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地獄への道は善意で舗装されている…音喜多駿参院議員に訊くネット・ゲーム規制条例の問題点

秋田県大館市教育委員会へのインタビューを経て行われた、音喜多駿参議院議員への取材。改めて香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例」の問題点を訊くとともに国会での議論の現状なども伺いました。

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地獄への道は善意で舗装されている…音喜多駿参院議員に訊くネット・ゲーム規制条例の問題点
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2020年4月1日、香川県で「ネット・ゲーム依存症対策条例」が施行されました。音喜多駿参議院議員(日本維新の会所属/あたらしい党 代表)は、質問主意書を提出し、政府の条例に対する見解を問いただしているほか、ABEMAなどネット番組での議論や、自身のブログでもその問題点や規制への認識を積極的に発信しています。

新型コロナウイルス感染症で世界が激変する中、この条例は日本のゲーム業界にどのような影響を与えるのでしょうか?国会における議論の現状や、音喜多氏がなぜゲーム規制に反対しているかなど、インタビューを通してその考えをうかがいました。18日に掲載した秋田県大館市教育委員会へのインタビューもあわせてご覧いただき、理解を深めていただければ幸いです。
※本インタビューは3月に収録されたものです。

ゲーム規制は政治家のパフォーマンス


――今回のゲーム規制条例を取り巻く問題の本質は何だとお考えでしょうか?

音喜多駿氏(以下、敬称略):そもそもこの条例制定までの流れは、ゲーム悪玉論に乗っかった政治家のパフォーマンスだと考えます。ゲームが悪影響を与えているという科学的データはないので、この施策自体は本質を捉えていません。我々政治家は、有権者に選んでもらって活動しています。そして有権者は、政治家に対して目に見えて分かりやすい行動を求めます。「ゲームは悪だ!だから規制する」というのは、有権者にとって極めて分かりやすいアクションなんですね。分かりやすい行動は“やったこと“として評価されるので、政治家はパフォーマンスに走るのです。

――ゲーム規制がパフォーマンスとして有効になってしまうのは、有権者に若年層が少ないことも理由のひとつなのでしょうか?

音喜多もちろん投票率も関係あると思います。「ゲーム=悪」だと信じている高齢者層の投票率が高く、政治家も高齢の方が多いのが現状です。

――音喜多さんが提出した質問主意書政府回答で、「香川県の条例の効力が県外の事業者に及ぶ可能性がある」も明らかになりました。

音喜多私のブログでも問題点について解説しました。また、この条例はたまたま香川県から始まっただけで、条例制定がパフォーマンスとして有効なのは日本全国共通です。よって、各自治体や国に波及してしまうのではないと心配しています。

――過去、地方から生まれた条例が全国に展開(法律化)されたケースはありますか?

音喜多ポジティブなものだと、情報公開法です。これは地方からの情報公開条例をきっかけに法律化されました。また多くの都道府県で「手話は言語である」という考え方が広まっており、手話言語条例として成立され始めています。おそらくは数年以内に国でも可決するでしょう。このように地方から始まって国を動かす例はいくつかあります。もちろん良い例はたくさんありますが、ゲーム規制条例は私個人としては望ましくないと思っています。

――望ましくないというのは、何が問題だとお考えですか?

音喜多エビデンスがない点ですね。科学的根拠が証明されたうえでゲーム規制が解決策として有効であれば制定されるべきですが、現状は根拠が証明されておらず、ただ単にゲーム悪玉論を助長するだけになっています。また、日本は「子どもの権利条約」という国際条約に批准しているので、子供の自己決定権は尊重しなければなりません。よって、政治家や教育関係者がトップダウンでネット・ゲームを取り上げるような、子供の意思を完全に無視した条例が成立してしまうのは望ましくないと考えています。

都会の正論は地方に通用するのか


――我々は先日、香川県と時を同じくして子どもの「ネットゲーム規制」を進めている秋田県大館市教育委員会の方々に取材しました。我々も当初は「医学的の根拠」や「家庭に行政が介入することの是非」を詳しく聞くつもりだったのですが、お話しするうちに議論が噛み合わないと感じました。不登校の子供と親御さんを少しでもサポートしたいという思いは伝わりましたし、ゲームを目の敵にしているような方々ではなかったというのが正直な感想です。一方で、首都圏と地方の間に視点の差があると感じました。今回のゲーム規制に限らず、首都圏・地方間の考え方のズレは解消できるのでしょうか?

