreams of Another』も気にいるはずという感想をいくつも見かけて、実際遊んでみたんですけど……かなり面白かったですね。最後までプレーしたけど、最後まである意味よくわからなかった。(笑)。素晴らしい瞬間がたくさんありました。最高に褒めているつもりです。
――そうなんですね。どんなところに共通点を見出していたんでしょうね?
Baiyon:僕も考えたんですけど、ノンリニアで時間軸と話の順序が断片的かつぐちゃぐちゃで、お話のテーマが哲学的・シンボリックな感じなのが似ているのかなと思いました。『Dreams of Another』はよりはっきり結論を出したとは思っているんですが、文章を読むのが好きな方や、その場の体感を大切にする人に気に入っていただけたのかな。
『1000xRESIST』にもゲームプレイらしいゲームプレイは少なくて、ジャンプもなければ、物を掴むとかもない。基本的には移動して話すだけなので、“欠損フェチ”みたいな部分があると思うんですよ。
――どういうことですか……!?
Baiyon:インディーって往々にして全てに注力することが出来ないから、そういう面があると思うんですよ。バチバチのAAAタイトルのような全部が高得点なものもいいけれど、エネルギーを注ぐ場所を意識的に選択して、逆に切るところは切る、みたいなものは、伝えたかったことが伝わってくるし、愛すべきところがありますよね。つまり「ない」ことで伝わってくる部分があるというか... 共通点で言うと、ゆっくりしたペースや、我慢強さに付き合ってくれた先にしかないものを受け取ってくれる人に刺さったのかなと。
――なるほど、腑に落ちました。以前のインタビューと少し重なるのですが、改めてテキストへのこだわりを教えていただきたいです。製品版を手に取ったのですが、量がすごくて……。
Baiyon:ディレクターは僕なので僕がやると決めたことなのですが、例えばドアのセリフを何十個も考える、禅問答のようなことをずっとやってましたね(笑)。僕自身を追い込んで言葉を絞り出すような作り方でした。でも、楽しかったですよ。
ただ、やはり1つのテキストでも“無難”なものは基本的に排除しましたね。奥行きがなく、見たまま以上の意味がないセリフはとにかくなくしたり、言葉やニュアンスを組み合わせ直したり、かなり気をつけました。メインメニューの「Sentiments」というところから集めたセリフが見られるのですが、ユーザーの方は一生懸命探してくれて、好きなもののスクリーンショットを撮って、と楽しんでいただけてて嬉しいですね。

――物語の最初が、主人公的に据えられているパジャマの男ではなく、彷徨う軍人から始まったのは少し意外でした。敵が目前にいるのに、銃を撃てない……という。
Baiyon:あれは、ゲーム内のキャラクターがプレイヤーの入力を拒否するという体験を作ってみたかったんですよね。ゲーマーとしての僕が「なんだそれは、そんなこと起きたらいかんだろう!」と思うような体験を。
ゲームって、僕がゲーム機を持ってゲームを買ってプレーしているからと言って、その世界の支配者ではないと思うんですよね。でも、そうなってしまいがちなので、「拒否」をしてみたんです。条件的に無理とか、武器を持っていないからできないとかではなくて、「やりたくない」というのを自分が操作しているキャラクターが提示してくるんです。
――物陰に隠れて敵を補足できているというあの状態、もし普通のTPSだったら撃っちゃいますね。
Baiyon:ですよね。配信でやってくれた人の反応を見ていると、「おい!」「どういうこと?」「やられてしまう!」となってて、しめしめ……と(笑)。まぁ、怒ってそのまま止められたら困るんですが(笑)。その後も続けてプレイしてもらうと、これが対比だということはわかるので、僕が入れたいものを入れてみました。

あと、全体を通して「ハテナ」を作りたくて。本作を作るにあたって、クリエイターとしての僕ももちろんあるんですが、一方で元々は別の業界からやってきたゲーム好きとしての批評的な側面を持つ僕の目線もあるんですよね。ゲームというものに対して、そういう目線があって。大好きなゲームというメディアを俯瞰して見ながら、要素を分解して組み上げ直したり、少し構造を変えることで、「ゲームとは何か?」というようなものを提示する。そのアプローチを、正面じゃなく逆さまからやっている、みたいな。
