見下ろしアクションゲーム『Hotline Miami』は2012年に発売されました。純粋な暴力表現の過激さ、敵も自分も一撃で死ぬ容赦のない難易度や、何度も死んで敵の配置を覚え、次のプレイに生かすといったストイックなプレイを要求する本作は、多くのプレイヤーを虜にしました。『Hotline Miami』をリスペクト・オマージュした作品が多数生まれ、「マイアミライク」と呼ばれるまでに至ったのです。

『Jackal』はそんなマイアミライクなゲームの1つです。しかし、2026年に発売された本作は、単に『Hotline Miami』をモデルに現代風にブラッシュアップした作品には留まりません。レベルデザイン、敵AIの挙動、そして物理演算を取り入れた戦闘によって、本作独自の味をもった「唯一無二のマイアミライク」に仕上がったのです。
戦場のあらゆるものが死を招く

『Jackal』は、1970年代のラスベガスを舞台に、薬物で超人的な力を得た殺し屋となり、マフィアの拠点を次々と襲撃していく見下ろし型アクションゲームです。
本作の大きな特徴のひとつが、物理演算を活用した戦闘です。『Jackal』で用意されたステージはほとんどが室内戦であり、部屋にはテーブル、ソファー、ビリヤード台といった無数の家具が配置されています。テーブルを敵に向かって蹴りつけてみましょう。プレイヤーに蹴られたテーブルは吹き飛び、敵のギャングに命中します。テーブルと激突したギャングはあっけなく絶命することでしょう。
また、接近戦の場合は、敵を蹴ってノックバックさせ壁に勢い良く衝突させることで、敵は壁に頭を打ち即死します。さらに、敵同士にも接触判定が存在し、プレイヤーが敵1を蹴る→敵1が後ろに吹き飛び敵2と衝突する→敵2が吹き飛ばされ後ろの壁に激突し死亡する、といったような連鎖反応が発生します。

プレイヤーの蹴り自体にはほとんど威力がありませんが、このように周囲の環境を上手く利用することで、家具・壁・柱といった部屋そのものが凶器と化します。キルはプレイヤーが敵を直接攻撃だけでなく、周りのオブジェクトを活用し巻き込んでいくことでも生まれていく。そんな派手で豪快な戦闘が本作の楽しさの1つです。
敵を死に至らせるのはプレイヤーと環境......だけではない

本作は、敵に同士討ちの概念があります。基本的に1対多の戦闘になりますが、近接武器を持った複数の敵が一斉にプレイヤーに襲いかかった場合、敵の一人が主人公に向かって振り下ろした武器が真横の別の敵に命中し、死亡させるといった不運な事故が起きることがあります。また、銃を持った敵が主人公に狙いを定めた際、タイミング悪く別の敵が射線上に被ってしまうと、敵が味方に誤射してしまうといったケースも見られました。
プレイヤー自身が意図した結果ではないにせよ、敵が引き起こした“事故”はプレイヤー側に好都合です。そうした想定外の出来事を利用し、戦闘を有利に進めるしたたかさも、本作を攻略する上では重要です。
人間らしく、予測のつかない挙動の敵AI

『Hotline Miami』シリーズでは、時に敵AIの反応が速すぎるあまり、理不尽に感じるタイミングがありました。例えば、後ろを向いていた敵AIがプレイヤーを察知した瞬間、180度回転し精密射撃を行ってくる、といったものです。しかし『Jackal』においてそういった動きはほとんどなく、プレイヤーにきちんと狙いを定めたり、上述のように味方に誤射してしまったりといった人間らしい反応がうかがえます。

本作でも、敵の種類は近接武器を持つ敵と銃器を携える敵に大きく分かれますが、それぞれの行動パターンは一通りではありません。同じ近接タイプの敵AIであっても、プレイヤーを検知したら一目散に走り寄ってくるもの、部屋の角で待ち伏せするもの、といったようにプレイごとに変化します。銃を持った敵であれば、遠距離からゆっくり狙って射撃するタイプや、ある程度距離を詰めてから射撃するタイプなど、さまざまです。
筆者がプレイした際には、半開きのドアから外へ駆け出した敵が、勢いよく開けたドアの跳ね返りで自身の身体を強打し、失神する場面もありました。このような予想がしづらい敵AIの行動は、ゲームを攻略する上で、計画性のある詰将棋的なプレイングより、その場の状況に合わせた臨機応変な戦術をプレイヤーに要求します。
変化する敵の行動、増援位置がプレイ毎に違う体験を生む

本作では、1つのステージを繰り返し遊んでいる場合でも、毎回同じ戦略が通用するとは限りません。前述したように同じ敵でもプレイ毎に挙動を変えるためです。そのうえ、マップ上の敵を殲滅した際、新たな敵が増援として加わることがありますが、彼らが出現する位置も完全に固定されているわけではなく、毎回ある程度変化することが多いです。そのため、敵の動きや出現位置を暗記して攻略することは難しくなっています。
いっそ流れに身を委ね、暴れ回ってみましょう。結果、案外うまく事が運び、気付いたらステージをクリアしていたという経験が、プレイヤーに得も言われぬカタルシスを与えてくれることでしょう。
戦闘に変化を加える「スペル」

ちなみに、本作の主人公は「スペル」という名の特殊能力の発動が可能です。戦闘中に敵同士を喧嘩させる、銃を二丁持ちにできる、といったような能力です。「スペル」の存在もゲーム展開のバリエーションの広がりに一役買っており、使用することでまた一味違った体験が生まれるかもしれません。
「スペル」の有用さについての話をすると、決して特殊能力ありきのゲームバランスには設計されておらず、「スペル」を一切使用せずともエンディングまで到達することは十分可能です。
では、一言で『Jackal』とはどんなゲーム?
これまで述べてきたゲーム要素が合わさった結果、本作は1人ずつ着実に敵を処理していく戦略的な暴力ゲームというよりは、「戦闘をしてみるまで何が起きるかわからない、予測不能な暴力ゲーム」だと言えます。「とにかく勢い任せに暴れ回っていたら、いつの間にか周りは死体だらけだった」というシチュエーションが多く、そういったプレイ体験や想定外な出来事の連鎖によって、計画通りに敵を倒していくのとは全く異なる爽快感があります。
本作の醍醐味は、プレイヤーが戦場をコントロールすることではなく、プレイヤー・敵・環境が引き起こす混乱そのものを楽しむことです。

総評
『Jackal』はいわゆる「マイアミライク」の一作でありながら、独自の物理演算やランダム性を取り入れることで、他の作品にはない個性を生み出しています。 一味違う「マイアミライク」ゲームを探している人に、オススメできる作品です。
『Jackal』は、定価1700円でSteamにて配信中です。











