リアル志向の3Dグラフィックで描かれた世界を、横スクロールで進んでいく――そんな一風変わったスタイルが目を引くアクションホラー『OZARK』。
本作では、カナダ北部の人里離れた山岳地帯を舞台に、救助任務へ向かった主人公が謎めいた施設へと足を踏み入れていきます。銃撃戦だけでなく、探索やステルス、ホラー要素を盛り込み、さらに2人でのローカルCo-opにも対応しています。
今回Game*Sparkでは、ライターのTravis Warnock氏、クリエイティブディレクター兼開発者のAndrew Kostuik氏、そしてテクニカルディレクションやAI開発を担当したEd Wisniewski氏にインタビュー。
なぜFPS/TPSではなく“横スクロール”を選んだのか。長時間化するゲームが増えるなか、なぜ3~5時間ほどで遊び切れる作品を目指したのか。そして、仕事をしながら夜や週末を使い、約6年にわたってゲームを作り続けるのはどのような体験だったのでしょうか。

『バイオハザード』『ゼルダ』『スプリンターセル』、そして80~90年代映画から受けた影響
――まずは自己紹介と、好きなゲームやゲーム開発者として大きな影響を受けた作品について教えてください。
Travis Warnock氏(以下、Travis):『OZARK』でライターを務めたTravis Warnockです。Andrewとは昔からの友人で、一緒に何かを作れるというのは本当に刺激的な機会でした。
僕とAndrewはゲームの好みもかなり似ています。『Halo』『ゼルダの伝説』『ファイナルファンタジー』はいずれも僕の創作に何らかの影響を与えています。
僕はNESが全盛だった80年代後半から90年代初頭に育ったので、『リンクの冒険』のような作品から、歯ごたえのあるゲームや、自分自身で物事を発見していく昔ながらの感覚を好きになったのだと思います。
『OZARK』のシナリオ面では、『バイオハザード』シリーズからの影響が一番大きいですね。サバイバルとミステリー、そして「この場所で一体何が起きたのか」を徐々に解き明かしていく組み合わせが大好きなんです。
主人公自身は喋りませんが、Chaucerのようなキャラクターを通じて、プレイヤーが「誰かと一緒にこの体験を進んでいる」と感じられるものにしたいと思いました。
Andrew Kostuik氏(以下、Andrew):『OZARK』のクリエイティブディレクター兼開発者、Andrew Kostuikです。Unity 3の頃からUnityを使っていて、もう15年近くになります。
影響元はかなり幅広くて、『魂斗羅』や『スマッシュT.V.』、『スプリンターセル』や『ゴーストリコン ワイルドランズ』のようなタクティカルなゲームも好きです。
映画から受けた影響も大きいですね。「ダイ・ハード」「遊星からの物体X」「スキャナーズ」といった80~90年代の作品から、「死霊のはらわた」や「イベント・ホライゾン」のようなホラー/SFまで。
アクション、ホラー、ミリタリー、そして雰囲気。そういったものが混ざり合って『OZARK』になっています。
Ed Wisniewski氏(以下、Ed):ソフトウェア開発に30年以上携わっており、『OZARK』にはAndrewと共に初期から参加しています。
主にテクニカルディレクションとエンジニアリングを担当しており、とりわけ敵AIや経路探索、敵がプレイヤーや世界とどう関わるかを支えるシステムに注力しました。
始まりは2019~2020年。「現代的な2.5D横スクロールを作ったらどうなる?」
――『OZARK』の原型となるアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
Andrew:始まりは2019年か2020年頃の実験でした。「現代的な2.5D横スクロールゲームを作ったらどうなるだろう?」というところからですね。最初にあったのはストーリーではなくゲームプレイのプロトタイプです。
僕自身、タクティカルなミリタリーゲームや、少し誇張された90年代的なアクションが好きだったので、そういったものが早い段階から戦闘にも反映されていました。
『OZARK』というタイトルやDr. Ozarkに関するアイデアもすでにありましたが、物語が本格的に形になり始めたのはTravisが加わってからです。
Travis:Andrewのところへ遊びに行ったとき、「ストーリーを書いてみないか?」と聞かれたのを覚えています。その頃には後に最初の2ステージになる部分がすでに存在していて、驚くことに、そのエリアは長い開発期間を経てもそれほど大きく変わっていません。
Steam Next Festで公開した最初の2ステージの物語を書いて、そこから徐々に世界を広げていきました。Andrewはかなり自由に書かせてくれました。お互いにアイデアを投げ合って、「どっちが一番クールか」で決めることも多かったですね(笑)。
物語の方向性自体は、一度決まってからはそこまで変わっていません。ミリタリーSFアクションとして始まり、その裏側ではもっと奇妙な何かが進行している。
実はゲーム中で直接語っている以上にかなり多くの設定が存在します。いつかもっと掘り下げられたらいいですね。コミックなんかも、この世界には合っているんじゃないかと話しています。
なぜFPSではなく「横スクロール」なのか
――リアル寄りの3Dグラフィックでありながら、横スクロール型というのはかなり珍しい構成です。なぜFPSやTPSではなかったのでしょうか?