『Octodad』みたいな操作しにくい系のゲームもありますが、あのパートはそれとは少し違う形で表現してみました。
――グラフィックについてもお聞きします。本作で目を引くのは、やはり他のゲームで見たことがないあのポイントクラウド技術を使ったビジュアルです。改めて、こだわりを教えて下さい。
Baiyon:いろいろな取材をしていただくなかで、僕自身あまりに当たり前になりすぎていて深く考えることはなかったのですが、改めて自分は抽象的なものが好きということに気づきました。もちろんキャラクターはどういう人かわかるようにしなきゃいけないけれど、本作では、曖昧なビジュアルで次世代的なカッコよさを表現する方法を見つけられたのかも……という感じがしていて。
曖昧な表現って、他のゲームと比べて、ただディテールが足りないとかだと、ともすれば時が経つと古く感じてしまうようになりそうじゃないですか。でも、ポイントクラウドはもう、そういったものを超越しちゃっているというか……。『PixelJunk Eden』のときも、タイムレスなビジュアルが作れたと思っていて、こういった表現は自分のなかで大事なところかもしれないなと実感しました。曖昧なものをこの現代の解像度で描けるって、やっぱりいいな……と。

――確かに、経年劣化知らずなビジュアルですね。グレネードでブワッと一気に景色が創られていくのも気持ちよく、こうしたゲーム的な気持ちよさみたいなところもしっかりあって、「アート的なゲーム」になりすぎていないのも本作の魅力だと感じました。
Baiyon:本作は「ゲーム」ですし、作っているのもゲーム会社ですからね。自分にとって本作は「ゲーム」というものに対するラブレターでもあるので、ゲーマーの方々が違和感がないくらいまではゲームとしての構造体を残しておきたいと思いました。L2で狙ってR2でダダダッと撃ったり、グレネードでドーンと爆発させたり、そういうお決まりの気持ちよさって大事ですよね。
ゲームって、世界に変化を起こせるじゃないですか。そこがゲームが持つインタラクティブ性の一番重要でピュアな部分なのかなと思っていて。本作は自分が世界を変化させないことには、進むこともできないという一種の強制的なインタラクティブ性を引き出しているんです。
ストーリーについても、時系列がバラバラだったりする構造上「つかみにくい」という声もあったんですけど、その分自分としてはめちゃくちゃベタなストーリーをベースにしているんですよ。ひねったつもりはなくて、よくありそうなお決まりのパターンのやつを踏襲しながら、少し変えていくような。
――ストーリーといえば、ちょくちょくタイトルに戻る構成は印象的でした。あれはどういった意図があるのですか。
Baiyon:本作のストーリーは断片的に続いていって、複数のストーリーが同時に展開されるつくりなので、一気に遊ぶとしんどいかなと。小休止的なものとして入れたというのが一つです。少し仕掛けもあるので、最後まで遊んでいただければより意図がわかると思います。メニューの「Sentiments」からは集めたセリフも見られるので、ゆっくり見てもらうのもアリですね。

そして、もうひとつ表現していることがあって……。明け方とかにぼんやり目が覚めて、見ていた夢の続きを見たいなって思うことがあるじゃないですか。あれで二度寝するとき、続きを見れたことってほとんどないですよね。そういった“夢の体験”も表現できましたね。
――ありがとうございます。次にサウンドについてお訊かせください。サウンド面はどういった方向性を目指したのですか。
Baiyon:基本的には曖昧な夢の世界なので、「完成させすぎない音楽」を意識して作りました。テクノやハウス、実験音楽、ジャジーな感じ、音のひずみなどいろいろなものを総動員しつつ、今までとは少し違う形になりましたね。
――全体のディレクションに加えアートやサウンドディレクションも担当されていますが、クリエイティブの全体を握っているからこそ、サウンド作りはやりやすいのでしょうか。
Baiyon:音楽作りはひとりでできてしまうので、自分の作業順序としては基本的に一番最後の工程になっています。日中はチームに動いてもらうことが優先で、色々な確認や仕様を決めたりして、それが一段落したら自分の音楽の時間をとっていました。
