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プラチナ稲葉氏がプロデューサー業や独立の難しさ語る―ビットサミット講演レポ

京都インディーゲーム祭典「BitSummit 2015」2日目のステージイベントに、プラチナゲームズのプロデューサー稲葉敦志氏が登壇。大勢のギャラリーが見守る中、ゲーム開発現場におけるプロデューサーという仕事の役割や、会社から独立する難しさを語りました。

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京都インディーゲーム祭典「BitSummit 2015」2日目のステージイベントに、プラチナゲームズのプロデューサー稲葉敦志氏が登壇。大勢のギャラリーが見守る中、ゲーム開発現場におけるプロデューサーという仕事の役割や、会社から独立する難しさを語りました。

最初に、自分の役職について「プラチナゲームズのゲームが面白くなければ僕の責任で、面白ければディレクターのお手柄、という仕事」と切り出した稲葉氏。開発担当プロデューサーとして、同社の制作ラインすべての最終責任をまかされている立場です。

現在およそ180名もの社員をかかえるスタジオに成長したプラチナゲームズですが、依然としてどこからも出資を受けていない独立スタジオという立ち位置は変わらず、関西が拠点ということもあって、今回のBitSummitに参加しているのもうなずけます。

かつてカプコンやクローバースタジオに在籍し、ビジネス開発や企画開発までプロデューサーにとどまらない多彩な経験を積んできた稲葉氏は、業界のために、あるいはひとりで色々なことをやらなければならないインディークリエイターのために、これまで自身が積み上げてきたノウハウを伝えていくのが、今後5~10年先の役割だと考えているそう。といっても、プロデューサーの椅子を誰かに譲る気は毛頭なく、インディーはユーザーの助けをかりて、「椅子」自体を作り出す世界ではと述べました。


そんな稲葉氏に、司会役のBen Judd氏が最初にぶつけた質問は、「パブリッシャーサイドで社内開発するのと、独立した会社でゲームを作るのはどう違うか」というもの。

稲葉氏の見解によると、パブリッシャーは資金力も人員も豊富で規模の大きさがメリットではあるものの、なんとなく会社のカラーはあっても思想はないという形に陥りやすく、その結果、社内ゲーム開発は、創造力とはまったく関係のない「政治力」がモノをいう世界になってしまうそうです。「政治力が強ければ強いほど開発に結びつく」という、おそらく稲葉氏も過去に経験した話なのでしょう。反対に、外のデベロッパーの場合はもっと単純で、政治的なものはナシ、自分の作りたいものがパブリッシャーの求めるものとマッチしていればOK。ただし仕事が見つからなければ存亡の危機、というのが稲葉氏の考える「中」と「外」の違いなのだそう。

次は、「独立スタジオを作るのに最も苦労したことは?」という質問。稲葉氏は、どれだけスタジオの規模が大きくなろうと、社員をやしなわなければならないリスクは常にあり、パブリッシャーから仕事をもらってもゲームのIPを持てないというのは、デベロッパーになってみないとわからない苦しみだと吐露しました。

今まで関わった一番開発規模の小さいゲームは?」という質問には、カプコン時代は社内でインディーゲーム開発的な立場だった、と稲葉氏。初代『逆転裁判』は6人くらい、『ビューティフル ジョー』は12~13人のチームで作っていたのだとか。


司会のBen Judd氏は、どんなに才能あるクリエイターがいたとしても、その能力を100%引き出すプロデューサーがいなければ、良いゲームは作れないのでは、と指摘。これには稲葉氏も同意し、長年いっしょに仕事をしているディレクター神谷英樹氏との逸話も例にあげながら、クリエイターは変わり者が多いので、間にはいって才能を世に送り出す能力や、単純に相性が、ゲームの出来を左右するだろうとのこと。クリエイティビティはプロデューサーにも必要、クリエイターと通じ合い、お互いにリスクペクトしあい、お互い真剣にむかつきあって喧嘩して、そんなふうにやっていける関係が必要だと強く語りました。

大手パブリッシャーから独立、今や世界が認める開発力のデベロッパーに成長したプラチナゲームズ。その開発責任者であるプロデューサー稲葉氏の真に迫った話は、BitSummit会場に集まった多くのインディーゲームクリエイターにとってまたとない価値ある内容だったといえるでしょう。
《Rio Tani》
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