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Game*Sparkレビュー:『DEATH STRANDING』

発売から一ヶ月半ほど経過していますが、クリエイター小島秀夫氏の復帰作として熱視線を集めた『デススト』のレビューをお届けします。

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!注意!本記事にはネタバレが含まれています。閲覧の際にはご注意ください。



DEATH STRANDING』は、重い荷物を背負って険しい道を進むゲームです。運搬するのに時間がかかり過ぎると荷物がだんだん傷んでいって、最終的には壊れてしまいます。時々敵らしいものに遭遇するので隠れて逃げるか、戦うかを選択しなければならないタイミングもあります。

ゲーム中のほとんどの時間を移動が占めており、移動することがメインコンテンツのゲームであると言ってしまってもいいでしょう。ときどきド派手なボスとの戦闘シーンもありますが、基本的にはかなり地味なゲームです。もちろん、地味だからつまらないということではありません。

そして、人によっては『DEATH STRANDING』はそれだけのゲームではありません。『メタルギア』シリーズの生みの親である小島秀夫監督による、独立後初めての作品だからです。

本作の開発過程には、体験版であるにもかかわらず2010年代の重要なホラーゲームのひとつである『P.T』、コナミの退社騒動、その後の復活劇、そして『P.T』を引き継いだかのような出演者の起用と、非常にセンセーショナルな物語が背景にあります。もちろん、そういった開発にまつわる物語は、ゲームプレイ自体と関係がないと見なすこともできます。

このレビューも、基本的にそういった文脈からは距離をとり、できる限りゲーム自体について語っていきます。ですが、小島秀夫監督が方方で開発と本作の内容を重ね合わせて語っていることからも明らかなように、「ゲーム」と「今作の開発にまつわる物語」を完全に分けて語るということは不可能です。事実として、そういう物語があったからこそ『DEATH STRANDING』はここまで注目されたのでしょう。

個人的にも、「リアルタイムで『DEATH STRANDING』の発売を待つ」そして「『DEATH STRANDING』発売後の盛り上がりを眺める」というのは刺激的な体験でしたし、きっと後年にはこれらの体験込みで本作を思い出すことになるでしょう。こういう「体験」はゲーム内容そのものとできる限り分けて語るべきなのですが、まず最初に「体験として面白かった」ということは書き記しておきたいと思い、このような長い前置きになってしまいました。

実際のところ、この「体験」こそが本作が賛否両論となっている最大の理由でしょうし、触れておく必要もあったように思います。と、いうことでここからがようやくレビューとなるのですが、発売からそこそこ時間が経過したこともあり、ネタバレに関わる内容も含みます。本稿の最初にもある通り、ネタバレを避けたい方はご留意ください。



荷物運搬シミュレーションゲームとしての『DEATH STRANDING』



筆者は、本作の主なジャンルを「荷物運搬シミュレーションゲーム」であると考えています。改めてざっくり説明すると、『デススト』は基本的に「A地点からB地点に荷物を運ぶ」というゲームです。

単に移動するだけではなく、道中にはいろいろな工夫が施されています。ハシゴやロープ用パイルなどのアイテムを駆使したり迂回したりなど、自分なりのルートを開拓する必要も出てきますし、アイテムにもまた荷物としての側面があるところが悩ましく、「どれだけハシゴを持っていくか」というような判断も問われます。


物語を進めていくと、三輪バイクとトラックの二種類のビークルが使えるようになります。フローターという浮遊式の台車や、スケルトンという脚の補助装置も登場しますので、移動方法には幅が産まれます。スケルトンはつけておいて損はないような感じですが(コストはかかります)、フローターやビークルには一長一短があり、状況によっては徒歩を選択した場合がよいときもあります。

状況の予測とアドリブでの判断のバランスが気持ち良いという点は本作の大きい魅力ですし、計画を立て、それがピッタリハマったときに快感を覚えるタイプのプレイヤーにとって、替えが利かないものになるでしょう。


難易度選択にもよりますが、筆者がプレイしたノーマル難易度だとゴリ押しが通用するタイミングがあるというのも好ましい点でした。バイクのブーストとジャンプを駆使すれば一見無理そうな雪山も走破することができるので、筆者はゲーム後半部、ほぼバイクを利用して運搬していましたし、徒歩時にもジャンプボタン連打で無理やり崖を登ることができたりします(時々ですが)。「荷物運搬シミュレーションゲーム」といっても操作性がシビアなリアル路線というわけではなく、カジュアルなアクションゲームらしい手触りもある作品になっています。

