
1996年の誕生から、その勢いは衰えるばかりか増し続け、ついに今年30周年を迎える『ポケットモンスター』シリーズ。この強靭な人気の背景に、誰しも「1匹ぐらいは好きなキャラがいる」と言えるほど、多様な「ポケモン」という生き物の存在があることは言うまでもありません。
ポケモンというキャラクターは、本編だけでなく、スピンオフやアニメ、グッズなどさまざまな展開の中で活用されてきました。3月5日にニンテンドースイッチ2で発売した『ぽこ あ ポケモン』も、そんなスピンオフ作品の一つです。
「かわいいポケモンたちと暮らしながら自由な街作りができるサンドボックス」という企画は、近年のスローライフ人気を見れば、これまでなかったほうが不思議なほどです。しかし本作は、そんな想像の容易さを優に上回るほどに、見事に『ポケモン』というIPとサンドボックスとの融合を果たしていました。
『ポケモン』だからこそできるメカニクスによって、プレイヤーを自然と街作りに誘うサイクルを持つ本作は、新たな人気シリーズの幕開けとなるポテンシャルをも秘めているように思えます。
本稿では、そんな『ぽこ あ ポケモン』を90時間以上遊んだ時点での点数付きレビューをお届け。類似ゲームともいえる『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』『ドラゴンクエストビルダーズ2』との違いや共通点も見ていきます。
街作りへ動機づけるため最大限に活かされる『ポケモン』の強み
企画提案を行ったゲームフリークと共に開発を手掛けるのは、サンドボックスゲームとして『ドラゴンクエストビルダーズ2』の開発実績のある、コーエーテクモゲームスのω-Force(オメガフォース)です。
特徴的な角の取れたブロックの質感などをみて、発売前から『ビルダーズ』の面影を感じていた人は多いかもしれません。


ストーリー全体のサイクルも、『ビルダーズ』シリーズと同様に、ある街での問題を解決して次の街にいき、また新たな問題を解決して……という流れを踏襲しています。
新たな地域に行き、新アイテムや能力が解放される中で、次第にできることが広がっていく。この段階的な設計のために、プレイヤーが最初から多すぎる要素に戸惑うといった心配が少ないのです。
自由すぎてやるべきことを見失いがちなサンドボックスのジャンルにおいて、とにかくストーリーさえ進めれば要素を理解できるという間口の広さは、本作にも引き継がれています。
一方で、『ビルダーズ』シリーズは、その魅力的なストーリーの先を見たいという動機以上に街作りを続けさせる原動力に乏しく、クリア後の街作りはどうしても自己満足に近い側面がありました。それに対して、『ぽこ あ ポケモン』はあくまでゲームのメカニクスで街作りを動機づけていることに優れた手腕を感じます。

本作の街作りのストーリー上の目的は、人間たちのいなくなった街を再興し、ポケモンたちにとって住みやすい地域を作って、いつか帰って来るであろう人間たちを迎えること。
そのために主人公の「メタモン」は、まずポケモンたちの「生息地」を作ってポケモンたちを街に呼び込むことになります。生息地とは、端的にいうと「特定の条件を満たすアイテムの配置によってポケモンを呼び込む」システムのことです。

ゲームの最序盤、プレイヤーが最初に作ることになるのは、草を4マス配置しただけの「緑の草むら」という生息地です。しばらくすると、草むらがガサガサと揺れ始め、中からポケモンが出現。現れたポケモンは、そこを住処として街で過ごし始めます。
生息地はほかにも、「クローゼット」と「かがみ」を置いた時にできる「お着がえスペース」や、「はかいし」のそばに「キャンドル」と「たべもの」を置いた「ブキミなお墓にお供えもの」など、特定の家具が必要なものもあります。さまざまな種類のある生息地の条件を満たすため、家具集めに奔走するのも本作の目的の一つです。


生息地の最小単位が草むら4個であることからわかるとおり、本作は『ポケモン』シリーズでおなじみの「ポケモンは草むらから飛び出してくる」というお約束をサンドボックスの要素に見事に昇華させています。このアイデアにはさすがに膝を打たざるをえませんでした。
そんな生息地をさまざまな場所に作って、プレイヤーはどんどんと新しいポケモンに出会います。その過程で、かつて主人公の相棒だったトレーナーの残していった「ポケモン図鑑」にポケモンが登録されていきます。



