ソシャゲで課金しガチャを回すとき、ダメージ量をインフレさせたとき、ランクが上がったとき、胸が高鳴り高揚感を得ることができます。これは脳内物質であるドーパミンが分泌されるためだと言われています。しかし、本当にこれでいいのでしょうか?
近年ドーパミンはその中毒性から敵視され、映画やゲームに集中できない層を指して「ドーパミン中毒のガキ」(ドパ中)と揶揄する動きもありました。
そこで、この記事では人間の感情や行動を脳内物質に還元する人間機械論にあえて則り、ドーパミン中毒に対抗して、精神の安定をつかさどるセロトニンを分泌してそうなCozy(コージー)なゲームを紹介していきます。レッツセロ中(セロトニン中毒)!
Lushfoil Photography Sim

最初にご紹介するのは『Lushfoil Photography Sim』です。Unreal Engineで構築されたロケーションを、気ままに、のんびり散策し、写真を撮影するウォーキングシミュレーターです。
個人開発者Matt Newellによってリリースするまでに6年間が費やされた作品なだけに、ロケーションの3Dモデル、ライティング、音響など全てがハイクオリティ。ディスプレイを前にしていながら日光を浴びながら散歩をしているような錯覚に陥ります。

ゲーム内のカメラには細かい設定が用意されており、最高の一枚を撮影したい人にもお勧めしたい作品です。また各ステージには「この景色をこの角度で撮影してください」というささやかな目標や、収集物が散りばめられており、心地の良い散歩にちょっとした目的を与えてくれる仕掛けも用意されています。


目標を達成することで、新たなロケーションがアンロックされたり、ドローンや古いデジカメが使えるようになったり、時にはロケーションの天気や時間帯を変えたりできるようになったりと、プレイヤーの欲しいと思うものを細かく用意してくれています。
ちょっとした空き時間にも世界の絶景へと飛ばしてくれる『Lushfoil Photography Sim』はまさしくバーチャル散歩の決定版です。
Keep Driving

『Keep Driving』は初めて買った車で遠く離れたフェス会場へと向かうRPG作品です。
ドライビングを主題としていながらRPGとはどういうことか?と思われるかもしれませんが、この作品はれっきとしたRPG作品です。インベントリは車のトランクで、パーティメンバーはヒッチハイカー、敵はドライブ中に見舞われるさまざまなアクシデントというようにドライビング要素が上手くゲームプレイに落とし込まれています。


旅の道中で拾う(あるいは見捨てる)ことになるヒッチハイカーは個性豊かで、多彩な人物がそろっています。『Keep Driving』における敵はモンスターや兵士ではなく、ドライビングの道中に見舞われるアクシデントです。
そのため一見役に立ちそうにない弱いヒッチハイカーでも、その個性を発揮してアクシデントを潜り抜ける助けとなります。「戦闘の強さ」が指標になりがちなRPGですが、今作はその凝り固まった発想を崩してくれます。

ヒッチハイカーたちはウェディングドレスをまとっていたり、ホームレスだったり、ギャンブラーだったり……時にはヒッチハイカー同士で喧嘩を始めることもあります。お金は少なく、車はガタガタ、食べ物にも飲み物にも余裕はなく、人間関係はその場で急造した歪なものです。
それでも困っている人がいたら助け、ヒッチハイカーたちの頼みを聞き、そしてアクシデントという共通の敵に立ち向かい共に成長していきます。
派手な戦闘や、心を大きく動かす感動譚はありませんが、同じ音楽を聴きながら道程を共にする仲間たちとの時間は、競い合いとは別の位相にある心地よさを感じさせてくれるはずです。
CUCCCHI

『CUCCCHI』は1949年生まれのイタリアの画家、Enzo Cucchiの7つの作品世界を一人称で歩き回る一風変わった作品です。
絵画とは本来、同じ角度での鑑賞しかできません。しかし『CUCCCHI』における作品は世界そのものであり、鑑賞者は自由に移動できるプレイヤーです。好きな作品を好きな角度から味わえるこの体験は新鮮で、絵画の世界を能動的に堪能することができます。

各ステージには一応のゴールが用意されており、ステージに散らばった「目」を集めることでモチーフとなった作品をギャラリーで確認できるようになったりもします。とはいえ先に進むこと以外に目的のないこの作品は、いわばバーチャルな個展という事ができるでしょう。

セロトニンとかドーパミンとか、そんな俗世的なものはどうでもよくなるバーチャル個展を楽しみましょう。
Arctic Eggs

『Arctic Eggs』はフライパンを片手に、人々に目玉焼きを焼いて回る一人称のアドベンチャーゲームです。人々はお腹を空かせ、プレイヤーの目玉焼きを待っています。物理エンジンに支配された目玉焼きと様々な具に翻弄されながらも、落ち着いて挙動を見極めフライパンを傾ける必要があります。
そこにあるのは沈黙と沈静。注文の目玉焼きはモチロン両面焼き。焼きあがるのをじっと待ち、ひっくり返すタイミングをうかがいます。

ゲームを進めるごとに客の注文は増えていき、具の数や種類も増えます。フライパンの上は混沌と化し、手に負えなくなっていきます。しかし、その混沌を制御し、調和を作るのもプレイヤーの仕事。ゲームを終えるころにはセロトニンにまみれた立派な目玉焼きマスターになっていることでしょう。

FACEMINER

あなたはFACEMINER社から雇われ、人の顔を見つけては延々とそれをクリックする労働者です。一定のリズムで繰り返される動作はセロトニンを放出します。くつろいで、自分のペースで、ゆっくりと人の顔を判別しクリックしましょう。

しかし、新たなソフトウェアを(自費で)導入すれば自動的に顔を判別してクリックしてくれるようになり、もはや自分でクリックする必要はなくなります。ソフトウェアが勝手に働いてくれるのを眺めながらゆっくりしましょう。リラックスした状態はセロトニンを放出します。

しかし、ソフトウェアによる一連の動作は非常に遅く、誤判定も多くなってしまいます。このままでは成果主義のFACEMINER社では稼ぐことができなくなってしまいます。
身銭を切ってでもソフトウェアをアップグレードするためにハードウェアを購入しましょう。ソフトウェアが高速で、そして正確に動き出しました。一定のリズムで繰り返される動作はセロトニンを放出します。

ですがハードウェアのアップグレードに伴って電気代が上がってきました。もっと効率よく稼ぐ必要がありそうです……
稼ぐ、アップグレードする、儲かる、電気代が上がる……一定のリズムで繰り返される動作はセロトニンを放出します。
ここまでセロトニンの称揚を高らかに謳い、それにかかわる作品を5つ紹介してきました。しかし、ご察しの通りゲームのすべての要素をセロトニン分泌に還元することは元より不可能です。
ゲームの中には落ち着く時間もあれば、高揚する時間もあります。大事なのはバランス、つまりドパ中(ドーパミン中毒)であると同時にセロ中(セロトニン中毒)であることが不可欠なのです。皆さんも良きゲーム中毒ライフをお送りください。












