ハック&スラッシュは多くのゲーマーを夢中にさせるジャンルです。敵を倒し、装備を拾い、ビルドを組み替え、気づけばキャラクターがどんどん強くなっていく。あの中毒性は、ジャンルならではの大きな魅力です。一方で、「面白そうだけど、何百時間も遊ぶ前提なのでは?」と少し身構えてしまう人もいるのではないでしょうか。
『Dragonkin - The Banished』は、そんなハック&スラッシュの魅力をしっかり押さえつつ、“ちょうどいい”遊び心地を目指している作品です。ドラゴンの脅威に蝕まれた世界を舞台に、プレイヤーは4人のヒーローからキャラクターを選び、敵の大群を蹴散らしながら、装備やスキルを強化していきます。ソロプレイだけでなく、協力プレイにも対応しており、じっくりビルドを突き詰めることも、仲間とわいわい遊ぶこともできます。
では、本作が目指す“ちょうどいいハクスラ”とは、いったいどのようなものなのでしょうか。今回は、Eko Softwareで『Dragonkin - The Banished』のゲームディレクターを務めるJean-Georges Levieux氏に、本作の設計思想や日本での反響、ハック&スラッシュというジャンルへの考えについて話を訊きました。
「プレイヤーの時間を尊重」するハクスラとは?
――まずは自己紹介と、『Dragonkin』での役割について教えてください。
Levieux氏:こんにちは。Eko Softwareでプロダクションディレクターを務めています。『Dragonkin - The Banished』では、ゲームディレクターを担当しています。
――本作を初めて知る読者に向けて、『Dragonkin』がどのようなゲームで、どんな体験を提供する作品なのか、教えてください。
Levieux氏:『Dragonkin』は、まさに伝統的なハック&スラッシュです。敵の大群を倒し、戦利品を獲得し、力を高め、さらに強力な敵やより難しいチャレンジに挑んでいくゲームです。
舞台となるのは、ドラゴンの脅威によって人類が絶滅の瀬戸際に立たされている世界です。その脅威は大地やそこに暮らす生物たちを、ゆっくりと腐敗させています。英雄たちはその呼びかけに応え、戦闘に加わるコンパニオンペット「Wyrmling」とともに、Dragonkinに立ち向かいます。ソロプレイはもちろん、最大4人までの協力プレイにも対応しており、コンソールとPCでプレイできます。

――開発チームの主要メンバーと、その背景について教えてください。
Levieux氏:Eric Chantreauは、『Dragonkin』の世界観とストーリーを手がけるクリエイティブディレクターであり、ほぼ30年にわたってEkoの全ゲームでアートディレクターも務めています。リードゲームデザイナーのJonathan Gabrielliは、プロデューサーのCharly Rousseauxと同じく、『Chaosbane』にも携わっていました。彼らはDiscordでコミュニティと会話しているところをよく見かけると思います。
――すでに多くの定番タイトルが存在するジャンルですが、『Dragonkin』ならではの個性や差別化要素はどこにあると考えていますか?
Levieux氏:このジャンルの他のゲームは、しばしば「Game as a Service」、いわゆるGaaSと呼ばれます。シーズン制で運営され、それに伴うマネタイズも存在します。しかし『Dragonkin』では、私たちはその方向には進みたくありません。シーズンを導入するつもりはなく、したがってそうした仕組みに結びついたマネタイズも行いません。

