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Game*Sparkレビュー:『DOOM Eternal』

激しさが注目されがちな地獄ハードコアFPS『DOOM Eternal』を冷静に分析!! 戦いを継続し続けられる興奮と、頭を使わなければ生き残れない「興奮&冷静」の戦略性は、敵の中に含まれた仕組みがもたらしたものでした。

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血沸き肉躍る戦闘狂が待ち望んだ『DOOM Eternal』……といった口上は、発売前に盛り上がる為の常套句に過ぎません。発売前の体験レポートでも触れましたが、本作は2016年版『DOOM』と共に、その戦闘へ冷静さが求められる構成となっています。

現代のFPSに近いスタイルとなった『DOOM 3』など……紆余曲折はあったものの、FPS全体を俯瞰してみると『DOOM』シリーズはむしろ尖ったタイトルであり、結果として『DOOM Eternal』はさらに磨き上げられたオリジナリティを構築するに至りました。

まずはメインディッシュたる戦闘システムを分析するところから本稿のレビューを開始し、その後はストーリーを含めた「主人公とプレイヤーの一体感」に関する考察を行います。後半についてはネタバレの要素もありますので、ページを分けた構成でお届けします。

また、レビューはシングルキャンペーンモードのみを対象とし、PC版をプレイしています。キャンペーンクリアまでの時間はおよそ18時間程度です。

「コンバット・パズル」その1:リソース管理



思わせぶりな前段でレビューの幕を開けましたが、本作の戦闘システムの土台部分は「The FPS」のひとことです。ステージをひたすら突き進み、落ちているアイテムを拾って、登場する敵の軍勢へ飛び込み、撃って撃たれて攻略する。その繰り返しです。

今作におけるリソース管理の基礎的な部分は発売前の体験レビューで紹介しています。本稿においては、「なぜ『DOOM Eternal』の戦闘は興奮と沈着を同時に味わえるのか」を分析するため、改めて詳細には触れません。

逆説的なようですが、本能的とも言える体験を実現させているのは「戦闘に冷静さを要する設計」にあります。本作の戦闘の魅力に直結している部分ですので、順番に見ていきましょう。


プレイヤーが管理すべき要素は「体力」「アーマー」「弾薬」の三種です。
  • グローリーキル:弱った敵にトドメを刺すと体力回復アイテムを落とす
  • フレイムベルチ:前面の敵を燃やし、その敵を倒すとアーマー獲得
  • チェーンソー :ザコ敵を一撃で屠り、各種弾薬が飛び散る

上記のように、倒すべき敵は同時にプレイヤーを助ける資源でもあるという設計になっています。近接ショットガン一発で倒せるようなザコ敵は、戦闘地域なら次々に湧いてくるので、完全にリソースが枯渇してしまうことはありません。

敵から全てのリソースを奪うという基礎設計が、常に戦闘を継続させてくれます。むしろ地面に落ちている弾薬やアイテムの方こそ、緊急用として利用する方が適切ではないでしょうか。戦えば戦うほど自分を守ることとなるので、獰猛に戦い続ける目的と行動が常に一致するのです。


あえて体力やアーマーの自動回復を採用せず、弾薬の所持数上限を少なくしていることも、戦う目的を強化させています。弾薬の数については思い切った程の少なさで、作中のアップグレードを通じてさえ、ショットガン弾薬については20数発しか所持できません。

現代のFPSが採用しているアイデアと比べて、一見正反対とも言えるスタイルにも関わらず、『DOOM Eternal』は戦闘の成果をすべて「敵の中」に組み込んでしまうことで一気に解決してみせました。

実は『DOOM』シリーズの中でも、ここまで徹底的に敵を倒すことそのものを目的とした設計はありませんでした。2016年版『DOOM』から出現したこの思想は、シリーズとしては新機軸だったとも言えます。


このことによって、まず「戦闘の興奮が維持される」という前段が整うこととなりました。しかしながら、ひたすら暴力性の塊とも言える主人公が敵を倒し続けるだけならば、そのリソース管理もそれほど重要ではなくなってしまいます。

戦闘に集中し続けることはできるけれども、戦略・戦術も立てなければいけない……という状況になってはじめて「リソースを獲得できる有難み」が出てくるものです。『DOOM Eternal』はその点において、前作よりも更に尖った方針を打ち出しました。

「コンバット・パズル」その2:弱点とランダム性


はじめて出会う悪魔は弱点の情報が表示される(オプションで非表示に設定可能)

悪魔ならではの多様性で、すばやいヤツから頑丈なヤツまで取り揃えています。『DOOM Eternal』は更にメリハリをつけ、悪魔に明確な弱点を設定しました。2016年版『DOOM』にも登場した、シリーズ常連のカコ・デーモンを例に見ていきましょう。浮遊しながら噛みつきを狙って執拗に追いかけくるモンスターです。

