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『アサシン クリード ヴァルハラ』の為に振り返る「ヴァイキングの歴史」……“入り江の住人”とは何者か?

先日発表された『アサシン クリード ヴァルハラ』。現在公開されている世界観を基に、史実上のヴァイキングやイングランド情勢について紹介します。

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『アサシン クリード ヴァルハラ』の為に振り返る「ヴァイキングの歴史」……“入り江の住人”とは何者か?
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  • (c) 2013 Elliott Brown
  • (c) 2015 Lil Shepherd

ユービーアイソフトは5月1日に『アサシン クリード ヴァルハラ』を正式に発表し、続けてゲームプレイトレイラーを公開しました。主人公はヴァイキングの戦士エイヴォル、9世紀におけるイングランド侵攻を舞台とすることが明らかになっています。公式サイトでは歴史アドバイザーThierry Noel氏へのインタビューも掲載されており、今回の開発における歴史解釈が垣間見られます。

本特集では現時点で発表されている情報を基に、ヴァイキングや北欧神話、舞台となるイングランドの情勢についてリサーチしました。専門家を招いた緻密な時代考証で知られる『アサシン クリード』シリーズ。歴史的資料の少ない「暗黒時代」にどうアプローチを仕掛けるのか、期待が高まります。

「入り江に住む人」ヴァイキング その実態は出稼ぎ労働者



海外公式サイト: ASSASSIN’S CREED VALHALLA - THE HISTORY BEHIND THE VIKING LEGEND
一般的にヴァイキングというと、ひとくくりに北欧の海賊というイメージです。しかしそう単純化されたのは侵略を受けた側の史書に依るところが大きく、北方民族の活動における一面に過ぎません。口伝を主とする彼ら自身の文化資料は現存が少ないため、実態を精確に調査するのは難しいですが、後に編纂された文献「エッダ」「サーガ」などから読み取ることが出来ます。

主にスカンジナビア、ユトランドに住んでいた彼らは、氏族単位での集団生活を主とし、基本的には分業などはせずに村人総出で農業や漁業をして暮らしていました。しかしそこは厳しい北国、それだけでは生活できないので海上交易によって富を得ていたのです。自作の工芸品や毛皮などの商取引に大きく成功して財を成す者達も多く、本作の歴史調査チームでアドバイザーを務めるThierry Noel氏の発言のように、「ヴァイキング」とは元々そういった豪族を指す言葉でした。地域が安定していた8世紀までは、略奪のための遠征は行われていません。

ところが、8世紀末のドイツ東部で起こったザクセン戦争が飛び火し、ユトランドとスカンジナビアにも戦乱が起こります。交易活動の大きな障害となり、商業で豊かになっていた人々は痩せた土地ではとても生活が出来ない状況に陥りました。そしてノルウェーの豪族から、武装化して略奪に出る者が現れるのです。

793年、スコットランド北部の島にあるリンディスファーン修道院にて、最古の記録とされるヴァイキング襲撃が行われました。以降300年に亘って略奪遠征と入植が繰り返され、フランス北部、ブリテン島、イタリア、そして北米へと進出していったのです。

機動性に特化したロングシップ 転回前後も自由自在

 

当時のヨーロッパにおいて、遠洋航海術は北方民族のみが習得していたようです。活発な海上交易を重ねることで、沿岸部から離れても正確に方角を測量できる技術を身につけていました。さながらノルマンディー作戦のように、外洋から強襲をかけるヴァイキングの戦法は、南側の諸国には到底対処できるものではありませんでした。

ヴァイキングの強さは船の構造にも裏打ちされています。狭小な谷筋で形成される「フィヨルド」に適応するため、彼らの「ロングシップ」は優れた機動力を持っています。帆布でも航行可能ですが、なんといっても乗組員によるオール操作で素早い旋回が出来ました。さらに前後の舳先は同じ構造なのでバックへの切り替えも即座に行えます。平底で喫水がとても浅いので、乱戦時における小回りの早さは大きな武器となりました。

喫水の浅さにはもう一つ利点があり、それは内陸に向けて河川を上ることにも適していました。普通、未知の場所での航行は座礁の危険性がついて回りますが、最小で喫水僅か50センチのロングシップであれば、地元住民も避けるルートさえ突き進むことが出来たのです。

北欧神話の死生観 ヴァルハラ、ワルキューレ、エインヘリアル


『VALKYRIE PROFILE -LENNETH- ヴァルキリープロファイル -レナス-』トレイラー映像

ヴァイキングの戦いにおいて、その精神的強靱さの源になっているのが死後の概念です。「勇猛に戦った戦士は死後ヴァルハラに招かれる」という伝承に従い、ひたすらに戦い抜いて討ち死にすることが最上であると信じられていました。

ヴァルハラとは、未来に訪れる世界の終焉「ラグナロク」に備えて、最高神「オーディン」が戦士を招聘する館のことです。ラグナロクが始まると、人間の世界も神々の世界も、全てが戦争と破壊に巻き込まれて滅び行くと予言されています。

オーディンはその武力となる人間の魂「エインヘリアル」を選別して、自らの館であるヴァルハラに招き入れます。選定の役割を与えられた「ワルキューレ」が人間の世界に赴き、討ち死にした戦士を連れて行くのです。エインヘリアル達は終末の日まで宴と戦いに明け暮れるとされます。

