戦い、動き、自然…より深く“侍”に浸るため―『Ghost of Tsushima』開発インタビュー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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戦い、動き、自然…より深く“侍”に浸るため―『Ghost of Tsushima』開発インタビュー

時代劇を始め「子連れ狼」といったマンガからも影響を受けたという『Ghost of Tsushima』に迫ります。全ては「プレイヤーを侍にする」ために。

家庭用ゲーム PS4
戦い、動き、自然…より深く“侍”に浸るため―『Ghost of Tsushima』開発インタビュー
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ソニー・インタラクティブエンタテインメントより、PS4向けに発売される『Ghost of Tsushima』。待望の大作がいよいよ発売を迎えますね!今までありそうでなかった“海外スタジオ製の日本オープンワールド”、しかも対馬が舞台で時代は中世、題材は元寇と、かなりの唯一無二感を醸し出している本作。タイトル発表から約3年。ようやくプレイできる日がやってきました。

そんな『Ghost of Tsushima』について、今回は開発元のSucker Punch Productionsにて、『Ghost of Tsushima』のクリエイティブ・プロデューサーを務めるNate Fox(ネイト・フォックス)氏および、アニメーションディレクター・Billy Harper(ビリー・ハーパー)氏へのオンラインインタビューを実施しました。前回のインタビューと合わせてお楽しみください!

『Ghost of Tsushima』クリエイティブプロデューサー・Nate Fox氏(左)
同アニメーションディレクター・Billy Harper氏(右)

――そもそもなぜ、「元寇」をモチーフにしたのでしょうか。

Nate Fox氏(以下、フォックス)「プレイヤーを侍にする」。それを実現するためには、何か「戦い」が必要でした。日本の歴史を紐解いていくうちに、中世日本の「元寇」に行き当たり、これならプレイヤーを夢中にすることができる。そう思ったのがきっかけです。

――その「元寇」を描くにあたり、境井仁というキャラクターが作り上げられました。彼について、モデルにした人物はいるのでしょうか。

Billy Harper氏(以下、ハーパー)境井仁については、アメリカ在住の役者であるダイスケ・ツジさんをモデルとして起用しています。外見については、顔も体型も彼からキャプチャーしています。

オーディション中、ツジさんは段々と仁のキャラクターを掴んでいき、我々が予想もしていなかった仁の一面を見せてくれたんです。彼の演技の中に、本作で大事にしている「本物らしさ」や「ユニークさ」を感じ、起用を決めました。なので、仁の性格面についても、ある程度ツジさんに寄っている部分がありますね。


――時代劇の影響を多分に感じる本作ですが、時代劇以外で日本の文化や歴史を知るために参考にしたものはありますか?例えば、マンガであったりとか。

フォックス日系アメリカ人のスタン坂井さんが描かれた「Usagi Yojimbo(兎用心棒)」というマンガからは大きなインスピレーションを得ています。

宮本武蔵の生涯を、緩やかな形で原案にしている「Usagi Yojimbo」は、動物を主人公にした時代劇マンガです。ちょうど我々がPS2で『怪盗スライ・クーパー』のシリーズを制作しているときに、動物が主人公ということで参考に読んでみたんです。そうしたら、宮本武蔵をモデルにしたウサギ侍が、剣や知恵で問題を解決していく姿にハマってしまいまして。

その後「inFAMOUS(インファマス)」シリーズを完結させたときに、次のIPはこれ(侍)がいいと、強く推しましたね。ちなみに、仁の名字である「境井」は、作者のスタン坂井さんに敬意を払って付けられたものです。

他にも、日本の有名なマンガ「子連れ狼」からも強い影響を受けています。「子連れ狼」の中には、木々や海岸など自然を描いたシーンが多くあり、それは我々に大きなアイディアをもたらしてくれました。

――「子連れ狼」、アメリカでも読めるんですね!

フォックスはい、きちんと翻訳されてこちらでも販売されています。

ハーパー「デアデビル」や「シン・シティ」の原作者であるフランク・ミラーさんの尽力のおかげで、アメリカでも翻訳された「子連れ狼」は人気のある日本マンガとして有名なんです。

――そうなんですね。知りませんでした……。ゲームをプレイして感じたことも少し聞いていきたいのですが、正面から挑む侍らしいプレイと、ステルスを主とする冥人のプレイ。このふたつはどのようにバランスをとっているのでしょうか。

ハーパーまずスタジオ全体として、『鬼武者』などの刀を用いた戦闘が大好きであり、私自身はそれに加えて『天誅』シリーズなどのステルスでの戦闘も好きです。本作では、例えば『鬼武者』をプレイしていてたまにあるようなステルスミッションなどを参考に、骨子やメカニズムを整え、正面からの戦闘とステルスのバランスを取っています。

――戦闘をしていると、刀の一振りで生死が決まるような緊張感をすごく意識されているなと感じます。やはりこのような部分も時代劇からの影響を受けているのでしょうか。

フォックスやはり刀というのは一撃が重い、斬られたら死ぬものであるというのは時代劇でも表現されています。その感覚を、プレイヤーの皆様にも持っていただくというのを強く意識しています。

また、本作の戦闘で重視しているところとして、泥・血・鋼というのをキーワードにしています。例えば、三池崇史監督が2010年にリメイクした「十三人の刺客」のように、泥臭いけれども、命のやり取りに様々なドラマが生まれるような戦闘を目指して作っています。