本来は頑丈な悪魔なのですが、本作では爆発物を口の中に放り込むと一撃で瀕死(グローリーキルが可能な状態)にまでもっていけます。シリーズを経験された方であれば、これは極端な弱点設定だと感じることでしょう。

はじめから所持しているコンバット・ショットガンにはアタッチメントとして「スティッキーボム」を装着できます。ほぼ開始時点で入手できるこのアタッチメントは、ショットガン弾薬を消費して爆発物を投擲できるというものです。

それなりに連射もできますし、消費するのは弾薬だけなので、かなり手軽に使えます。それをカコ・デーモンの口の中に一発、それだけで済んでしまうという訳です。そういった弱点があらゆる悪魔に設定され、しかもはじめて出会う時にはポップアップで情報として表示されるほど(ボスでさえ!)の親切設計となりました。


察しの良い読者であればこう考えることでしょう。「いろんな弱点を持つ悪魔を用意することで、プレイヤーに様々な武器を使わせようとしているな」と。実際のところ、2016年版『DOOM』は、スーパーショットガンと呼ばれるダブルバレルの武器一本でゴリ押しできるという指摘もありました。

『DOOM Eternal』ではそのお察しの通り、相手の弱点に応じて武器を切り替えなければ苦しい場面が存在します。エネルギー弾を高速連射するプラズマライフルは、カコ・デーモンにはあまり効果的ではありません。武器を持ち替える時間を犠牲にしてでも、カコ・デーモンにはスティッキーボムを放り込むべきでしょう。

また、エネルギーシールドを持つザコ敵には、実弾系武器がほとんど通らず苦労することになります。こちらはしっかりとプラズマライフルを当ててシールドを爆発させてしまえば一瞬で撃破できます。

このように紹介すると「それでは戦闘が一辺倒となっていくのでは?」と感じられるかもしれません。たしかにその側面は否定できないのですが、筆者が感じる限りでは、状況の変化があまりにも高速なので、敵の種類を見極めて武器を切り替えるということができるだけでも「いまの俺は適切に動いたぜ感」が得られると思います。

シールドは厄介だが「プラズマライフル」で爆発させれば攻撃手段として利用できる

とはいえ『DOOM Eternal』が「コンバット・パズル」を自称するように、ただ敵の種類に応じて武器を選ぶことだけが状況判断となる訳ではありません。

エネルギーシールドを持つ敵の近くにカコ・デーモンがいたらどうするでしょうか? 律儀にカコ・デーモンの弱点であるスティッキーボムへ切り替えて攻撃しても良いのですが、プラズマライフルでエネルギーシールドを爆発させたダメージを利用して、そのままゴリ押ししてしまうのも時には有効だったりします。

上記はたった一例ではあるのですが、敵の数も種類もかなりのものですし、三次元的に交錯する戦闘エリア、ジャンプ台やワープホールなどのギミックも考慮すると、瞬間的な戦術は多岐にわたります。

つまり、プレイヤーは冷静にならなければ一辺倒な戦闘をするしかなくなっていくのです。「たしかに自分は激しい戦闘をしているけど、ギリギリ一歩引いた思考が必要だぞ?」と気が付きます。そこで一息ついてから、グッと集中する。次はせめてこの戦術は使ってみよう、と頭を整理させながら戦いに臨んでいきます。集中力を高めることで実際にプレイヤーの戦闘力が上がるのには、そうした理由があった訳です。

窮屈さを緩和させる「武器MOD」


「満を持して登場」という感じなのに後で普通に出てくるヤツ

一段ずつ激しさを増す戦闘は、エンディングまで上り調子です。先にあげた興奮と冷静の戦術を取ろうにも、プレイヤーの忙しさが上がりっぱなしとなってしまうので、やや窮屈な思いをする場面もあるでしょう。

そこで目を向けるべきは「武器MOD」です。先述のスティッキーボムも武器MODのひとつですが、ほとんどの基本武器には2種類ずつの武器MODが用意されています。異なる性質の攻撃を可能とするものと、基本攻撃をより強力にするもの、といった形です。


武器MODは、マウス操作なら右クリックを押しながら攻撃ボタンを押すだけで使用できます。もう一つの武器MODの切り替えもワンボタンで一瞬ですので、実質的に1本で3種の武器を持っているような感じです。

武器MODによって「異なる性質の攻撃を繰り出せる」のが重要です。先のプラズマライフルは高速でエネルギー弾を発射するので、ザコ敵の一掃には役立ちますが、大型の敵に対しては効果が弱く、戦闘を長引かせてしまいます。