僕は元々音楽の人間なので、「音楽をどう楽しんでもらうか」を起点にインタラクティブな体験を作ることが多いです。自覚的ではないですが、結果的にアルバムを作っているような感覚で取り組んでいます。逆に言うと、自分で音楽を作りたくなるようなゲームを探した結果、自分でそのゲームも作っているような感覚でしょうか。その結果音楽を作る時間がどんどん削られるので、なにやってんだかという感じですが…(苦笑)。
――結構、苦労もされたのですね。
Baiyon:サウンドづくりはやはり難しいもので、作り始めて何十年も経ちますが、頭のなかで思い描いてても結局実際に音を出してみないとわからないんですよね。どうやっても思った通りにはなかなかいかないです。でもそれが音楽の面白いところでもありますね。
自分の中では特に本作について、音楽がどうかとワケて語るのは若干違う気がしていて、ゲームって「塊」じゃないですか。本作はチームのみんなに助けてもらいながら、自分がやれるところまでやりきったから、本当に要素をバラすことができないくらいの「塊」として皆さんにお届けできますし、それが自分が思う「ゲームのカッコよさ」だと思っています。
だから、自分がゲームを遊ぶときは「ストーリーはいいけどグラフィックが微妙だな~」みたいな感想は抱かないんですよね。自分の中では、全体を見て感じる「何か」が大事だなと。
――作品を選ぶ段階で頭のなかで意思決定をしていると。
Baiyon:というより、あまり作品を細かくジャッジしたり、部分ごとに良し悪しを切り分けたりしないタイプなんです。作り手が「これがいい」と思って出してきたものなら、それはもう一つの体験として、そのまま受け取るのが一番楽しいと思っていて。音楽やアートもそうですが、特にゲームは、要素を分解して語るよりも、全体として味わうものだと感じています。
「ここがこうだったらもっと良かったのに」という見方も理解はできますが、そこに頭を使うより、「これがこの作品なんだ」と受け入れたほうが、自分的には面白い。せっかく誰かが作ったものを、部分的に気に入らないと気にし続けるのは、なんか疲れるじゃないですか。
それよりも作り手が何を表現したくて、伝えたかったかを出来るだけそのまま受け取れるように心がけています。

ゲームは、アートであり、音楽であり、インタラクティブな体験が全部一体になって、最後に“ゲーム”になるものだと思っています。だから今回の作品も、少なくとも「一人の人間と少人数のチームから出てきた結果」として見てもらえたら嬉しいです。
もちろん、大規模開発や分業には分業の強さがあって、それを否定する気は全くありません。ただ、個人や少人数だからこそ生まれる一体感や密度も確実にあって、そういうゲームがもっと増えてほしいと思っています。実際、そうした作品が評価されている流れも感じていますし、人数が少ないからこそ可能な表現は、まだまだあると思っています。とは言っても、クレジットを見てもらったらわかると思うのですが、結果的に本作に関わって協力してくれた方は本当にたくさんいます。
――サウンドについてもう少し深堀りさせてください。BitSummitのインタビューでは、フィールドレコーディングをしているとお話されていましたが、実際に聞いてみると音色が豊富だと感じます。サウンドづくりにおいて、具体的にどんな音が使われているのでしょうか。
Baiyon:シンセも結構使いつつ、フィールドレコーディングは多いですね。雨の音みたいな自然の音もそうなんですが、クラップ・スナップといった音もいちいち自分の手で鳴らして録音していたりします。ぴったり合う素材を探すことよりも、自分で鳴らしてやるのが好きですね、迷わなくて済むから。
――具体的な楽曲についてもお訊きします。サントラの1曲目を飾る「Preparation for Oblivion」をはじめ、“カランコロン…”という感じの浮遊感がある音が気になりました。これはどう鳴らしているんですか。
Baiyon:あれは、赤ちゃんをあやすためにも使われるおもちゃ「起き上がりこぼし」ですね。中には高さの違う金属の棒がいくつも立っていて、ボールのようなものが当たることで音を発し、独特のメロディーが鳴る仕組みです。気に入る音が鳴るものを探して使いました。使ってるものは工場の方が手作りしていることもあって、めちゃくちゃいいんですよね……。
――なるほど、起き上がりこぼし……!こうしたエピソード、もっと聞きたいです。
