e-Sportsイベントは、バラエティによってカジュアルになれるのか?「AICHI IMPACT! 2019」レポート | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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e-Sportsイベントは、バラエティによってカジュアルになれるのか?「AICHI IMPACT! 2019」レポート

8月30日から9月1日に開催された「AICHI IMPACT! 2019」。バラエティとe-Sports、そのふたつはうまく絡み合い、「e-Sports元年を迎えた」と言われて以降ならではの、新しいイベントになっているのでしょうか?その模様をお届けします。

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「AICHI IMPACT! 2019」は2019年8月30日から9月1日にかけて、愛知県国際展示場で開催されたe-Sportsイベントです。

日本国内のトップ選手が参加するほか、企画に吉本興業が関わることで、芸能人やKpopアーティストなども参加するバラエティ豊かな内容を特徴としています。

今回Game*Sparkではe-Sportsだけではなく、芸能人やストリーマーも多数関わった日程となる、8月31日に参加バラエティとe-Sports、そのふたつはうまく絡み合い、「e-Sports元年を迎えた」と言われて以降ならではの、新しいイベントになっているのでしょうか?その模様をお届けします。

カジュアルなe-Sportsイベントの風景



近年のバラエティ番組で、は芸能人をホストにした番組が相次いで放送されています。地上波テレビではe-Sportsを取り扱うことも増えており、特定のタイトルを競いあうことよりも気軽にビデオゲームを楽しむ姿をフィーチャーしていることも少なくありません。

「AICHI IMPACT! 2019」は吉本興業が企画していることもあり、とりわけバラエティらしく気軽に触れられるe-Sportsイベントを目指しているのは確かでしょう。吉本興業は昨年よりe-Sports専門の「よしもとゲーミング」を立ち上げています。

バラエティに振った軽いものかと思いきや、『Dota 2』専門のDeToNatorを抱えるほか、ファイティング・アクションゲーム部門にまちゃぼー選手やkubo選手が加入するなど、トッププレイヤーが加わっており、思ったよりは本気さが伺えます。


本気さは吉本だけではありません。愛知県知事である大村秀章氏も大きくイベントに関わっており、e-Sportsによる地方活性の意図が観られるなど、様々な方向により実現されているイベントであることも分かります。

参加者が集まり『シャドウバース』に講じるブースも。


とはいえ実際のところ、その本気さはどれくらい反映されているのでしょうか?

愛知県国際展示場ではふたつのホールを借りてイベントが行われました。さまざまなイベントが行われるホールと別に、『グランツーリスモSPORT』の「GR Supra GT Cup」のブースや、参加者が集まって『シャドウバース』の対戦会がおこなわれていたほか、アーティストがライブを行うものまでさまざまなブースが出店されています。

とはいえゲームやエンターテインメントだけではなく、名古屋の名産品などが販売されたブースが会場のおよそ半分を占めるなど、散漫な印象も残しています。よく言えば地方のゆるい空気がある会場でもありました。

『グランツーリスモSPORT』で愛知県知事VSレイザーラモンRGが実現



では本命のイベントホールではどうでしょうか?会場に入ると、観客はおよそ3分の2ほどが埋まっています。

8月31日の総合司会はお笑いコンビ・ココリコが担当。有吉弘行やバカリズムのように、テレビ番組でビデオゲームやe-Sportsと深く絡んでいるイメージはないものの、スムーズに進行を務めていました。各ゲームや選手については必要以上に関わらず、パッと離れる。芸歴20年を超えるベテランの腕前が見られます。


この日は最初に『グランツーリスモSPORT』です。ここでは大村知事も登壇し、e-Sportsの大会を名古屋でも開きたいということを語ります。突如レイザーラモンRGが登場し、「息子も『グランツーリスモSPORT』やってるんだ」と言いながら、あるあるネタを披露していました。

続いてレースでは、なんと大村知事自身が参加するチームと、お笑い芸人のレイザーラモンRGが率いるチームの対決が実現します。各チームには、“全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI”の愛知県代表が2名、プロレーサー1名が加わる構成です。いわば素人+現実のレーサー+ゲームのレーサー2名の組み合わせです