しかし「ビートブラスト」という武器MODは、射撃エネルギーを蓄積することで、強力な衝撃波を放てるというものです。周囲にいる邪魔なザコ敵をプラズマライフルで掃除しながらエネルギーを溜め、ビートブラストを大型の敵にお見舞いする……といった戦術を可能とします。同じ武器を使いながら、苦手な方面をカバーできるのです。


更に「武器ポイント」を使用することで、武器MODそのものを強化できます。更に上位の強化として「武器マスタリー」と呼ばれるものも用意されており、一時的な条件付きながら、プラズマライフルの通常弾ですら大型モンスターに通用する威力を獲得できるなど、その尖り具合も強烈です。

ストーリーの中盤ではまだ武器MODも揃わないことから、『DOOM Eternal』はこんな感じの戦い方が繰り返されるのかな? と、底を感じてしまいそうになりますが……全くそんなことはなく、どんどん激しくなっていきますので、その点はご安心ください。

やることが多い



形勢逆転に利用できるのが「フラグ爆薬」と「アイスボム」です。どちらも広範囲に強力な攻撃を放てるのですが、これらはフレイムベルチやチェーンソーと共にクールダウン方式となっています。体力を繋ぐグローリーキル以外は、基本的にこのクールダウンを常に管理しつつ戦うこととなります。

上記の画像のような地獄のデザイン、悪魔の形状も相俟って、どことなく『Diablo III』を彷彿とさせますね。FPSをやっているはずなのですが……戦闘そのものよりも、使い分けによる操作が忙しさを強めている原因のように思えます。

使用回数は限られるが大型の敵をも一撃で切り裂く強力な武器だ

マウス/キーボードによるデフォルト操作では、フレイムベルチはR、チェーンソーはC、ボムは左Ctrl、フラグ爆薬とアイスボムの切替はG、グローリーキルおよびブラッドパンチ(超強力な近接パンチ)はE、武器MODの切替はF……とメイン操作以外でもこれだけ存在します。

WASD移動にスペースキーでのジャンプ、Shiftキーによるダッシュ、数字ボタンおよびQによる武器切替を含めて高速戦闘をしていると「やることが多い!」と混乱してきます。終盤には一撃必殺の赤いブレードへVで切り替えるなんて操作まで出てきます。


最終的には上記の動画のような頻度でダッシュを連発できます。やろうと思えばどんどんプレイヤーの機動力を上げられる……と頭では理解できるのですが、なかなかこれだけでも使いこなすのは難しいです。

更に「バリスタ」という武器は強力なエネルギー砲を発射し、その際に反動で後方に押しだされます。これを利用して、進みたい方向に背を向けて、発射と同時にジャンプすると一気に加速して進行できます(『Quake』シリーズのロケジャンのようですね)。

まだあります。スーパーショットガンの武器MODである「ミートフック」は、遠距離から鎖つきのフックを敵に打ち込み、一気に巻き取ることでプレイヤー自身を敵の位置へ運ぶといった働きを可能とします。

これは空中の敵でも有効なので、上手く使えば足場のない高所にも到達できますし、空中戦闘もなんのその(筆者は上手に使えませんが……)。しかも武器マスタリーを解放すれば、ミートフックを当てた敵にフレイムベルチと同じ効果で炎上させてアーマーを補充できるという、攻守揃った凶悪な武器に変貌します。

ただでさえ機動力の高い主人公ですが、武器の特性を利用することで更に変態的な挙動が可能となる訳です。全ての能力を発揮しようとすると、とにかく忙しくなっていきます。獰猛になろうとするほど、やはり冷静さが必要となるのです。

とにかく強い主人公になる快感


敵の幹部を秒で締めあげよう!! どっちが悪魔だかわからないね

過剰なほどに実装された主人公の強さは、これまでの『DOOM』シリーズファンが抱いている「Doomguy」のイメージを満足させるものと言えます。どんな悪魔が束になっても敵わない。伝説の中でさえ悪魔が恐れをなして逃げていく。それが俺たちのDoomguyだ、という訳です。

カットシーンのひとつについても、そうした”性格”がしっかりと描かれているのが気持ちのいいポイントです。しかしながら、本作ではこれまでの主人公の表現としては異質な描写が挟まれることとなりました、これが冒頭で言及した「主人公とプレイヤーの一体感」に関わる部分となります。

ネタバレを含みますので、以後の内容の閲覧はお気をつけください。続けてお読み頂く場合は2ページを、飛ばして批判点と総評をお読み頂く場合は3ページをどうぞ。

《Trasque》

一般会社員 Trasque

会社員兼業ライターだけどもうすぐ無職になりそう

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