それ以外にも、ゲームプレイの要素において大きな違いがあります。特に「Ancestral Grid」は、私たちのスキルシステムの核となるもので、プレイヤーに非常に大きな可能性をもたらします。プレイヤーが手に入れるすべてのフラグメントが、スキルを進化させ、変化させる機会になります。それによって、スキルを通じたキャラクター成長がより“生きている”ように感じられ、何よりもユニークなものになります。ふたりのプレイヤーがまったく同じグリッドを持つことは、ほとんど不可能です。
また、「City」も本作において非常に重要で、独自性のある要素です。私たちはこれを、ソロプレイとマルチプレイの両方に対応するハブとして設計しました。最新アップデートでは、新たな機能や職人をプレイヤーに提供し、ビルド理論構築の可能性をさらに広げています。
――本作で最も重視した“手触り”や、プレイヤー体験の核はどのようなものでしょうか?
Levieux氏:チーム内で私がよく使う、ちょっとしたフレーズがあります。「プレイヤーの時間を尊重しよう!」というものです。要するに、通常は非常に時間を要するジャンルの中で、典型的なハック&スラッシュ体験を提供しながらも、ゲームとその可能性を十分に楽しむために、必ずしも数百時間の投資を要求しないようにするにはどうすればいいか、ということです。
そのため『Dragonkin』は、ストーリー、エンドゲーム、多様なビルドが可能なキャラクターを備えた、純粋なハック&スラッシュの伝統に則ったゲームです。しかし、たとえ数十時間しか費やせないプレイヤーでも楽しめるようにしています。それでも多くのプレイヤーにとっては、十分に大きな時間ではありますからね!
私たちが「プレイヤーの時間を尊重する」非常にシンプルな例として、新しいキャラクターでも直接エンドゲームに入ることができます。最初のキャラクターであっても、ストーリーをクリアすることは必須ではありません。

――『Dragonkin』は日本でも好調だと聞いています。これまでの反応について、どのように感じていますか?
Levieux氏:本当に感謝しています。日本のコミュニティは『Dragonkin』をとても支えてくれました。ローンチ時には非常に多くのツイートがあり、追いかけるのが難しいほどでしたが、日本で話題が生まれたように感じています。私たちのコミュニティマネージャーは以前日本に住んでいたことがあり、日本のプレイヤーと話すことをとても楽しんでいます。
私たちの過去作も日本では良い反応をいただいていました。たとえば『How to Survive』シリーズや、私たちにとって初のハック&スラッシュである『Warhammer: Chaosbane』などです。日本のプレイヤーの皆さんには、これからもEKO Softwareのゲームを楽しんでいただければと思っています。
――日本のプレイヤー層について、特に印象に残っていることや、意識していることはありますか?
Levieux氏:私たちのゲームがなぜ日本のプレイヤーに人気なのか、正直なところうまく説明できません。もしかすると、フランス、とりわけ私の世代が、90年代から2000年代にかけての任天堂やソニーを中心とした日本のビデオゲーム文化から強い影響を受けているからかもしれません。
それに、複雑さという要素もあると思います。JRPGは入りやすい一方で、驚くほど複雑な面もあります。『Dragonkin』にも、間違いなくそうした要素があります。

私たちは、自分たちのゲームをできる限り日本の皆さんにとって遊びやすいものにしたいと考えており、日本語のUIと字幕を必ず入れるようにしています。
スタジオの規模を考えると、できることには限りがあります。たとえば、日本語のフルボイスを追加することはできません。しかし、開発者Discordには日本語話者の方がフィードバックを残せる場所を用意しており、その意見をアップデートに取り入れています。
――ハック&スラッシュというジャンルは、『Diablo II』『Grim Dawn』『Path of Exile』のような作品を通じて大きく進化してきました。現在のジャンルの状況を、どのように分析していますか?
Levieux氏:ハック&スラッシュというジャンルは、これまでになく健全な状態にあります。現在のラインナップは素晴らしく、非常に高品質で、ここ数年はコンソールを含むほぼすべてのプラットフォームで遊べるようになっています。
もちろん、それによって開発者間の競争は激しくなりますが、それはとても刺激的なことです。ジャンルの進化を後押ししますし、プレイヤーには非常に多くの選択肢があります。
――そのうえで、今後このジャンルはどのように進化していくべきだと考えていますか?
Levieux氏:ラインナップも品質もかつてないほど高い水準にありますが、このジャンルは本質的には、10年以上前からかなり変わらないままです。技術面でもゲームメカニクス面でも進化は確かにありますが、それでもこのジャンルは自分自身に非常に忠実であり続けています。
そして、それは自然なことだと思います。プレイヤーが求めているのは、自分たちが知っていて、好んでいて、期待に応えてくれるジャンルやゲームプレイに再び出会うことだからです。
だからこそ、開発者はジャンルを進化させることを考えなければなりませんが、その一方で、このジャンルを成立させ、プレイヤーに愛される理由となっている期待や土台を意識し続ける必要があります。