非同期マルチプレイ建築ゲームとしての『DEATH STRANDING』



本作の大きな特徴として、開発者が「ソーシャル・ストランド・システム」と呼称する非同期マルチプレイ要素があります。ゲーム中の用語でいうなら「カイラル通信」が繋がったエリア……つまり主人公が到達したエリア(到達するだけではなく依頼が必要になるときもありますが)周辺であれば、インターネットに繋がった他のプレイヤーの制作した建築物やアイテムなどが利用できるわけです。

このシステムによって、たとえばサイドクエストの進行などのゲームの攻略が容易になっていきます。一例ですが、筆者がプレイしたときにはほとんどすべての都市の駐車場に誰かが使ったバイクが入っていたので、自分の素材を使ってバイクを作る必要はほとんどありませんでした。他のプレイヤーが残したアイテムや建築物には数多く救われたので、自然と他者に対する感謝みたいなものが心に湧き上がってきます。


実質的に攻略に役立つもの以外に「看板」を設置することができるのも特徴で、これは(多くの人が指摘する通り)『Demon's Souls』や『DARK SOULS』シリーズのメッセージシステムの発展形といっていいでしょう。建造物や看板には「いいね」を送り合うことができ、自分が作ったものが多くのプレイヤーにとって役立っていることが数字で実感できるのも嬉しい点ですし、「いいね」は経験値のようなものとして実際に役にたちます、より多くいいねをもらえるように適切な建設をする意味があります。

本作はムービーシーン以外でほとんどNPCが登場しません。そのためプレイ中はずっと孤独ですし、ストーリーも重苦しいため陰鬱になっていきがちなのですが、このような「ソーシャル・ストランド・システム」によってちょっとだけほっこりできるタイミングが設けられているのはよかったです。その他にもセーフハウスや橋などかなり便利で大規模な建築も行えますし、他のプレイヤーが作った建造物を補修する、なんてこともできます。


ゲームクリア以外の大きな目標として「国道の建設」という一大プロジェクトも用意されています。膨大な材料が必要になるやりこみ要素として面白く、筆者の周りにもこの「国道建設」にハマったプレイヤーはたくさんいました。

無論、自分では一切なにもやらず他人の建築やアイテムを利用しまくって、ひたすらクリアを目指すようなプレイングも可能なところが面白いです。かくいう筆者も、新しい都市に着くたびにシェアボックスの中身を即リサイクルに回すなどして遊んでいました。

ジャンルミックス



「荷物運搬シミュレーション」「非同期マルチプレイ建築」以外にも、本作には重要な要素があります。外敵から身を隠したり逃げたりするステルス要素、そして見つかったときやボス戦などで体験するTPS的な戦闘アクションパートです。


敵対する人間から逃げるようなパートもありますが、それよりも個人的には「BT」から身を隠して進む部分が印象的でした。BTがウジャウジャいる「座礁地帯」を通り抜けるパートでは、多くのプレイヤーがホラーゲーム的な緊張感を味わったことでしょう。

BTは目視することが難しく、「オドラデク」というセンサーを頼りに進んでいくことにになるのですが、BTが接近するとけたたましく反応し、赤子が泣きわめくSEが流れるのでプレイヤーは非常に焦らされることになります。

このBTとのステルスパートは本作の白眉で、個人的に一番楽しめたゲームプレイ部分でした。大きく動こうとすると見つかってしまうので、基本的にはゆっくり進まなければならないのですが、座礁地帯では「時雨」が降り続けます。そんなわけで、モタモタしているとどんどん荷物が劣化していってしまうのです。

「進むのは困難だが立ち止まってはいられない」というジレンマがあるためプレイヤーは「能動的に幽霊の中につっこんでいく」ことになるわけで、緊張感と焦燥感のバランスがとてもよくできていると感じました。急ぎすぎてBTに気づかれ、捕まってしまうと、次は中ボスのような巨大BTとの戦闘パートになります。


戦闘パートはいたって普通のTPSに近いです。が、特に対BT戦の演出はすさまじく、緊張感と爽快感が同居しています。また、物語後半にかけて、強制的に遭遇する「ボス戦」的な特殊戦闘パートが増えていくのですが、マップのデザイン含めてとても印象的に仕上がっています。