Baiyon:「Vending Machine Groove」という曲で、“ガシャガシャ”という音が鳴っていると思いますが、タイトル通り自販機の音を使ってます。小銭を突っ込みまくって音を鳴らして……(笑)。見られたら絶対ヤバい奴と思われるので、走って逃げられる準備はしてました。
「Mentally Rain」は、友人の家の雨の音です。その友人はサンフランシスコに住んでいるんですけど、彼の家がいわゆるデザイン建築的な屋根がすごく薄くてフラットな不思議な建築で、雨の音がすごくダイレクトにめちゃくちゃ大きい音で聴こえるんですよ。泊まったとき、朝3時・4時ころに雨のすごい音で目が覚めて、サンフランシスコですから雨が降ることは珍しく、しかも音がとてもいい感じだったから、嬉しくなってひとりで急に録音を始めたんです。
「Switchboard //Aura」は、オムロンのパッド型のマッサージ器具を使っています。これ、なぜかケーブルの先がステレオミニプラグと同じ形状なんですよ。試しにオーディオジャックに繋いでみたらむきだしの電気の音が鳴ったので、そのまま録りました。つまり肩揉みとかたたきのリズムをビートにしてるんです。
これは配電盤のアウラの場面で使っています。シンセはあくまで「電気で作った音」だけど、この場面は「電気そのものの音」を使いたかったんですよ。
――めちゃくちゃ面白いですね。
Baiyon:この「ブーン」という音が音楽にできそうだと思ったのは、実はインスピレーション元があります。Pansonicというフィンランドの実験音楽ユニットが作った「Uranokemia」という曲があって、音の方向性が似ているんですよね。ファンの方も気づいてくれました。
「The Reversal River」という曲は、僕が小学生の頃によく時間を過ごしていた、いろいろな青春が詰まっている川で録音しています。実際ゲームで使われている場面のストーリーは、実は僕の子供の頃の話がベースになっていたりして……石同士をぶつけた音や、水切りの音、クリックを聴きながら川に昔からあるポールをバンバン叩いた音など、いろんな音が入っていますね。
他にも、皿とか、泡立て器とか、金属の箱にマイクを入れてカラカラ鳴らしたりとか、色々やりましたね。それなりに音楽家として活動してきたので、色々な音を無理なく扱えるようになりました。
――ひとつすごく気になった楽曲があるのですが……サントラ最後の「Hymn for the Young」って、モスキート音的なものが使われてますよね……?
Baiyon:この楽曲のタイトルは日本語にすると「若者のための讃美歌」なんですが、年齢的に自分にはもう聴こえない周波数の音を、若いスタッフに頼んで用意してもらい、波形だけを見ながら制作しました。そのため、作っている時も完成した後も、僕自身にはこの曲が実際にどう聴こえているのかは分かりません。自分が聴こえない音で音楽を作って、自分は一生聴けなくて、どんなもんかすらもわかることはないけれど、聴ける人はいるという状態を作りたかったんですよ。
作った僕自身は聞こえないので想像することしかできないんです。これって、めっちゃ楽しいなと思って。もうそれなりに歳を取っていることを実感するとともに、“可能性”であるとも感じたんですよね。
――すごすぎる……!
Baiyon:すごいでしょ!? サントラをマスタリングするときも、ボリューム決めとか自分ではわからなくて……(笑)。この曲だけは、年齢的に聴こえるスタッフにお願いしてヒアリングしながら音量を決めていきました。どれくらいのボリューム感で聴こえているものなのか、まったくわからないんです。20代の方なら基本的には聞こえると思います。ゲームの中で使われている部分も面白いので、ぜひ体験してほしいです。
ちなみに、『Outer Wilds』のコンポーザーAndrew Prahlowが友人なんですが、彼にサンフランシスコで会った時に、この曲のアイデアを話したら、めちゃくちゃ気に入ってくれて、興奮して曲名のアイデアまで提案してくれて...… (笑)。
――面白いエピソードばかりですね。その分、作るのにも苦労されていそうな……。
Baiyon:夢のように不安定で歪んだような音を作るのはかなり苦労しましたね。ギター用のペダルを別の楽器に使ったり、テープディレイを試してみたり……やっぱり音に独特の質感があるほうがカッコいいですからね。
あと最近、テープレコーダーを持ち歩いてて……。いま、“育ててる”んです。

――育てる……??