Andrew:かなりノスタルジーの影響があります。横スクロールは僕たちの大好きなジャンルですが、それをもっとリアルなミリタリーアクションと組み合わせた作品は、それほど見たことがありませんでした。
もうひとつ、FPSを作りたかったわけではないんです。
横スクロールゲームの即時性と、現代的な3D環境、ライティング、タクティカルな戦闘、ストーリーテリングを組み合わせたかった。横からキャラクターが世界の中にいる姿を見ると、独特の感覚があります。ときには映画のワンシーンを操作しているようにも感じられる。プレイヤーはほぼすべてのUIを消すこともできるので、さらに映画的な体験に寄せることもできます。
また、カメラが自由ではないからこそ、構図や照明、シルエット、そして画面内に何をどう登場させるかをかなり細かくコントロールできます。ただし、その分難しいところも多かったですね。横から見て美しく、それでいてゲームとしてちゃんと遊べる環境を作るのは、見た目以上に難しいんです。
Ed:技術面でも、ほとんどすべてのシステムに影響します。
FPSやTPSでは当たり前にできる、「敵がどこから攻撃するのか」「プレイヤーが危険の方向をどう把握するか」「カメラの外で何が起こっているのか」といったものを、画面の限られた範囲しか見えないゲームでは全部考え直さなくてはいけません。
この視点は『OZARK』のアイデンティティになりましたが、同時に面白いエンジニアリング上の課題も大量に生み出しました。

『バイオハザード』と「LOST」から着想した謎の施設
――カナダ北部の山岳地帯と、そこに存在する謎めいた施設という舞台も印象的です。
Travis:謎の施設については、『バイオハザード』とドラマ「LOST」の影響が大きいです。
初代『バイオハザード』では洋館の地下に施設がありますし、『バイオハザード2』でも警察署の下に別世界が広がっている。「LOST」でも島の各地に謎のステーションがありますよね。
「自分は今、生き残ろうとしている。でも、一体ここでは何が起きているんだ? この場所は何なんだ?」という感覚を作りたかったんです。
救助任務でやってきたはずなのに、気付けば自分自身が攻撃を受けている。僕は都市探索や辺境の土地にも惹かれます。カナダには本当に膨大な土地があって、ほとんどの人が一生見ることのない場所もたくさんあります。
僕たちが住むサドベリーには、ニュートリノやダークマターなどを研究する巨大な地下研究施設「SNOLAB」もあります。もちろんモンスターだらけの秘密研究所ではありませんが(笑)、ああいう場所を見ると想像力を刺激されますよね。
「モンスターそのもの」より、いつ・どう見せるか
――ホラーを作るうえでは、どのような恐怖や緊張感を重視しましたか? また、怪物は何度も見せるほど怖くなくなるという問題もあるかと思います。
Travis:何を怖いと感じるかは人それぞれですよね。詳しくは言えませんが、施設の深部へ進むにつれて敵も変化していき、第3、第4ステージあたりからはボディホラー的な要素も強くなっていきます。
何が起きているのか、敵が何者なのかについてはゲーム内できちんと説明があります。物語としては、プレイヤーが目にしているものの裏側に、どこか悲劇的なものも感じられるようにしたかったですね。
Andrew:一番重要なのは「感覚」だったと思います。
孤立と不安だけでなく、攻撃的な圧力も欲しかった。かなり強くプレイヤーへ迫る敵もいれば、施設の奥へ進むにつれて、別の形でテンポを変える敵も登場します。
すべての敵を最初から見せないようにもしています。ライティング、カメラ配置、タイミングも非常に重要です。敵そのものより、「どうフレームに入ってくるのか」「何をあえて見せないのか」「いつ姿を明かすのか」の方が重要な場合もあります。

ひとりならホラー、ふたりなら「よし、こいつら全員ぶっ倒そうぜ」
――本作はソロだけでなく2人Co-opにも対応しています。誰かと一緒に遊ぶと、ホラーゲームは怖くなくなるのでは……という懸念も考えられますが、どう考えていますか。
Travis:そもそも『OZARK』は完全なホラーゲームというより、アクションホラーなんです。雰囲気や物語を味わうなら、最初のプレイはシングルプレイが一番強い体験になるんじゃないかと思います。