このように『DEATH STRANDING』はいろいろなものが組み合わさったジャンルミックス的な作品です。それでも、戦闘のだって荷物を守らなければならなかったりしますし、すべての要素がしっかりと絡み合い、分離していません。

ストーリーや設定、世界観、カットシーン



本作には、これまでに紹介したようないろいろなゲーム的要素をつなぎ合わせるために、もはや「奇想」と言っても良いような世界観/設定が用いられています。

「デス・ストランディングとはなにか」「BTとは何か」「BBとは何か、なぜ必要なのか」「なぜアメリカを再建しなければならないのか」など理解しておかなければならないストーリー上の前提がかなり多いため、冒頭部(そして結末部)にはかなり長めのカットシーンが用意されています。冒頭部の「死体を放っておいてしまうとどういうことになってしまうのか」ということを示すシークエンスはかなり衝撃的で、本作のカットシーンの中ではもっとも出来が良いと個人的には感じました。


総じて『DEATH STRANDING』のビジュアルはかなりカッコいいと思います。サムの衣装や服、バッグなどの装飾品類は素敵なデザインであり、こういう雰囲気が好きなプレイヤーにとってはSF的な想像力を大いに刺激されることでしょう。全体の色調も色温度低めで統一されていますし、タイポグラフィやロゴのデザインも凝っているため、小道具の説得力の高さはピカイチです。

BTの形状も(足跡が手のひらになっていたりなど)異質感があって素晴らしいです。繋がりから縄、そしてへその緒というモチーフに広がり、それがBBポッドの接続方法になっているなど、イメージが連想ゲーム的な広がりを見せているのも面白いところ。コンセプトとデザイン、そしてゲームプレイがかなり高いレベルで一致した作品であることは間違いないでしょう。「見たことのない世界」「見たことのない設定」でありながら必然性を感じさせる……という描き方はなかなかできることではない、と筆者は思います。

また、有名なアーティストが数多く参加したサウンドトラックはすばらしい出来で、コンピレーション的なものなのにも関わらず他に類のない統一感でした。特に「Low Roar」による楽曲の数々は、本作の世界観の補強という意味でも大いに役立っていました。

しかし、かなり好意的に本作の世界観を受け入れている自分にとっても、一部の冗長なカットシーンは見過ごせません。特に中盤で遭遇する「カイラルアーティスト」を巡る一連のくだりは疑問視しています。


本作のカットシーンのほとんどは、「誰かが主人公(サム)に対して一方的に説明をする」という形式になっています。世界観の説明に交えて、自分がどういう人間で、どういう経緯で今の状態にあり、どのように現在感じているか……ということを一方的に語るシーンが、あまりに多いのです。本作のキャラクターたちはみな個性的な設定を持っていますが、キャラクターの背景のほとんど全ては「本人の口から語られる」という形で説明されています。

カイラルアーティストのくだりでは、声優の拙い演技やひねりのないシチュエーションも相まって、特にその「一方的に説明を受けている感」が気になります。「誰かに一方的に境遇を話す」というのは作劇としては不格好ですし、対象の人物に興味を持っていないプレイヤーにとってはあまり面白いものだとは言えないでしょうから、おそらく誰が演じても問題が生まれるシーンになってしまいます。だから、カイラルアーティストのくだりで感じる違和感は演技が悪いというよりも、演出上の問題だと思います。


「誰かがサムに対して一方的に説明をし続ける」という作劇は、最終盤での会話シーンに至るまで大きく変わりません。ここでは詳しくエンディングの内容を語りませんし、「どこからがエンディングなのか」という定義次第でもありますが、「そろそろ終わりかな?」と感じてから2~3時間ほどエンディングシークエンスが続くというバランス感は、集中力が切れてしまうため個人的にあまり好みではありませんでした。余談ですが、同じように本作をクリアした友人と「ラスボス」の話になったとき、彼の中のラスボスと筆者が思うラスボスが別の敵だったために話がすれ違ってしまう、なんてこともありました。

また、ゲームの仕組み上で仕方のないことですが、プレイヤーがサムとしてゲームをプレイしている間はストーリーの進行が止まっています。そして都市に着いてプレイヤーがゲームをプレイしていない間、つまりカットシーンによって物語が進行していくので、ゲームが進むにつれてプレイヤーと物語の距離がどんどん開いていく作りになっていると感じました。物語や世界観から振り落とされるプレイヤーが一定数存在するのは必然でしょう。