ヴァイキングの戦士にとって、ラグナロクの際にオーディンの下で戦うことこそが最上の名誉。そのために己の力を誇示し、より多くの敵を討ち果たすための戦いを続けます。特に、「シャツだけを着る者」を意味する「ベルセルク」は、鎧を着けずに戦う最強の戦士に与える称号でした。ヴァイキングの遠征にはそういった精神的側面もあったのです。

使えるものは何でも使う我流の戦闘 村の結束が無敵の強さを生む



部族単位で行動するヴァイキング。戦闘において彼らが最優先するのは、「自分たちの部隊が生き残り、最大の戦果を上げる」ことです。他のヴァイキングや王国の遠征に協力することはあっても、あくまでも自分たちの利益が第一であり、「大局のため」などとは考えません。共闘にも慎重ですし、利害が反することになれば裏切るのも常套手段です。

その反面、襲撃に失敗すれば良くて飢え死に、最悪全滅という過酷な状況で部族の結束力は非常に強固なものでした。失うものは何もなく、戦死は最上の名誉。そのため常に士気を最高に保つことが出来たのです。しかし、そもそも体系的な戦闘訓練も受けていない農民の集団です。斧や棍棒といった農具を転用した武器も多く、少数で生き残るための戦術、つまり奇襲と殲滅に特化した戦い方が主流となりました。

(c) 2015 Lil Shepherd
ヴァイキングの集団戦術の基本は、前衛の盾を重ねた防御陣形です。ローマ兵の集団戦術にも似ていますが、ヴァイキングはあくまでも攻撃に特化したもの。軽い木製の盾で敵の一撃を防ぐとすぐさま突撃して瞬時に圧倒するという、ほとんど捨て身の戦い方です。数も装備も劣る彼らには、持久戦を耐え抜く余裕はありませんでした。

手持ちの軽い盾は耐久性が弱く、重い一撃を受け止めるのには向いていません。「盾を武器とすることさえもあった」と説明されるように、盾は積極的にシールドバッシュを狙って振るわれました。個人戦では盾で受け流しや殴りを重ねつつ、相手の盾から外れた頭や足を狙って体勢を崩すのがセオリーだったようです。

彼らは槍も積極的に使っており、投げ槍も主要な攻撃手段の一つでした。「サーガ」には敵の投げ槍を投げ返すという豪快なシーンも登場、川の飛び越え棒やスキー板代わりに使用したという記録もあるそうです。また、ヴァイキング独自の槍として「Heftisax」が挙げられます。あらゆる場面に対応できるとされていますが、実はこの武器の形状はよく分かっていません。マニアックなところも抑えてくる『アサシン クリード』シリーズだけに、変わり種武器が出てくるのかも気になるところです。

Disで勝負の口論詩 ラップバトルは伝統文化


公式にもラップバトルと表されているこの「口論詩」。事実、韻を踏んだ詩の形式で対戦する「Flyting」は古代文明時代から記録されており、古くは「イリアス」や「ベオウルフ」といった古典文学にも見られます。

北欧文化においては、神話の重要な場面でも「ロキの口論(Lokasenna)」として登場します。トリックスター役の神ロキが、エーギルの館で催される宴席においてその場にいる神々を次々に罵っていきました。そして口論詩の最後にロキは「ラグナロク」を予言します。この事件をきっかけにしてロキは捕らわれの身となり、神話は終末へ動き出すのです。神話との結びつきが強い『アサシン クリード』の物語。この「口論詩」は「ラグナロク」に関わる重要な鍵になるかもしれません。

混迷を極めるイングランド情勢 滅び行く「アングロサクソン7王国」


(c) 2013 Elliott Brown
シネマティックトレイラー冒頭に登場する人物は、ウェセックス公アルフレッド大王(在位871年~899年)です。ヴァイキングの侵攻を生き延びた「唯一の王」であり、ロンドンを奪還して後のイングランド王国の基盤を打ち立てた人物です。

ローマ帝国が410年に撤退した後、以降400年に亘って中央政権不在の「暗黒時代」が続きます。地方各所でケルト人、アングロサクソン人による「王国」が乱立し、さながら日本の戦国時代のような、まさに群雄割拠の内乱状態でした。後に「アングロサクソン7王国」と呼ばれる、有力な国のひとつにウェセックス王国もありました。

しかしリンディスファーン修道院襲撃を皮切りに、ヴァイキングがブリテン島への襲撃を始めると、諸国はあっという間に駆逐されてしまい、ロンドンを含むブリテン中央部は実に島面積の半分に及ぶ入植地となったのです。

襲撃をなんとかしのぎきったウェセックス王国は878年に「ウェドモーアの和議」を結び、デーン人、つまりヴァイキングの入植を許した「デーンロウ」の確保を認めました。その後、アルフレッド大王は886年にロンドンを奪還し、荒廃した都市の再生に努めます。これが「首都ロンドン」の出発点となりました。

トレイラーではアルフレッド大王は反撃の狼煙ととれる檄を発しています。このロンドン攻防が今作におけるハイライトとなる可能性は高いでしょう。



ロマンが満載のヴァイキングは調べるほどに意外な発見が出てきます。発売までにまだまだ時間は空きますが、同時代を描いた『アンセスターズレガシー』や海外ドラマ「ヴァイキング ~海の覇者たち~」、150年後を描いた漫画「ヴィンランド・サガ」などで予習をしておけば、新たな歴史スペクタクルの幕開けを堪能できることでしょう。
《Skollfang》

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