でも、隣に友達がいれば当然気持ちも変わります。完全な孤独ではなく、「よし、こいつら全員ぶっ倒して任務を終わらせようぜ!」という感じになる(笑)。それは別の体験ですが、悪いことではないと思います。
Andrew:Co-opをシングルプレイとまったく同じ感覚にしようとはしませんでした。そもそも、そうはなりませんから。
ひとりで孤立することが恐怖になる場合もあれば、友達と2人で敵に圧倒されながら必死に生き延びることが恐怖になる場合もあります。キャンペーン全編はひとりでも遊べるよう設計しているので、2人が必須になる場所はありません。ただ、Co-opでは戦闘のダイナミクスが変わります。
あえて重視した“カウチCo-op”。純粋なオンラインプレイを実装しなかった理由
――オンラインマルチプレイが一般的になった現在、あえて同じ部屋で遊ぶカウチCo-opを重視したのも興味深いです。
Andrew:カウチCo-opは、かなり初期から取り組んでいた要素です。画面共有型、従来型のローカル画面分割、プレイヤー間の距離によって分割される仕組みなど、いくつか実験しました。実際に隣に誰かがいる感覚って、オンラインマルチプレイでは完全には再現できないものがあります。
そして、僕たちほどの規模のチームでは、本物のオンラインマルチプレイを追加する複雑さまでは、そもそもプロジェクトの範囲外でした。Steam Remote Playのおかげで、本格的なオンラインネットワークシステムを作らずとも離れた場所から遊んでもらえるというのも大きかったですね。
Travis:そこにもかなりノスタルジーがあります。
2008~2010年頃のXbox Live Arcadeには、本当にいい思い出があります。『Shadow Complex』『Castle Crashers』『Osmos』『World of Goo』なんかを遊ぶと、Andrewや他の友達とゲームをしていた頃を思い出します。
いつか誰かが「友達と集まって『OZARK』を一晩遊んで、最高だった」とコメントしてくれたら、それ以上に嬉しいことはないですね。

昼は産業向けソフト開発、夜はゲーム開発。プレイヤー制御は気付けば「1万行」
――開発期間もかなり長かったそうですね。本業と並行し、小規模チームで作り続けるうえで最も大変だったことは?
Andrew:プロトタイプを始めたのが2019年頃で、本格的に開発を始めたのは2020年頃です。ほとんどは仕事が終わったあとの夜や週末に開発していました。
昼間、Edと僕は産業用途のトレーニング/シミュレーションソフトウェアを開発しています。ゲームは僕たちにとって大きな情熱なので、『OZARK』は夜に取り組む、まったく別のクリエイティブな活動になりました。
技術的には、プレイヤー操作周りが一番手に負えないくらい巨大化しましたね(笑)。当初はあそこまで大きくなる予定ではなかったんですが、照準、オートターゲット、武器、インベントリ、アニメーション……と、いろんなシステムにつながっていった。
最終的には1万行くらいのコードになっています。まあ、スパゲッティなところもあります(笑)。でも、それ自体がこのゲームの作り方を象徴しているとも思います。
巨大なデザインドキュメントが最初からあったわけではなく、インスピレーションや実験、「これ面白そうだから作ってみよう」という気持ちで、作って、試して、うまくいけば次へ進んでいったんです。

「すべてのゲームが時間泥棒である必要はない」あえて3~5時間で終わるゲームに
――外部のプレイテストによって気付いたことや、ユーザーの反応によって大きく変更した部分はありますか?
Andrew:Steam Next Festが一番大きな現実チェックでした。もともと『OZARK』は完全にコントローラー向けとして開発していたんです。2.5D横スクロールなら、それが一番自然だと僕たちは思っていました。
でもSteamコミュニティから、「マウス&キーボードに対応してほしい」という声がかなり強くて。それで戻って、どうすれば実現できるか考えました。
僕たち自身も驚いたのですが、マウスで照準すると、ちょっとポイント&クリック型のシューターみたいな感覚になるんです。コントローラーとはかなり違うものの、思っていた以上にうまく機能しました。
今でもコントローラーで遊ぶことをおすすめしていますが、最終的には選択肢を増やして正解だったと思います。
――『OZARK』は比較的コンパクトなプレイ時間を掲げています。これは意図的なものなのでしょうか?