音喜多地方には素朴な善意のようなものがあり、現地の方々は真剣に子供たちのことを考えてやっているんだと思います。ただ地方とはいえ、条例は法的拘束力を持つので、制定にあたっては科学的根拠に基づいている必要があります。国会の場合、立法するためには立法事実が必要なのですが、それが地方になればなるほど緩くなるというか……。

――その緩さを利用して、地方で試験的な取り組みを始めることは有効なのでしょうか?全国的な実施が難しい施策でも、地方での実施を通して適切な効果測定が行われれば、将来的に日本全体や世界的にも価値のあるデータがとれるとも考えられます。


音喜多おっしゃる通りで、実験的に試みることができるのは地方自治の良い点です。国の定める法律で無茶はできませんが、究極的には条例が嫌な人は出ていけば良いとすることもできますからね。ただ香川県の条例に関しては、ネットを含めた規制をしている点にも問題があります。例えば、香川県の人たち向けにネットのサービスを提供している東京の事業者にも、条例の効果が及ぶ可能性がある。地方だけの実験としてやっていいのかどうかは疑念が残るポイントです。

――ネットによる影響範囲がネックとなって実験として割り切ることはできないんですね。

音喜多そうですね。他県の事業者にも影響が出る可能性がある以上、香川県だけの問題にとどまらないと思います。

――とはいえ香川県の条例は施行されました。逆に、この条例を有効活用することも難しいのでしょうか?例えば、香川県にITやサイエンスの専門家を派遣してデータを取り、本当に規制と依存症に因果関係があるかを調べるとか……。

音喜多難しいですね。現実的な話、社会学の方々が子供にアンケートを実施する程度になると思います。サイエンス系の分析をするためには、子供たちの行動を管理しなければなりません。もちろん将来的に必要なリソースとしてデータ採取は実施すべきですが、現状難しいですね。

香川県議会と大館市教育委員会の違い


――規制によって制限するのではなく、子供たちにとってネットやゲームの代替となるくらい魅力的なコンテンツを用意していくことがポジティブな提案に思えます。これは地方自治体では難しいのでしょうか?

音喜多地方だから特別難しい、というわけではないと思います。おっしゃる通り、ゲームの代わりになるくらい楽しいことや、楽しく勉強できるような仕掛けを用意するのがあるべき姿です。ただ、そこは易きに流れるというか、短期的に目に見える結果を求めてルール変更や行動規範の策定に走ってしまうのだと思います。

――財源も人材も限られている地方自治にとって、「条例化」が現状で最もコスパの良い戦略という位置づけになっていることが問題なのでしょうか?

音喜多確かに条例案を提出するだけならお金はかかりません。さらに条例化は有権者へのパフォーマンスとしても分かりやすい行動です。だからといって、何でもかんでも条例化されるのは、拡張性があり過ぎる点で問題があります。

――“呼びかけ”と“条例”の間ぐらいのほど良い施策形態が必要なのでしょうか?そうでなければ、今後も各地方自治体は「呼びかけだけでは不十分だ!条例化しよう!」という理屈で動く気がします。


音喜多いろいろな方法があるとは思いますが、条例化ではない方法ではお金が掛かり過ぎますよね。呼びかけに従ってくれた市民に対してインセンティブを設定して導いていくのが、ホワイトなやり方ではあると思います。

――大館市教育委員会の方々はその点について考えられていて、ネット・ゲームの時間規制だけではなく、子供たちが地元の伝統的なビジネスに楽しみつつ携われるような施策をセットで用意しているようです。また、ネット・ゲームの60分制限については「必ずしも制限をする必要はない」ということでした。

音喜多私も香川県と大館市は違うと思いますね。大館市の場合は教育委員会からの提案なので、権力意識があるわけではありません。ただ、香川県の場合は議員提案条例なので大人の事情が渦巻いている可能性があります。

地獄への道は善意で舗装されている


――地方の方々は人口減少をどうにかしないといけないと奮闘している一方、そこで育つ子どもたちは、良い大学に行き、良い会社に就職するという都会での活躍がゴールになっていることも現状です。そうしたねじれをなんとか解消したいと思っている様子でした。