シリーズの30年の歴史の中で描かれてきた多様なポケモンたちの中から、あのポケモンが、このポケモンが、自分の作った街にやってくる。
当然、シリーズに思い入れがある人にとっては、思い入れのあるポケモンがやってくることに喜びを感じられるでしょう。一方で、シリーズに馴染みが薄い人にとっても、どんどんユニークなデザインの住人が出てくる贅沢さを堪能できるはずです。
また、本作はポケモンたちがゲーム中に進化することはなく、進化前と進化後はそれぞれ別のキャラクターとして存在しています。そのため、本編よりも進化前のポケモンと触れ合う機会が豊富です。
ポケモンそれぞれが擬人化され、セリフを持つキャラクターとして描かれることで、「このポケモンってこんなに可愛かったっけ……!?」と本編シリーズでは感じていなかった魅力を再発見することもありました。

街作りの動機付けとなるもう一つのシステムに「すみごこち」というものがあります。上述したとおり、ポケモンは作った生息地に現れ、そこで暮らしはじめるのですが、そんな生息地に暮らすポケモンにそれぞれ存在するのがすみごこちというステータスです。
たとえば、「おもちゃ」を欲していたポケモンの生息地の近くに「つみき」を置くと、すみごこちが上昇します。ポケモンごとにすみごこちに影響する条件はことなっており、ポケモンの好みを考えながら、アイテムを配置していく形です。
ゲームを進めると、よりすみごこちのよい「家」を建設できるようになり、既存の生息地からお引越しさせることも可能になります。

このように、住人を呼び込む「生息地」の作成と、「すみごこち」上昇のための奮闘によって、自然と街は住宅やアイテムに溢れていきます。このサイクルは、ストーリー中も、ストーリークリア後もまったく同じです。ストーリークリアのための条件はあえて緩めに設定され、クリア後もさらに良い街作りを模索できる余白を多く残しています。
そのため、このタイプのサンドボックスゲームでクリエイティブを発揮することが得意でない人でも、単に新たなポケモンたちと出会ったり、交流することを目的に遊ぶだけで次第に街を豊かにすることができるようになっています。
そのうち、すみごこちのために効率的にアイテムを置いていくだけでは違和感がでてくるな……と思ったら、より自然な町並みになるように、すみごこちとは関係のない部分にも手を加えていくことになるかもしれません。
そうして街を整えたら、今度は「ここにこんな施設があったら面白いんじゃないか」といったアイデアも湧いてきます。そこまでいけば、最終的にはプレイヤーのクリエイティブが存分に発揮された街が出来上がるでしょう。


当然、もともとこういったサンドボックスゲームでの建築を得意としている人ならば、存分にその腕前を発揮できるはずです。
そもそも、1メートル四方のブロックで構成されたボクセル世界に、無限大のクリエイティブの可能性が秘められていることは言うまでもなく、そこは他のサンドボックスタイトルと本質的に違いはありません。
説明なくそこにあるものを発見する楽しみ
意外に思えたのは、本作はかなり“探索”も楽しいゲームになっているという部分です。フィールドには収集しがいのある要素が多く隠されており、それらを集める楽しみも緻密に設計されています。
ストーリーで訪れることになる地域は『マインクラフト』のようなランダム生成の世界ではなく、完全に地形が固定されているため、おおむねデザインされた探索要素です。
その多くは、かつて住んでいた人間が残していったテキスト、ロアが中心であり、なぜ人間がいなくなったのかや、人間がどのような文化を持っていたかを断片的に語るものになっています。


単にテキストが落ちているだけでなく、そのテキストが落ちている周辺の地形も、かつての人間の営みを感じさせ、環境ストーリーテリングと呼べる面でも想像を掻き立てるものです。
本作でこういったテキストや空間を発見する際に、より嬉しいと感じられる理由として、“導線が弱い”ことも挙げられるように思います。これらのテキストを集めることは、メインストーリー上で推奨されることはなく、不意にプレイヤーが発見するという体験が大切にされているのです。
レベルデザインの面でも、それらの空間はメインストーリー上で訪れることになる場所からそこまで目立つようにはなっていません。好奇心を持ってさらなる探索を望んだプレイヤーのみ、弱い導線で導くような形になっているため、自分の手で発見したという喜びが強いです。

一方で、フィールドそのものは広すぎるということはなく、テキスト自体もかなり頻繁に配置されているため、導線が弱すぎるから発見に困難を極めるということもありません。この塩梅は、ランダム生成の地形でないからこその、デザインされた探索の喜びといえるものになっています。
そのうえで面白いのは、フィールド上には“ランダムな探索要素”も別途存在しているという部分。
本作のフィールド上の地形のブロックは、ランダムでアイテムを内包するブロックに変化していることがあり、破壊するとそれらを入手できます。『どうぶつの森』シリーズで言うと、毎日違うマスに化石が埋まっているのに近い要素です。