Baiyon:1~2秒くらい、一瞬だけ録音してテープの上から重ねまくっています。いつもは記録へのこだわりが強くて、どこで撮った音かしっかり記録していますし、いつ、どこで、そしてなぜ録音したのかがわからないようなのは使いたくないなと思っているんです。ただ、いまは全くわからない音声を適当に録りまくって、最後ぐちゃぐちゃになったとき、自分が何を感じるのか……という実験をしています。

――発想がすごい。
Baiyon:最終的な計画としては、全部テープを引き出してぐちゃぐちゃにして、もう1回無理やりテープを巻き取って戻して、それを再生してPC上で録音しようと思っています。もう今テープを引き出しちゃってもいいくらい。
テープはAB両面になっているので、曲がってテープが部分的に表裏がひっくり返ったりすると、逆サイドの音が部分的にノイズ混じりに再生されて変な音になるんですよ。それを誘発するために、両面でぐちゃぐちゃにしまくっています。ハサミで切って無理やりつなげ直したりしたら、きっとすげぇ変な音になりますよね。それを1回やってみて、PCに取り込んでみようかと思っています。あと、単純に早送りと巻き戻しを連打するのが気持ちいい。
ちなみに、こんな感じの遊びをゲームでもやってます。『ロックマン クラシックスコレクション』ってあるでしょ。あの巻き戻し機能、めっちゃ面白くないですか?
――面白いんですか……!?
Baiyon:あのゲームの巻き戻しって、テープを巻き戻すみたいに細かいフレームでスムーズにぐいーんって巻き戻るんですよ。死ぬ瞬間とかで巻き戻しと再生を繰り返しまくると、死んだ瞬間が何度もすごい速度で何度も再生されるので「どぅんどぅんどぅんどぅん」みたいな、スクラッチみたいな状態になるんですよ。もう何時間もずーっとそれで遊んでるから、1ステージもクリアしてない(笑)。念のために伝えておくと、当時全部普通にクリアは既にしています。
でも、昔からこういう遊びばかりしてたかもしれないですね。『ボンバーマン』とかも、めちゃくちゃでかいウーファーに接続して、低音の音量をMAXにしてその上に椅子みたいに座ってプレーすると、爆発するときに低音の振動がすご過ぎてボカーンてめっちゃ飛び跳ねるんですよ!!(笑)。普通の遊び方もいいけど、こういう遊び方もできるじゃん、ってね……これ、一体どんな記事になるんですか?(笑)
――(笑)。でも、この音で遊ぶというBaiyonさんの姿勢が、本作のサウンドづくりにも通じているのだな、と自分の中では納得感がありますね。
Baiyon:実際そうかもしれませんね。ちなみに、ロックマンの音楽は昔から大好きで、『ロックマン』の楽曲などで知られる松前真奈美さんと、コラボレーションで作曲させていただいたこともあります。以前にリリースしたいろんなゲームコンポーザーとコラボした「We Are」というアルバムに収録されているので、ぜひ聴いてみてほしいです。
このあとも、インタビューということを忘れ、Baiyon氏とのゲーム談義が続きました。その会話からもBaiyon氏のユニークな脳内を垣間見ることができ、『Dreams of Another』のユニークさに結びついていると感じられました。
『Dreams of Another』はPS5/PS VR2/Steam向けに発売中。
ユニークな制作プロセスが語られた本作のサウンドトラックアルバムも、Apple Music、Spotify、YouTube Musicなど各種サービスで配信中です。
¥60,500
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)