音喜多行政に関わる方々や政治家は、基本的にみんな優秀だし、良い人なんです。ひとりひとりが真剣に国や地域をこうしたい!という情熱もある。ただ、なぜだかみんなが集まるとおかしな方向に行きがちで、出てくる解決策が正しいかどうかは、シビアに見ていかないといけない。私は「地獄への道は善意で舗装されている」とよく言っているんですが、良かれと思ってやったことがバッドシナリオに繋がっていることがあるのです。それは歴史が証明しています。香川県の中にも、本当に真剣に子供のことを考えて活動している方はたくさんいると思います。そういう方たちとただ対立するのではなく、お互い部分的に認め合う必要があるでしょう。ただ、政治においての「意思表示」とはどれだけ予算を割いているかどうかなので、若い世代や子供のためにどのくらいお金をかけているかというところをじっくり見ていく必要があります。

――大館市教育委員会の方々の言葉を借りれば、「子供の問題の全てを家庭に押し付けると、子供と親の関係が破綻してしまうことがある」という点をサポートするのも行政の役目だと考えているようです。

音喜多私はそれに関しては懐疑的ですね。個人として手助けするのは自由ですが、行政が予算をかけて行うのであれば偽善です。個人の行いであれば尊いし、素晴らしいことでしょう。ただ、権力者が絡むと途端にきな臭くなります。そして、その権力は反転すると恐ろしいことになるのです。

――最初は家庭の補助だったはずが、いつの間にか行政に主導権が移ってしまう可能性があるというご指摘ですね。一方で自治体からすれば条例化することで世間が注目し、組織を作ることも楽になり、関わる人も増えてやりやすくなるという考えもあるようです。

音喜多それは地方の方目線の極めて素直な意見だと思います。権力が発生するから、進めやすくなる。善意だけではできないことも権力を行使すると実現できるようになるのです。

――世間のネット・ゲーム規制条例に対する批判には、この条例にとどまらず、一地方の条例化を突破口にしてゲームなどに様々な鎖をつけられるかもしれない、という不安からくる反発もあるのかと思います。


音喜多一度規制を許してしまうと、それが広がって管理社会のようになってしまう。とても健全な危機感だと思います。だからこそ立法事実が重要だと思っていて、兎にも角にもこの条例に関しては「60分以上ネットやゲームを続けると依存症になる」といった条例化の科学的な根拠が示せていない。もちろんゲーム・ネット依存に苦しむ人やそうした家庭のサポートは必要ですが。

――大館市の教育委員会は、深夜に子供がオンラインゲームを遊ぶことを特に警戒しています。深夜のゲーム規制に関して、韓国の「青少年夜間ゲームシャットダウン制」を始めとして他国では既に実施されている例もあります。日本の法律でどこまで制限をかけられるか分かりませんが、音喜多さんはどのようにお考えでしょうか?

音喜多そういう議論もあるとは思いますが、それでも自助努力でどうにかしていくのが健全だと考えます。確かに、国に決めてもらうと楽ですが、それでは人々は思考や自由を手放してしまう。私は自由主義者なので、どんなに辛くても、失敗しても、人間は自分の意志で選択するべきだというのが行動哲学です。だから、「国(や地方自治体)にルールを決めて導いてくれ」と頼るのは最後の手段だと考えています。

なぜネット・ゲーム規制と戦うのか


――スマホやゲーム規制に反対する政治家が少ない中、なぜこうした意思表明をするのですか?

音喜多私自身ネット世代であり、2013年に東京都議会議員に当選して以降ずっとブログを書いています。私の支持層はネットを使う方が多いのでこうした動きもしますが、ほとんどの政治家はそうではありません。特に国会で話題にならないのは、ゲーム規制が世間にとって大きなトピックではないというのも理由だと思います。ABEMAなどで声を聞くと9割近くが条例に反対していますが、街中では賛成する人は多いのではないかと。それくらい温度差を感じますし、政治家は合理的に動く生き物なので、現時点で声をあげてまで強く反対する必要はないんです。

――この条例に乗っかり国レベルでも規制を……というような動きは無いのでしょうか?

音喜多今のところ国会で表面化している動きはありませんね。動きがあるとしたら香川の条例の結果を受けてからになると思います。

――ABEMAを例に挙げられましたが、ネットメディアはネットユーザーを対象にしていることもあって、ある意味で意見が偏りがちです。また、当然ですがゲーム業界関係者は条例に猛反発しています。政治家の行動がパフォーマンスであるのと同様に、ゲーム業界関係者の主張は一般の人たちにとってはポジショントークに映りかねません。この構図はどう捉えるべきなんでしょうか?

