◆「声優」として心掛けている習慣や大切にしていることはなにか。
━━「声優」として普段から気を付けていることや、実践している習慣についてお聞かせください。
里岡:僕が実践しているのは、出先で「面白いなと思った人のマネ」をしてみることです。自分にはない感性だったり行動だったり、自分が生きてきて味わったことがない経験をしてきた人の動きって面白いんです。
人間観察を通して真似をしてみて、そういう役が来たときにもしかしたら演じることになるかもと思って、インプットするようにしています。
あとは趣味がたくさんあって、気になったことは何でもやってみるタイプです。実際にやってみて面白かったことは今でも継続していますね。スポーツだとボウリング、ゴルフ、ビリヤードとか。ちょっと渋いかもしれないんですが......(笑)。
芸術的なところではミュージカル鑑賞、音楽鑑賞とかも。プラネタリウムにもよく足を運んだりします。そうやって自分の中での経験値を増やして、お芝居に役立てられたらなって思いながら生活しています。
━━凄いですね。それはお仕事のことを意識して日頃から貪欲にインプットを心がけないと難しい日常生活ですよね。
里岡:そうですね。でもお芝居の練習や勉強を主目的としてやっているつもりではないんです。“好きでやっていることがお芝居に繋がれば良いな”と思っているので。
━━ちなみに人間観察をするときに「あの場所は面白いぞ」って思えるようなスポットはあるんでしょうか?
里岡:人の多いところは確かに面白いんですけども、1番面白いのは“イベントをやっている場所”ですね。昨年、クリスマスマーケットに行きましたが、クリスマスなのでやっぱり色々な人が来ます。
カップルで来たり、友人たちと集まって来ていたり、先輩後輩の仲で来ているような方々もいました。言葉が少し強いかもしれませんが、中には周りに粗野な印象を与える人も来ています。でも、そういう人の人生を僕は経験したことがないので、そういった方々の会話とか言葉づかいが新鮮で分析していましたね。
━━日常生活の中で見かける誰もがインプット対象のようになっていますが、今回演じられたゲームの主人公は“異世界帰り”ですよね。リファレンスするには苦労されたのではないでしょうか。
里岡:苦労しましたね(笑)。
最初にお話が来たとき「どうしよう、このキャラクターはまだ知らないな」と思って、異世界モノのアニメを見たりとか、麻布十番に行って仕事をしている人の姿を見たりとか、リアルな社会人を見ながら、自分の中でそのギャップを作っていけるように勉強していました。

小路:私は「声優」だからっていうわけでもないと思うんですけど、まずは「体調管理」。絶対に仕事を飛ばしたくないし、そういうのって信頼関係にも繋がるかなって思うので。代わりの人を探せばいいっていうわけでもないですから、そこは徹底したいなと思ってて。
あと、急にオーディションの話をもらえるかもしれないし、そういうときに元気じゃないといけないからチャンスを逃さないっていう意味でも、やっぱりベースは体調管理かなって思います。
あとは、何か人生でネガティブなことが起きたとき、演者の方でなかったら気分転換をして、そういうものを忘れようとする人は多いのかなと思うんですけども、私はその状況が貴重であればあるほど、3ヶ月くらいは噛み締め続けます。
「もしかしたらこれは仕事に使えるかもしれない」と思って、忘れないように自分の中に刷り込もうとしますね。
━━ネガティヴな経験ほど自分にとって、ある種の糧になるイメージでしょうか。
小路:そうですね。ハッピーなことでももちろん良いとは思うんですけども、ネガティブなこともちゃんと受け止めて、自分がそのとき“どういう気持ちになった”か、“どういう変化が体に起きたのか”とかを忘れないようにしたいなと思って。
この仕事はネガティブなこともお仕事として消化できるチャンスがあるから、本当にすごく助かってます(笑)。あの経験も無駄じゃなかったって思えるし、全部が仕事に使えるから。
━━なるほど。演者さんの人生経験が人知れず投影されていて、それがキャラクターの深みにも繋がっているのかもしれませんね。
小路:そうですね~。深み、出したいです(笑)。
私は声優を目指し始めてからデビューまでが結構長かったタイプなので、今回は“新人”っていう枠でここにいますけども、やっぱり年齢が周りより少し高い分「フレッシュ」「元気」以外の良さも無いとなと思って。
フレッシュさや元気では負けるかもしれないけど、同じギャラで「深み」をもうちょっと出せるように(笑)。そこは自分の強みにしていきたいなって思う部分がありますね。
伊澄:私が気をつけていることは、「聞こえ方」に気をつけています。先輩方のお芝居を聞く機会があったんですが、短いセリフなのに一言にすごく感情が込められていたりするのに驚きまして。それで自分の声を録音してみると、今自分が感じている感情だとか、緊張とかがすごく声に反映されるタイプっていうことに気づきました。
なので、普段から何度も自分の声を録音したり、他の人の音声を聞くようにするインプットをしたり、自分が想像している声と、相手方が求めている声や聞こえ方にあまり差が出ないようにっていうのはすごく意識しています。
━━感情が込められているというのは聴き比べてみるとちゃんと分かるものなのでしょうか?
伊澄:そうですね。同じ台詞で何テイクか録っても、やっぱりこっちの方が深みがあるとか、緊張感が伝わるとかっていうのは分かります。短い収録時間の中で一番良いもの、受け取り手が1番驚いてくれるようなものを作りたいので、そのためには何度も録音して研究するようにしています。
━━ベテランの方の演技と比べてみてやっぱり自分でも大きなギャップを感じますか?
伊澄:ベテランの方のアフレコを目の前で見せていただくと「違う」というか......。もう発声や滑舌とかの技術力の差ではなく、経験や思考の深さから作られる台詞みたいなものがあるなぁと感じています。
里岡:アフレコの現場ではまだご一緒させていただいたことがないんですけども、最近は朗読劇稽古のアンダースタディとして、新人声優が本キャストの代わりに稽古のお仕事に入ることがあるんです。
そのときレジェンドの先輩たちとご一緒させていただいた際に、毎回ニュアンスも変えて「何が最適解」を見つけていってますし、その場のライブ感を大事にされてるので、相手のお芝居にしっかり合わせて音も芝居も全部変えていってるのはやっぱりすごいなって思いますね。
小路:普段の稽古で自分よりずっとキャリアのある方とご一緒にさせていただける機会が結構あって、そこで感じるのは、自分がMAXで「7」くらいまでしか思考が及ばなかったとしても、その方が同じシーンやってるのを聞いてると、もう「13」「15」とか、倍ぐらいまで表現し切れているなっていうのをすごく感じています。
でも、自分より若くてまだキャリアの浅い子も同時にその場にはいて、それはそれで今のその子にしか出せないフレッシュさ、まっすぐさみたいな。私では紛い物になってしまうその初々しさ、本当に心から出るピュアハートみたいなものを、出されているんですよね(笑)。
一同:(笑)。
小路:だから「浅いからいい」「長年やってるからいい」とかってわけじゃないっていうのは、色々な方とご一緒させていただく度に思います。その方にしか出せない良さが本当にそれぞれある。面白い、楽しい、素敵な世界だなって思います。