先鋒の大村知事vsRGにて、開幕早々にRGがスピンしてコースアウトするなど、果たしてまともに競い合えるのか?と思わせながら、プロレーサーへとバトンが移るにつれ、レースは徐々に接戦へともつれ込みます。アンカーのトッププレイヤーに移るころには、細やかな技術の応酬により、コーナーひとつ曲がるときにも緊張感が走りました。

バラエティ的なマッチメイクから、だんだんとトッププレイヤーによる接戦が形作られていく流れは、そのまま「AICHI IMPACT! 2019」全体の空気感を凝縮して見せていたと言えるでしょう。

ネタに見せて、本当に落ち込む姿が見える芸能人の闘い



考えてみればバラエティは、ビデオゲームではないものの、テレビ番組のなかでいろんなゲームを遊ぶ姿を視聴者に見せてきたといえます。少し前のわかりやすい例を挙げれば「関口宏の東京フレンドパーク」がそうですし、近年ならば「逃走中」などもそうででしょう。いまでも芸能人を何らかのゲームで競わせ、番組を作る企画が溢れています。

そんな芸能人がe-Sportsで競い合う場合、イベントを成立させることが優先されるのか、競技自体が優先されるのか、どちらへ針が振れるのでしょうか?ゴールデンボンバーの歌広場淳氏と、お笑いコンビ・マヂカルラブリーの野田クリスタル氏による『ストリートファイターV アーケードエディション』(以下、ストリートファイターV)の対戦では、まさにバラエティに見せながら中身はガチ、感情もガチな出し物になりました。


ガチさが強いのもそれはそのはず、歌広場氏は『ストリートファイターV』のマスターランクになるほどの腕前を持ち、大会にも出場するほどやりこんでいるからです。バラエティ側の人間に見えますが、 日経クロストレンドで連載されている金爆・歌広場淳「ゲームは人生の教科書だ」のインタビューに見られるように、一方では国内e-Sportsシーンの内部に食い込んでいる人物でもあります。

エアーバンドだから楽器練習しなくていい分、こっちを練習している」と会場を笑わせる発言の一方で、持ちキャラのケンによる驚異的な火力で野田氏のダルシムを圧倒します。


野田氏も『ストリートファイターV』をかなりやりこんでおり、実力もトッププレイヤーに評価されているものの、歌広場氏に完敗を重ねたことでだんだん表情が曇っていきます。途中、試合が盛り上がって思わず服を脱いでしまう演出で会場を盛り上げますが、裸以上に心中がおだやかではないことに注目してしまいました。


テレビ番組を構成するためのゲームでは、芸能人が本気でがっくりする姿を観ることはまれなのですが、歌広場氏と野田氏の対戦ではそんな素の感情が見える点が興味深かったです。ふたりは会場をにぎやかしながらも、ストレートで歌広場氏が完勝しつづけていくのに対し、野田氏は本当に苦しむ表情を見せるのです。

本気で対戦したゲームで負けたことがあればわかる、あの辛さや悔しさがにじみ出る表情は、バラエティで早々観ない物なのは確かであり、バラエティとガチの境目が曖昧になるゆえの面白さがあったと言えるでしょう。歌広場氏は圧勝しながら会場を盛り上げます。e-Sportsイベントとは考えにくい黄色い声援が飛び交い驚きますが、ほとんどは歌広場氏のファンだったようです。


またR-1グランプリで優勝した気鋭の芸人である霜降り明星の粗品氏と、ストリーマーのもこう氏が『シャドウバース』で対戦。こちらの構図も興味深いものがあります。

バラエティが地上波のテレビでゲームに講じる一方で、インターネットでもゲームを遊ぶ人を観る楽しみが培われてきました。YouTubeからニコニコ動画、現在ならtwitchなどで盛り上がっています。芸能人がTVでゲームに講じることと、インターネットの動画でストリーマーがゲームを実況することがクロスした瞬間とも思えますが、ゲームがゲームなので2人はほぼ対戦で喋らず、実況解説ばかりが会場に響いていたのはなんとも皮肉でした。

M-1優勝者が東方シリーズの音楽を語る



e-Sportsの競技的な側面を押し出すだけではなく、ビデオゲームが持つもう一つの魅力であるゲームミュージックについて語り こちらはM-1優勝によって一躍人気を得たお笑いコンビ、霜降り明星をMCに、歌広場氏を加え、好きなゲーム音楽について語り合い、ニコニコ動画やYoutubeで活動するピアニストのまらしぃ氏に、そんな好きな音楽を演奏してもらうという催しです。