ブロックからは、ランダムで家具やコレクタブルのアイテム、化石などが入手できるため、本作をやり込もうと思ったら必然的にこれらを頻繁に探しに行くことになります。
ランダム配置なために、しらみつぶしに(もしくはダウジングマシンを使って)探すことになりますが、そのように探索していれば、当然上述したようなテキストのある空間の導線にたどり着くことも。
このように本作は、ランダム要素がなく導線の弱い探索要素を、ランダム要素のある探索要素を経由して発見させることで、高度にプレイヤーの主体的な探索の喜びを創出しているのです。


こうして断片的に集められたテキストから分かるストーリーは文明崩壊後SFとしてはベタすぎるほどで、それ単体で興味深いというほどではないものの、残されたポケモンたちの視点からそれらを集めるという構図と、かつての人間の考えや営みの丁寧な描写によって、優れた物語体験へと昇華しています。
『ビルダーズ2』のような、現在進行系で起こる重厚なシナリオを期待すると肩透かしを食らうかもしれません。しかし、物語のトーンが差別化されていることは序盤からわかる部分であり、あくまで『ぽこ あ ポケモン』ならではの魅力はどこにあるのか、ということに自覚的な優しいシナリオだったと感じています。
『どうぶつの森』的リアル時間連動の是非
そして本作は、さまざまな面に『あつ森』からの影響が感じられます。
家具や、クラフトのためのレシピ入手が毎日ランダムになっている点や、上述したアイテムが隠されたブロックの出現、そして1日1回だけ行ける素材集め用の島「ゆめしま」も、『あつ森』で言う「かっぺいのボートツアー」と似た要素です。
ゲーム内における、朝夕の描写も『どうぶつの森』シリーズのように現実の時間と連動しています。定期的な季節イベントの開催も予定されており、記事執筆時点で開催中の「ハネッコのわたげあつめ」では、春らしくピクニックの風景を作るのに最適な家具が入手できました。

これらの要素は、『ぽこ あ ポケモン』のタイトルの語源となっている「poco a poco(少しずつ、段々と)」という言葉どおり、プレイヤーにゆったりとしたスローライフを提供するためのものなのでしょう。しかし、それは建前上の話であり、実態はそうではないように思えます。
本作は実際に『あつ森』が達成しているような、日々の機微な変化を愛おしむタイプの“少しずつ”のゲームというわけではありません。現実と同じように季節が巡るなかで、草木や空気の変化とともに街も少しずつ変化させていくというような情緒は、正直なところ少ないのです。

それは、上述したように本作が、根源的に無限のクリエイティブの可能性を持つボクセルサンドボックスであるため。世界の構成単位が等しく「ブロック」である『ぽこ あ ポケモン』に対して、『あつ森』の世界は編集可能な「地形」と「家具」の2種類に構造が分離しています。
『あつ森』も、地形に関しては1日の制限なく編集を行うことが出来ますが、いくら地形を変更してもそれは土台でしかなく、毎日少しづつの入手しかできない家具を置かなければ、実質的な変化を伴う島づくりはできません。そのため、実際の日々の変化は少しづつであり、地形に関しても、ゲーム側が季節にあわせて紅葉や雪の外見に変更するというもの。
一方で、『ぽこ あ ポケモン』の世界に存在するブロックの中には「地形」と呼べるものはありません。地面を覆っている「そうげんのしばふ」ブロックと、「さんがくのしばふ」ブロック、ドアとして使える「てつのドア」ブロックはすべて平等な単位であり、自由な置き換えが可能です。

置き換え可能ということは、エリアや現実の季節にかかわらず、リアルの冬に夏らしい景色を作るなど、プレイヤーの思い描く自由な風景を構築できるということです。「そうげんのしばふ」ブロックと「さんがくのしばふ」ブロックを任意に置き換えられる時点で、リアル時間と連動した季節の表現は存在しえません。
そして、上述したとおり、本作は『ビルダーズ2』と同様に、ストーリー進行によっても豊富な要素の解放が行われるようになっています。そのうえで、ストーリー進行条件の達成にリアル時間が関係する場面は抑えめです。
単に次の街に行くだけでも相当数のブロックが手に入るため、意欲的なプレイヤーならば、初期から大規模な建築に取り掛かるかもしれません。
つまり、『どうぶつの森』シリーズと違って、『ぽこ あ ポケモン』は本質的に“少しづつ”ではないのです。3次元グリッドのどこに何を置いても自由である以上、1日の変化は抑制しようがありません。

