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Game*Sparkレビュー:『Fallout 76』第2回―Wastelandersアップデートに再訪の価値はあるか

Wastelandersアップデートで起きた『Fallout 76』の喜ばしき変化に注目しながら、再レビューをお届けします。

連載・特集 Game*Sparkレビュー
Game*Sparkレビュー:『Fallout 76』第2回―Wastelandersアップデートに再訪の価値はあるか
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はじめにですが、本稿の筆者は本作ローンチ時のレビュアーです。いくらか休み休みではあったものの、2019年の春に大型アップデート「ワイルドアパラチア」を記事化していて、それからもプレイを続けていました。最初に複雑な思いを抱き、次いでなにか希望のようなものを見いだし、そして4月14日の「Wastelanders」アップデートでようやく『Fallout 76』は始まったのだと思わされました。

今回のアップデートおよびSteam版での販売において気に掛かるのは、3つのプレイヤー層です。「新規プレイヤー」と「既存プレイヤー」、そして「休止していたプレイヤー」に分類されると思いますが、それぞれに向けた第一声として「ようこそここが新しいアパラチアです。今後ともよろしく」と手招きできるほど、本作のコンテンツはやっと『Fallout』シリーズと呼んで遜色のないものとなりました。いったいどういった部分がそう言わせるのか、じっくりみていきましょう。

人間NPCの追加によってもたらされているクエストの深み



今回のアップデートの目玉は人間のNPCを追加したことです。個性豊かなキャラクターがいて、酒場があり、そこであわや乱闘騒ぎになるなど、彼らの起こす事件もおもしろいですし、“キャラ立ち”にも気が配られています。それらに支えられたストーリーテリングはさらに強固になりました。このため新しいクエストラインは没頭しやすく、「自分は『Fallout』をやっているんだ」という感慨が改めて生まれます。また既存のクエストも人間が追加されたことによって変化しているので、すでにプレイし終えているクエストも新キャラを作って遊び直したくなります。

これまでのサービス提供がベータ段階に思えてくるほど、人間NPCの存在感は巨大です。ランダムエンカウントする場合もありますし、クエストを進める上での重要NPCもよくしゃべります。薬品を有効活用し、ステータスチェックを受けて選択肢を通す会話は、『Fallout』の精神を体現しているといって過言ではないでしょう。もちろん会話の分岐もあります。

新しい会話にはステータスチェックもあります。

これまで、ある程度人格を伴えるよう振る舞う選択肢はプレイヤーに与えられていませんでした。Vault76の住民の背景はほとんどなく、ロールプレイするためのロールがない状態だったのです。しかし、このアップデート後は選択肢による発言で幅が広がり、ロールプレイが可能になっています。なんらかの人格を持った人物として振る舞えるのです。これは素直にクエストを進めるのが楽しくなります。

新しいメインクエストはソロ向けだが、それでもおもしろい



新しいメインクエストでは簡易なチュートリアルを改めて受けることになるため、新規プレイヤーやこれまで留守にしていたプレイヤーに焦点を絞ってある印象です。最初のプレイの導線が、「監督官のログを追う」のと「入植者かレイダーと接触する」の二通りに増えたと言えます。すでに「監督官のログ」をすべて集めていたプレイヤーにはご褒美が待っていますし、これから始めるプレイヤーにも少々驚きがあるといえるでしょう。

しかし、クエストは協力マルチプレイを前提としていない恐れがあり、ソロ向けに設計されたような手触りです。前述した酒場など、一部エリアは「インスタンス化(プレイヤー固有のエリア)」されていて、ほかのプレイヤーが入ってこられない仕組みになっています。このため、ドラマチックな演出(例えばキャラが銃を向けて何者かに迫る、など)が可能となっている反面、パーティプレイではほかの参加者が置いてけぼりとなってしまいます。


それでもおもしろいのは、込み入った情勢を描く『Fallout』の流儀に則ったクエストラインでしょう。舞台であるウェストバージニアではキャップが流通しているものの「資本のいしずえ」がなく、アメリカ再建のため新たに「金」を貨幣にしたいという動きがあります。そういった理由から「金塊が眠るVaultをこじ開けよう」という流れで物語が動いていくのですが、ここで登場するVaultも今までに存在していたものなので、ファンであればテンションが上がります。