――その緊張感ある戦闘を演出するにあたり「殺陣」は重要な要素だと思います。ここにはどのようなこだわりを込めていますか。

ハーパーまずはアメリカ在住の武術の師範たちをコンサルタントとして招き、お話を聞きながら、実際にその方たちにモーションキャプチャースーツを着ていただき、動きを撮っていきました。その後は、ハリウッドのスタントマンたちからもモーションを撮りました。もちろん、そのまま使っているわけではなく、時代劇らしくなるように強調や変更を加えています。他にも、日本文化に詳しい方のコンサルティングを受けながら、様々な資料を元に動きの基礎を作っていきました。

基礎ができた後、我々の望んでいた特定の動きを撮影するため、天心流という流派の師範2名をスタジオに招き、3日間モーションキャプチャーを行いました。


――蒙古軍側についても、こだわりを持って作られているのでしょうか。

フォックス本作はフィクションであり、史実を完全に再現しているわけではありませんが、もちろん当時のモンゴル帝国や蒙古軍にとって非常に重要だったもの―その中でも特に、対馬の人々に大きなインパクトを与えたものは再現しています。例えば、当時の日本に比べて技術的に非常に先進的だった、というところなどですね。火薬や、それを利用した「てつはう」といった、当時の日本の人々にとっては「未知のもの」だった武器に対する衝撃、というのはプレヤーの方々にも体験していただきたいです。

その他にも、当時の蒙古軍の特徴として、弓術・馬術に長けているということと、集団としての戦いを意識していることが挙げられます。また、蒙古軍の将であるコトゥン・ハーンは、対馬の人々に対し、降伏させ懐柔しようとします。これは当時の蒙古軍の伝統的な接し方です。彼ら蒙古軍は様々な地域で侵攻・略奪などを行っていますが、まずは戦わずに自軍に引き入れようとするんです。それはゲーム内でもある程度再現されていますね。


――確かにコトゥン・ハーンは、仁に度々降伏を提言してきますね。表現についても伺いたいのですが、白黒モード改め「黒澤モード」という名称には驚きました。なぜこのような名前にしたのでしょう。

ハーパー実はこの「黒澤モード」ですが、黒澤プロダクションより正式に名称の使用許諾を得ることができまして、私自身とても興奮しています。内部ではずっと「黒澤モード」と呼んでいたのですが、まさか本当にその名前を使えるとは思ってもみませんでした。

時代劇の名作といえば黒澤監督の作品は外せませんし、本作にも黒澤作品を観て感じたことが、DNAのように組み込まれています。ゲームシステム含め、黒澤作品の影響を受けていない部分がないくらいに、リスペクトを持って作っています。なので本当に、この「黒澤モード」という名前を使えることを嬉しく思っています。


――正式許諾を得ているとは!すごいです……!他に表現関連だと、タッチパッドのスワイプで「一礼」ができますが、これにはどのような意味があるのでしょうか。

ハーパーゲームシステム的には大きな意味はないのですが、本作の核になる「プレイヤーを侍にする」を実現するための手段です。戦いだけではなく、物や人など様々なものに、侍として敬意を払いたくなるような気持ちにプレイヤーがなった時、それを実現できるようにしています。

刀に付いた血を落とす「血振り」の動作も、同じくタッチパッドで行なえますが、こちらもゲームシステム上でなにかメリットがあるわけではありません。しかし、このような動作を行えることで、より侍の世界に浸ることができると我々は考えています。

――世界に浸るという意味では、特定のポイントで行える「和歌」づくりも非常に印象的です。どのような作り方をされているのでしょうか。

フォックス日本語版では「和歌」となっていますが、それ以外での言語では「俳句」として表現しています。というのも。日本以外だと和歌の知名度というのは俳句と比べて圧倒的に低くいんです。そのため、わかりやすい「俳句」として日本以外の国では提供しています。

しかし、根本的な精神はどちらの言語でも変わりません。先程の「一礼」や「血振り」のように、様々な小さい動きを通して、日本文化や侍体験をより深く味わってもらいたいのです。もちろん、和歌というものは当時は教養のある層が詠んだものであり、歴史的に正しいとは言えないかも知れませんが。

ゲーム中で和歌を作るときには、自然に目を向けて句を詠むという形になっています。昨今のビデオゲームでは、美しい自然をゆっくり見ることはあまりないと思います。ですが、本作では日本の自然の美しさをとても重要視していますし、それを目にしたときに心の動き・感情にも目を向けてほしいと思い、和歌のシステムを組み込みました。


ハーパー和歌を作るとなると難しく感じる方もいると思いますが、このシステムを通じて、創造のよろこびを感じてもらえたらなとも思っています。

フォックス先程「子連れ狼」の話をしましたが、このマンガでは「波打ち際とそこにいるカニ」といった自然の描写を、とても大きなコマを割いて表現しています。戦いの多いマンガにも関わらず、細かい静寂の瞬間を大きくクローズアップして捉えているんです。それこそが、時代劇における一つのコアな部分だと考えています。本作での「和歌」も、そのコアな部分を担う一つの要素です。

――以前のインタビューでもお話いただいた「静」と「動」に通じる部分もありそうですね。本日は、ありがとうございました!



『Ghost of Tsushima』は、2020年7月17日にPS4向けタイトルとして発売予定です。
《Takuya Suenaga》

ソウルシリーズ大好き Takuya Suenaga

1990年3月、神奈川県生まれ。パズル誌の編集を経て、イードへ。「Game*Spark」「インサイド」の編集業務に携わり、同社のアニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」も経験。幼少期よりゲームに触れ、現在はCS機・スマホを中心にプレイ中。好きなジャンルはアクションやFPS・TPSなど。『デモンズソウル』を始めとしたフロム・ソフトウェアの「ソウルシリーズ」や、2020年にサービスを終了した『ららマジ』に特に思い入れがある他、毎年の『Call of Duty』に一喜一憂したり、『アクアノートの休日』『FOREVER BLUE』の新作を待ち望んでいたりする。

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