中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル! | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

ハードコアゲーマーのためのWebメディア

中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル!

「中華ゲーム見聞録」第28回目は、台湾産人気ホラーADV『返校(Detention)』のデベロッパーが放つ、1980年代の台湾を舞台にした心霊ホラーADV『還願(Devotion)』をお届けします。

連載・特集 特集
中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル!
  • 中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル!
  • 中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル!
  • 中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル!
  • 中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル!
  • 中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル!
  • 中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル!
  • 中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル!
  • 中華ゲーム見聞録:『返校』開発元が放つ新作ホラーADV『還願』克明に描かれた80年代の台湾は懐かしいほどにリアル!
※ UPDATE(2019/2/25 20:00):公式映像が非公開状態になったため、記事を一部修正しました。


「中華ゲーム見聞録」第28回目は、台湾産人気ホラーADV『返校(Detention)』のデベロッパーが放つ、1980年代の台湾を舞台にした心霊ホラーADV『還願(Devotion)』をお届けします。

本作はRedCandleGames(赤燭遊戲)が開発し、Indievent、Winking Skywalker(唯晶科技)によって2月19日にSteamで配信されました。RedCandleGamesは2015年に設立した台湾のインディーデベロッパーで、作品に台湾の歴史や文化を多く取り入れていることが特徴です。


『返校』では1960年代の台湾の学校を舞台とし、台湾の歴史的背景や民間信仰と上手く融合させたストーリーを展開。ローカルで特殊な設定にもかかわらず、中華圏ばかりでなく世界中のゲーマーを魅了しました。日本語化もされていますので、プレイした方も多いのではないかと思います。ゲームのヒットを受け、台湾では映画化も発表されました。いまや台湾を代表するゲーム作品とも言えます。

本作では2Dだった『返校』からシステムを一新。臨場感のある一人称視点の3Dホラーになっています。タイトルの『還願』ですが、中国語で「願」は「願い事」、「還」は「返す」の意味があります。何か願い事をして、それが叶ったときに寺院や廟へお礼参りすることを「還願」と言います。筆者は台北在住ですが、台湾は廟や寺院が多く、台湾の人たちにとってお参りは日常的なものです。台湾文化の一つと言っていいかもしれません。

また本作のテーマソングは、台湾の人気インディーバンド「草東没有派対(No Party For Cao Dong)」が提供しているとのこと。台湾色のあるロックバンドで、台湾のグラミー賞とも言われる第28回「台湾金曲賞」(2017年)で最佳年度歌曲など3部門を受賞しています。筆者的にはRedCandleGamesと草東没有派対の世界観はマッチしている気がするので、良い組み合わせだと思います。

ちなみにゲームを起動させてタイトル画面でしばらく待っていると、昔の歌謡曲のような歌が流れてきます。初代PSでプレイしたADVゲーム『クーロンズゲート』を彷彿とさせる雰囲気ですね。『クーロンズゲート』は香港を舞台にした作品で、「アジアゴシック」という混沌としたアジア的世界観を提唱していましたが、本作もまさにそのような感じです。筆者的には大好きな世界観なので、期待がかなり高まっています。さっそくプレイしていきましょう。なお、本稿では最序盤のネタバレ的な要素が若干含まれるのでご注意ください。

アジアゴシックの世界


ゲーム開始時の自宅

ゲームを開始すると、自宅でテレビを観ているシーンから始まります。今回は嬉しいことに、最初から日本語字幕入りです。すぐ前のテーブルには新聞紙が敷かれ、食器やスープの入った鍋が置かれています。テレビや壁の振り子時計など、似たようなものが筆者の台北の祖父の家にもあったので、すごく懐かしい雰囲気です。天井のシーリングファンもありましたし、この年代の台湾の家はだいたいこんな感じでしたね。風ではためく新聞紙の動きがやけにリアルです。

操作ですが、マウスとキーボードを使用する以外に、ゲームパッドにも対応しています。現在は椅子に座っている状態なので視点移動しかできませんが、あとで移動も可能になります。一人称視点なので臨場感がありますね。


台所からは食事の支度をする女性の声が聞こえてきます。会話の内容からして奥さんのようです。「メイシンのことで学校から電話があった」「先生のおかげでメイシンが明るくなった」「もうすぐメイシンの夢が叶う」などの話をしています。彼らの子供でしょうか。それにしても視点を移動するとやけにブラーがかかる……と思っていたら、やがて視界が揺れ出しました。

どこかが違う世界へ

「メイシンはどこ?」との言葉とともに、周りが暗転します。目を覚ましたときには、見知らぬ世界にいました。いや、よく見ると、テレビや水槽の配置などは元の家と同じです。しかし明らかに何か雰囲気が違います。動けるようになったので、辺りを探索してみます。


部屋の外に出られる戸口がありました。奥のほうに赤いドアが見えます。何か飛び出してきそうで怖いのですが、他に行けるところもないので進んでみましょう。しかし『クーロンズゲート』を遊んだときは「リアルタイムで移動ができたら面白いだろうな」と思っていましたが、ある意味夢が叶っていますね。ホラーゲームですが、何か嬉しくなってきました。