――多くのハック&スラッシュ作品は、長期的なプレイを前提に設計されています。『Dragonkin』では、長時間プレイやプレイヤーのモチベーション維持にどのようにアプローチしていますか?
Levieux氏:『Dragonkin』は、少なくとも何千時間も遊ぶことを目的にしたゲームではありません。私たちは、「たった」30時間程度を費やしたプレイヤーでも満足し、少なくともひとりのキャラクターとひとつのビルドについては、コンテンツをしっかり理解し尽くしたと感じられるようにしたいと考えています。
数百時間遊びたいプレイヤーに対しては、別のキャラクターや別のビルドでのリプレイ性により重点を置いています。実際、すでに1,000時間以上プレイしているプレイヤーもいます。
作戦拠点として機能するCityの仕組みや、それが新しいキャラクターを強化する方法は、その良い例です。新しいキャラクターを始めるとき、最初のキャラクターほど時間はかかりません。より早く成長でき、同じだけの時間を投資する必要がないのです。
――開発チームがハック&スラッシュというジャンルに惹かれる理由は何でしょうか。また、その魅力はどこにあると感じていますか?
Levieux氏:ゲームディレクターとして、私が最もよくプレイするのがこのタイプのゲームです。他のジャンルとは比べものにならないほどですね。そしてチーム内にも、同じような人間が何人もいます。
プレイヤーとしての私は、すべてのゲーム、あるいはすべてのゲームシーズンに数百時間を費やす時間はありませんし、それを必ずしも求めているわけでもありません。私は新しいビルドや、キャラクターの異なる使い方を試すのが好きです。ただし、そこにたどり着くまでに100時間を費やしたいわけではありません。
その考えは、『Dragonkin』の開発にはっきりと影響しています。プレイヤーには、無理のある時間を投資しなくても、あるビルドのタイプを使いこなしたと感じてほしいのです。そのうえで、別のキャラクターや別のビルドに切り替え、新しい楽しみ方を発見し、多くの人にとって非常に貴重なゲーム時間を最大限に活用してほしいと考えています。
――『Dragonkin』に影響を与えた作品や、特に敬愛しているタイトルはありますか?
Levieux氏:このジャンルのすべてのゲームが『Dragonkin』に影響を与えていると言えると思います。私がプレイしたものも、チームの他のメンバーがプレイしたものも含めてです。
私が最もプレイしたのは明らかに『Diablo 3』で、その影響は私たちにとって初のハック&スラッシュである『Chaosbane』にかなり表れています。現在では、このジャンルの主要な3~4作品をほぼ同じくらいプレイしています。
ただ、『Dragonkin』には、スキルシステムとしてのAncestral Gridや、ひとりでも友人と一緒でもアップグレードできるCityなど、本作ならではの特徴があると言えると思います。現時点で他のゲームには存在しない要素であり、プレイヤーがそれを気に入ってくれていることも分かっています。