音喜多うーん、難しいことですよね。ただ、ゲーム業界の方々が自分の業界や立場を守る発言をするのは良いと思うんです。自分たちの生業のことですし。一方、政治家は物事を相対化して判断しなければなりません。今回の場合はゲーム規制ですが、この規制が漫画に飛び火したらどうなるのか?とか、中長期的な視点を持たないといけない。一度「ゲーム悪玉論」を認めてしまうと、子供の問題が解決するまで「じゃあ次はアレが悪だ!」と魔女狩りのように続いてしまいます。

――政治家が支持層へのパフォーマンスに走らないよう仕組みを変える必要があるのでしょうか?

音喜多そこは民主主義の根幹に関わるので難しい問題です。政治家は有権者の代弁者として、他の利害関係者とお互いに利益を引っ張り合っていくことで全体最適を生んでいくので。

孤軍奮闘する理由「政治を諦めてない」から


――普段あまり政治家にこうしてお話を聞くこともないので、少しゲームメディアっぽい質問を交えつつ、もう少し音喜多さんのお話を聞かせてください。子どもの頃は、ゲームをプレイしてましたか?

音喜多私はシミュレーションゲームが好きでした。『信長の野望』とか『スーパーロボット大戦』とか……あのジャンルのゲームって「1日60分だけ」だったら永遠にクリアできないですね(笑)。あと格闘ゲームもやっていましたね。『バーチャファイター』の世代です。

――現職の国会議員がゲームメディアでインタビューに応じているのはあまり見かけませんが、普段からもこうしてインタビューに応じているのでしょうか?

音喜多はい!特に学生さんからの相談には応じるようにしています。学生は勉強の時期ですし、若い方々が政治に興味を持つことは大切ですからね。

――先ほどプレイしていたゲームを伺って、メインの読者とも近い世代だと思ったのですが、国会の場では与野党双方に切り込んでいく姿が印象的です。政治なんて……という人も少なくない世代ですが、なぜそこまでバイタリティに溢れた活動ができるのでしょう?

音喜多なぜでしょうね(笑)。私自身が「政治を諦めてない」というのはあるのかもしれません。いま、有権者の半数は投票場に行かないんです。つまり半数の人は与党も野党もダメだと思っている。だから、私のような与野党を両方ぶった切っていく存在は最大のボリュームゾーンを代表している可能性もあります。また、そうした人たちの意見を掘り起こせるのはネット等の新しいツールだとも思うんです。選挙に来てもらえない問題はありますが、有権者にメッセージが届いているという手応えは確かにあります。ゲームと政治って全く関係ないように思えますが、どのようなことも政治に派生していく可能性があると知ってもらいたいですね。

――今回はゲーム規制に関してお話を伺ったわけですが、音喜多さんは他にどのような問題と戦っているんでしょうか?

音喜多情報公開に関しては、ずっと戦っています。行政や政治はすぐに情報を隠そうとしますからね。あとは世代間格差の問題です。どうしても高齢者にお金が回されやすく子供に投資がされない現状、政治の理不尽と戦い続けています。

――この条例の件にも関わることですが、政治や行政に対して何か自分の声を届けたいと思った時、我々には何ができるのでしょうか?


音喜多選挙で一票を投じることも勿論のこと、地元の政治家に意見を伝えてください。SNSでのリプライはよく届くのですが、実はメールや手紙で意見が来るのは比較的珍しいんです。例えば「ゲーム条例に反対してください!」というメールが10通届いたら、政治家は「何事だ?」って思いますよ。

――発信方法も重要なのでしょうか?SNSだと熱意が伝わりづらいのでしょうか?

音喜多メールや手紙の方が良いですね。確かにSNSでは熱意は伝わりづらく、どうしても匿名のメッセージにはそこまで気を配れません。最初にしっかりと名乗って伝えると言葉の重みが全く違ってきます。

――Facebookはどうでしょうか?比較的、匿名性が低いSNSです。

音喜多やはり受け手のことも考えるとメールや手紙、FAXが有効です。地元の政治家にしっかり名乗って意見を言えば、確実にその政治家の行動は変わります。もちろんFacebookやTwitterでも良いのですが「○○市に住んでる者ですが……」等と、自分の選挙区の人の声だと分かるようにするだけでも伝わり方が変わるのではないかなと。

――本日はお忙しい中、ありがとうございました!「政治を諦めていない」という言葉が大変印象的でした。

音喜多まだ諦める必要なんかありませんし、このグダグダな政治が変われば、日本は途端に伸びていくという強い確信があるんです。それが実現できるかは、私たちの世代にかかっていると思います。
《OGA》

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