同じようで違う場所



赤いドアの前にたどり着きました。昔の台湾は犯罪が多かったので、ほとんどの家が二重の鉄門になっています。それでも泥棒に入られるときは入られるのですが(筆者の祖父の家も何度か入られています)。今は街中に監視カメラがあるので、治安はかなりよくなっています。


ドアの向こうは見知らぬ場所……と思いきや、テレビや壁の時計、奥の水槽など、最初の部屋とほぼ同じです。ループしているのでしょうか。部屋の中を探索してみますが、これといって何も見つかりませんでした。


テレビの横にある戸口から出てしばらく進むと、かなり暗い廊下にたどり着きました。雨が降っているようで、画面に水滴がかかります。奥に何か赤いものが見えますので、そこへ向かっていきましょう。だんだんホラー色が強くなってきましたね。しかし暗い。昼間に遊ぶ場合は、部屋を暗くしないと見づらいかもしれません。


近づいた先にあったのは、赤い傘。宙に浮いています。さらに近づくと、傘が地面に落ち、辺りがますます暗くなりました。この傘、何かストーリーと関係してくるのでしょうか。謎は深まっていくばかりです。

1980年のドア



奥へ行くとまたドアが。しかし今度は鍵が掛かっていて開けることができません。ドアの横に郵便受けがありますが、ここに鍵が入っているかもしれませんね。調べてみます。


予想通り、郵便受けの中に鍵が入っていました。これでドアを開けることができますが、鍵に書かれている「1980」が気になります。今度は違う部屋に出られるのでしょうか。とりあえずドアを開けて、部屋の中を見てます。

新たな部屋~アイテム使用


入ると、これまでとは違う部屋がそこにありました。テレビや家具がないだけで、間取りは同じですね。ドアの位置も同じですし。奥の机に女性が座っているように見えますが、動きがありません。


近づいて見ると、「リホウ」という名の女性の写真でした。写真はアイテムとして所持することができます。また、机の上にあった箱からトロフィーと茶碗を入手。この辺りから本格的にアイテムを活用し、謎解きをしていかなくてはならないようです。

謎解きと新たな展開



机の上にあったラジカセが、気になる話をしていました。「孤独な霊魂が空間を作り出して、家を偽り、赤の他人を捕まえて、愛を偽る」と。霊魂の力でこの不思議な空間が作り出されているということでしょうか。すると主人公はすでに霊魂に捕まってしまった状態なのかもしれません。


奥の何もない部屋の壁にリホウの写真を使うと、途端にポスターや家具が出現しました。アイテムを特定の場所に置くことで、ストーリーが進展していくようです。他にも茶碗とトロフィーを持っているので、これも相応しい場所に置いてやりましょう。


アイテムの配置を終えると部屋の様子が変わり、ライターを入手することができます。暗闇の中、ライターの火を頼りに進んでいきますが、なんだかよけいに怖くなった感がありますね。左の壁には「なぜ目を開こうとしない」という意味の言葉が書かれています。


通路の向こうには、また鍵の掛かったドアがありました。先ほどと同じように郵便受けを調べると、「1986」と書かれた鍵が入っています。そして鍵でドアを開けた向こうにはなんと……!?ここから先の展開は、あなた自身の目で確かめてみてください。ホラー要素もここから本格的に表れてきます。

理想的な中華ホラーゲーム


2Dだった前作『返校』から、グラフィックスなどを一気に進化させた本作。当時の台湾の雰囲気や文化が本当によく出ていて、「ホラーゲーム」という枠組みで済ませてしまうにはもったいない作品です。しかし、やはりホラーゲームだけあってビックリポイントはあります。ただ大きな音で脅かしたりグロテスクな映像を見せたり、というやり方ではなく、こちらの動きを先読みしたようなスマートな驚かし方なので好感が持てました。

通路にある広告。こういうのを見たりするのが本当に楽しいです

室内の装飾や小道具なども本当にいい味を出してます。ごちゃごちゃした感じが台湾らしいというか。3Dということで「酔いやすくてプレイが大変」という方もいるかもしれません。視界が狭いことと、モーションブラーが強めなことが理由のような気がするので、設定でモーションブラーをオフにすればマシになるかと思います(休憩をとりながらプレイするのが一番ですね)。本作は、前作のファンや『クーロンズゲート』好きの人にはうってつけかと思います。また「台湾の文化に興味がある」という方にも、ぜひともプレイしてほしい作品です。将来的にはVR版なども出ることを期待しています。

製品情報


    『還願(Devotion)』


    開発・販売:RedCandleGames、Indievent、 Winking Skywalker
    対象OS:Windows
    通常価格:1,730円
    サポート言語:日本語、中国語(簡体字、繁体字)、英語、韓国語
    Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/1006510/Devotion/

※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字・繁体字を日本の漢字に置き換えています。
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

+ 続きを読む
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集

連載・特集 アクセスランキング

アクセスランキングをもっと見る

page top