霜降り明星のせいや氏は、ゲームで思い出に残っている音楽で「ぼくは『桃太郎電鉄』シリーズの急行カードを使った音楽が好きッスね!」と語ります。会場を笑わせようしているように見せて、本当に急行カードの音楽が好きなんだろうなあと感じさせる、せいや氏の人柄が感じられるセレクトです。

一方、粗品氏は「『東方Project』シリーズの音楽が好きなんですよ。」と、こちらはお笑いを一切感じさせず、本当に好んでいることがうかがえる発言です。かつて今田耕司氏が、芸風からは考えにくいニューロマンティックの音楽を好んでいたことに匹敵するようなギャップを感じさせました。


まらしぃ氏が壇上に登場すると、MCのみんなが好きなゲーム音楽をピアノで演奏します。歌広場氏の『ストリートファイター』持ちキャラであるケンのテーマから、『東方Project』シリーズからは「チルノのパーフェクトさんすう教室」などがメドレーで奏でられました。

こちらは芸能人の意外な趣味が分かるほか、ゲーム音楽についてもカジュアルにトークする可能性が見えた催しとなりました。ちなみに『桃太郎電鉄』急行カードのテーマは演奏されませんでした。

最後に展開されたガチなトーナメント



イベントの最後には、まさしくe-Sportsらしい『ストリートファイターV』のトーナメントが開幕します。ここからはあからさまに空気感が変わり、バラエティの空気感がなくなった競技の現場が展開されました。

トーナメントにはトッププレイヤーのときど選手とガチくん選手に加え、海外プレイヤーではXian選手とMenaRD選手が参戦。ここに当日予選を勝ち残ったプレイヤーを加えた8人が競い合います。


当日予選を勝ち残った選手が、招待選手で対戦したい相手を指名する形でカードが決定します。ここで因縁のマッチメイクとなったのが、パウエル選手がときど選手を対戦相手に指名したことです。

パウエル選手は今年のEVOでときど選手に勝利したものの、他のe-Sports番組では敗北しており、リベンジするために指名したと言います。因縁の対戦はパウエル選手のキャミイがスピーディな攻防を見せるものの、ときど選手による豪鬼の精密さが上回りました。

他にもXian選手、ガチくん選手ら招待選手が勝ちあがるなか、当日予選を勝ち上がった選手の中で異彩を放ったのはカワノ選手でした。コーリンを使い、バーディー使いのMenaRD選手と拮抗した試合の後に勝利。準決勝でXian選手に敗北したものの、本人のキャラクターとともに、招待選手が優位に見えるトーナメントで予定調和をかき乱す活躍をしました。


優勝が期待されるときど氏は準決勝ではガチくん選手と対戦。ガチくん選手のラシードと一進一退の攻防を演じますが、最終的にガチくんが上回ります。決勝はガチくん選手vsXian選手となりましたが、ガチくん選手は準決勝の勢いのまま完勝。最後まで緊張感あふれるトーナメントとなりました。

残念ながら歌広場氏の出番が終わった段階で、彼のファンが一斉に会場を後にしたため、観客席は3分の1前後を埋める程度にまで減少します。逆を言えば、ここで残った観客こそe-Sportsファンのコア層だと言えるでしょう。観客数は少ないものの、接戦の試合展開に対して、自然に歓声や拍手が起こっていました。

バラエティとガチのコントラスト



イベント全体を振り返ると、バラエティさとガチさが不思議な形で混ざり合った瞬間が幾度も見られるものになりました。そこにはカジュアルさとハードコアさが共存していく可能性があったと言えるでしょう。

またEVOなど純粋なe-Sportsイベントと比較すると、試合だけではなく来場者が参加して楽しめるブースの充実の差もあります。「AICHI IMPACT! 」はカジュアルさが魅力であり、今後もイベントを重ねていくとすれば、来場者が参加できる部分も強まれば良くなると感じました。バラエティとガチさが行き来する体験、それこそカジュアルなe-Sportsの体験ではないでしょうか
《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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