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金融危機真っ只中のレバノン・ベイルート……激動の国のゲーム販売事情は【異国ファストトラベル】

3月に初のデフォルト(債務不履行)が報じられていたレバノンの首都ベイルートから、ゲーム販売事情をお届け。

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レバノンのゲーム文化はここ3年の間で劇的な変化を遂げています。これまではネットカフェやe-Sportsの大会も少なく、『Call of Duty』シリーズや『Command & Conquer: Generals』、『Counter-Strike』、『Need for Speed』、『Age of Empires』などの古いタイトルが取り上げられていました。昨今では『フォートナイト』『オーバーウォッチ』『Apex Legends』など、皆さんもご存知のバトルロイヤルシューターのプレイヤー数が増え、多くのゲーマーがこれら人気作品に移行しています。


ここ数年のレバノンのゲーム文化の変化には、主に2つの理由があると考えています。若い世代がテクノロジーやビデオゲームに早い段階で触れるようになったこと、そしてそんな若年層のゲーマーが「刺激的で一回のプレイ時間が短いゲーム」を好んでいることです。

また、フットボールゲームのシリーズとして特に有名な『FIFA』は今でも特筆すべきほどの人気作品です。昨今では新規作品の登場が期待されている『リーグ・オブ・レジェンド』は2009年のサービス開始以来、若年層よりは少し上の世代のゲーマーによって支えられている印象です。

主要なゲームイベントはすべて首都・ベイルートで開催されています。人口密度が高く(1平方キロメートルあたり3,500人ほど)充分なネットワーク環境も揃っていて、安定したゲームプレイに挑めます(一部のゲームではpingが130~200msになりますが)。

PS3/PS4版の『FIFA』および『Need for Speed』の両シリーズを除くと、すべての大会はPCを対象に開催されています。大会に出場するプレイヤーはほとんど似たような顔ぶれですが、その賞金は毎回150ドルから200ドルほど。レバノンでは現在2つの為替レートがあり、一般的には「1,500リラ/1ドル」。闇市場では「2,000リラ/1ドル」とされています。昔から賞金額自体は変わっていないものの、当然ながら闇市場でのレートが基準です。


今回は「NetsDVD」「Najjar Stores」「Nino Games」という3つのゲーム店を取材してきました。「NetsDVD」はオーナーの個人経営店で、全国無料配送が特徴。「Najjar Stores」は「Nino Games」の最大のライバルで、立地がよく、ゲームのリリース日も若干早かったりします。

しかし、「NetsDVD」「Najjar Stores」では店内の撮影許可が降りませんでした。「Najjar Stores」では「貴様、日本から来た新手の産業スパイか?」と疑われる始末。とりあえずは会釈して店を出ましたが……『ダーククラウド3』のオープニングシーンにはピッタリなんじゃないかと思います。


「Nino Games」は非常に好意的に受け入れてくれたので、今回はこのお店の様子をお届けしています。取材協力ついでにPS2の名作RPG『ローグギャラクシー』もくれましたしね。このお店は実際のところ、ベイルートで最大級の品揃えと言っても過言ではありません。価格も立地もよく、先述したライバルの「Najjar Store」がカバーしていない任天堂ハード/タイトルも販売しています。



レバノンではPS4が特に人気を集めています。正直日本ではどうなのか分かりませんが、外出先でニンテンドースイッチを遊ぶ人は見たことがありません。今回調査した価格感は、PS4 Pro(1TB)にコントローラー2つ、さらに『FIFA 20』(英語/アラビア語)と「RARE PLAYERS PACK」、PS Plusの14日間無料チケット付きで480ドル~490ドルといったところ。ゲーム1本あたりの価格は40ドル~70ドルですね。ちなみに、PS3(500GB/コントローラー付き)は150ドルで販売されていました。


多くのゲーマーは両親からお金をもらったり、海外旅行土産のひとつとしてゲーム機を手に入れています。2019年10月からの大恐慌の影響が強く、この傾向は今後も変わらないでしょう。記事執筆時の情勢では、週に500ドル以上の現金を引き出すこともできません。そんなわけで、今後は新作ゲームよりも旧作/中古ゲームに焦点が当たると思われます。我々のゲーム文化にもダメージが与えられるかもしれません。

ここからはレバノンのPCゲーム文化について紹介しましょう。PCゲーマーは自作派が多く、ゲーミングギアに関してはASUS(Republic of Gamers)やMSI、Razer、Thermaltake、Cooler Masterなどが人気の傾向があります。これらのブランドは地元のお店や「PCandParts」「Macotronics」といったハードウェア専門店で販売されていて、もちろんアクセサリ類はひとつずつ自分で選んで購入できます。とは言え、レバノンにおけるPCゲームのハードウェア市場、とりわけネットカフェに関しては、Razer製品で揃えたセットアップを購入するケースが多いです。次点はASUS(RoG)、その次はMSIといったところ。グラフィックボードに関しては、オープンソースのAMDに軍配。NVIDIA製品と比べて不具合が少ない……という共通認識があるようです。


本来はもう少し情報を集めたいところだったのですが、この原稿を執筆している最中でも、レバノンの情勢は悪化する一方なのです。先ほどのPCゲーミングについての文章を執筆した前日には、レバノンで情報技術部門を担当していた元大臣の家が放火されました。筆者としても、現在のレバノンは「世界最大のマフィア国家」と認識していますし、その体制に強く反対しています。

そしてこれはGame*Spark編集部とも相談の上で決めたことなのですが、私達の国の財政状況はあまりにも不安定なため、この記事の原稿料の受け取りを「ひとまず保留」としているところです。4種類の異なる為替レートが動いていますし、レバノンポンドへの不信感は増す一方なのです。


レバノンで起こっている金融危機は、あまりにも悲惨です。私達の国と比べたら、90年代日本の「バブル崩壊」は出来損ないのRPGのようなもの。現在のレバノンの財政崩壊は、悪い意味で名作ゲームになると思います。ストーリー監修ができる政治家だって簡単に雇えますし、DLCまでリリースできそうです。非常に残念なことですが、いつまでも記憶に残る作品になるに違いありません。
《Omar Aouni Baassiri/Chandler/Game*Spark編集部》
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