ハードコアゲーマーのためのゲームメディアGame*Sparkでは、日々、様々なゲーム情報をご紹介しています。しかし、少し目線をずらしてみると、世の中にはゲーム以外にもご紹介したい作品が多数存在します。
そこで本連載では、GameSparkスタッフが、ゲーマーにぜひオススメしたい映画/ドラマ/アニメ作品を1本紹介していきます。今回ご紹介するのは、名優ヴィゴ・モーテンセンの映画「ザ・ロード(原題:The Road)」(2009)です。
コーマック・マッカーシーのベストセラー小説を映画化
なにが世界を変えたのでしょうか──。本作「ザ・ロード」が描くのは、ぼんやりとした地平線がずっと先まで続く、灰色の世界。なぜこうなったのか、理由は定かではありません。
核戦争か、あるいは自然災害か、未曽有の災いが訪れた世界を、ただ静かに映し出しているのです。いつも通りの平穏な日々は突如として終わりを迎え、禍々しい灰色の地獄と化した世界には、混沌が渦巻いています。人間、昆虫、植物といったほとんどの生命体は死滅し、人類が築いた文明は、瞬く間に滅び去ったのです。
原作は、アメリカ合衆国の作家コーマック・マッカーシーが2006年に上梓し、ピューリッツァー賞を受賞した同名小説です。こうした“世界の終わり”を描くポストアポカリプスの名文学として、ゲーマーに馴染み深いのが「メトロ2033」(小学館刊)でしょう。
ロシアの作家ドミトリー・グルホフスキーによって2005年に発表された同作は、最終戦争により汚染されたモスクワが舞台。2010年にビデオゲーム化され、現在も続く人気シリーズとなりました。本作「ザ・ロード」が描くのは、『メトロ エクソダス』や『Fallout 76』に通ずる世紀末的世界観。しかし本作はフィクションでありながら、わたしたちに現実的なメッセージを届けてくれるのです。
文明が消失して10年。灰色に包まれた世界
物語の軸を成すのは、父と息子。作中で、彼らの名前が明かされることはありません。父と息子は、文明が崩壊してから10年間、この地獄のような世界を生き抜いてきたのです。
この父子をはじめ運良く生き延びた人間たちは、この瀕死の世界で、自らの生き残りをかけてあらゆる手立てを講じています。道行く人を武器で脅す略奪者、いともたやすく殺人を犯す凶悪集団、果てには人間を食べる食人部族……。この世界に安全という言葉は存在しないのです。
高度なテクノロジーと文明社会が失われた未来世界。世界の終末を描いた映画として、本連載では以前に「ザ・ウォーカー」(2010)、「アイ・アム・レジェンド」(2007)を取り上げましたが、本作「ザ・ロード」がこの2作と大きく異なる点は、現実味を帯びた映像にあります。
CG/VFXを駆使した大がかりなデジタル処理を施さず、徹底したリアリティーを追求しているのです。空を見上げれば灰色の分厚い雲、地表を見ると枯れ果てた木々。深い霧は、一寸先さえ見通せないほど……。非常に現実的なのです。この映画で描かれる荒廃した世界は、現実を写す“合わせ鏡”なのかもしれません。
すべてが死に絶える世界で、「生きる」を選んだ親子
地球上のすべての動植物が滅び尽き、生き残る人類もまた“生きる”か“死ぬ”かの瀬戸際に立たされています。法律といった絶対的ルールや倫理観は、もはや過去のもの。殺人がはびこるこの世界では、生きることに疲れた人々が、自ら死を選ぶことも珍しくありません。
ストーリーの根幹を成すのは、荒れ果てた世界を進む、名も無き父子の危険な旅。目的地は、南。厳しい寒さから逃れるため、暖かな南を目指しているのです。その途上で起きるさまざまな出来事。武装集団から逃れたかと思えば、次には食人部族の縄張りに迷い込んでしまったり。しかし父はどんなことがあっても、ただひとりの息子を守り抜こうとするのです。
この世界は悪者だらけ。どこにいっても危険と隣り合わせです。しかし父子は荒廃した世界の中で、苦悩しつつも絶対に倫理、道徳を忘れず、善き者であろうと心に誓うのです。そして同時に、なにがあっても生き抜くという生命力をみなぎらせています。父子はお互いに守るべき存在だからこそ、この地獄の世界で“生きる”という選択を下したのでしょう。
映画「ザ・ロード」はNetflix、U-Nextで視聴可能。徹底した映像表現と、父子の絆を描いたドラマは必見です。