Andrew:完全に意図的です。僕たちの多くには今、子供がいます。仕事も責任もあって、昔ほどゲームに使える時間はありません。それに、今はあらゆるものが人の時間を奪い合っています。
だから、友達と座って、一晩で最後まで遊べるようなものを作りたかったんです。映画を観に行くように、1回か2回のセッションでひとつの体験を味わえるものですね。
すべてのゲームが“時間泥棒”である必要はありません。もちろん60時間遊べる巨大なゲームにも居場所があります。でも、本当に良くできた3時間、4時間、5時間の体験にも居場所があるべきです。
個人的には、Steamの返金システムも短いゲームについては少し違う扱いになればいいのにと思っています。2時間という枠があることで、非常に短い作品を作ろうとする開発者に意図せずマイナスの影響を与える可能性があります。ゲームの大半を体験したあとでも返金できてしまいますから。
僕は、プレイ時間が作品の価値を決めるとは思っていません。リプレイ性という点では、最近はスピードランにもかなり興味があります。
何千時間も開発してきた僕たちですら、アイテムや攻略方法を変えてより速いタイムを目指すのは楽しいですし、スピードラン用ソフトウェアとうまく連携できる内部システムについても検討しています。
Travis:短いゲームであることは、シナリオの書き方にも影響しました。作るステージ数はだいたい決まっていたので、プレイ時間を伸ばすために物語を引き延ばすのではなく、その枠の中できちんと物語を収める必要がありました。
すべてを説明しすぎず、プレイヤー自身が組み立てる余地も残しています。オーディオログを集めて改めて聞くことで、「実際には何が起きていたのか」に対する見方が変わるかもしれません。
必要以上に居座る作品にするより、プレイヤーの時間を尊重して「もう少し遊びたかった」と思ってもらえる方がいいですね。

日本語対応も「選択肢から外れてはいない」
――現在、日本語への対応は記載されていません。将来的に日本語ローカライズを行う可能性はありますか?
Travis:何らかのローカライズを行う可能性は、決して選択肢から外れていません。今後も活動を続けていくなかで検討していきたいと思っています。
そもそも日本のプレイヤーが僕たちのゲームに興味を持ってくれていること自体、本当に光栄です。日本のゲームや開発者は、僕たち全員に非常に大きな影響を与えていますから。
Andrew:小さなインディーチームなので、結局はリソースの問題ですね。そして、もしローカライズをやるのであれば、きちんとしたものを作りたい。プレイヤーからの関心は「どこに需要があるのか」を理解する助けになります。
もちろん、世界中のより多くの人に『OZARK』を遊んでもらえるようにしたいと思っています。
「照明を落として、いいヘッドホンを着けて遊んでほしい」
――最後に、日本のプレイヤーに特に注目してほしい部分、そしてGame*Spark読者へのメッセージをお願いします。
Travis:ぜひ物語を探索して、オーディオログにも耳を傾けてほしいです。
表面から見えるものより、もっと多くのことがその下で起きています。「実際には何が起こったんだろう?」とプレイヤー同士で話せる余白を残すのも、僕にとって楽しさのひとつです。
何よりも、Game*Spark読者の皆さんに『OZARK』を楽しんでもらえたら嬉しいです。僕たちが何年もかけて作ったものに興味を持っていただけることを、本当に光栄に思っています。
Andrew:僕からは「雰囲気に注目してほしい」ですね。部屋の照明を落として、いいヘッドホンを着けて、できればHUDもいくつか消して、そのまま体験してみてください。
これはもともと、ゲーム作りが好きな僕たちが仕事のあとに作っていた小さな実験でした。今では地球の反対側にいる人たちが興味を持って、遊ぼうとしてくれている。それは僕たちにとって本当にすごいことです。
Ed:僕としては、表からは見えにくい細かな部分にも注目してもらえたら嬉しいですね。敵がプレイヤーにどう反応するのか、戦闘がどう変化するのか、そして裏側で動いているさまざまなシステム。
それらをひとつにまとめるまで、本当に長い年月がかかりました。
僕たちが作ったものを、ぜひ楽しんでください。
――ありがとうございました!
『OZARK』は、PC(Steam)向けに配信中。10月9日までは、26%オフ、1,050円で購入できます。