未だに残っている残念なバグ、不具合


本稿執筆時点(2020年04月27日)で、タレットのみならずCAMPに連れてきたNPCまでもがサンタトロンに攻撃するバグが残っています。このバグは昨年の12月からあったため、長期にわたって修正されていないところが目につきます。新規のバグもあり、PC版でウィンドウモードでプレイしていて別ウィンドにフォーカスを変えてからゲームに戻ると「ジャンプ、回転、エイムは左右軸のみ受け付ける」というヘンテコな不具合が発生します。このバグに陥ったときは、ESCキーを押してマップ画面を呼び出すことで対応できます。

また『Fallout 4』のころから見られたNPC周りの不具合が直っておらず、自分が死ぬと自分の強い装備を勝手にNPCが装備してしまい取り戻せなくなるという問題があります。起動・プレイ開始してから受注中のクエストが一覧に反映されるまでのラグ、相変わらずどこに何があるのかわかりづらいCAMPのアイテムなど、気になるポイントは他にもいくつか残っています。

それでも、今後の期待を煽るアップデートは果たした



『Fallout 76』は完璧な作品だと言うつもりは、まだありません。しかしアップデート以降、(ほぼ)夢中で60時間以上も遊び続けられたのは、本作が『Fallout』たらんと振る舞おうとしているためです。たとえば音楽面においても同様で、哀愁漂うストリングスがBGMとして流れ、孤独を感じさせるフィールドをさらに演出してくれています。筆者としましては、こういった演出や世界観が好きだから本シリーズを遊んでこられたのです。

このアップデートで、本作はようやく『Fallout』シリーズの名を冠する資格を得られたように思えます。充分にポテンシャルを発揮している。住民が喋りあっている光景があまりに目新しく感じられる反面、新規プレイヤーにこの驚きが伝わらないかもしれないことが惜しまれますが、それでも一定の成功は果たしています。

「未来を見る」というポーズにて。

しかしアドベンチャーサーバーは過疎化していて、ときおりプレイヤー数が5人もいないことがありました。あくまで推測であり杞憂に終わればよいのですが、プライベートサーバーで誰にも邪魔されずにストーリーを楽しみたいプレイヤーが多いのかもしれません。となると「そもそもオンラインゲームである必要性は?」という問いが立てられます。「シリーズ初のオンライン対応『Fallout』」としての理想像を形成していくアップデートを、今後も期待したいと思います。

タイトル:Fallout 76 Wastelandersアップデート
対応機種:PlayStation 4/Xbox One/Windows(Steamベセスダストア
記事におけるプレイ機種:PC(Steam/ベセスダストア)
発売日:2020年4月15日
記事執筆時の著者プレイ時間:74時間(アップデート前のプレイ時間は147時間)
価格:4,800円




総合評価:★★☆

良い点

・NPCの追加というシンプルでいて力強いストーリーへの牽引力
・新規キャラに存在感がある


悪い点

・オンライン要素を生かしきれていない
・相変わらずバグは多い


※UPDATE(2020/7/17 16:56):【補足】
レビュアーのアップデート前のプレイ時間は147時間で、今回のレビューに関するゲームプレイは74時間となります。誤解を招く表現をしていた部分について修正しました。

また、レビュー内で「アドベンチャーサーバー」の過疎状態にも触れましたが、あくまで筆者の体験を元に記述したものです。レビュアーは現在もプレイを続けており、今後もアップデートのタイミング等でレビューを掲載していきますのでご理解のほどよろしくお願いいたします。

《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

FPSとADVを偏愛しつつネトゲにも造詣のあるフリーライター SHINJI-coo-K(池田伸次)

「Game*Spark」誌に寄稿しつつも「IGN JAPAN」誌と「GAMERS ZONE」誌にも寄稿。「インサイド」誌にも寄稿歴あり。今はなき「Alienware Zone」誌や「週刊Steam」誌にも寄稿していたフリーライター。 そしてヒップホップビートメイカー業も営む音楽家兼ゲームライターの兼業家。通称シンジ。

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