――『How to Survive』や『Welcome to ParadiZe』といったEko Softwareの過去作と比べると、『Dragonkin』はトーンや方向性がかなり異なるように感じられます。この変化はどのように生まれたのでしょうか?
Levieux氏:少し“エリート主義的”な見方をするなら、私は『How to Survive』や『Welcome to ParadiZe』をハック&スラッシュゲームだとは考えていません。ですから、『Dragonkin』が異なるものになるのは自然なことです。
また、『Dragonkin』はスタジオにとって初めてUnreal Engineで制作したゲームでもあり、それがビジュアル面の方向性に明確な影響を与えました。
――チームがこの新しい方向性に挑戦することになった動機を教えてください。
Levieux氏:エンジン変更とUnreal Engine 5の採用について言えば、それは単純に、私たちのような30人規模のチームにとって、特にビジュアル面で技術的に競争力を保つのが非常に難しいからです。
そのため、私たちは自社エンジンを手放し、『Dragonkin』ではUEへ移行することにしました。
ただし、『Dragonkin』自体は本当の意味で新しい方向性というわけではありません。チームはハック&スラッシュゲームが大好きです。私たちは2019年に純粋なハック&スラッシュである『Warhammer Chaosbane』を一緒に開発し、そこで多くのことを学びました。その経験を活かし、同じジャンルで、基礎を踏まえながら独自のメカニクスを導入する新しいプロジェクトを作りたいと強く思っていました。
――チームメンバーは、これまでどのようなプロジェクトやジャンルに携わってきたのでしょうか?
Levieux氏:スタジオ初期には、特にプラットフォーマーを多く手がけていました。また、ラグビーのようなスポーツゲームも制作しました。その後、私たちはトップダウン型のゲームをかなり専門とするようになりました。特に『How to Survive』の2作品がそうです。
――チーム独自の強みやアイデンティティは、どこにあると思いますか?
Levieux氏:まずは、その長い歴史です。スタジオはまもなく設立30年を迎えます。これは特にフランスでは、決して小さなことではありません。私たちは最大でも40人未満の小規模な開発会社であり、比較的機敏に開発を進めることができます。大規模スタジオに見られるような重さはありません。
一方で、より小さなスタジオよりも高い制作能力を持っています。そのおかげで、『Dragonkin』のように、十分な量のコンテンツを備えたゲームを作ることができるのです。

――『Dragonkin』の今後のアップデートや予定しているコンテンツについて、話せることはありますか?
Levieux氏:最初から、そしてSteamでの早期アクセス期間を通じて、私たちはコミュニティに対して非常に明確に伝えてきました。私たちの唯一の目標はゲームをリリースすることであり、シーズン制も、それに関連するマネタイズも行わないということです。ただし、コンテンツを増やすためのDLCについては可能性があります。
ゲームはリリースされたばかりです。もちろんアイデアはありますし、つい先日には、召喚を強化するなどの変更を含む大規模なバランス調整パッチも配信しました。ただ、Dragonkinにとって意味のあることとして何ができるのか、現在も考えているところです。
――本作に対する長期的なビジョンを教えてください。
Levieux氏:いずれにせよ、「Game as a Service」ではない形で、私のビジョンはゲームを改善し、何百時間も投資しなくても可能な限り楽しいものにし、プレイヤーのプレイ時間を尊重することです。
そして正直に言えば、私は自分が遊びたいタイプのゲームを作ることができて、本当に幸運です。さらに幸運なことに、私たちが受け取っている良いフィードバックを見る限り、それは多くのプレイヤーが好むものとも合っているようです。
――最後に、日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
Levieux氏:『Dragonkin』を楽しんでくれて、本当にありがとうございます。自分が遊びたいと思えるゲームを作るだけでなく、プレイヤーの皆さんがそれを楽しんでくれていることを知るのは、とても大切なことです。
今の時代、自分たちのゲームに注目してもらうのは難しいことです。それでも、たったひとりでも私たちのゲームを楽しんでくれている人を見ること、たとえば最近では日本の父親と息子が一緒に遊んでくれている例がありましたが、そうしたことが、私に作り続ける力を与えてくれます。
特に日本のプレイヤーの皆さんへ。本当にありがとうございます。これからもっと楽しんでください。
『Dragonkin: The Banished』は、PC(Steam)/PS5/XBOX Series X|Sにて配信中です。
なお、Game*Sparkでは『Dragonkin - The Banished』の読者プレゼントキャンペーンを実施します。Steam版、PS5版、XBOX版の各プラットフォームにつき、それぞれ10名様、合計30名様に本作をプレゼント。応募方法は、Game*Spark公式Xアカウントをフォローのうえ、該当ポストをリポストするだけです。
ハック&スラッシュは好きだけど、何百時間も遊ぶ前提だと少し身構えてしまう――そんな方も、この機会に“ちょうどいいハクスラ”を体験してみてはいかがでしょうか。