そしてこれは妄想に過ぎませんが「リサ」という人物、胎児というモチーフ、死後の世界(裏世界)と幽霊的な存在などは見逃せません。本作は『P.T』から一部プロットを引き継いでいて、メインストーリーはそこに足し算する形で作られたのでは? という深読みをすることもできます。

本作の基本的な骨子であるクリフ、サム、そしてBBという「父と息子」を巡る物語がシンプルに感動的であるのに対して、「アメリカ再建」というテーマやヒッグスとアメリの陰謀を巡るストーリーが浮いていて、過度に説明的であるためです。

「繋がり」というテーマは小島監督が退社以降に出来上がったものとのことなので、元々あったプロット的な骨子と、後から追加された要素が不整合を起こし、また設定の複雑化もあって、後半部のストーリーテリングの混乱を招いたのではないか? と勝手ながら推測しています(かなり妄想じみた推測ですよ!)。

ハリウッド俳優も多く出演し、長尺のカットシーンを持つ本作を「映画的である」と評する人も多い印象ですが、筆者としてはまったく同意できません。むしろ、このような説明的な作品が映画だったらひどく退屈になってしまうはずなので、ゲームとしての『DEATH STRANDING』と出会えて本当によかったと考えています。

前述のように冒頭部のヴォイドアウトから死体運び、BTとの遭遇という一連のシークエンスは演出もよく、緊張感に溢れていて素晴らしいだけに、中盤からカットシーンが(カットシーンであるにもかかわらず)言語的な説明に偏っていくところは非常に残念でした。このような「説明くさい」くだりは小島秀夫監督作品では恒例のため「味」と言えなくもないでしょうが、やはりエンターテイメント作品として考えた場合は作劇に問題があるように感じられます。

“棒”ではなく“なわ”



総評として、『DEATH STRANDING』は非常に面白く野心的なゲームだと思います。しかし最終局面の「ゲーム的な盛り上がり」をシューター部に強く依存しているので、充分に「棒ではなくなわ」と言えるゲームになっているとは思えませんでした。既存のゲーム的な文法を外れて完全に新しいものを提示している、というよりは、今までにあったゲーム的な形質の組み合わせ方が独特なゲーム、という風に評価するのが正しいように思えます。

繰り返しになりますがシューター部の出来栄えはすごく良いので、その点を以て本作の評価が下がるということはありません。しかし、運搬シミュレーションゲームとして本作が充分に面白いのはマウントノットシティ到着あたりまでで、それ以降は物語的にもゲームプレイのバリエーション的にも尻すぼみになっていった印象があります。ないものねだりをしても仕方ないことはわかっていますが、ビークルや建造物の種類がもうちょっとあったら嬉しかったなあと思います。


このように不満点はいくつもありますし、「ゲームの歴史を刷新するような大傑作」と言えるかどうかは判断しかねます。少なくとも筆者は世間の大絶賛ムードからは距離を感じていますが、独立後の第一作としてここまで堂々としたビジュアルの「大作ゲームっぽい作品」を完成させるというのは、それだけで極めて驚異的なことだとは思います。

そしてなにより(これはレビューとしての評価に影響しませんが)、先述したように「体験」として面白いゲームでした。あまりに事前に盛り上げすぎた故、拍子抜けに感じるプレイヤーが多く生まれ、結果として賛否両論になったという側面もあるでしょう。しかし、好きでも嫌いでも「今遊ぶべきゲーム」であるのは確実です。もちろん、前情報なくプレイしても充分に楽しめる強度は持っていますしね。

おそらく、今から十年以上が過ぎたあとも「2019年に『DEATH STRANDING』っていうゲームがあって……」というお話が、ひとつの事件のように語られることでしょう。そこにはポジティブな意見もネガティブな意見も込められているでしょうが、のちのゲーム業界で『デススト』がどのように評価されているのか、筆者としてもとても興味があります。


総合評価: ★★★

良い点

・世界観/ビジュアル/道具などのデザインが素晴らしい
・遊びの幅が広く、自分なりのプレイスタイルを選択できる
・緊張感があり、ホラーゲームのような質感のBT遭遇パート
・爽快で楽しいシューター要素

悪い点

・一部カットシーンが冗長
・中盤以降の失速
・後半部における作劇の混乱


《文章書く彦》

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