一方で、上述のとおり、本作にはランダムで入手可能な家具、レシピも相応に存在しています。サンドボックスとして積極的に遊ぼうとするほど、毎日「ゆめしま」の素材集めと、アイテム入りブロックの捜索、日替わりアイテムの購入を行うことになります。
つまるところ、本作のリアル時間連動要素というのは、どちらかといえばMMOやスマホゲームが持つ「デイリーミッション」に近い面があるのです。というより、『どうぶつの森』シリーズから、そういったデイリー的要素だけを抜き出して採用していると言えるのかもしれません。
そのうえで、このリアル時間連動要素が、筆者が本作にハマっている理由のひとつになっていることも否定できません。実際のところ、あちこちにある建物の未完成のインテリアをどうにかするために、毎日デイリーをこなしているのです。
その中毒性を生む要素になっているという意味では、この施策は成功しているといえるのかもしれません。
やりこむほどに気になる部分

ゲームのすべてのメカニクスがさらなる街作りを誘発する、優れたサイクルを持っている本作。しかし、それに飲まれ、街作りをやり込もうと思うほどに、本作のロード時間の長さは気になっていきます。
これまで訪れたすべてのエリアに、まだすみごこちが十分とはいえないポケモンたちと、作りかけの街が残っているため、素材集めと街作りへの奔走は絶えません。そうなると、特にアイテムのやりとりのためにエリア間を高頻度で往復することになります。

本作はエリア間でアイテムを共有できる倉庫などがないため、どこかのエリアに作った倉庫にアイテムを取りに行くという作業は頻発します。1回のエリアロードに30秒ほどかかるため、往復だけで計1分以上を浪費することになります。
ボクセルサンドボックスの代表格である『マインクラフト』であれば、「ネザーゲート」を通ってオーバーワールドに戻る際の時間が一瞬であることを思うと、『ぽこ あ ポケモン』が特別長く感じることは否めません。
これは、エリア間のアイテム共有が可能な倉庫が存在せず、必然的に往復が多くなっているために起こるストレスでもあるため、ロード時間の解決が見込めないのであれば、そのような解決策が欲しかったように思います。

このような長いロード時間も含め、全体としてニンテンドースイッチ2の性能の恩恵を感じられないというのも、次世代機の独占タイトルとしては気になる部分です。アート面でも『ビルダーズ2』から特段に大きな進展が見られるわけではありません。
もちろん、『ポケモン』の世界観に合うようにトゥーン調に調整されているアートは可愛らしく、ボクセルサンドボックスとして求められるアセットの精細さとしては必要十分といえるものです。
しかし、本作がさまざまな面で参照している『あつ森』がより精細なアセットとサウンドを持っていたことを思うと、同様の客層を持つタイトルとして、人によっては物足りなさを感じるかもしれません。

また、処理負荷軽減のためか、ポケモンのエリア内の同時出現数も25匹ほどに制限されています。そのため、街作りが広域に及ぶほど場所単位でのポケモンの密度が薄くなり、賑やかさが失われていくのも寂しさを感じる部分です。
『ドラゴンクエストビルダーズ』シリーズをベースに、『ポケモン』IPならではの遊びを追求している『ぽこ あ ポケモン』。ストーリーを進めるだけで次第にできることが広がっていく、間口の広いサンドボックスとしての特性を引き継ぎつつ、クリア後も長く遊びたいと思える動機をメカニクスから生むことに成功しています。
特にゲーム序盤から提示される「生息地」や「すみごこち」のシステムは、絶えずやるべきことを生み出す原動力となっており、本作の中毒性に大きく貢献しています。新たなポケモンと出会うために生息地を整え、すみごこちを良くするために家具を置く――こういった短期的な目的が、長期的にプレイヤーを自然と街作りへ奔走させるサイクルを生み出しているのです。
一方で、ロード時間の長さや、“少しずつ”のコンセプトとボクセルサンドボックスとの相容れなさなど、細かな部分では欠点もみられます。それでも、やめ時を見失うサイクルはとめどなく、90時間以上プレイしている今もまだやりたいことは尽きません。
Game*Spark レビュー 『ぽこ あ ポケモン』 ニンテンドースイッチ2 2025年3月5日
容易く人類の時間を奪う、新たな傑作サンドボックスの幕開け
-
GOOD
- 『ポケモン』だからこそできる「生息地」システムで出会える多様な住人たち
- クリア後も街作りを動機付ける「すみごこち」のステータス
- 導線の弱さゆえに発見の喜びが強い、能動的な探索要素
- 居なくなった人間たちの想いと、残されたポケモンたちの明るいやり取りとの対比が生む物語体験
- デイリーがあるから逃れられない中毒性
BAD
- 要求されるエリア移動頻度の高さに対するロード時間の長さ
- リアル時間連動要素は“少しずつ”のコンセプトには貢献できていない













